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 箕によっつ分スグリを摘んだ。
「……すごい量ですね」
 隣でひとつふたつと数えていたコロカントが、あらためて積みあげた黒玉の量に目を丸くしている。多くなるだろうなと予想はしていたラルヴァンダードも、やはり同じように驚くと言うよりは呆れて、はあとこたえ、黒いつぶつぶの山をながめた。
 途方に暮れると言うには大げさに過ぎるが、それでもたいそうな量収穫できた喜びというよりは、
「まいった、これをどうしよう」
 のとまどいが先立つのだから、やはりこれは途方に暮れる、と言ったところなのかもしれない。
 先だっての秋ごろ、グシュナサフが野菜の種とともに分けてもらえたからと、スグリの苗を数株持ってやってきたのだ。
 しなびかけた蔓とひょろひょろたよりない細根に、これは植えてもどうにかなるものでもない、それにここは町とはずいぶん違う、どうせ雪深くうもれて枯れてしまうのがオチだろうに、そうたかをくくってとりあえず植えてみたら健気に花が咲き、まるまるとした実が生った。
 気温が上がるにつれて、果実が青白さから赤色、そうして陽があたりつやつやとした黒色に変わるさまを、ラルヴァンダードはコロカントとともに驚きつつ観察してきた。
 やがて重さに枝がしなり、摘まんで食べるにも限界がある、このまま放置して森の動物に与えてしまうのは惜しいと、作業の合間にせっせとふたりで摘んでみるとこれがえらい量になった。
「……おいておいたら、傷んでしまいますよね、これ」
 しゃがみ込んだコロカントがスグリの山をつつく。やわらかな皮がすでに自重に耐えきれず、下の側からつぶれているのが判った。日持ちしない。今日中にどうにかしてしまわないと、明日にはよくないにおいをはなちはじめるだろうと思う。
「そうですね」
「今日の昼ごはんと夕ごはんと、明日の朝と昼と夜、レヴとふたりで頑張って食べたらなくなるでしょうか」
「いや」
 大真面目な顔で、ああでも食べきれるかしらとつぶやくコロカントがおかしい。ラルヴァンダードは笑みを誘われながら首を振った。。
「自分も姫も、鳥じゃあないのでこれでメシ替わりは無理です」
 それに、あんまりたくさん食べると腹を下しますよ。
 言ってやるとそうなのですかと彼女が驚いた。
「しかし、傷めてしまうのはもったいないので、――そうですね、煮詰めてみますか」
「これをですか」
「つぶして煮込んで、水分を飛ばして甕に入れてしまいましょう」
 そうするといつでもパンの上にのせて食べることができる。味気なくつましいな食事でも、すこしはいろどりでましになるかもしれない。ラルヴァンダードが言うと、わかりましたと頷いて、コロカントが木桶をとりに駆け出す。
 本当は、スグリ酒も捨てがたいのだがな。
 その後ろ姿を見るとはなしに眺めながら、男は思う、しかし彼女が酒を口にできるのはずっと先のことだ。だったら自分ひとりが楽しめる酒よりも、彼女の喜ぶジャムがいい、そのほうがずっといい、男は顎を撫ぜ思った。

 大きな鉄鍋をよく洗い、その中に指でつぶした黒スグリと糖蜜を混ぜ合わせ、しばらく置いたのちに火にかけた。
 ぷつんぷつんと音をたて、表面の黒スグリが下からの熱にちいさくはじけては、気泡を散らして沈み込む。焦がさないように薪の量はいつもよりずっと少ない。はじける音と様子が面白かったらしく、コロカントがわくわくしたような顔で、鍋をのぞきこんでいた。
 木べらを渡し、時々かきまぜるように指示すると、おおぎょうな顔をして首を縦に振る。焦がさないようかきまぜるただそれだけのことなのに、もっとひどく重い任務を請け負ったような風をして、それがまたラルヴァンダードにはおかしかった。
「そういえば」
 へらを構え、真剣にスグリジャムの表面をのぞきこむコロカントの背へ、こうしたときに言うべきではないのかもしれない、だがこうしたときでなければ言い方の判らない、
「近々、ここを引き払って、町へゆこうと思うのですよ」
 話しておかねばと懸念していたことを、ラルヴァンダードは言葉に乗せた。なるたけさり気ない動作で話せていたらいいが、そんな風に思う。
 聞いた彼女がふり向いて男を見た。スグリの表面を眺めるときとは別の目の色で、じっと男の顔を眺め、意図をさぐっている。どうということはないんです、男は笑った。
「ここは町から離れています。離れすぎているんです。先だってのように、自分が熱を出したときがそうです。もしあのとき、この家にいたら、姫はおひとりで何でもなさなきゃあならない。そうでなくとも、ここは雪深いですし、何かと物入りのときに不便ですし、毎度荷物を運び入れてくれる、ホルミスダスやグシュナサフにも負担がかかっていけない。姫も、これから大きくなるにつれて入り用のものが増えてくる。町へ移った方が、なにかと便利なんです」
「お引っ越しですか」
「そうですね。引っ越しです」
「ハナや、チチや、チチの双子や、タマゴもお引っ越ししますか」
「みんな一緒です」
「レヴもゆきますか」
「ゆきます」
「町へ行っても、今のように、一緒にいられるのでしょうか」
「向こうへ着いたら、用事があるので、ずっとというわけにはいかないかもしれませんが、別の人間がおります。不自由ないように世話してくれるので、姫は何も心配なさることはないんです」
「そうですか」
 案外素直に了解の意をしめして、コロカントがまたくるりと背をむけ、木べらをスグリへ突っ込んだ。
「用事があるなら、しようがないですものね」
 言ってそのまま、なにやら自分を納得させる様に、静かに鍋の中をしばらく掻き回していたものの、
「でも、戻ってくるのでしょう」
 やはり不安だったのか、背をむけたまま彼女がぽつりと漏らした。彼女は知らない。数えよっつで森へ入り、町と言うものも、町と言うもので暮らしている人間たちと言うものもなにもかも知らない。
 戻ります。大きくラルヴァンダードは頷く。ずっと一緒というわけにはいかなくとも、彼女が落ち着くまでできるかぎり側にいようとは思っていたし、そうでなくとも、
「自分が戻るのは、姫のいらっしゃる場所だけです」
 それは彼が心底思っていることだった。
「まいります」
 きっぱりとコロカントが頷いた。
「レヴといっしょなら」
「――ありがとうございます」
 ラルヴァンダードは言った。仮令この場所をはなれても、黒スグリを見つめる黒スグリを、けっして不幸にすまいと思う。


 がぐ、と喉奥でくぐもった苦鳴をあげて、襲撃者がもんどりうって倒れた。
 身を引いて巻き添えを避け、うしろでひとりを相手している青年をグシュナサフは見やる。見やる余裕がこの男にはある。グシュナサフが見たところ、青年の剣の腕は中の下、しかし生来の運動能力がすぐれているのか、かわす動きに無駄がすくない。そこまで気配る必要はないのかもしれないが、それでも早めに片付けて加勢に向かうに越したことはない。青年を頼む、ラルヴァンダードから頭をさげられた手前、手負わせるわけにはいかないと思った。律儀な男なのだ。
 正面へ視線を戻す。グシュナサフと対峙するこちらは、いまもんどりうった一人をひいて残る三人、真横に並び、どうにか隙をうかがって彼の背後をとろうとする。多対一の利をうまく削ぎながら、右に片手斧、左に外套を手にし、腰を低く構えた。囲まれる前にもう一人減らすつもりだ。
 もとは傭兵稼業に明け暮れていたグシュナサフは、おおよその武器を使いこなせる。なぜなら、雇われるたびに所属する隊から支給される獲物の種類は違っていたし、たとえ同じ名のものであっても、使いこなれた手持ちのものとはやはりまるで異なるからだ。手触りが違う、重量が違う、長さが違う、重心が違う、ほんのかすかなブレが戦場では決定的な誤差になる。誤差は命にかかわった。だから、手にする度に感触がかわるというなら、おのれの体を即座に獲物に対応させる柔軟さが必要になる。動線変更の素直さ、といってもよいかもしれない。器用にならざるを得ない。器用でないものは、結局実践において淘汰されていった。
 自然、知識を得た。この知識は頭に覚えるものではなく、体に叩き込んだ、文字通り「身についた」ものである。くわえて、もとより獲物の手入れが好きだったものが、異様に執着を見せるようになった。
 グシュナサフは刀身を磨くのが好きだ。柄のあたりに蔓を巻きつけるのも好きだ。背に刻まれたへこみ跡を撫ぜてはうっとりとする。鞘のすり切れた表皮を張り替える作業も好きだ。
 むつむつとこなし、気が付けば食事をとるのも忘れ日が暮れていることがある。飽きることがない。自身でもこの趣味はどうかと思った。常軌を逸している部類に入るのだろう。
 ――まったくまともじゃあない。
 思うが、しかし嗜好と言うものは理屈ではどうにもならないもので、手にしていると「落ち着く」のだ。安心する。如何ともしようがない。口のまわるホルミスダスなどからは、鍛冶屋へ転向したらどうかと揶揄われた。
 鍛冶職人。悪くないかもしれないが、それで満足するおのれでないことも、グシュナサフは判っている。手入れするだけでは不十分なのだ。
 手入れし、それを振り回したいのだ。戦場を駆り、手入れした獲物を振り回して、感触をたしかめないと気が済まないのだ。たしかめ、得て、そうして次第に鈍ってゆく切れ味に苛々したい、引き上げるとまた手直しに没頭するくりかえし。
 やはり、逸している。
 しかし怪我のひり当たりとでも言おうか、剣や斧や槍の手入れの程を見るだけで、対峙した相手の技量がそこそこに判るようになった。それだけは便利である。
 向かえた三人の刀身はくすんでいる。こまかな錆がまだらに浮いている。たいした手入れをしていない証拠だ。おのれの手にした武器に愛着のない証拠だ。腕の立つ人間なら錆を浮かせることはしない。あんな風に刃先を曇らせない。
 なってない。
 いつだったか、馬宿で賊に襲われたときと同じ、物騒であきれた文句が頭に浮かんで、それから彼は一見無造作に見える足取りで、三人へ向かって踏みこんだ。踏みこまれた相手がグシュナサフに気圧され、構えがかすかに揺らぐ、その揺らぎがいっとう大きかった、向かって左の男へ、電光石火、ななめ下から戦斧をくいとひねりあげて、相手の剣先へぶつけた。手首をかえす。僅かな動きだ。
 一周ぐるり剣を巻きこむ動きになって、てこの原理が働いた。相手は剣を取り落す。
 思わず顎を引き腰のひけた相手の顔に、そのまま突き入れた。ぶ、と顔面がひしゃげて、鼻血を拭きだしながら白目がむかれた。相手は仰け反り、そのまま倒れる。脇の人間がまたたくまに突き倒されたことに動揺した真ん中のためらいを、グシュナサフは見逃さない、突いた動きをそのままに、ひらの部分で脇腹へ打ちいれた。単純に見えてひどく力技である。突きの力を殺さず、一旦宙で停止させるように見せて、瞬時逆手に持ち替えた右腕と、添えた左腕で、思い切り叩きこむのだ。
 鉄の塊を力任せに叩き込まれる人間はたまらない。ごきごきとあばらの折れる音とともに、勢い右の人間も巻きこんで、二人目と三人目はぶっ倒れた。倒れ伏し、焦って顔をあげた無傷の三人目を、斧の柄でもって昏倒させる。
 派手な転倒音に、どうしたことだと動向をうかがったらしい青年と、青年と向かい合っていた一人が、どちらとも目を丸くしてひととき呑まれる。呑まれ、しかしおのれを取りもどしたのは、青年と向かい合った相手が先だった。いのちの余裕の差、とでも言おうか、グシュナサフと青年を見比べ、おのれひとりの力量ではとても無理だと判断したのだろう。慌てふためき背をむけて、逃げる様子を見せた。
「逃がすか、」
 言いかけてその背に打ちかかろうとした青年を、構えた斧を視界に突きだしグシュナサフは制止する。はっとなり、おのれを見やった青年へ、逃がす、と彼は言った。
「しかし」
「報告してもらわねばならん」
 わずかな隙に、逃げた相手はすでに距離を稼いでいる、ひねりでもしたのか、片足を引きずりながら走ってゆく。
 たとえグシュナサフより数段腕が落ちようとも、青年なりに勝機はあったのだろう、
「なにも、逃がさずとも……」
 すぐには抑えきれずに噴き出した殺気のやり場がない、そのまま不満の声になる。
 むっとなった青年にいいんだ、とグシュナサフはもう一度首を振った。
「逃がした方がいい」
「なぜ」
 食いつく相手にやれやれと内心ため息をつく。あきれたというよりは、感嘆、むしろおのれもそうであったなと言う懐古の情に近い。
 ――若い。
 青年とグシュナサフには二回りほど差がありそうだった。今は過ぎ去ってしまった「そのあたり」の熱い情感を、自分はいったいどうして処理してきたものか、そもそも昔から、年の割に枯れていると言われていたので、熱いものとは無縁であったか。
「あれは、ハブレストの手のものじゃあない」
 打ち倒した襲撃者からさっさと離れ、歩き出したグシュナサフが言ってやるとえ、と驚いた顔をして、横に並んだ青年が彼を見上げた。
「だって」
 言っていたじゃあないか。
 街道を進んでいたグシュナサフと青年を取り囲んだ襲撃者どもが、こちらが誰何するまえに、自身で名乗りを上げたのだ。
「……ハブレストの人間だと名乗ったからと言って、そのままとも限らない。こいつらはセイゼルの手のものだ」
「なぜ」
 先とは異なる意味合いをこめて、青年が同じ言葉を口にした。ようやく憤りがおさまってきたと見え、肩の力を抜いて剣を腰へ収めている。どこで判断したのかと聞かれ、グシュナサフはがりがりと頭を掻いた。説明するのは面倒だったので、
「剣」
 短く応える。
 ワールーンの森を発ち、数日寝起きを共にしたグシュナサフ個人の青年への評価は、決して悪くない。青年は鋭い。抜身の刃だ。それもよく砥がれた投針のような、
「……使われている剣が、セイゼル独自のものということか」
 思った通り、しばらく考え込んでいた青年が、やがてぽつりと正解を口にした。そうだと今度は頷いてやる。それから、察することのできる相手で助かったと、わりと心底グシュナサフは思った。
 これがいつもの口やかましい連れであったなら、自分で考えるよりも先にグシュナサフへ説明を求める。面倒だという男の気分はおかまいなしに、いいから早く言えと急かされていただろう。理解力が乏しい訳ではなく、単に空気が読めない。読めるのに読めない「ふり」をする。毎度グシュナサフはその演技に付き合うはめになった。なれなれしい男なのだ。
 ホルミスダスとは二日前に別れた。青年をおしつけて去って行った。諜報に足手まといがいるのは困るというのが表向きのもっともな理由だったが、おそらく世話を焼くのが面倒なだけだったのだろう。とんでもない話だ。
「見ただけで判るのか」
「わかる」
 ぼそとグシュナサフはこたえる。
 国と名のつく共同体が必ずかかえる設備のひとつに、鋳造所があった。
 軍をかかえる国はどこでも、産出される鉄、もしくは他国から仕入れた鉄を打ち出し鍛え、かたちにする施設が必要である。包丁であるとか樵斧、鎌や短剣を鍛える個人の鍛冶屋レヴェルでは追いつかない。大量に、同じかたちのものを製造しなければ、一軍として態を形成できないからだ。
 鋳造所には各国お抱えの職人が常駐する。技術は職人同士で引きつがれたから、各国それぞれに違いが生じる、たとえば前述した、「同じ名のものであっても、若干の差がある」ものがそうだ。
 武具にはそれぞれ細かな決まりごとがある。重さ、長さ、尖り具合、使う鉄の質。きっちりと区分されているはずのそれは、しかしそれぞれの国でくりかえし生産されてゆくうちに、ところどころに差が生じる。差を見分けられるかどうかは、結局のところ経験でしかなかったが、
 なぜセイゼルが、青年が唸る。
「セイゼルはシビラに協力的なのだろう?」
 口にし、それからすぐにおのれの中で合点がいったらしい。ああ、と嘆息して頭を振った。
「一本縄にまとまっていないのか」
「そうだ」
 グシュナサフは頷いてやる。青年が育った環境もあるだろうが、敏い。
「保守と革新が、必ず派閥をつくる」
 人間が群れとして集まるということは、結局のところそう言うものなのかもしれない。同じ思想のかたまりとは決してならない。ことのはじめは共同体、共同思想をうたっても、必ずどこかで異分子があらわれる。あらがうものがいる。
 前シビラに同情的である流れがある一方で、シビラを切り捨て、ハブレスト国と同盟を組んだ方がよいと主張するものがある。シビラと組まず、ハブレストと協定を結ばず、独立せよという声もある。それぞれの主張のどれが正しいというものはない。すくなくともないとグシュナサフは思う。
 一絡げにできるものではきっとないのだ。
「そんなことより、いいのか」
 ふと気になっていたことが口を衝いてでた。彼にしては珍しく、自分から話を振ったかたちになる。
「うん、……?」
「ハブレストに戻らずとも道はあるだろう」
 ラルヴァンダードより青年を託され、グシュナサフもホルミスダスも、最初から青年を他国へ逃がしてやる腹づもりでいた。そう言うつもりで託されたのだろうと、見越した思いがあった。逃がしたあとのことまでさすがに面倒は見きれないが、それでもハブレストよりの追手を退け、別の道をさし示してやることはできる。
 ところが、青年は質として差し出された国へ戻るという。自棄になっているのかと思ったが、そう言うものでもないらしい。
「俺は、今までたぶん何もしてこなかったんだよ」
 目の前に広げたてのひらを見つめ、青年は言った。
「ただあたえられた場所でぼんやりと時間を過ごす以外に、なにも努力をしてこなかったんだ」
 当たり前なのだと思っていた。属国扱いの祖国に何ができる。たらいまわされるおのれがどれほど足掻いても、ただ籠の中で暴れる飛蝗のようなもので、結局何も変わらない。変えられないと信じて生きてきた。
 国を獲る。
 彼が決断したのはそう言うことだ。
「お前、いくつだ」
 グシュナサフは言った。さきほど襲撃者に構えた斧の刃面を裏に表に眺めながら、小さく切っ先がこぼれていることに舌打ちしつつ言った。
「十九」
「十九か」
 やはり若いのだな。あらためてグシュナサフは思う。おのれが傭兵稼業に踏み入ったのも、ちょうどその時分ではなかったか。
「なにかを始めるのに、早いも、遅いもない」
 だから彼はただそれだけを言った。慰めや励ましにしてはずいぶん大雑把だと自分でも思うが、口がまわらないのだからどうしようもない。
 そうか、と青年がこたえる。軽く曲げた中で小指だけが立ち、それを眺めて思い返しているようにも見えた。



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最終更新:2012年11月10日 06:44