<<Helena -E.ver->>
突き刺せ と俺は言った
聖釘
ヴァチカン第三課の切り札
お前の胸に突き刺せと
その 心の臓腑に突き立てて 人ではないものになれ と
お前は黙って頭を下げた
ひとでなし になるのだと思った
命じた俺が
それを受けたお前が
ああ
俺もお前も同じ闇に巣食う生き物なのだな
幾重にも布でくるまれ
まるで生まれたてのあかんぼうのように大事に大事に布でくるまれた
古代の遺物
否
異物 であるのかも知れず
受け取る お前の手のひらはいつもと同じようにあたたかだった
このぬくもりが消えてなくなるのだ
このやさしいぬくもりが
不意に激情が込み上げた
その「感情」を堪えきれずに顔を上げた 俺に向かって
口を開きかけた 俺に向かって
お前は まるで拒絶するように頭を下げた
叱咤だったのかもしれない
心の弱い俺に対する
いつまでも大人になりきれない俺に対する
ひとでなし になるのだと思った
何も言えない俺も
何も言わないお前も
ことごとく ひとでなしに
とめようと思った
何度もとめようと思った
お前が 人であることをやめて 何が残ると言うのだ
お前が 人であることをやめて 何を残すと言うのだ
だのに俺の口はまるで冗談のように動かず
お前はただ 黙って頭を下げた
ああ
いやだ
いやだいやだいやだ
俺を ひとでなしにしないでくれ
お前は ひとでなしにならないでくれ
そう言いたかった それだけなのに
しくじるな
大事そうに 異物を抱えたお前に俺は思わずかっとなって
滑り出した言葉は形を変えた
次はないぞ と
お前は俺に頭を下げる
心の臓腑が張り裂けそうだと思った
最終更新:2008年05月25日 16:05