全並行世界ナイトメア(後編) ◆CMd1jz6iP2
「……ごめんね、こなちゃん」
ヴァンデモンを退けた後、
たいやきをモンスタボールに戻したところで、つかさは倒れた。
ヤンマーニのBGMは、銃の本来の持ち主である、マドラックスと同様、その当たらない特性を使用者に与える。
だが、マドラックスと違い、普通に「存在」する人間には肉体の酷使だけではなく、精神にも負荷が高すぎたのだ。
それでも、這いずりながらこなたの元へとたどり着いた。
鬼狩柳桜の一閃は、こなたを吹き飛ばすことはなかったが、土塗れになっていた。
「こんなに汚れちゃって……もっとうまくやれなくてごめんね、こなちゃん」
こなたの顔に付いた土を落とす。その顔は、魅音同様に安らかなものだった。
「私は、幸せ者だよ……生きて会えなかったけど……出会うことは、できた」
話したかった。抱きしめあいたかった。一緒に泣きたかった。
それはもう、二度と出来ないけれど。
親友の永遠の眠りを、守ることは出来たと、安堵しかけたとき。
誰かが、駆けてきた。
(一人じゃ、ない?)
こなちゃんを守らないと。そう思い、刀を握る。
「あ、あれ?」
鬼狩柳桜は、いつの間にか鞘に収められている。
BGMが終わったためなのか。もう、つかさに抜くことは出来なかった。
ならば、銃をとSIGP210を取り出すが、持ち上がらなかった。
「う……ぅぅぅ~……!」
つかさに、残された力など一片もなかった。
歩くことも、立つことも。引き金を引く握力も残されてはいない。
(ごめんなさい。こなちゃん、私はこなちゃんを守りきれなかったよ)
「おい、レムー! 誰かいるぞ!」
そのつかさの嘆きは、抜けた声が当然のように破った。いつものことである。
「これは……ヴァンデモンの仕業ね」
霊夢と
KASは、掘り起こされた穴を見て何があったか理解する。
ヴァンデモンが墓を荒らしたのだと。死者を冒涜した後だと。
「しっかり、まだ生きてるわね……って、嘘、諏訪子!?」
「あな、たは?」
「――なんだ、帽子だけか。私は
博麗霊夢、あっちはKAS。ヴァンデモンをぶっ殺すために追ってきたの。あいつは、どこ?」
「……あ、嘘……」
つかさのディパックも、あいつのディパックも、焦げたものが地面に転がっている。
特に、ヴァンデモンのディパックはほとんど溶けている。なのに死体はない。燃え尽きたのではないとしたら。
「にげら、れたの?」
ボロボロと、涙がこぼれる。このままでは、またこなちゃんを食べにくるに違いない。
「逃げられたって……まさか、戦って追い払ったの?」
ボロボロだったとはいえ、とんでもない強さを誇るヴァンデモンを、この少女が追い払ったとは信じられない。
しかも、倒したつもりだったようだ。
「食べられちゃう……このままじゃ、こなちゃんが」
「そうだなぁ。ほかの死体があったっぽいけど、全部残っちゃいねーし」
――
KASは、食われたのがTASだと、気が付かなかった。
それほどまでに、跡形もなかったし、KASは
TASが死んでいるなど微塵も思っていなかった。
「……この子は、あなたの知り合い?」
「友達……私の、大切な……ずっと、会いたかった」
つまり、ここにこの少女を埋めたのは彼女ではないらしい。
わざわざ埋めたということは、おそらくは、仲間だろう。
「まさか、この子」
『この容姿からして、萃香の言っていたつるぺ――ゴホン。ティアナやレナの仲間の一人ではないでしょうか』
唇を噛む。萃香の言っていた脱出派の仲間は、壊滅の危機にあったのだ。
「レナ?」
つかさが、その名前に……魅音の仲間の名に反応する。
「あなた、レナの仲間?」
「違う、違うよ、わ……わたしは……」
つかさの世界は、暗転する。
霊夢やKASの顔が逆さまに、セカイが逆さまになる中、言葉を紡ぐ。
「彼女の……」
動かなくなったつかさに驚いた霊夢だったが、気絶していただけだった。
「気を失ってる……顔色も悪いし、早く休ませないと危険かもしれないわ」
「最後、何か言ってなかったか?」
「仲間じゃない、の後は聞き取れなかったけど……なら、敵?」
『錯乱していただけかもしれませんが……武器類は没収しておきましょう』
彼女を悪人とは思えないが、信用に値するかは疑わしい以上仕方がない。
「この遺体も運びましょう。ヴァンデモンがまだ生きているなら、彼女の言うとおり、食べられてしまうかもしれない」
あの悪食妖怪に、これ以上人を食わせてやるものか。
「これから人食い妖怪とうまく付き合ってく自信……なくなりそうよ」
ヴァンデモンを倒したいところだが、この少女を連れては戦えない。
それに、ここまで来た以上、城の様子がどうしても気になったのだ。
二人分の支給品とこなたの遺体を、KASが運ぶことになった。霊夢はつかさを担ぐ。
その帽子が気になった。間違いなく、これは幻想郷にやってきた新しい神、「土着神の頂点」洩矢諏訪子の帽子。
これも支給品なのかと聞きたかったのだが、気を失ってはしかたない。霊夢はあまり気にせず歩を進めようとした。
「Uwaaaaa!!!」
KASの叫び声が木霊する。
「KAS、少し静か、に……!?」
ヴァンデモンのディパックから……信じられないものが出てきていた。
「富竹……」
富竹の、生首。
姿が見えないとは思っていたが……やはり、ヴァンデモンに殺されていたのだ。
「ど、どうするレムー」
「……その子の死体だけでも十分怪しいのに、そんな物は持ち歩けないわ。ここに埋めていきましょう」
「いいのか? あのオカマ野朗に食われちまうかもしれないぞ?」
一瞬間をおき、霊夢が応える。
「――これは私が決めたことよ。KASは気にすることも、罪悪感を持つこともないわ」
「わかったよ。でも……一番悪いのはオカマ野朗だ。霊夢もシリアルになりすぎるなよ」
KASが、掘り起こされた穴に、富竹の首を埋める。
「うーん、グロにも耐性ができてきたっていう」
「……行きましょう、KAS」
荷物を纏め、KASはこなたを背負って後に続く。
「……なんでだろうな。この子とは、仲良くなれた気がするぜ」
歩きながら、KASはつぶやく。
「きっと、何か趣味とかがあってたような……ふっ、俺としたことが難しいことオプーナッ!」
橋に差し掛かったところで、KASがこけた。
「ちょっと! 何して……ごめん、ちょっと多いわね支給品。半分持つ?」
「いや、平気だ。ちょっと橋の欠けた所に足引っ掛けただけだ。……ごめんよ、こなたん、化けて出ないでくれよ!」
支給品がいくつかころがる。宝石みたいな物、笛、カード……
「やべーやべー。このカードはあいつの仲間に渡さないといけないからな」
全部拾い、笛を見つめる。
「……これは?」
見覚えが、いや、この笛による音色を、どこかで聞いたはずだというデジャヴ。
「KAS、急ぎましょう。彼女、熱もあるかも……城で休ませてあげないと」
「お、おう!」
笛をしまい、こなたを背負いなおす。
二人は橋を越えて、城を目指した。
その二人の疲労も少なくはなかったため、あるミスを犯していた。
霊夢は、エリアサーチをせず、とにかくこの場を離れることを優先したこと。
KASは、拾ったカードが、バーサーカーソウルではなく、光の護封剣だと気づかなかったこと。
【D-2 道路/二日目・黎明】
【博麗霊夢@東方project】
[状態]:疲労中、迷い、全身を打って痛い、バリアジャケットの腋部分破損、魔力消費大、すこし眠い、血霧の巫女、つかさを背負っている
[装備]:レイジングハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、巫女風バリアジャケット@巫女みこナース、ワルサー カンプピストル@現実(1/1)(26.6mm信号弾残り6発)
[道具]:支給品一式(パンは一個だけ)、
YOKODUNAの支給品一式*4(水食料全消費)、フリップフラップ@ニコニコキッチン、ノートパソコン(バッテリーほぼ消耗)@現実
首輪、ドリル@ミスタードリラー、 博麗アミュレット(120/200)、メモ用紙(10/10)、魔理沙の帽子、ドリルアーム、
気合の鉢巻き@ポケットモンスター、クマ吉の手錠@ギャグマンガ日和、ドアラの着ぐるみ@ドアラ動画シリーズ、
全自動卵割機@サザエさん、億千万の思い出@現実、キーボードクラッシャーの音声(の入ったiPod)@キーボードクラッシャー、萃香の角*2
[思考・状況]
1.つかさを連れて城へ。ヴァンデモンは見つけたら殺す。
2.とりあえず萃香を信用。
3.城に帰って寝る。お風呂にも入りたいな
4.Niceboat.の探索
5.怪しい人には無理のない程度に接触、無害なら適当に交渉
6.今回の事件の解決(主催者の打倒)
7.クロスミラージュを調べたい。
8.つかさが自分にとって敵か知りたい。洩矢諏訪子の帽子が気になる。
※ジープ@ヤンマーニは大破しました。民家に突っ込んでいます。
※クロミラの事を変態だと認識しました。
※船橋前の通路には霊夢の張った結界があります。
物理的な効果はありませんが、船内でのみ、霊夢はそこを何かが通ったことを知ることができます。
※霊夢はカイバーマンたちと情報交換をしました。霊夢は大方把握しています。
※Niceboat.後方甲板にはまだ何かがあるみたいです。
※二枚のメモの内容を把握しました。搭組のメモには、予想も含む情報が書き連ねてあります。
※萃香側の情報を大まかに把握しました。
※搭組が何人か死んでいることを知りました。
【KAS@KAS動画】
[状態]:甲羅マリオ(甲羅にヒビ)、右拳骨にヒビ、お尻に火傷、全身に切り傷、鍵でハイテンション、 強い決意と熱い闘志(?)
[装備]:スパイダーブレスレット@東映版
スパイダーマン
[道具]:支給品一式*9(食事三食分消費、水五食分消費)、ケンジのカメラ@ポケットモンスター、
うまい棒、津田英治ブロマイド(音声付き)@大変な途中下車シリーズ、ビー玉(30個ほど)@ピタゴラスイッチ、
秘密の鍵@スーパーマリオワールド、マント羽根*1@スーパーマリオワールド、黄色甲羅@スーパーマリオシリーズ
RPG-7(残弾4)@GTASA富竹のカメラ@ひぐらしのなく頃に、AK74(17/30)@現実
スタンガン@ひぐらしのなく頃に ピッキング用針金、フィルム、ジェバンニ@デスノート?
ピーピーマックス*2@ポケットモンスター、Fooさんの笛@ニコニコ動画(γ)
光の護封剣@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ(使用可)、 宝石みたいな物@呪いの館
ウィンチェスター M1895/Winchester M1895 (狙撃銃、残弾1)@現実、クレイモア地雷@おじいちゃんの地球防衛軍(残り3)
無限刃@るろうに剣心(フタエノキワミ アッー!)、 きしめん@Nursery Rhyme、
たいやき(残りHP50%)@ポケモン金コイキングだけでクリアに挑戦、SIG P210(残弾1)@MADLAX
鬼狩柳桜@ひぐらしのなく頃に、10円玉@現実?、札束(1円札百枚)、琴姫の髪、iPod@現実(【残り17時間】)
[思考・状況]
1.こなたんを食われない場所に埋葬してやらないとな。
2.でっでいうを殺した大馬鹿野朗を倒す!でも早く海馬達の所に行ってバグの事を色々教えてやりたい
3.ロルーちゃんと萃香が心配
4.主催者をぶっ飛ばす前にTASと決着をつけたい
5.あいつ(谷口)の死の責任を取る!!
6.このカード、あいつの仲間に渡したいけどどいつが仲間なんだろ?
7.このクソゲーをぶち壊してボスのスットコドッコイを倒して土下座させて
悪い奴以外全員生き返らせるぜ!!!!
8.ちょっとアイテム多いな。さすがに使いこなせんし、カイバーたちに分けてやらんと。
9.笛が気になる。
※青甲羅を着ました。体型はスーパーマリオに戻っています。
※放送により、ニコニコ動画に関する記憶が徐々に戻ってきています。
※二枚のメモの内容を把握しましたが、よくわかってません。搭組のメモには、予想も含む情報が書き連ねてあります。
【柊つかさ@らき☆すた】
[状態]:全身に軽い打撲、手のひらを怪我、罪を認める、死にかねないほどの疲労、熱がある、気絶
[装備]:飛行石のペンダント@天空の城ラピュタ
[道具]:なし
[思考・状況]
第一行動方針:気絶中。
第二行動方針:春香を探して謝罪する。結果、殺されても構わない。
第三行動方針:こなたの死体をバケモノに食べさせたりしない。
第四行動方針:魅音を殺したことをレナに伝える。
※琴姫の髪をかがみのものだと思っています。
※ヤンマーニBGM+SIG P210によるヤンマーニモードは、肉体、精神に膨大な疲労を残します。
※ヤンマーニBGM+SIG P210による覚醒中のみ、鬼狩柳桜が抜けました。
他の人にも抜けますが、本来の抜く方法ではないためか、BGM終了後、人知れず鞘に戻っています。
「KAS、急ぎましょう。彼女、熱もあるかも……城で休ませてあげないと」
「お、おう!」
(ああ、いや、どうして、どうして! 行かないで、私を助けてよ!)
KASが転んだ橋の下。
そこに、ヴァンデモンは潜んでいた。
鬼狩柳桜の一撃の後、ヴァンデモンは命からがら川に飛び込んだ。
「ひ――」
ここに、誰かいたことなどエリアサーチした時気が付いていた。
怪我をしていたことと、向こうが手を出してこないことから後で対処しようと思っていたのだ。
逃げようとしたハルヒは、川から飛び出したヴァンデモンに地面に叩きつけられ、脅された。
「声を出してみなよ。惨たらしく殺してやる」
ハルヒは、どうしてあの時勇気を出して町に行かなかったのか悔やんだ。
悔やんで、悔やんで、悔やんで悔やんで……憎んだ
(どうして、正義の味方の私がこんな目にあうのよ!)
理不尽だ、狂ってる、マチガッテル。世界は、私の思うとおりに動かないといけないのに。
私こそが世界の中心、私の気に入らないものこそが悪なのに。
ああ、それならこのバケモノを倒したであろう女こそ悪だ。
この私が助けられないのに、あの女だけが助けられた。とんでもない過ちだ、間違いだ。許されるはずがない。
憎んで、憎んで、憎んで、憎んで、憎んで……狂い始めた歯車は、戻らない位置にずれてしまった。
(そうよ。正義である私が、本来こんな酷い目に遭うはずがないじゃない)
あの女は神を敬わぬ愚か者、世界の塵以下の害悪だ。
あの女の余計な行動が、今の状況を招いたに決まっている。神に背いたのだ。
(そう――私は神だもの)
古泉君は語った私の能力は、まさに神そのもの。
それが封印されているなんて言っていたが、それは間違いだ。
世界は私の思うがままに動いている。それに抗う者こそ出ているが、それを駆逐しようと願えば、死んでいくに違いない。
これは正しいこと。だって、
八意永琳も私は狂っていないと言ったではないか。
(能力はまだ生きている。こんな酷い目に遭っても、私が有利になるように進んでいるのよ)
現にほら。
「行ったようだな」
最後の一撃で、ヴァンデモンの全身は焼け焦げていた。
完全に枯渇したヴァンデモンの魔力に、レイジングハートも気が付くことはなかった。
余力の無さゆえに、エリアサーチをされなかったがために、生きながらえたのだった。
「くふっ……ひひひ……あはははは……!」
「うん?」
組み伏せていた女が、狂ったように笑う。いや、狂ったのか?
「無様だな、安心しなさい。すぐに食べてあげるから」
「――馬鹿ね。あんたは私を必要としているはずよ」
「なに――?」
この女、私の目的を知っている?
「私を、進化させられるというの?」
「進化? ああ、そう、そんなことがしたいの。それは知らなかったけど、私に出来ないことなんてないわ」
拘束を解く。一応、銃を頭に突きつけておく。
「神に向かって無礼よ。まったく……ああ、やっぱり、間違いないわ」
何かを拾ったのを奪い取る。危険な支給品かもしれない。
「別にいいわ。その裏に書いてあること、読もうと思っただけだから」
そのカード……KASが転んだ際に落とした「バーサーカーソウル」。その裏に、血の文字が書いてある。
「……『ジョンスミスはポニテ萌えの人』……なに、これ?」
「……これは」
人格の一つが、反応した。これは、何の意味がある?
「あら、その声は有希じゃない。どうしたの、そんな姿で。それが長門有希の宇宙人としての本当の姿なのかしら?」
「長門有希……ああ、それが私の名前」
「くひひ……まぁ、そんなことはどうでもいいわ。あなたが有希だろうと違おうと、関係なんかないもの」
狂っているようで、急に態度がでかくなったハルヒ。殺すべきか迷う。
「私を知らないようだから教えてあげるわ。私の名前は
涼宮ハルヒ。とある世界の神よ」
「涼宮ハルヒ……愛しいあの人を奪う、邪魔者!」
「あっ、有希ったら
キョンが好きだったの? ごめんね、知らなかった。生き返らせたら、あなた用にもう一人作ってあげてもいいわよ?」
ニタニタ笑うハルヒに、長門の人格は暴走寸前だが、それを他の人格で抑える。
「キョンが、愛しいあの人の、名前……」
「でも、ジョン・スミスはキョンだったんだもの。まったくもう、キョンったら教えてくれればいいのに」
あの七夕の日、ジョン・スミスと名乗ったのはキョンだったのだ。
似ていると思った。間違いない。いや、間違いなら、そう塗り替えてしまえばいい。
「ポニテ萌えだって言ってたもの。そうに違いない、そうでなくてもそうなるの!
ああ、きっとキョンも私に力のことを知らせたかったのね。私に、神として自覚せよと言いたかったのよ!」
ハルヒの思考のおかしさに、ヴァンデモンは気が付く。
ハルヒは結果を断定してから後付で理由をつけている……完全なこじつけだ。
「あ、私を狂ってると思ってるわね。でもこれこそが正しいの。今は、力を制限されているけどね!
本当なら、私が思ったことが世界を作るんだから。制限のせいで、全てはうまく行かないのよ」
「たしかに……そういう力、だったような」
長門の知識に残るハルヒの力は、たしかにそういった万能の力だった。
「そうね……私の願い通りなら、あなたは私が喜ぶものを持っていたはずよ」
「喜ぶ、もの?」
ハルヒに、銃を突きつけたまま橋の下から出る。
「……ほぅら、あったじゃない」
先ほどTASが埋まっていた場所から、掘り出したのは、富竹の首。
「無様ねえ。苦悶の表情で死んでるわ! 神に逆らった愚か者の末路よ!」
面白そうに笑うハルヒを見て……ヴァンデモンは銃を降ろした。
「あら、いいの? 別に、銃を突きつけたままでも怒らないわよ、私」
「その能力が本当でも嘘でも……どうやら、信用には値する人間のようだからね」
「それはどうも。神に従うのは当然とはいえ、良い判断ね」
富竹の首を、ヴァンデモンに投げ渡す。
「見飽きたわ。さっさと食べてしまいなさい」
「言われずとも」
その食事シーンを、ハルヒは笑いながら見た。とてもユカイだった。
「こんなに世界は楽しいのに……ああ、腹が立つ。あの巫女みたいな女に助けられた、あの女。
あの制服は……あれが柊つかさね。人殺しに、なんで助けなんか来るの? あいつらは悪、神に逆らう悪よ。」
「……同感だよ」
「……グギャギャギャギャ、本当に……糞以下のデータしか持たないくせに……よくも私が殺すはずのお姉を!」
二人の心が、重なる。
それに呼応するかのように……つかさから奪ったデジヴァイスが、光り輝く。
「なに、それは?」
「これこそ、デジヴァイス。この夜にしか生きられぬ弱き私を、真の魔王へと変える道具」
「それには、あなたの力が必要」
デジヴァイスを掴み、醜悪に笑う。
「そう、魔王。そう、仕方ないのよね。面白い世界には、大いなる闇が必要なんだもの。
私が正義であるために、悪たるあなたが必要なんだもの」
「正義であるために、悪を必要とする……矛盾だね」
「ええ。その役は、ピエロやレナたちが担っているけど、全てを倒してしまったら、正義を示す敵がいなくなってしまうじゃない」
自分の能力を聞いてから……驕っていた何かがハルヒの中で弾けていた。
自分は特別なのだと、古泉は言った。人を生き返らせることも出来る、神のごとき力だと。
そんな自分が、なぜ体よく利用されなくてはいけないのか。
古泉と永琳にも、今後の態度を改めてもらわなければならない。
これまでのハルヒの言は、完全なデタラメだった。たまたまの偶然が重なっただけで、彼女の能力は制限されたまま。
今、デジヴァイスが輝いているのは、つかさへの憎しみの心が重なったために過ぎない。
真が、
ゴマモンを魔王に進化させたときと、同じように。
それに気づかず、驕れる神は自分に酔い続けた。
「必要悪。世界が面白く在り続けるには、正義と拮抗するだけの悪が必要なのよ! そういう意味では、あの女も必要な存在よね」
「なら――元の力が戻れば、私を更に進化させてくれるの?」
「もちろんよ。神の敵に相応しい、同等の力を持つ魔神へと変えてあげる! あなたという悪が、全次元全世界に轟くほどに!」
正義の味方は、悪がいて初めて存在できる。創造主たる彼女は、それを出来レースとして操ることすら可能なのだ。
「貴方が世界に恐怖を刻み付けるほどに、私は永遠の信仰を、永遠に称えられる神となれるの!
――私はここにいる! 私は、全ての世界の……絶対神となるの!」
「面白い。最高だよ、本当に……あなたこそ、神に相応しい器だよ!」
七夕の日、自分を世界に刻もうと思った純粋な願いは、デジヴァイスの光のように、暗い輝きへと変える。
ここに。
とある世界の創造主は、全ての世界を滅ぼす魔王を産み落とそうとしていた。
【D-3 草原/二日目・黎明】
【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:神への目覚め、左肩に銃創、左脇腹と顔面と首に殴られた傷、腕から出血、脇腹に弾丸がかすった傷、古泉達を信頼、鎮痛剤服用、
[装備]:陵桜学園の制服@らき☆すた、包丁、 DCS-8sp、デジヴァイス@デジモンアドベンチャー、バーサーカーソウル@遊☆戯☆王デュエルモンスターズ
[道具]:支給品一式*2、びしょ濡れの北高の制服@涼宮ハルヒの憂鬱、テニスボール
アニマルマスク・サラブレット@現実、ゾンビマスク@現実(ゾンビーズ)
毒入りパン、小型爆弾*2
[思考・状況]
1.主催者を殺し、全世界に名を残す絶対神となる。
2.神に逆らう塔組、つかさとその仲間などを殺す。
3.今回の顛末を捏造を混ぜつつ古泉達に報告して、今後協力ではなく忠誠を誓ってもらう。
4.皆を蘇らせるために協力者を探す
5.優勝して全てを元通りにする。神である私が絶対である世界に。
6.能力が復活したら、世界の破滅を救う神として、すべての世界に名を残す。
その際、世界を破滅に導くため、ヴァンデモンを更に強化する。
※
第三回定時放送をほとんど聞いていません。死亡者の人数のみ把握しました。
※自分の服装が、かがみを勘違いさせたことを知りました
※狂いました。それを自覚していません。
※喋れる様になりました。
※自分の能力を信じました。
僅かに能力が働いていて、世界は思うがままに進みやすくなっていると信じていますが、完全な勘違いです。
【ヴァンデモン【チューモン】】
[状態]:自我放棄、姑息さ上昇、右足切断(富竹の足移植済み。障害有り) 、右腕重症、全身大火傷、左目失明
魔力使用可能、目が赤い、情報改変可能、弾幕使用可能、ヤドリギの種(弱)使用可能
[装備]:ベレッタM92F(5/15)@現実、予備弾薬各100発@現実(ベレッタM92F用15発消費)、インテル@intelシリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本1:究極体に進化だ!
基本2:ハルヒを可能な限り助ける。
基本3:つかさと、霊夢たちを殺す。
基本4:日が昇るまで橋で待ち伏せし、ロールが支給品を持ってくるのを待つ。
基本5:参加者を混乱させる。
基本6: あの女が、師匠。見つけたら殺す。
基本7:主催者に復讐したい。
総意:派手な争いをせずに、計略的に進化して、全参加者と主催者を拷問してから残虐に壊す。
あと、キョンを蘇らせて、同様に壊す。
※予備弾薬各100発@現実の中には、デバイスのカートリッジも入っていました。
※チューモンの中の詩音は、自分が『ソノザキシオン』であると認知しています。
※ヴァンデモンになったことで、全能力が増大しました。夜だけならインフェルモン以上ですが、朝になると成熟期クラスに落ちます。
※能力の制限について大分理解しました。
※すべての人格は名前を知りました。切っ掛けがあれば各人格の「知識」を思い出す場合があります。
ただし、それが原因で本人そのもののようになることはありません。
※これ以上の進化には、デジヴァイスが必要です。
※それぞれの人格の感情が急激に強くなると暴走しやすくなるようです。
※ハルヒと感情がシンクロした結果、進化が可能となりました。彼女と行動を共にすることで究極体を維持できます。
肉体ダメージは進化によって回復します。何に進化するかは次の書き手に任せます。
大ダメージを受けると退化してしまう可能性があります。
※D-3の草原に墓が荒らされている形跡が残っています。
最終更新:2010年03月18日 12:01