月夜を隠さない程度の能力 ◆jU59Fli6bM
町を全速力で駆け抜ける3つの影。
それらはしばらくすると薬局の前で止まり、1本の杖とその周りの魔方陣を囲むようにして立った。
『レイム、ヴァンデモンとロールと思われる反応がそれぞれ違う方向に移動したようです』
「何!ロールは無事なのか!?」
「レイジングハート。どっちがどっちへ行ったか分かる?」
『はい。ヴァンデモンは町の外へ出て北西へ向かっています。橋を渡って城に行くものかと思われます。
そして、もう片方にロールと、複数の魔力…。クロスミラージュもロールの手に渡っているようです』
それを聞いた霊夢の表情が険しくなる。
「橋ねぇ……城に行くつもりだったらまずいわ。このままじゃ海馬達も犠牲になってしまう」
「でもロルーちゃんはどうするんだぜ!二兎追うものは一歩も追えずってか!」
「移動してるなら無事ってことだけど…、何故あいつはロールを解放したんだ?」
『2人の移動速度は速くはないようです。ヴァンデモンはD-3の川沿い、ロールはE-4の町の中……今からでも追いつけます。どうしますか?』
3人の動きが止まり、お互いに顔を見合わせる。
「距離はヴァンデモンのほうが近いわ。私はそのまま退治に行くつもりだけど…あんたたちは?」
霊夢が2人の顔を見る。
KASも珍しく思案顔…に見える。
「私はロールを見つけたい、けど…」
「ああ~!俺はどっちに行くべきなんだ?あいつをぶっ飛ばしたいが、ロルーちゃんも見つけんと!」
「けど…私もヴァンデモンのところへ行こうと思う。色々聞きたいことがあるし、霊夢だけでは不安だ」
それを聞いてKASが飛び上がる。
「何!西瓜もそっちなら仕方ない、俺も行こう!このKAS様がいる限り無事だからな!」
「あんたは単純でいいよなぁ」
「…そう、分かったわ。そうと決まったらあいつがまた何かやらないうちに追いつかないと。急ぎましょ」
そう言って、霊夢はいつもよりも淡々と切り上げて飛び立つ。
「霊夢、もっと頼ってくれてもいいのに」
萃香が頭上を飛ぶ霊夢を見つめて言った。
■
「あ~あ、やっぱり追いつかれちゃったか」
川に沿って歩く影が呟く。
その影――ヴァンデモンは、周りで騒ぎ立てるコウモリを払い、後ろからやってくる人物に目を向けた。
「…足が完全に身体に馴染むまで、あと少しだった」
「でも、これは好都合ですよ。いずれ殺す参加者が自ら出向いてくれたんですから。それも、夜に」
「ですよねー。さっさと壊して進みましょ」
いかにもらしい格好の吸血鬼から少女達の声が聞こえる様は、混沌としているようで満月の狂気に馴染んでいる。
その元に辿り着いた3人を笑い声が迎えた。
「あはははは!どうしたの、さっきの巫女さん?仲間もお揃いで復讐かな?」
「うるさいわね。ただの妖怪退治よ。私はいつもの仕事をしに来ただけ…」
「その割には殺気立ってますねぇ。そんなにあの恐竜が惜しかったんですか?」
その言葉を聞いて霊夢は強く拳を握りしめる。
「ぐぎゃぎゃ!ああ、可哀想に…、涙を誘いますねぇ!」
「ッ…!少し、黙れ…!」
ヴァンデモンは怒りを隠しきれない霊夢を見て楽しむかのように泣くふりをする。
辺りに広がる、複数の甲高い嘲笑。
「そんなことより」
それを見ていた萃香が霊夢を隠すように前に進み出た。
「あら、あなた、初めまし…て…?」
「お前…、兎となのはを食ったんだってな」
「ナノハは体じゃなくてあの黒い塊だけだよ。そう、あなたが食べてた塊の片割れをね」
はて?と萃香は首を傾げる。
「何でそれを知ってるんだ?」
「あぁ!そうですそうです!これで私達があなたを見るのは2回目ですね。あの頃は隠れて過ごしてたんです!」
「なるほどね。そして巨乳との関係は死んでも深く繋がっていると…って嫌だそんなの!」
あの悪魔の顔が脳内で甦り、頭を振る。
「つるぺた女、質問は終わり?」
さっきまでとは別の淡白な声。
「…つるぺたって……!ん?そういえば、あんたとも前会ったな。声をどこかで聞いたような…」
「それはどんな名前なんだ!言え!」
萃香の言葉が言い終わらないうちに、長門の人格が激昂した。
「いや…正直、忘れた。長…なんとか」
「貴様ァ!」
「西瓜お前知り合い多いのな!」
「私が殺した奴をまた殺す羽目になるのは気分悪いけどね。じゃあ、本題といこうか」
改めてヴァンデモンを正面から見据える。
「お前に聞きたい事がある」
「何か?」
「何かもキノコもねえ!ロルーちゃんはどうしたんだ!」
腕を組みながらKASも言葉を投げる。
「あのロボットの子?それなら心配ないよ、まだ生かすつもり。だって…ふふ、私達の協力者になったんだもの」
「…何だって?」
「意気揚々と町の参加者を殺しに行きましたよ。言いつけを守れる子ならいいんですけど」
萃香も霊夢も、表情こそ同じのKASも、その言葉を理解して顔を凍張らせる。
「くそっ、嘘だろ…!」
「嘘じゃあないよ、優勝すればあいつの大切な人とやらを生き返らせるって言ったら、すぐだったね」
「ロルーちゃんの心を弄びやがって!お前は俺を怒らせた!!」
ヴァンデモンのある人格がくすくすと笑い、別の人格は憤り、また別の人格は目の前の人物の対処法を考える。
悪魔は外見だけでなく、ただいるだけで吐き気がする邪悪を兼ね備えていた。
「私の名前を忘れるような奴…、跡形無く消してやりたい」
「ぐぎゃぎゃぎゃ!名前を思い出すまで私が拷問してあげてもいいですよぉ!」
「どっちにしろ全員壊すつもりですし…」
「私達は夜の支配者。あなた達程度じゃ、止められないよ」
お互いもう話す必要は無くなった。あとはぶつけ合うのみ。
「いいわ、こっちも跡形も無く"壊して"あげる。…いくわよ」
対極の位置にいる両者の、思いを。
ヴァンデモンが頭上に伸ばした腕、その周りにコウモリが次々と集まる。
そしてそれは姿を変え、段幕となって3人に降り注ぐ。
「この座薬の形…うどんげの弾!?」
「あいつは気味悪い人格の能力も使えると見た!気をつけるぜおまいら!」
不規則に飛ぶコウモリは一つ一つが捉えにくく、3人を吸血鬼に近づかせない。
現れたコウモリ全てが段幕となり降り注ぎ、その後ろでヴァンデモンは魔力を集中させる。
いち早く反撃に出たのは霊夢。
弾幕を見切り、最小限の動きで弾幕を避けながら前に進む。
「式神を無限に呼び出せるのね。でも…」
右手に博麗アミュレット、左手にレイジングハートを持ち、構える。
「そんな薄い弾幕で私は止められないわ」
直後、数枚の札がヴァンデモンへと伸びる。
ヴァンデモンは難なく避け、そのまま霊夢へ砲撃を――
「なっ!」
――放とうとして、肌を焼かれた。
咄嗟に鉄塊鉈を盾にして、残りの弾を防ぐ。
「あぁ!私、知ってました。今のはホーミング弾、当たるまで追ってくる弾なんですよ」
「…こざかしい」
萃香と
KASはコウモリ弾幕に苦戦している。
他の2人が加わる前に霊夢を潰しておきたい。
そう決めていたヴァンデモンは再び魔力を高め、腕を霊夢に向ける。
霊夢もレイジングハートを構える。
「「スターライトブレイカー!!」」
2つの砲撃魔法はぶつかり合い、霊夢とヴァンデモンの間を結ぶ線となった。
「くぅぅっ…!!」
霊夢は必死にその均衡に耐える。周りに飛び散る衝撃波で草原が波のように揺れる。
「まだ…へばるのは早いよ!」
「情報改変…最大出力!」
そう叫ぶと同時に、ヴァンデモンの光の束は太さを増し、赤く染まった。
ちょうど2人の真ん中にあった線の結び目が、徐々に霊夢の方へ近づいていく。
「あ、あぁあっ…!!」
押し返せない。
霊夢の手が衝撃に堪えきれずにガクガクと揺れる。赤い光が目の前まで迫る。
それを見て、霊夢は拒むように目を閉じる。レイジングハートやヴァンデモンが何か叫んでいる…。
そして、霊夢には砲撃の音しか聞こえなくなった。
それを見たヴァンデモンは狂喜の表情を浮かべ、高笑いする。
「アハハハハハ!!逃げようにも逃げられないでしょう!」
「そのままバラバラに壊れ……、!?」
突然、ヴァンデモンの目の前が塞がれた。
腕に何かが乗っている。それに気付く前に再び視界が開き、
「ミッシング…スターライトブレイカー!!」
一筋の光がヴァンデモンの腕を引き裂いた。
両者間の線を消された2人はそれぞれ後ろに吹っ飛ばされる。
片方の腕が、木を離れる枯れ葉のように辛うじて繋がっていた。
「く…嘘だっ!さっきまで、コウモリだけで全然動けなかったはず…!」
ヴァンデモンは、自身へと近づいてくる人物に向かって叫んだ。
直後、地響きがして振り返る。
そこには、腕に乗った張本人――KASが大きな黒い塊を玉乗りをするかのように転がしていた。
「俺を舐めてもらっては困る!KASの技術は世界一ィィィィ!!!」
「な、何なんですかあれ?」
「あれ…ただの黒じゃない」
「そう、コウモリや座薬を絡めてくれるまで大変だったよ」
「ざ、座薬って言うなあ~!」
「どういう事?あなたの攻撃も、あの玉も…」
萃香が悪戯っぽく笑う。
「お前は素早そうだから、少し密度を上げただけだ。お前を倒せればそれで…」
ミニ八卦炉をヴァンデモンに向け、気づいた。その笑った顔がそのまま引きつる。
――裂いたはずの腕が、いつの間にかくっついている。
「馬鹿だね。もう動けないと思ってた?」
その顔が満面の笑みを浮かべたと思った瞬間、萃香の体は空中にあった。
そのまま呼び出したコウモリによって地面に叩きつけられる。
間髪入れず巨大化した塊に乗ったKASが突っ込んでくる。
「このオカマァァア!!レムーと西瓜に何をするDAーッ!」
ヴァンデモンは振り返りざまに鉄塊鉈を突き刺し、そのまま押し潰そうとしていた塊は転がるのを止めた。
「だがこのKASはここだ!残念だったな…アッー!」
「もう…うるさいなぁ」
ハエのように空中を飛びながら体当たりをするKAS。
打ち落とすのは困難と判断して弾幕をばらまき、動きを制限した上で砲撃を浴びせた。
「さて、そろそろ観念してもらおうかな?夜は無敵である私に挑むのが間違いだったね」
『…イム。レイム!しっかりして下さい!』
その声で霊夢は目を開いた。
体が重く感じる。自分が自分じゃないように重く。
なぜ無事なんだろうと疑問に思ったが直後辺りに響く爆音で今の状況に気付き、それは置いておくことにする。
その音の後で落下する影。コウモリの群れを必死に払う萃香。
そして。
「ぐぎゃぎゃ!爽快ですねぇ!まさに計画☆通り!」
「こうなるって思わなかったあなた達が駄目だったね。私達が負けるとでも思っていたの?」
忌々しい吸血鬼の声と、それに相反する鬼の声。
「ああ、思ってるさ。だって、私達が負けるはずないからな」
ヴァンデモンが無表情のまま萃香を眺める。
「…へえ、よく言うよ。じゃああなたは今すぐ壊してあげる」
萃香の周りのコウモリが弾幕へと変わり、一斉に襲い掛かる。
至近距離での厚い弾幕がその小さな体を少しずつ焼いていく。
ヴァンデモンが魔力を集中させても動けないようだった。
「萃香、ダメ!早く逃げなさい!!」
思わず霊夢が叫ぶ。
「逃げる?無理無理!私の手に合わせて砲撃は動くんだよ!?」
「あなたはせいぜい仲間の最期でも拝んでいて下さいよ!」
また死ぬ?また一人、自分の前で?
「霊夢、心配しなくていい。お前は離れて…」
「ダメ!させない、そんなの…」
霊夢がふらつく体を抑え、立ち上がる。
レイジングハートを構え、魔力を集中しようとした。
しかし、そうすることはなかった。
その前に、萃香が紅い光に飲まれたから。
巻き上がる土埃、体がもっていかれそうなほどの衝撃、耳をつんざくような轟音が辺りを包んだ。
どれくらいの時間こうしていただろう。
霊夢はただ、その中心を見つめることしかできなかった。
「アハハハハ!!それみたことか!」
攻撃が終わり、舞い上がった葉や土ぼこりが晴れていく。
萃香がいた跡には、焼け焦げた腕が一本あるだけだった。
「…すい…萃、香……?」
「ふふ、次はあなたの番。たっぷり楽しみましょうか」
ヴァンデモンが地面のえぐられた爆心地へと足を進める。
満足した顔で残された腕を拾い、
「あれ?」
――それが萃香のものではないと気づいたが、その時にはもう遅かった。
「うりゃああああ!!」「YAHOOOOOOOO!!!」
背後からのダブルパンチ。
身体能力が人間より大きく上回る2人の拳をモロに受け、先程とは比にならない距離を吹っ飛んだ。
「ディバインバスター!!」
それに追撃するように霊夢の魔法が放たれる。
ヴァンデモンはホームランコンテスト記録を作れるくらいの距離を飛び、そのままお星様に…
「いや、そこまでは無理か…。じゃあこの後どうしてやろうか、KAS?」
「そりゃもう俺のオンステジー!!とりあえずボコボコにしてやんよ!」
「よろしい、ならばフルボッコだ」
「あ、あ、あんたたち…生きてるならそう言いなさいよ!馬鹿っ…!」
追い付いた霊夢も2人の元に加わる。
しばらくして、ヴァンデモンの体が細かく震え始めた。
「「「「フフフ…あはは…あはははは!!あ゛ぎゃぎゃぎャぎゃぎゃぎゃ!!!」」」」
3人は様子が変な事に気づき、再び攻撃体制をとる。
「こいつ…まだ暴れる気!?」
「ギャギャギャギャ!壊れろ…壊れろ!!私が負けるはずない…お前らはさっさと壊れろ!!」
2人に骨を砕かれたため、体がおかしな方向に曲がっている。
ヴァンダモンは笑いながら真紅のムチを辺り一面に振るい始めた。
「ブラッディストリーム!!」
血のように紅い光が所構わず周囲を焼き尽くしていく。当たった草の全てが灰に変わった。
目で捉えるよりも速く地面を駆ける、制限も知らないような光。
「あいつ暴走してるのか?!こんなのまともに当たったら…うわっ!」
「きゃっ!う、上よ!避難するしかないわ!」
「よし来た、任せろっていう!」
KASは萃香を抱え、無敵ジャンピングYAHOOOOOなどと叫びながら宙に舞う。霊夢も光を縫うようにして続く。
「そういえば、高度の制限は無いのかしら…」
何度も光のムチにかすり、ぶつかりそうになりながら、3人は高く上っていった。
■
「ハァ…ハァ…」
4つの人格の暴走が収まり、ヴァンデモンは気がつくと橋まで来ていた。
最初の目的のためではなく修復を求めたため。
エリアサーチで死体を見つけ、狂ったように掘り返す。
それは、レナが先刻埋めた2人と2匹の墓。
皆で脱出することを願い、犠牲になったこなたとピッピ、そして
コロネ。
最速で優勝することを誓い、あえなく散っていったTAS。
「右腕の修復を…魔力の修復を…」
まだ個々の感情があまり働いていない。
さっきの3人がどうなったのかも分からなかった。
東の山々から、僅かに光が漏れ出した。
【D-2 草原/二日目・黎明】
【ヴァンデモン【チューモン】】
[状態]:自我放棄、姑息さ上昇、右足切断(富竹の足移植済み。障害有り) 、右腕重症
魔力使用可能、目が赤い、情報改変可能、弾幕使用可能、ヤドリギの種(弱)使用可能
[装備]:ベレッタM92F(15/15)@現実、予備弾薬各100発@現実(ベレッタM92F用15発消費)、インテル@intelシリーズ
[道具]:支給品一式*3、RPG-7(残弾4)@GTASA富竹のカメラ@ひぐらしのなく頃に、AK74(17/30)@現実
スタンガン@ひぐらしのなく頃に ピッキング用針金、フィルム、富竹の首
[思考・状況]
基本1:埋まっている死体を食べて体を修復する。
基本2:デジヴァイスと、それを使える参加者を手に入れる。
基本3:日が昇るまで橋で待ち伏せし、ロールが支給品を持ってくるのを待つ。
基本4:参加者を混乱させる。
基本5:二人組みマーダーのパソコンのデータを食べたい
基本6:ハルヒという参加者に富竹の首を見せ、疑心暗鬼に陥らせる。
基本7: ソノザキシオンに名前の近い人を拷問にかける
基本8: あの女が、師匠。見つけたら殺す。
基本9:主催者に復讐したい。
総意:派手な争いをせずに、計略的に進化して、全参加者と主催者を拷問してから残虐に壊す。
あと、愛しの彼を蘇らせて、同様に壊す。
※予備弾薬各100発@現実の中には、デバイスのカートリッジも入っていました。
※チューモンの中の詩音は、自分が『ソノザキシオン』であると認知しています。
※ヴァンデモンになったことで、全能力が増大しました。夜だけならインフェルモン以上ですが、朝になると成熟期クラスに落ちます。
※能力の制限について大分理解しました。
※長門以外の人格は名前を知りました。切っ掛けがあれば各人格の「知識」を思い出す場合があります。
ただし、それが原因で本人そのもののようになることはありません。
※これ以上の進化には、デジヴァイスが必要です。
※それぞれの人格の感情が急激に強くなると暴走しやすくなるようです。
光のムチの攻撃をなんとかやり過ごし、あの吸血鬼は去っていった。
だがほっとしたのもつかの間、KASの羽マントの制限時間が切れ、空中から2人が消える。
「うわああああ!!落ち、落ち……ぐへぇっ!!!」
上にいる萃香は全身を打ち、下にいたKASが潰れる。
「こ、このKASにはまだ甲羅がある、死ぬと思っ…ぐふっ」
「ちょっと何やってるのよあんた達!関係ないところで怪我増やさないで!!」
少し待ち、萃香とKASがようやく起き上がる。
「ああ、痛たたた…まさか座薬があんなに効くとは」
「なんか別の意味に取れるからやめてくれない?そういえば、あんた達どうやって助かったの?」
KASが待ってましたとばかりに叫ぶ。
「KAS甲羅の技術は世界一ィィィィ!!ただ甲羅に潜っただけっていう!!ちょっとヒビ入ったけど!」
「……そう」
少しがっかりした霊夢だったが、とりあえず甲羅の丈夫さに関心することにした。
「私はギリギリさ!そう、もう、撃たれるまでぎッりぎり…」
「それは分かったから」
「こっちも能力を使ったまでだ。マネキンに意識が向くように密度を萃めて、自分は制限いっぱいに密度を薄くした。座薬とコウモリは手こずったけど」
見れば、萃香の体は傷だらけになっていた。弾幕を避けきれなかったらしい。
それはどうやらKASも同じだった。
才能を戦いに有効活用していたKAS、幻想郷最強クラスの力を持つ萃香、実質幻想郷を牛耳っている霊夢。
そんな3人がかりでも、それでもヴァンデモンの方が強い。
最後は逃げなければ確実に誰かが死んだ。勘じゃなくてもそう思った。
「って、私の服もボロボロなのね…レイジングハート、これ直せる?」
『了解しました』
もう魔力は大分使ってフラフラだったが、上半身の服が穴だらけでも困るので修復してもらう。
「じゃあ、これからどうする?ヴァンデモンのことはまた追いかけないといけないのが辛いわね」
「そうだ!ロルーちゃん!ノっちまったんだっけ?」
萃香がうつむいて頷く。
「そのことだけど…、私1人でロールのところに行かせてくれない?霊夢とKASはあの吸血鬼のこともあるし、城へ行って仲間に今までの事を伝えるべきだよ」
「だけど、萃香…。いくらあんたでも、そろそろへばってるんじゃないの?」
「…私も城には行こうと思ってたから、もしレナ達が城に着いてたら、私は遅れて来るって伝えてくれると嬉しい」
「…萃香?」
萃香が取り出したワインを飲み、ゆっくりと立ち上がる。
「霊夢、ロールは今どこらへんにいるか、探してくれないか?」
霊夢は咎めるような目で萃香を見つめていたが、しばらくしてやれやれと首を振り、エリアサーチを展開した。
「仕方ないわね、あんたも…」
3人は重苦しい表情で(※KASの表情は同じ)レイジングハートの言葉を聞く。
『ロールは…先ほどからそう離れていない町の中にいます。しかし、他の参加者と接触しているようです。もし、ヴァンデモンの"優勝に協力している"という言葉が事実なら…急ぐべきです』
「…そうか、ありがとう」
萃香はレイジングハートに礼を言い、2人の方向に向きなおる。
「じゃあ霊夢にKAS、ここで一旦お別れだ。また会えるのが一番だけどね」
「西瓜!本当に1人で行くのか!大丈夫か!!」
開口一番にKASが叫ぶ。
「これは私の責任であり意思だ。あいつと約束したからな。お前はロールのことは私に任せて、飛び回ってなよ」
「うーむ…よく分からないが分かった!お前は約束を守るエライ奴!なら俺とも約束汁!」
予想外の反応に一瞬萃香はたじろいだ。
「…約束?うん、いいけど…私は一度約束を破ったんだ。偉くなんか…
「もうシリアル禁止!お前は悩んでるより、さっきみたいに暴れてる方がグッディなはずだ!
いいか、これ約束な!俺はお前が約束守るって信じてるからな!!」
一方的に話し終わり、KASは寂しさを紛らわす為か辺りを激しく跳びはね始めた。
「シリアスじゃないのか…?まあ、分かった、ありがとう。…あれ、霊夢?」
気がつくと、すぐ横に霊夢が立っていた。表情は先程と全く変わっていない。
「…あなたも、行くのね」
「霊夢?」
「私は、また仲間を見殺しにするのかもしれない…」
KASとは対照的に、霊夢は沈んでいた。
ヨッシーを死なせてしまったことへの責任感を未だ引きずっているようだった。
「なんだい?楽園の暢気な巫女さんがそんな調子でどうするのさ。妖精にもやられそうな顔してるよ?」
「あんたねぇ、私はあんたを心配して…」
「私は心配いらないって。それより、これ…預かっててくれない?」
デイパックから取り出したのは長方形の薄い機械。この世界で言えばノートパソコンという名前なのだが、霊夢はそれを知る由も無く首を傾げた。
「何これ?霖之助さんが同じようなもの持ってたわね」
「のーとぱそこんっていうらしいよ。あれにも書いてあった"ニコニコ動画"って所に繋がるんだ。阿部やなのはの動画を見たよ。私が持っていてもしょうがないし、役に立てればいいけど」
「…それって重要なものじゃないの?何で今まで言わなかったのよ!」
「いや、色々あったからなぁ…。あと充電しないと動かないっぽいからそこらへんも頼んだよ」
「う~ん、面倒なのねぇ。分かったわ。必ず役に立てる」
あの船でなら充電できるかしら、と呟きながら、霊夢はノートパソコンをデイパックの中へ入れた。
「うん、それと…」
萃香は霊夢がデイパックを閉じるのを見ながら、彼女の目の前に近づく。
「あんたの能力は完全に制限されていると思う?」
霊夢は二、三度目を瞬かせる。
「え……?」
「"空を飛ぶ"程度のことは制限されてるって分かる。でも、今の霊夢は霊夢らしくないんだ」
「さっきも言ってたわね。あの時はヨッシーのことがあったから、おかしくなっただけよ」
「ヨッシーの責任を重く感じている。ヴァンデモンを退治することが重荷になってる」
今まではそれがなかったから、霊夢でいられた?
「…確かにそれはそうよ。で、あんたは私が私じゃないと言いたいわけ?」
「霊夢の能力は目の見えないところにもあるはずなんだ。私がストーカーしてたから分かる」
「どさくさに紛れて何言ってるのよ」
萃香が霊夢を強く見つめた。
「変わるっていうのは、いいことでも悪いことでもあると思う。霊夢は誰にも縛られないと思ってたけど…。でも、霊夢であることを忘れないで欲しい。冷たい言い方だけど、そうすれば迷わずに生きれるように思う」
そして、そのまま町に向かって歩き出す。
「待って、どういうこと?ねえ、萃香?」
霊夢は萃香の言いたいことが少し分かっていた。でも理解するのをどこかで拒んだ。
他人を他人と割り切る。つまり、ヨッシーのことを仕方ないこととして割り切る。
幻想郷で誰の重さも受けずに暮らしていた霊夢は、好かれていながらも誰も仲間だと思った時はなかった。
ここに放り込まれて、一日だけだったけれど一緒に苦楽を共にしたヨッシーは、自分を助けて死んだ仲間だった。
だから、あの戦いでも焦っていたのだろう。霊夢もまた、自分の心の変化に戸惑っていたから。
「KAS、行くわよ」
「レムー?何か悩んでいたっぽいけど大丈夫なのか?」
まだ答えは出せない。しかし、時間は待っていてくれない。
萃香を見送っていたKASを呼び、2人は橋へと歩き出した。
【D-3 草原/二日目・黎明】
【
博麗霊夢@東方project】
[状態]:疲労中、迷い、全身を打って痛い、バリアジャケットの腋部分破損、魔力消費大、すこし眠い、血霧の巫女
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、巫女風バリアジャケット@巫女みこナース、ワルサー カンプピストル@現実(1/1)(26.6mm信号弾残り6発)
[道具]:支給品一式(パンは一個だけ)、
YOKODUNAの支給品一式*4(水食料全消費)、フリップフラップ@ニコニコキッチン、ノートパソコン(バッテリーほぼ消耗)@現実
首輪、ドリル@ミスタードリラー、 博麗アミュレット(120/200)、メモ用紙(10/10)、魔理沙の帽子、ドリルアーム、
気合の鉢巻き@ポケットモンスター、クマ吉の手錠@ギャグマンガ日和、ドアラの着ぐるみ@ドアラ動画シリーズ、
全自動卵割機@サザエさん、億千万の思い出@現実、キーボードクラッシャーの音声(の入ったiPod)@キーボードクラッシャー、萃香の角*2
[思考・状況]
1.ヴァンデモンを殺す。城が気になる。
2.とりあえず萃香を信用。
3.城に帰って寝る。お風呂にも入りたいな
4. Niceboat.の探索
5.怪しい人には無理のない程度に接触、無害なら適当に交渉
6.今回の事件の解決(主催者の打倒)
7.クロスミラージュを調べたい。
※ジープ@ヤンマーニは大破しました。民家に突っ込んでいます。
※ヨッシー、富竹、クロミラの事を変態だと認識しました。
※船橋前の通路には霊夢の張った結界があります。
物理的な効果はありませんが、船内でのみ、霊夢はそこを何かが通ったことを知ることができます。
※霊夢はカイバーマンたちと情報交換をしました。霊夢は大方把握しています。
※Niceboat.後方甲板にはまだ何かがあるみたいです。
※二枚のメモの内容を把握しました。搭組のメモには、予想も含む情報が書き連ねてあります。
※萃香側の情報を大まかに把握しました。
【伊吹萃香@東方Project(つるぺったん)】
[状態]:精神的疲労、いたるところに火傷と切り傷、角がない、体力中回復、妖力小回復、魔力中回復、機動六課代行、シリアル禁止令
[装備]:ミニ八卦炉@東方project
[道具]:支給品一式*3(食料1食分、水2食分消費)、ワイン(残り半分)、傘@現実
A.C.E.3@現実(少し詩音の血がついている)、DMカード(エネミーコントローラー、融合)、塔組の推理メモ、塔の『バグ』について纏めた紙 、バルサミコ酢@らき☆すた、グルメテーブルかけ(残り19回)@
ドラえもん
[思考・状況]
1.ロールを探して説得する。(城へは必ず向かいたい)
2.霊夢に信じてもらえたけど、角を折るのは、やりすぎたかなぁ
3.機動六課の意地とやらを、自分なりに考えて主催者にぶつける。
4.つるぺた保護。
5.阿部のことは・・・あいつなら無事だろうから保留。
6.巨乳死すべし?
7.せっかくなので腕試し。主催者と戦いたい
8.貧乳はステータスだ!希少価値だ!
※巨乳に対する絶対的悪意が薄れつつあります。
※自分の心境の変化は、なのはのリンカーコアを取り込んだ影響だと思っています。真偽はわかりません。
※リンカーコアの黒い部分によって、なのはの性格が変わっていたのではと推測しました。真偽はわかりません。
※塔組と情報交換しました。 KASの情報は、海馬の名前しか知りません。
※二枚のメモの内容を把握しました。搭組のメモには、予想も含む情報が書き連ねてあります。
※霊夢側の情報を大まかに把握しました。
【KAS@KAS動画】
[状態]:甲羅マリオ(甲羅にヒビ)、右拳骨にヒビ、お尻に火傷、全身に切り傷、鍵でハイテンション、 強い決意と熱い闘志(?)
[装備]:スパイダーブレスレット@東映版
スパイダーマン、バーサーカーソウル@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
[道具]:支給品一式*2(水全消費、食料は
ニートのもの)、ケンジのカメラ@ポケットモンスター、黄色甲羅@スーパーマリオシリーズ
うまい棒、津田英治ブロマイド(音声付き)@大変な途中下車シリーズ、ビー玉(30個ほど)@ピタゴラスイッチ、
秘密の鍵@スーパーマリオワールド、マント羽根*1@スーパーマリオワールド
[思考・状況]
1.でっでいうを殺した大馬鹿野朗を倒す!でも早く海馬達の所に行ってバグの事を色々教えてやりたい
2.ロルーちゃんと萃香が心配
3.主催者をぶっ飛ばす前にTASと決着をつけたい
4.あいつ(谷口)の死の責任を取る!!
5.このカード、あいつの仲間に渡したいけどどいつが仲間なんだろ?
6.このクソゲーをぶち壊してボスのスットコドッコイを倒して土下座させて
悪い奴以外全員生き返らせるぜ!!!!
※青甲羅を着ました。体型はスーパーマリオに戻っています。
※放送により、ニコニコ動画に関する記憶が徐々に戻ってきています。
※二枚のメモの内容を把握しましたが、よくわかってません。搭組のメモには、予想も含む情報が書き連ねてあります。
※D-4の草原に、鉄塊鉈と元の大きさの塊が落ちています。ブラッディストリームで吹き飛ばされました。
最終更新:2010年03月18日 12:01