樋の酒
HI NO SAKE
【あらすじ】
これから出かける主人、留守の問に大事なお酒を勝手に飲まれてはたいへんと、二人の召使を蔵に閉じ込めました。お酒の好きな太郎冠者は軽物蔵(かるものぐら・衣類などを納める蔵)へ。お酒が飲めないはずの下戸の次郎冠者は酒蔵へ。これなら安心と主人は出かけました。ところが酒蔵に閉じ込められた次郎冠者は、実はお酒が大好きだったのです。酒蔵のお酒を飲み始めた次郎冠者の声が小さな窓から聞こえてくると、太郎冠者はもうたまりません。一方の次郎冠者も何とか太郎冠者に飲ませてやりたいと考えています。そのとき太郎冠者の目に入ったのが、雨樋(あまどい)にしている太い竹の筒。二人は二つの蔵の窓の間にその竹筒を渡し、次郎冠者がそこからお酒を太郎冠者のほうへ流し始めました。そしてにぎやかな酒盛りが始まったのですが…
【解 説】
よく知っていると思っていたのに、実はほとんど知らなかった。そんなちょっとした思い込みで失敗した経験はありませんか。長く召し使っている次郎冠者なのに、酒好きどころか、逆に下戸だと思い込むなんて。しかし、何か理由があったのかもしれません。日ごろの次郎冠者の立ち居振る舞いから、「お酒を飲むはずがない」と思い込んでしまうような何かが。でも、見かけだけでころっとだまされてしまうことだって、しょっちゅうありますよね。
さて、不自由な格好で酒を飲む『棒縛』もそうですが、この狂言の作者は、どんなことをしても酒が飲みたいという「酒飲み」の滑稽さを、からかうと同時に、微笑みながら見ているのかもしれませんね。
最終更新:2010年01月29日 01:34