<<Chateraine>>
むかしむかし あるところに ひとりのじぶんかって な 王子がいました。
あさ 起きるのもじぶんかって
ひるごはん を食べるのもじぶんかって
よる ベッドに入るのもじぶんかってでした。
じぶんかって な 王子には なまえがありませんでした。
たとえなまえがあったところで 王子をよぶにんげんは だれもいなかったのです。
王子は たいそうりっぱなおしろにに たったひとりですんでいました。
ほかのにんげんいません。
じぶんかって な王子はいやだと みんなおしろをでていってしまったのです。
こおりのおうじ
なまえのない王子は ほかのくにでは そうよばれていました。
たいそうきれいで いつまでもすがたをかえない
けれど 触れるには凍徹すぎるそのこころ
王子は 魔法のつえをもっていたので たったひとりですむのに 困ることはなにもありませんでした。
魔法のつえを ひとふりしさえすれば 王子ののぞむものはなんでも
おいしいパンや
あたたかなスープや
フカフカのねどこ
縞模様のきれいな石
ぴかぴかきんいろに かがやく王冠
なんでも 手にはいったからです。
おおきなお城には だれの声もせず
おおきなテーブルでたべる食事は いつもひとりです。
けれど 王子は さびしいと思うことはありませんでした。
いっそ しずかで せいせいするとさえ思っていました。
ガミガミとおせっきょうの うるさい部下も
ちちおやも ははおやも きにするひつようがないことに 王子はまんぞくしていました。
さびしい というきもちが どんなものなのか 王子はしらなかったのです。
ですから 王子は
おおきなベッドにひとり ねむり
おおきな庭でひとり あそび
おおきな風呂にひとり はいり
おおきなテーブルでひとりで食事をしました。
あるひ
いちにちのおわりに ふと
おおきなお城の おおきな窓から おおきな庭越しに そとをながめると
あかい あかい
血のように ひどく あかいたいようが 山のあいだにしずんでゆくところでした。
くちをあけて 思わずながめた 王子のめから
ぼたん
と おおつぶのなみだが ひとつこぼれました。
うつくしいものを うつくしいと思うきもちを 王子はしったのです。
王子はこのゆうひを 誰かといっしょにみたいと思いました。
けれど おおきな国のおおきなお城には 王子いがい 誰もすがたはありません。
どんなにおおごえを出しても
どんなに探しても
おおきなお城のなかは 王子しかいませんでした。
ほかのにんげんはいません。
じぶんかって な王子はいやだと みんな国をでていってしまったからです。
そうです。
もうずっとながいあいだ 王子はひとりぼっちだったのです。
だれかを 探すことにつかれはて つめたい石のゆかにすわりみ いつしか眠ってしまった王子は ほほ に
あたたかでしめったものをかんじて 目をさましました。
そうして おどろきました。
誰もいないお城のはずでした。
目のまえには 手のひらに乗りそうな ちいさな猫 が
つくねんと座って 王子をふしぎそうに のぞきこんでいました。
あたたかでしめったものは その ちいさな猫が 王子のほほをなめた感触でした。
おどろいて ことばをなくした王子に ちいさな猫はゆらゆらと ちいさなしっぽをふりました。
その目は ふかい 緑青色。
王子のめから もうひとつぶ ぼたんとなみだがおちました。
そのひ 王子ははじめて さびしいという気持ちをしりました。
(20100806)
二次焼き直し。
最終更新:2011年07月21日 21:16