阿良々木×忍4

「ふう、終わったな。助かったよ、忍」
「余裕じゃったな。お前様はボロボロのようじゃが、どうしたのじゃ?」
「僕は千回以上殺されかけたんだよ! 下顎とか吹っ飛んで痛かったんだぞ!」
「まあ、お前様は弱いからやられても仕方のないことじゃ。あまり気にするな。
 ところでじゃ、儂が今回お前様に手を貸したのはあのキメ顔の小娘に腹が立ったから、というのはもう言うたな」
「ああ」
「私怨じゃから儂からは見返りを求めんとも言ったが、お前様はあるじとして器の大きさを見せたくはないか?
 今回それなりに頑張ったしもべに褒美を与えてもよいのじゃぞ?」
「ん~、そうだな。またドーナツでいいか?」
「いや、違うものを所望する」
「お前、人を喰いたいとか言うんじゃないだろうな?」
「そんなつまらんことは言わん。お前様の血で充分満足しておる。で、褒美はくれるのじゃな?」
「まあ無理言わなきゃいいぞ。ただ命に関わるようなことはダメだ」
「よしっ、決まりじゃ。では行くぞ」
「どこに行くんだ?」
「着いてからのお楽しみじゃ。行き先を知らぬほうが楽しめるというものじゃろう?」

そんな遠くへと連れて行くつもりなのか?
それとも何か変なことでも考えているのか?
今の忍がその気になれば僕なんかひとたまりもない。
もしも忍が本気で主従関係の崩壊を望んだら僕は何の抵抗も出来ないだろう。
いや名前で縛っているんだから、僕を攻撃することは出来ないのかもしれない。
まあ忍はそんなことを望んでいないようだし、今の生活をそれなりに楽しんでいるようにも見える。
僕のことを殺したけりゃいつでも殺していいって言ってあるんだし、こんなこと考えていても仕方がないか。
馴れ合いなんかじゃなくて、今回忍に頼った僕としては出来る限りこいつの願いを叶えてやらなければいけないと思うしな。

忍に手を引かれ僕どこかへ連れて行かれる……ということを考えていたんだけど、忍がそんな面倒なことをするはずがなかった。
サッと僕を抱きかかえ、一気に移動する。
重力が僕に圧し掛かり、呼吸が止まった。
移動時間はほんの一瞬だった。
目的地に着いたのか、暴風のように感じた硬質な空気の流れが止まる。

周囲を確認すると、キングサイズのベッドが目についた。
どこから持ってきたのかという疑問を抱いたけど、よく見るとどういう構造かすぐに理解できた。
机を並べ、その上に真新しいフカフカの布団が乗せてある。
机同士はしっかりとロープのようなもので縛られ固定されていて、少しくらい暴れても崩壊などはしないだろう。
それは廃ビルには相応しくない。
場違いなほど高級感が漂っていた。
高級志向の忍が物質具現化の力で作った布団のお陰だ。
「闘う前に用意したのじゃ。小娘にも手伝わせての」と言った忍は僕を抱きかかえたまま屈託のない笑みを浮かべている。
斧乃木ちゃんが手伝うわけなんてないぞ! なんて突っ込むことは出来なかった。
僕は忍の笑顔に見蕩れてしまった。
今の忍は僕と同年代なんだ。
八歳の姿じゃなく、十八歳前後金髪でスタイルも素晴らしい女性。
こんなにもに美しい女性の輝くような笑顔を見て、目を奪われない男はいないだろう。
僕が忍に見蕩れた言い訳を考えていると、忍が口を開いた。

「では褒美を頂くとするかの」

言葉が先か行動が先かわからなかった。
ただ気付いた時には僕の身体はベッドの真ん中へと吹っ飛び、僕の上に忍が馬乗りになっていた。
フワフワの布団に押し込まれた僕は身動きが取れない。
「何すんだよ!」
「ふふ、お前様よ。よくも儂にツンデレ娘との熱い情事を見せつけてくれおったな。あんなものを見せられては儂としても困るのじゃ。
 それに少し前にお前様は、『吸血鬼の欲望は強い』と考えたことがあったじゃろ?」
「うっ」
「儂が完全な身体に戻った時にどうこうしたかったと考えたようじゃったな」
「仕方がないだろ! 僕は健全な男子なんだからな」
「我があるじ様よ、それは逆ギレというのではないか? 儂の身にもなってみい。
 儂にはお前様の快楽が一方的に流れてくるのじゃ。その感覚は遮断さえ出来ぬのじゃぞ」
「僕と戦場ヶ原は恋人だから……、そこはわかってくれよ」
「ああ、わかっておる。だからその責任を取ってもらおうという話じゃ。簡単じゃろ?」
「それは――」

言葉を紡ごうとする僕の唇は突然強い力で塞がれた。
必死にもがく前に僕の身体を電流のような衝撃が貫く。
一瞬で魅了されたように身体中から力が抜けてしまい、蕩けていく。
これも吸血鬼の力だろうか。

よく見るとボロボロだった僕の服は取り去られ、忍の服も消えていた。
ベッドの上に吹っ飛ばされた時に服も剥ぎ取られていたのかもしれない。
今の僕は忍の唇の温もりを痛いほど感じている上に、美しい肢体を使った愛撫で全身に刺激を受けている。
忍の手が僕の股間をまさぐり、すでに硬くなっていた僕の肉棒を確認した。
忍の方も準備が整っていたようで、陰口からはいらやしく愛液が溢れ出て僕を欲して蠢いている。
照れたような笑みを僕に向けた忍は、硬直した肉棒を膣内に埋めていった。
一切の我慢が出来ない程、精に飢えていた状態だったらしい。
僕は何の抵抗も出来ない。
されるがままに忍を受け入れてしまう。
最奥まで僕が進むと忍はフフッと笑って腰を前後に動かし始めた。
最高だ。
最高に気持ちが良い。
僕はふと自分が吸血鬼になったときのことを思い出した。
確か筋肉が一番最適な状態を勝手に維持するんだったと思う。
だから何もしなくても鍛えられた状態になっている。
人間もどきに戻ってもその影響は残っていた。
当たり前だろうけど、それは忍にも言えることなのだろう。
引き締まった肢体の秘部を自由に使い、僕の肉を貪るように求めてくる。
締め付ける強さは尋常じゃない。
欲望のまま精を求め、搾り取るようにキツく締めあげる。
こんなにも強い刺激があるとは思わなかった。
何の準備のなく、激しい快楽を受けた僕はすぐに達してしまう。
びゅくびゅくと忍の膣内に出される精。
ピクピク震える僕を感じながらも、忍の動きは止まらない。
僕の熱い精を身体全体で感じるように反応した後、妖しい笑みを浮かべ腰の動きを緩やかにし、唇を貪り始めた。
唇に溺れ、舌を搦め、身体を交差し、熱を交換する。
一度射精したというのに、すぐに感じたことのないくらい強い快楽が僕を包んだ。
恋人のように絡まった指からも快楽が与えられ、僕の最後の抵抗を削ぎ落とす。
室内にはガタガタと机が軋む音とピチャピチャと粘液が絡むみ合う音が反響している。
それが二人だけの空間に淫らな空気を作り出し、僕の精神は忍に侵食されているように感じた。

忍の中で溺れていく。
もう理性などは存在しない。
欲望のままに舌を搦める。
唾液を流され、それを飲まされる。
自分から動かすことはなかった腰がいつの間にか忍の動きに合わせていた。
今まで味わったことがないような刺激を継続し与え続けられている。

「我があるじ様は可愛いのう。儂があるじの時にこれを教え込んでおくんじゃった」
からかうように僕の耳元で囁くとまた唇を重ねた。
僕は忍の好きなように弄ばれている。
せめてもの抵抗を、と思い忍の胸を指を這わせる。
んんっ!! と舌が絡まり合っている口から官能の混じった可愛い声が発せられた。
胸に対する刺激を続けると、声を我慢することが出来なくなった忍が嬌声を上げた。
ぁああっ…んん…ふふ……はっ…んぁあ。
忍は僕に慈しむような視線を向ける。
瞳を細め、僕を見詰めてきた。

――美しい。

安易な表現かもしれないけど、今の忍にはこの言葉がピッタリと当てはまった。
金色に輝く髪と瞳、瞳の奥にある何かが僕を引きつけるように光っている。
視線を逸らすことは出来なかった。
引き締まった肢体は至高の芸術のように美しい。
完全体の忍よりも幼い忍よりも。
初めてキスショットに見蕩れたときのように、心底惹かれた。

見蕩れている間にも忍のうねるような腰の動きからもたらされる快楽が僕を狂わせる。
忍に合わせて緩やかに動かしている局部には至福の快楽をもたらされた。
僕の片手は忍の頭を撫で、もう片方の手で乳房を弄ぶ。
そうした時の忍の表情は最高に幸せそうだった。
いつか言ってた服従の証だったか。
効果はてき面のようだ。

僕は忍の動きに翻弄され、膣内に何度も射精してしまう。
それでも僕と忍が離れることはない。
初めて侵入してから一度も抜かないまま白濁液を膣内に浸透させる。
熱い精を浴びるだけでも忍の悦楽に繋がるようだ。

忍は半吸血鬼化した僕の中から最後の精を搾り取り、行為自体にも満足したようだった
少し動きすぎたのだろうか、透き通るような白い柔肌からは汗が噴出していた。
そして繋がったままの状態でキスを繰り返す。
恋人のような抱擁。
というより、今だけはお互いを心の底から大切に想い、愛し合っている恋人そのものだった。
フカフカのベッドが身体を重ねたままの僕と忍を眠りに誘う。
最高に心地が良い。

うつらうつらと眠りそうになった時、意識の端が家の今の状態を思い出した。
最悪、火憐ちゃんは両親さえも家の中に入れずに困らせているだろう。
そんなことどうでもいい、という気持ちを押し殺して何とか起き上がる。
すやすやと僕の腕の中で寝むっている忍を起こし、血を吸い、元の大きさに戻した。
僕が血を吸っている間、忍は僕の首筋に甘えるような柔らかいキスをした。
いつもの偉そうな物腰ではなく、大好きな相手にじゃれるような可愛い仕草をする。
こんな一面もあるのだと思い知る。
教室を出る前に隣を歩く忍が唇を動かした。
「我があるじ様よ、儂は満足したぞ。拙くも荒々しいお前様はなかなかいいものじゃ」
「そりゃ良かったよ」
「また頼むぞ」
「ああ」
って、そんな返事を軽々しくしちゃっていいのか!?
こいつとは一蓮托生、一心同体なんだぞ!?
一生離れなれない関係なのに!
だけど満足そうな笑みを浮かべている忍を見ると愛おしくなる。
僕がそんなことを考えていると忍がまた口を開いた。

「我があるじ様よ、表まででよい。儂をおんぶするのじゃ」
「えっ?」

幼い忍が僕の為に具現化したシンプル且つ高級感溢れるジャージを引っ張り、
ピョンピョンと小さく飛び跳ねながら僕の背中に乗っかかろうとしていた。

「ほれ、早くおんぶするのじゃ。ほれほれ」
「ああ、わかったよ」

僕の背中に体重を預けた忍は嬉しそうな笑みを零し、廃ビルに来る前に僕の血を吸った場所をペロペロと舐めている。
くすぐったいけど、文句は言わない。
忍は血を味わっているわけではなく、愛しいものを愛でている。
そんな優しい行為だった。
そして自転車の前に着く。
忍は最後にギュッと力を入れて僕を抱き締めた。

……僕は死にそうになった。

いくら外見年齢は幼くても手錠を切ったり、手錠を食べたりできるんだ。
力も並みなわけはない。
僕はというとただの人間もどきだ。
瞬間再生なんて出来るわけはない。
ゴキっという音が僕の中から響き…意識は飛んで―――

 * * * * *

後から忍に聞いた話によると、僕は数分間、気を失っていたという。
忍が僕を抱き締めた時、力を出しすぎて僕の首を折ってしまったらしい。
柄にもなく慌てた忍が僕の血を吸い、僕の身体を吸血鬼に近づけ怪我を治したようだ。
僕の身体は回復しても意識はすぐには戻らなかった。
だからまた慌てた。

僕が目を覚ました時、忍の様子はおかしかった。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だよお。死んじゃやだ、死んじゃやだよお……」
慌てて僕の血を吸いすぎたのかまた同級生くらいまで成長した忍は、絹のようなサラサラの髪を振り乱し、
誰もが見蕩れるほど整った顔をぐちゃぐちゃに崩して本来なら淀みのない瞳を真っ赤に腫らして涙を零している。
忍は倒れた僕の上に乗って肩を揺すっていた。
「もう儂を一人にしないで……」
消え入るような声で何かを呟いている。
そして僕の胸に顔を埋めた。

こんなにも感情を表したのは初めて会った時と初めてミスタードーナツに連れて行った時くらいだろう。
初めて会った時の忍は必死だったからな。
キスショットが自分のプライドを捨て去り、懇願するように泣き喚き、自分より下等な存在の僕に助けてと頼んだあの日。
僕が死を決意した日。
「嫌だ」「死にたくない」「消えたくない」と何度も叫んだキスショットに僕は僕を差し出した。
それが縁で今も一緒にいるわけだ。
ミスタードーナツの店に行った時は貝木が居たからあまり思い出したくない。

忍が必死なのは、まだ生に執着しているからか?
確か自殺志願のヴァンパイアっていう設定は捨てたもんな。
僕が死んだら忍もエナジードレインが出来なくて自分も死ぬからそんなに取り乱しているのだろうか?
だけどさっきの忍の必死さには自分が助かりたいという思いなんてなく、僕に死んでほしくないということしか望んでないように感じた。
……きっと気のせいだろう。

僕は忍の頭をそっと撫でる。
咽び泣いていた忍はビクッと震え、驚いた顔を僕に向けた。
涙で腫らした瞳で僕の無事を確認すると安堵したような笑みを浮かべる。
そしてまた僕の胸に顔を埋め、顔を隠して息を整えていた。

しばらくして顔を上げた忍は力なく僕を抱いてキスをする。
さっきまでの欲望に任せたようなキスではなく、甘く相手を慈しむようなキスだった。
そのまま時間は過ぎていく。

唇を離し「すまぬ」と掠れた声で呟いた。
何がすまないのかはわからないけど、心配をかけたようだから安心させるように思いっきり強く抱き締める。
忍は、うっと呻いて強張ったけど、すぐに受け入れ力を抜いた。

背中をポンポン軽く叩いてみる。
忍は随分と落ち着いたようだ。
僕から離れると視線を逸らしてもう一度謝った。

「こんなことになるとは思いもせんかった。悪かった。お前様は先刻ほどではないが吸血鬼に近づいておる。
 儂の血を吸って、身体を人間に近づけるがよい」

僕は喋ることを忘れて忍を見ていた。

「どうしたのじゃ? 無断で血を吸ったことに怒っておるのか?」
「いや、何があったかはよくわからないけど、お前が謝るなんて珍しいからな。少し驚いた」
「儂がお前様を殺してしまいそうになったのじゃ。力の加減が上手くできんかった。軽く触っただけのつもりじゃった。
 それでお前様の首の骨が折れてしまったのじゃ。もう少しで取り返しのつかないことになるところじゃった。儂の不手際じゃ。すまぬ」

さっきと同じくらいに成長した美少女が素直に僕に頭を下げている。
高慢饒舌はどこにいったんだろうか。

「いいよ。気にするな。僕は生きているんだし」
「だが……と話を続けてもお互い譲らんな。この申し訳ない気持ちは行動で示そう」
「行動でって……僕のお小遣いを考慮してドーナツを食べるってことか?」
「いや、男と女が重なっておるのじゃ。それが答えじゃろう?」
「でもさっき充分過ぎるほど襲われたぞ! もう出来ないって……」
「それは大丈夫じゃ。また吸血鬼に近づいたことで身体は回復しておる。もちろんお前様が気にしているところもじゃ」
「おまえ――」

忍は有無を言わせずまた僕を襲った。
欲求不満がここに極まったのだろうか。
「抑え切れんのじゃ。身体にもいいことじゃし、快楽に身を委ねるがよい」
とだけ囁いた。
気が付くとフカフカの豪華なベッドが用意されていて、その上にいる僕も忍も全裸だった。
僕の着ていたジャージは忍に作ってもらったものだから、自由に消せるのだろう。
忍の身体が再び月明かりに照らされる。
また見蕩れてしまった。
忍は腰を動かし淫口で僕を刺激する。
再び刺激を与えられた僕の欲望は、思いとは裏腹に反応し、硬直していた。
それを確認した忍は妖しく微笑み、僕を飲み込んでいく。
悦楽を得た忍はより情熱的に腰を動かし始めた。
僕と忍の身体を快楽が支配し、溺れ狂っていく。
忍の膣内に何度も果て、全てを搾り取られた。
廃ビルの玄関近くで。
つまりは外に用意された高級そうなベッドの上で。
初めて野外で人目を気にせず快楽に耽る僕らがそこに居た。

 * * * * *

行為が終わると満足した忍と干乾びた僕がベッドに横たわっていた。
疲れ果てた僕は再び忍の血を吸い幼くした後、言い争った結果決まったシンプルなデザインのジャージを創造してもらう。
そして忍を自転車のカゴに入れて自転車をこぎ始める。
忍は家に着くまでの間、逆ET乗りの状態で僕の顔を見ては幸せそうに微笑んでいた。

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最終更新:2010年01月02日 04:04
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