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<<笑顔一殺>>

  それは まだあなたがおさなかった ころ
  厳めしいかお をしたちちおやに 手をひかれて
  いまにも なきだしそうな
  途方にくれたような
  こころぼそい ような
  すがるような目つきで
  だのにふてきに 頬には笑み


 「先生」
 「アンデルセン先生」
 「僕がなぜ棄てられたのか――」
 「僕が妾の子供だからなのでしょう?」


  皮肉 というにはかなしすぎる
  自嘲 というにはせつなすぎる
  いたましほど せいいっぱいの 虚勢 で

  もう 誰もしんじないと
  この世のすべてをきょひした ひとみが あまりにもすさんでいて


 「先生」
 「先生」


  せんせい。

  救済院や 孤児院には 各々の記念日と言うものを設定してある
  それは
  満ち足りた生活を送る 一般の人間よりもいっそう 自分が自分であることの

  あかし

  を 彼らが求めるからで


 「誕生日ですか?」
 「僕の誕生日ですか?」
 「生まれてこのかた祝ってもらったこともないのに、知りませんよそんなもの」
 「一体誰が祝うと言うんです?」


  あなたのうまれた日が知りたいのです と
  告げたわたしに どこか傷んだかおをして
  すくいを 求めるようなひとみと
  うらはらな口調

  おもわずうで を伸ばして 抱きしめる


 「な……ッ」
 「痛いじゃありませんか何をするんです?はなしてください!」
 「はなしてください!」
 「はなしてください!!!」


  がむしゃらに あばれはじめるあなたを けっして はなさないよう

  マクスウェル。

  みみもとで名をささやいてやると ふてくされながらも急に大人しく 黙りこんだ


 「では」


  ではこうしましょう。
  視線をあわすことなく 床の一点を にらみつづけるあなたに


 「――わたしがあなたと はじめてであったあの日。 それがふたりの記念日です」


  われながら 
  ありきたりかと 苦笑いをしながら うでの中のあなたを見ると
  意外にも
  照れたかおをして そっぽを向いていた
  ああ 頬が
  くちびるが
  よろこびに 緩んでしまうのを あなたはかくしきれていない

  そうして
  おずおずと しせんをあげて
  わたしを見上げる あなたの澄んだ緑青の滴
  それはまるでふかい 淵のよう

  マクスウェル。

  もう一度ささやくと 

  やがてあなたはためらいがちに ごくじょうの顔で ほほえんだ。



えがおひとつでしあわせになれます

最終更新:2008年07月22日 09:48