一触即発即発とは正にこのことであろう。
美しい湖の畔は、今や充満する殺気で爆発寸前であった。

睨み合うのは二つの三人組。

片や、貴公子を思わせる美しい青年、
三本の大太刀をさげた豪快な浪人風の中年男、
役人風の武家姿である。

片や、大振袖を着た長髪の美少年、
天神髯に泥鰌髭の医者風の男、
背に十本ばかりのから傘を背負った行商人風の男であった。

彼らはそれぞれ、肥後天草島を治めていた一族の残党にして、
今は松平伊豆守直属の隠密集団「天草党」、そして
由比民部之介正雪が配下、甲賀卍谷出身の「張孔堂」の忍者部隊であった。

名前はそれぞれ、
天草扇千代結城矢五郎曾我杢兵衛
秦卍丸弟子丸銅斎十六夜鞭馬
である。

元々、天草党は伊賀鍔隠れで修練していた事もあり、
甲賀卍谷の者どもとは仲が悪いのだが、それ以上に
双方を殺気立たせる理由が他にあった。
ジュリアン中浦が同胞のキリシタンの為に、
残したといわれる「100万エクーの金貨」。
これを探す手がかりを、偶然転びキリシタンのフェレイラ=沢野忠庵が
掴んだのが事の始まりである。

これの隠し場所を記した15の鈴と、それをその体内に秘めた15人の
童貞女、これらを探し出すよう、天草党、張孔堂組の双方、
それぞれの主君たる伊豆守、正雪に指令をうけ、
長崎へと出発したばかりだったのだ。

最初に彼らが湖のほとりで目を覚ました時は、
互いの顔を見知らなかった事もあり、
最初は情報交換をしていたのだが、
途中で双方ともに敵同士であった事に気が付き、
こうして対峙する運びとなったのだ。


「「「・・・・・・・・」」」
「「「・・・・・・・・」」」
双方一言も発する事もなく、
対峙し始めてはや5分ほどたったであろうか、
いまや殺気は限界まで張り詰めている。

「待て」
突如口を開いたのは張孔堂組の秦卍丸である。

「互いに、一刻も早く帰って為さねばならぬ使命がある、
ここは休戦してはどうか」

突然の卍丸の物言いに、銅斎、鞭馬共に
眼をむく。
「何を言う、卍丸」
「こやつら、どの道戻れば殺し合う相手、ならば・・・・」

「いや、そちら言う通りしよう」
「「扇千代さま?!」」
しかし、今度は天草党の面々が驚く番であった。
よもや自分たちの頭目から、
そのような言葉が出てくるとは思わなかったのだ。

「あの南蛮鎧の男・・・・やつの言う事が正しければ
あの場所におった他の連中もどうやら忍びのようだ。
だとすれば、仮にも同じ組に入れられてしまった以上、
殺し合うのは得策ではあるまい」
「しからば我らの戦いは一時とどめ、
ここにいる他の忍び衆を一刻も早く討ち果たし、
戻ってから改めて殺し合えば良いでしょう・・・・」
「うむ」

ともかく、合意はなったらしい。
天草党は不満があるものの主君も命である以上
従わざるを得ず、
張孔堂組も、あの場所にいた他の忍びの数を考えて、
しぶしぶながら休戦することとなった。

しかし心の底から彼らは和解したわけではない。
何より、それを最初に言い出した卍丸も、
それをのんだ扇千代も、隙あらば体よく相手側の頭数を減らそう、
という謀略でその頭脳は満たされていたのだ。

果たして呉越同舟の行く末やいかに。

参戦決定チーム

【外道忍法帖チーム@外道忍法帖】6/6
○天草扇千代/○結城矢五郎/○曾我杢兵衛/○秦卍丸/○弟子丸銅斎/○十六夜鞭馬

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年12月14日 23:39