《解説》村 尚也
一調・勧 進 帳(かんじんちょう)
『安宅』で弁慶が読み上げる偽りの勧進帳。観世流では読み上げの初めをシテだけ、「おもんみれば」以下をツレとの連吟にして重音の効果をねらうが、「勧進帳」の小書が付くと、シテー人の独吟となって、ドラマとしての設定に叶うようになる。「それつらつら」から重厚に謡い出し、「ここに中頃、帝おはします」以降、テンポが徐々に早まり、力感あふれた謡になる。内容は、聖武天皇が亡くなった夫人のため、東大寺盧遮那仏を建立するいきさつ(史実の夫人光明皇后は聖武帝崩御後まで生存した)。格調と慈愛の文言を観世清和が謡い、亀井忠雄の大鼓が緊密な時を刻んでいく。