「ここにおるのはワシら6人か・・・・」
「そのようだな」

木々が生い茂る森を十字に走る道があり、
その交わりの辻に、一軒の旅籠があった。

その旅籠の土間に、6つの人影がある。

赤と金の唐人服に身を包んだ男。
網代笠を被った片目の雲水。
三度笠を被った旅人風の男。
武家姿で、五尺程度の背丈の色白の小男。
六十六部の装束を着た男。
そして、黒頭巾に黒装束と、如何にも忍びといった格好の男。

彼らは八代将軍吉宗が直属、江戸城御庭番に所属する、
伊賀鍔隠れ谷出身の忍者である。
名を、それぞれ、
城ヵ沢陣内
一ノ目孤雁
砂子蔦十郎
百沢志摩
七溝呂兵衛
樺伯典
という。

彼らは、ここにはいない真壁右京とともに、
吉宗にたてつく尾州公宗春のある企みを阻止すべく、
行動を開始したばかりの所で、
この殺し合いの場所に呼び出されたのだ。

「しかし、いったいぜんたい、何が何だか訳がわからねぇ。
あの南蛮鎧の男は一体何だ?何故ワシらに殺し合いをせよなどと・・」
唐人飴屋の装束に身を包む男、城ヵ沢陣内である。
「かような事を御公儀がなされるはずもなし・・・・」
応えたのは一ノ目孤雁。網代笠の下から潰れた左目が覗く。
「しかし、事情がどうあれ、我らは何が何でも帰らなくてはあるまい」
六部姿の七溝呂兵衛が言う事に、一同は頷いた。
御土居下組、尾州公の使う卍谷の甲賀者が動き出していると分かっている以上、
一刻も早く江戸へと取って返し、奴らの企みを先回りして潰して回らねばならないのだ。
奴ら甲賀者は、認めたくはないが恐るべき百年の怨敵、
右京一人と、足手まといの柳生衆だけに任せる訳にもいかない。
「ええい、面倒くさい。悉く薙ぎ払ってさっさと帰らせて貰おうではないか」
そう言ったのは、三度笠の男、砂子蔦十郎である。
彼は、座敷に生けてあった花を苛立たしげにひん掴む。
するとどうであろう、花は見る見る内に霜に覆われ、
萎れ、氷結してしまった。
忍法「薄氷」。蔦十郎の恐るべき忍法の一端である。

「しかしそう簡単にも行くまい」
「うむ、特に、最初に殺された爺の件でやや気にかかる事もある」
「爺の周りの連中が使っておった密語のことか」
蔦十郎の鼻息荒い言葉を受けたのは、百沢志摩と樺伯典であり、
伯典の言葉を受けたのは陣内である。

陣内と伯典の言葉に、一同はううんと唸って黙りこくった。
最初に殺された老忍者と、その仲間と思しき連中の交わしていた言葉は、
確かに伊賀鍔隠れで使われている密語と同じ物である。
しかし奇妙な事に、この六人の何れにも、
かのような連中が鍔隠れ衆にいたという記憶がとんと存在しないのだ。

「とにかく、今はわからぬ事が余りにも多い。
何をなすにも、まず色々と事情を探ってからでも遅くはあるまい」
「うむ、手分けして探るか」
「では午の刻のころこの旅籠に再度集ろう」
「留守番がいるな」
「俺がやろう」
そう言って、今まで座っていた座敷の縁から立ち上がったのは、
百沢志摩である。

「俺が最適だろう。どうだ」
志摩の言葉に残りの五人は頷いた。
彼の忍法ほど、この手の任務に向いている物もないと思われたからだ。

「では、陣内と孤雁、蔦十郎と呂兵衛、そして俺の三手に分かれて探るとしよう」
伯典がそう提案した。
「大丈夫か?」
「俺の技を知っておるだろう?心配無い」
陣内の言葉に、黒頭巾の下で伯典は薄く笑う。

「では」
「午の刻に」
そう言って、ただ志摩一人を残し、
五人の忍者は夜の森に散っていった。

参戦決定チーム

【伊賀鍔隠れ御庭番チーム@忍者月影抄】6/6
○城ヵ沢陣内/○一ノ目孤雁/○砂子蔦十郎/○百沢志摩/○七溝呂兵衛/○樺伯典

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最終更新:2008年12月17日 13:51