「堕落騎士ゴルドー」
"ゴルドーを疑われる"
そう言われて怯えない騎士はいない。
それは主人に忠誠を誓う騎士にとって、最も不名誉なことであり、最大級の侮辱であるからだ。
ゴルドー家は、今は亡き辺境国家リューネシアの下級貴族に名を連ねる家であった。
ゴルドー家の四男として生まれたドル・ゴルドーは、家督を継ぐことはできなかったが、戦働きを認められ、時の姫に召し抱えられるという類稀なる栄誉を賜った。
彼の勇名、武名は並ぶものを知らないほどであったが、彼の名が後世に残っている理由は彼が主君を裏切ったからであり、それによりリューネシア辺境国が滅びたからである。
記録によれば、ドル・ゴルドーは一夜にして城の兵を皆殺しにしたという。
かの有名な画家、"エルトン・エーカー"が残した絵画"孤軍の叫び"は、城門内に屍の山を築くゴルドーの悍ましい姿がまざまざと描かれており、ゴルドーの残虐性を表している。
その逸話からゴルドーの名は、優れた才能を持つものや、頭角を表した秀才を指し示すと同時に、調子に乗って身を滅ぼしてはいけない、という訓戒にもなっている。
騎士の場合は更に、裏切りを示唆する言葉としても使われており、翻って主君への忠誠を示す際の詔に組み込まれることも多いという。
最終更新:2023年04月14日 23:19