辺り一面を幾本もの木々に囲まれた屋敷の中に彼らはいた。
西洋風屋敷の中の彼らは明らかに異質を匂わしている。
「麗」と呼ばれる戦闘集団に属す彼らは
主流戦力として、火影忍軍という名の忍者集団が造り上げた「魔道具」を使い、
さながら現代の忍としてこの世に存在していた。

その長、紅麗は部屋の端にある椅子に腰掛けながら、外の窓を眺めていた。
その様子は悠然、余裕、冷淡、憎悪、憤怒……
どれと表していいのか分からず、感情を決して表に出さない彼の仮面の奥の表情は、誰にも悟られることはなかった。

「紅麗様ッ!いったいこれは…!?」
「この儂にすら理解できん、どういうことじゃ…」

ある二人が紅麗に話かけた。
一人はキリッとした目付きをしている気の強そうな女性。
もう一人は異様な雰囲気を全身から放つ小柄な老人だった。

「……音遠、何を慌てている?
確かに少々驚くことはあったが、何も恐れることはない。
我々の力を使えば、こんなくだらない戦いはすぐに終わる…」

「し、しかし紅麗様、私たちは何故こんな所に…!?
いったい何の目的があって忍同士の殺し合いを?」

「ふん、所詮自分の手にした力に溺れた阿呆の児戯にすぎん。
もしくは殺人による快楽を楽しむクズのどちらかだ。
それに我々がこの殺し合いで生き残れば、おのずと知れることよ。」
「了解致しましたッ!」

(そうだ、何も迷うことはない!
この音遠、紅麗様の為に全身全霊をかけて尽すのみ!)


相も変わらず淡々とした様子で椅子に手を掛け、紅麗はその場に腰かけていた。

「つまり人を殺せ、ということですね?」

黒い長髪をなびかせ全身を忍衣に纏った、いかにもな忍と呼べる優男が語りだした。

「どうした雷覇…、殺人を拒むか…?」
「いえ、それが命とあれば私は紅麗様の刀となりましょう。
私の命は紅麗様と共にあるのですから。
しかしこれだけは言わせて下さい。
私はか弱き者には決して手を出しません」
「……好きにしろ。だがな、そのか弱き者にも手を下さねば
我々が生き残ることは出来ないということを忘れるなよ…」
「……!、承知…しました…」

二人の掛け合いに先程の老人、幻獣郎は呆れた目で見つめていた。

(弱者は殺さぬ、だと、フンっ!甘いことを言う。
これだから若僧は困るわ。殺し合いの場にそんなことを言ってられるか!

しかし…これは利用できるかもしれんぞ…
この殺し合いの場を使えば、あの紅麗の寝首を掻くことも…
フッフッフ紅麗よ、貴様に敗れたことを儂は決して忘れはせんぞ!
今に見ておれッ!この幻獣郎が恨みを晴らしてくれる!)

仙人と呼ばれていた老人が暗躍を企てる隣に、
二本の刀を背負った屈強な男が控えていた。
額に縦に数本の傷がある強面の大男。
その名を磁生といった。
「麗でもっとも強い」「紅麗も一目置く」
と言われるほどの実力を兼ね揃える彼は、この現状に全く動じなかった。
常日頃から血肉のはびこる「非現実」に身を授ける彼にとって、殺し合いは日常茶飯事。
故に、主の命があればこの身を、この刀を朱色に染めよう。
例えこの身が悪鬼羅刹の道を往こうとも、後悔はない。
否、既にそうなっているのかもしれない。
だが、彼に迷いはない。
その眼差しは何者にも負けない力強さを秘めていた。
「紅麗様、御命令を…!」「磁生よ、人を斬りたいのか…?」
「否、この磁生、紅麗様の命があればそれを実行に移す、それまでです!」
「頼もしいな」

紅麗の淡々とした様子は変わらなかった。

紅麗は巻物を取りだし、それを眺めた。

(紅麗、幻獣郎、音遠、磁生、雷覇…
どうやら、忌まわしい我が弟、烈火はいないようだな
まぁ、どうでもいいことだが…
忍同士の殺し合いか…、どれほどの猛者がいようと、
私と、そして「紅」がいれば敵はいない。
こんな下らない行い、すぐに終わらせてやろう…!)
「いいか、この地にどれほどの忍がいようと関係ない…!
向かい来る敵を薙ぎ倒し、この地を血に染めれば勝利は我らの手よ…!
怯むな、脅えるな、そして勝て…!
我々、麗の前に敵はいない…!」

各人各様の想いを胸に、彼らは歩を進める。
「麗」の戦いが今、始まりの鐘の音を上げた―――――

参戦決定チーム

【麗@烈火の炎】5/5
○紅麗/○幻獣郎/○音遠/○磁生/○雷覇

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最終更新:2008年12月12日 19:29