417 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/01(水) 08:29:15.03 ID:xzzNCtNLO
冬の波は格別だというのが俺の持論である。夏でも秋でも春でもだめだ。
冬の太陽に照らされた白波の光り方は他の季節とは違うのである! と力説しても賛同を得られたためしはないが、これは信念だから譲ることはできない。
断っじて譲れない部分なのである。
何がいいのかと考えてもわからない。とりあえず砕けて散る独特の波濤の光り方は、日光に影響されているという仮説を独断果断にも立てた。それが俺は好きなんだ。たぶん。
仮説は証明しなければならない。潮風とデジタルカメラの相性なんか気にしたら負けだ。
なるべく晴れた日の昼間をねらう。要は他人の審美眼にかなうような波が撮れたら仮説は証明される。
絶好の日和は思ったより早くやって来た。冬の海は風が強い。しかも寒い。鼻が冷たくて潮の匂いもわからないほどだ。体感温度はどうなっているのか。
むろん、海岸には誰もいない。季節にはレジャー客でいも洗い状態だが、今はひたすら海原と砂が広がるだけだ。
419 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/01(水) 08:32:07.68 ID:xzzNCtNLO
かじかんだ指でカメラを取り出す。穏やかでも叩きつける波でもない。絶好の風と天気に恵まれたことに感謝しつつ、シャッターチャンスを待つ。
量販店のセールで買った安物のデジカメだが、こうやって構えていると気分が出る。我ながら子供っぽいとは思うが、なんとなく格好をつけてしまう。
まさにシャッターボタンに指をかけた時。
「あの、何をしているんですか?」
俺は固まった。収めようとした波は虚しく返って。
黒い髪がなびく。眼を奪われたのはその女性が美人でどストライクだったからでもあるが、何よりも服装が異様だったからである。
紺色のブルマに、体操服ではない白いダボダボのTシャツ。
なんだその格好は。
「いや、写真を撮ってるんですよ」
平静を装って答えた声は震えていたが、それは寒いからだ。別に若い女性と話すから緊張しているわけではない。それに風の音ではっきりは聞こえないはずだ。ちなみに脚も震え気味だったが、それも寒いせいだ。
「しゃしん?」
「は、はい。海が好きなんですよ」
ああ変な人間だと思われないだろうか。まあこの人も他人のことをとやかく言えた義理でなさそうなので気にしないでおこう。
デジカメを見つめる眼に好奇心がありありと浮かんでいて、何か違和感を覚える。
「私も海は好きです。でも、しゃしんで何をするのですか?」
420 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/01(水) 08:33:40.93 ID:xzzNCtNLO
「写真を撮るんです。海の写真を。冬の海の波が特に好きなんですよ」
不思議そうな表情をしている。これは電波な人ではないのかという疑惑が確信に変わりつつあった。
「しゃしんを見せてくれませんか?」
「いや、まだ一枚も撮っていないんです」
俺がそう答えると、彼女はあからさまにがっかりした表情をして黙ってしまった。
いや、そんな顔をされたら何か悪いことをしたような気分になるじゃないか。実際には何もしていないのだけど。
無言の静寂のうちに風と波の音だけが響いて、言語を絶する気まずさである。
どうしたものかと思案している俺を気にもかけず、彼女はやおら立ち上がって海へ歩きだした。
何をするのだろうと見ていると、海に足をひたし手で水をすくいあげ匂いを嗅いでいる。寄せる波は膝上まで濡らすくらいある。心底から楽しそうな笑顔が印象的だった。
非現実的な光景にあっけにとられていたが、よく考えれば真冬の海である。太平洋側とはいえ、いくらなんでも風邪をひく。ついでにシャツが透けそうだ。
「あの、冷たくないんですか」
「ええ、大丈夫です。私は人魚ですから」
421 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/01(水) 08:37:12.96 ID:xzzNCtNLO
電波発言。これは真性と見て間違いない。とにかくどこかに連絡して保護を頼んだ方が良いのかもしれない。
「やっぱり信じてもらえませんよね」
「いや、あの風邪ひきますよ。海から上がりましょう」
俺の言葉を無視して彼女は続ける。
「今日で海に戻るんです。この姿とも今日でお別れです。だから一人ぐらいには話しておいてもいいかなって」
「えーと、保護者の方とかいないんですか」
海から上がると、唐突に彼女は俺に抱きついた。瞬間的に心臓が縮みあがる。彼女は人間の体温をしていなかった。
服の上からでも伝わる。冷えた人の体ではない。これは元から冷たい生き物の身体だ。胸が当たったとかそういうことでささやかな幸せを噛みしめている場合ではない。
「これで信じてもらえますか?」
こくこくとうなずく。ひやりとした身体は不快ではなかったが、正直反応に困る。吐息が白くならないのにも、この距離で初めて気づいた。
「良かった。あなたは私が地上にいた記憶です。忘れないでくださいね」
にっこりと微笑む表情に寂しげな蔭が落ちていた。
「あの、写真を撮りませんか。記憶だけじゃなくて、形にも残るように」
422 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/01(水) 08:38:43.17 ID:xzzNCtNLO
また不思議そうな顔をする。俺は海に向けてシャッターを切り、彼女にデジカメの画面を見せた。
「こうやってしゃしんは絵に残るんですね! すごいすごい!」
幼い子供のようにはしゃぐ。俺は彼女にカメラを向けた。
「あ、ちょっと待ってください。海がいっしょになるように撮って」
そういうとちょっとだけ食い込みかけたブルマの裾を人差し指で直し、海水と戯れるように波打ち際で踊ると、そのまま海の中に入った。
水と一緒に踊る跳ねる舞う飛ぶ。いつの間にか下半身は本来の姿に戻っていた。しぶきが傾きかけた陽に当たって光る。彼女は急に腕を上げた。俺はそこでシャッターを切った。
結局写真は一枚しか撮らなかった。
終わり
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456 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2010/12/01(水) 11:23:34.23 ID:apw2PWyT0
車内では誰も喋らず、小石が車体にぶつかり、サスペンションが軋む音だけが車内を満たしている。
みな、銃器の点検に余念が無い。俺は、手元にあるM-16A2のチャージングハンドルを半分まで引き
異状が無いことを確かめると周囲を見回した。
これから最前線へと向かうのだ。
隊員たちの装備品はバラバラ、唯一揃っているのはアメリカから供与された小銃と、国のアイデン
ティティとなる戦闘服だけ。その上このトラックに乗っているのは自衛隊員などではなく、全員が
基礎訓練しか受けていない高校生である。満足のいく戦闘力とは御世辞にも言いがたい。
俺は戦争が起こる以前は銃が好きなただの男子生徒だったが、まさか本物を手にすることになるとは
夢にも思っていなかった。正直、誰にも理解されなかったこの趣味が役に立つ
なんて、世の中は本当にわからない。
460 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2010/12/01(水) 11:41:29.23 ID:apw2PWyT0
他の隊員たちは、点検に余念が無いとはいえ、ただ使い方を教えられただけである。
セフティのつまみを無意味にひねったり、拳でレシーバーをコツコツと叩いたり、
挙句の果てには、講習で銃口を覗き込んではいけないと教えられたにも関わらず、 目をハイダーに近づけ、異物が無いかを確かめる隊員もいる。
となりの見知らぬ女生徒が手を止め、話しかけてきた。
地区別に徴兵されているため、別の高校に通う生徒もいる。
「ねえ、君、怖くないの?」
他の隊員達がそわそわと落ち着かないのに対し、俺だけがじっとしているのが 目についたらしい。
「怖いに決まってるだろ。これから死ぬかもしれないんだ。……名前は? どっからきたの?」
まさか名前を聞かれるとは思っていなかったのだろう。一瞬戸惑って、女生徒は答える。
「大月友梨。島安商業(仮名だよん)からよ。君は?」
「俺は近藤遼一。西高(同じく仮名だよん)に行ってる。隣同士だったんだな。」
島安商業と西高は隣り合って建設されている。
512 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2010/12/01(水) 15:34:26.91 ID:apw2PWyT0
よろしくね、と彼女は無理に笑顔を作りながら言った。とても可愛らしい顔つきで、思わず俺は見とれてしまう。
「どうしたの?」
言葉を返さない俺を不思議に思ったのか、彼女は問いかける。
「あ、ああ よろしく。」
だんだん機関銃の発砲音がはっきりと輪郭を帯びてくる。
「いよいよだな。」
口に生唾が込み上げてくる。もしかしたらこれで死ぬのかもしれない。
「そう……ね。私たち、高校生なんだよね……私は内定も決まってたのに……」
彼女はどうしてもこの現実が受け入れられないらしい。
「俺だって折角国立大学の判定でBが出たのに、こんなところにいるんだ。大丈夫だよ。死にはしないさ。」
514 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2010/12/01(水) 15:41:21.35 ID:apw2PWyT0
戦闘ヘリコプターの軽快なローター音が頭上を通り去っていく。
「君って楽天家なんだね……。」
彼女がこちらを見つめる。その顔は不安と、どうしてそんなに 軽く考えられるのかという疑問の表情で満たされている。
火薬の匂いがあたりを包み始める。
「ははは……よく言われるよ。よし。それじゃこうしよう。帰ったらメールするからな。メアドを教えてくれ。ここで知り合ったのも何かの縁だ。」
あえて「生きて帰ったら」とは言わなかった。
899 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2010/12/03(金) 20:05:54.85 ID:/JK1uao00
514の続きをば
またもヘリコプターの飛行音が空を駆け抜ける。
だが、今回は先程とはなにか様子がおかしい。助手席に座る隊長が何かを喚いている。
ほかの隊員たちもそれに気づいたらしく、運転席と荷台の仕切り越しに漏れる声に耳を傾けている。
突然、爆発音がトラックの前の方で炸裂する。ほろに遮られ、音がくぐもっているが、前方から聞こえたということは確かだった。その音に続いて、土木工事で石を切削するような音が聞こえた。
905 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2010/12/03(金) 20:25:39.49 ID:/JK1uao00
突然車体が左へ揺さぶられ、体が右側へと投げ出される。
咄嗟に荷台の柵を掴み、体を左へとひねり、さっきまで喋っていた大月の上に体を被せるようにする。なぜそんなことをしたのかは分からなかったが、自然に体が動いた。
左へと曲がっていたと思っていた車体が、今度は右へと急旋回しを始める。
右座席に座っていた隊員がこちらに投げ出され、背中に当たり、背中を鈍痛が駆け抜ける。
バウンドしてその隊員は背中でバウンドをすると、車体後部から飛び出していった。
トラックが完全に横転し、横に回転を始めると、荷台では武器のコンテナや人、などが跳ね回り、まるでミキサーのような状態になっていた。
一回転して、タイヤが地面を捉えたところで、ようやくトラックの動きが止まる。
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566 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/01(水) 21:32:53.66 ID:yon/gufy0
先に宣言するんじゃなかったwしくじったw>>559
もう忘れたから帰る
明日と永遠が同義だった頃。
夕暮れの公園は、綿菓子のような甘い夢に包まれていて。
鉄と湿度と砂埃の臭いを、暖かい団欒の香りが上書きする刹那。
「また明日ね」
と、輪舞にも似た不規則な鬼ごっこを約束する子供たちは、信じることに、あまりにも無用心で。
緋色の甘い夢は街路にオルガンの音を伴って、贅沢な痛みさえ、懐かしく。
質素な望みさえ、まだ遠く。
その先の、角を曲がれば、駄菓子屋の、悪童達を見つめる優しげな瞳。
自転車のブレーキの音、猫が餌をねだる甘え声、
道端ではしゃぐ女学生の笑い声。
全てがシャボンに包まれたような、夢とも判然としない記憶。
自分の背中に追いつけなくて、もう悲しむことは、やめようか。
俺は、そんな風景を。
まだ、忘れたくないから、帰る。
もう、忘れたから、帰る。
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『釣りをする少女』
629 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/02(木) 04:37:07.00 ID:URWRZF5F0
長い間同じ仕事を繰り返していると、どんな人間も息抜きをしたくなってくるものだと言う。
私は今まで20年以上働いてもそんなことは無かったのだが、秘書がたまには私も息抜きをするべきだと薦めてきた。
それよりもやるべきことが色々あると断ろうとしたが、結局押し切られてしまった。
それで今、私はとある小さな港町に休暇に来ている。
長い間世界を飛び回って、いくつかの港町を訪ねたこともあったが、この町はどの港町よりも小さい。
少し寂しげな色を含む潮風を感じながら、私は海岸沿いの道を散策していた。
ある波止場に着いたとき、私はその少女を見つけた。
脇にバケツを置き、足を投げ出して波止場に腰掛けながら海に向かって釣り糸を垂らす、明るい髪色のワンピースを着た少女。
こんな時間にこんなところで釣りをする少女というのが物珍しく、私は声をかけてみたくなった。
「釣れますかな? お嬢さん」
声をかけられて私の方を見た少女は、数秒きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに笑顔を浮かべてこう返した。
「うん、釣れたよ。ちょっと面白そうなのが」
158 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 15:37:06.13 ID:/N5lZuo80
少女の脇のバケツを覗くと、入っているのは容量の半分ほどの水だけ。
「……私には、何も釣れていないように見えるのだが」
「実はこれ、あたしにしか見えない魚なんだ。どう?面白いでしょ?」
「……ははは」
面白いのは君だろう、とは言わないでおく。
「一人で釣りをしていて、寂しくないのかね?友達と遊んだりはしないのかい?」
「うーん、友達はいるんだけど、はっきり言って釣りしてるほうが楽しいんだよね」
「ふむ……まあ、人それぞれか」
「そーゆーこと。ところでおじさんはどういう人なの?この町の人じゃないよね?」
「私かい? 私はちょっと休暇を取ってこの町に旅行に来ていてね。本当は忙しいのだが、秘書が休暇を取れとうるさくてな」
「ふーん。どこから来たの?」
「どこから……むう、一応家と持っている会社は東京にあるが、家にいるよりあちこちを飛び回っているほうが多いからな……
ここから来た、と自信を持って言える場所はないな」
「てことは、大きな会社のすっごく忙しい社長さんなんだ」
「まあ、簡単に言えばそうなるかな」
「へー、おじさんすごいんだね」
「そんなことはないよ。ただ昔から商売が好きなだけだからね」
だからこそ、これまで働いて仕事に飽きたことが無いのだろう。
159 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 15:39:34.15 ID:/N5lZuo80
●
その後、私たちは日が半分ほど落ちるまで他愛の無い話を続けた。
「ふむ、そろそろ宿に戻るかな」
「そう。じゃあねおじさん」
「明日もここで釣りをするのかい?」
「うん。用事があるとき以外、いつもここで日が暮れるまで釣りしてるよ」
「そうかい。では、また明日も君に会いに来るよ」
「いいの? せっかく旅行に来たのに、町を見て回ったりしないの?」
「昨日と今日で、この町は大体見て回ってしまったからね。むしろ、残りの休日をどう使おうか迷っていたところだよ」
「そう。それじゃ、また明日」
「ああ、また明日」
別れの挨拶を済ませると、私は釣りを続ける少女に背を向けて宿への道を歩き始めた。
160 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 15:43:01.55 ID:/N5lZuo80
●
次の日に言葉通りに同じ波止場に行くと、少女もまた言葉通りに釣りをしていた。
「やあ、釣れるかい」
「んー? 昨日と同じだよ」
「ということは、今日もさっぱりか」
「だから、面白いのが釣れたんだって」
「まあ、そういうことにしておいてあげよう」
「むー……」
頬を膨らませて不機嫌な表情を浮かべる少女に和みながら、少女の隣に腰掛ける。
「ねえ、おじさんの話もっと聞かせてよ。おじさんって何歳?」
「ふむ、確か50前後だったかな。商売ばかりしていて祝ってくれる家族もいないから、自分の歳も忘れそうになってしまうよ」
「そんなにお仕事ばっかりやってるの?」
「そうだね。大学を卒業してからある会社に数年間勤めた後、独立して自分の会社を立ち上げたんだ。
最初は生活用品をいくつか扱うだけだったんだが、なかなか売れなくて辛い日々を過ごしたよ。
けどいくつもの危機を乗り越えていくうちに商品も増え会社も大きくなって、今じゃ世界を相手に様々な商品を扱う毎日さ」
「ふーん。じゃあぶっちゃけ儲かってるの?」
「ストレートな質問を包み隠さずぶつけてくるな君は。まあ、儲かっているといえば儲かっているかな」
「すごいんだ、おじさん」
「そんなことはないよ。私はただ好きなことをやっているだけなんだから」
161 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 15:47:06.48 ID:/N5lZuo80
「さっきも言ってたけど、おじさんって家族いないの?」
「ああ、もう両親は亡くなってしまったし、結婚相手を探す時間を仕事に費やしてしまったからね。
そういう話を持ちかけられたこともあるが、その気になったことは一度も無かったな」
「寂しい人生だね」
「自分ではそうは思わないな。自分の好きなことに人生を費やせて満足しているからね」
「ふーん……まあ、人それぞれか」
「そういうことだよ」
こんなふうに自分の話をするのも随分と久しぶりだ。
なのでついつい時間を忘れて話し込んでしまい、気が付けば日が暮れかけていた。
「おっと……それではそろそろ宿に戻るよ」
「うん。また明日も来てくれる?」
「ああ。約束するよ」
「そっか、ありがと。じゃあね」
「また明日、お嬢さん」
163 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 15:51:09.57 ID:/N5lZuo80
●
次の日、私は近くの漁師に借りた釣竿を持って波止場にやって来た。
「やあ、お嬢さん」
「こんにちは……あれ、どうしたのそれ?」
「君と一緒に釣りでもやってみようと思ってね。色々と教えてくれないかな」
「おじさん釣り初めてなの?」
「そうだよ。だから君に教えて欲しいんだ」
「うん、いいよ。それじゃ座りなよ」
「ああ。よっこらせ……」
「あ、隣はダメ」
「え……」
少しショックを受けた。この3日で、多少なりとも私に心を開いてくれていると思ったのだが……。
「そんな近くで一緒に釣りしたら、釣り糸が絡まっちゃうでしょ。ちゃんと距離を置いて座らないと」
「あ、ああ、そういうことか」
「まったく、これだから素人は……」
「……申し訳ございません」
まさかこんな小さな子に謝ることになるとは。
今度は会話に差し支えないほどの距離を置いて座った。
164 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 15:55:20.51 ID:/N5lZuo80
●
「……釣れないな」
「そう簡単には釣れないよ」
「経験者は語るか」
「そーそー。気長に待つしかないね」
「ではその間、今日は君の話でも聞かせてもらおうかな」
「えー、どうして?」
「いやいや、昨日は私が自分の話をしたんだから、今日は君が話をするのが筋というものだろう」
「う……それもそっか」
こういう思考回路を取る辺り、やはり私は根っからの商売人なのだろう。
「仕方ないね。それじゃあ……歳は11歳、趣味は釣り」
「それは見れば分かるよ」
「やっぱり? じゃあ……血液型はB型で、生まれてからずっとこの町に住んでて、他の町に行ったこともなくて、
あと……おじさんと一緒で、家族がいない、かな」
166 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 15:59:21.70 ID:/N5lZuo80
「あたしが5歳のときに、お父さんとお母さんが事故で死んでさ。
引き取ってくれる親戚もいなかったから、元の家に住み続けることになったんだ。
あ、もちろん自分の力だけで生活してるわけじゃないよ。隣の家の漁師さん家がご飯をおすそわけしてくれるし、
お父さん達が遺してくれたお金も残ってるから、生活費にはまだ困ってないしね。
でも寝るときとかいつも一人きりだから、最初は寂しかったかな。今はもう慣れちゃったけど」
「……すまないね、嫌なことを聞いてしまって」
「もう慣れたって言ったじゃん。一人で大変なこともあるけど、今じゃ一人の方が気楽なくらいだし」
「一人で暮らしていて、危ない目に遭ったりしなかったのかい」
「この町小さいから、変な人とかあまりいないんだ。だから大した問題が起きたこととかはないよ」
「……」
それでも辛いことは沢山あるだろうに、この少女はそれを全く感じさせずに自分のことを話した。
それから私は何も言えず、釣り糸の先を眺めながら少女の話を聞いていた。
167 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 16:03:15.04 ID:/N5lZuo80
●
「全然釣れなかったね」
「そうだね……まあ、仕方ないか」
すでに日は暮れかけていた。もう宿に戻らなければ。
「今日はすまなかったね、あんな話をさせて」
「だからいいってば。しつこい男は嫌われるよ?」
「ははは……気をつけるよ。それじゃあ、また明日」
「うん、また明日」
私は夕日を背に、少女について様々なことを考えながら宿に戻った。
168 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 16:06:52.56 ID:/N5lZuo80
●
今日は釣竿は借りずに波止場に来た。
いつも通り、少女は波止場に腰掛けていた。
「やあ。今日もいつも通りかい」
「いつも通りだね。今日は釣りしないんだ」
「ああ。君の釣りを眺めていることにするよ」
私は少女のすぐ横に腰掛け、少女と一緒に釣り糸の先を眺め始める。
「今日は釣れるかな」
「さあね。釣れたことなんて今までほとんど無いし」
「つまらなくはないのかね?」
「釣りの極意は待つことにありって、隣の漁師さんが言ってたよ。別に釣れなくてもこうしてるだけであたしは楽しいしね」
「なんだか達観しているね」
「そんなことないよ。ただ静かなのが好きなだけ」
今日もまたこんなふうに他愛も無い話をして、一日が過ぎていく。
しかし私は、ある決心をして今日この波止場に来ていた。
169 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 16:10:31.98 ID:/N5lZuo80
●
「日、暮れてきたね」
「そうだね」
「それじゃあ、また明日かな」
「いや……明日は来れないんだ。明日で休暇を終えて仕事に戻るからね。君に会うのもこれで最後だ」
「……そっか。分かっちゃいたけど寂しくなるね」
「それで、君に話があるんだ」
「何?」
「……私と一緒に来ないかい?」
「……え……?」
そのときの少女の表情は、今日までで一番驚きの色を濃く浮かべていた。
171 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 16:15:29.74 ID:/N5lZuo80
そのときの少女の表情は、今日までで一番驚きの色を濃く浮かべていた。
「君が嫌なら無理にとは言わない。だが君が私と来てもいいなら、私は君を家族として迎え入れたい」
「……どうして? あたしがかわいそうに思えるから?」
「それが全く無いとは言わない。だが私自身も、この数日君と過ごせて楽しかった。
まるで、そう……娘か孫と一緒に過ごしているように」
「おじさん……」
「君が家族になってくれるなら、あの一人きりで体を休めるだけの家も、本当の意味での帰る場所になるかもしれない。
私が手に入れることのなかった、帰りたいと思える家族のいる家に」
「……」
「私と暮らすのは嫌かね?」
「……ううん。そんなことない……ありがとう、おじさん。
あたし、おじさんと一緒に行く……おじさんの家族になりたい」
「……お嬢さん、ありがとう」
「お礼なんて言わないでいいよ。本当にありがとう……」
笑顔で涙を浮かべる少女を見つめながら、休暇を取る前の秘書の言葉を思い出した。
……仕事から離れたところにも、何か得るものがあるかもしれない。
なるほど、たまには秘書の言うことも聞いてみるものだ。
確かにここで、すばらしいものを見つけられた。
172 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 16:17:42.16 ID:/N5lZuo80
●
――日が暮れ、少女だけが残された波止場。
釣り糸を海に垂らし、目を閉じて微笑む少女。
やがて月が太陽にとって変わり輝きだすころ、少女は立ち上がり、釣竿を引き上げる。
本来釣り針が付いて然るべき釣り糸の先には、防水加工の施された『大物 あるいは幸せ』と書かれた紙。
じっとそれを眺め、少女は大きな笑みを浮かべた。
「……にひひ」
終わり
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872 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/03(金) 14:06:41.83 ID:7BZZ6zo7P
通常状態→魔法少女(第1形態)→魔法少女(第2形態)→魔法少女(第3形態)
魔法を使いすぎると吐血する
攻撃をうけると流血する
詠唱には時間がかかる
能力
883 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2010/12/03(金) 14:35:48.18 ID:JEHajB5q0
872陵辱シーンから入るがこんなのかな?
怪人との戦いに敗れた魔法少女。ツインテールのピンクの髪は血の色に濡れ、魔法を行使し過ぎたために口元には血が流れている。怪人――2段野郎はその好敵手が倒れている様を口元を歪めながら見つめるのだった。
「ドゥルッフ! いい様だな、魔法少女」
「うう」
うめき声を上げる魔法少女を見下ろしながら、おもむろに自信の下半身を覆っていた布を剥ぎ取った。
「我が名の2段とはカリが2段あることから由来される! ドゥルッフ、では味合わせて頂こうか」
グフフと小笑をもらしながら魔法少女のピンクのパンツを破りさる2段野郎。真っ白い太ももの付け根を辿り、一番上まで辿ると毛が生えてないパイパンが広がっていた。
「ドゥルッフ! パイパンの全然濡れてない女でも安心! 我が暗黒魔法にはそのような女を喜ばせる方法は108つある!」
もごもごと何かを唱える2段野郎。唱え終えると、何もしていないのに魔法少女の割れ目からは愛液がしたたり落ちる。
「ドゥルッフ。では頂こう」
びんびんのチンポを割れ目にあてがう怪人。怪人の説明通りそのチンポにはカリが2段備わっていた。
つぷっ。愛液に亀頭を濡らしながらも潜入する。
「んっ、あああああっ」
倒れていた魔法少女は、膣から送られる刺激に顔を上げた。魔法少女が見つめる先には怪人のチンポが己の膣に収まっていく光景。ずりずりと上半身を上へと逃がすが、怪人は魔法少女の腰をしっかりと握った。
「ドゥルッフ、入るぞ」
「いやああああ!」
絵に文をつける仕事をしたいが、描いたキャラの設定が欲しい。後純愛路線とかエロく頼むとか。
上記は一発物です。
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135 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 12:05:41.44 ID:iSQw5uzz0
2レスSS いくです。
熱帯魚
さびしい。
それが始まりだった、はず。
苛む者すらいとおしく思える程に。
頬染める少女が大人になるよりも、はるかに長い時間をかけて
自身を色で染め上げてきた、熱帯魚。
ぷく、ぷかり、ぷわん。
そのあぶくの隙間を縫うように、泳ぐ。
ぷく、ぷかり、ぷわん。
蒼白いライトも故郷の空の碧さには遠く。
136 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/04(土) 12:06:44.41 ID:iSQw5uzz0
135 続き。
少女は問う。
「そんなに御洒落なのに、何故悲しそうなの」
熱帯魚は答えない。
ただ、あぶくの音が、ぷく、ぷかり、ぷわん。
どんなに着飾ったドレスも、みんな同じでは、ただの服。
虚栄心を隠すことままならぬ、ハリボテの鎧。
蝶のブローチも銀のロケットもマーブル石の指輪も。
褒めてくれる人がいなければ、少女を傷つける。
少女は笑う。
「だって、褒めてくれるもの」
男の鎧は、下心を隠すぶんだけあればいい。
葉っぱ一枚、頭に乗せれば、どろんと化けていっちょうあがり。
さびしい。
それが始まりだった、はず。
苛む者すらいとおしく思える程に。
熱帯魚は、
少女が少女ではなくなってしまう瞬間にも
ぷく、ぷかり、ぷわん。
たゆたう。
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252 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/05(日) 10:15:39.31 ID:lwdq8kYb0
笑顔の魔法
「女の子はね」
泣き虫だった少女は、童話の中にあった言葉を思い出す。
「もらった花束の数だけ綺麗になれるのよ」
「そして、綺麗になったら、魔法が使えるの」
童話の魔女は語る。
ぶくぶくと。
金属の釜の中には大きな泡が、消えそうで消えずにいる。
木の杖を掲げ、魔女は呪文を唱える。
少女には聞き取れない、おとぎの国の言葉で。
降り続く雨は、誰かの涙。
窓の外ではクジラが飛び、
森の奥では彗星が寝坊する。
部屋に漂う甘い匂いは、お菓子の家。
棚の薬はPOPなジェリービーンズで、
真黒な猫は、大きなあくびをして丸くなる。
253 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/05(日) 10:16:46.70 ID:lwdq8kYb0
「はい、これで大丈夫よ」
魔女は笑いかける。少女の不安を拭い取るように。
「笑顔は、意思という魔法だから」
無理をする必要はないけれども、と魔女は言う。
まわりの人を幸せにするための魔法だと魔女は言う。
少女がぎこちなく微笑んで見せると、魔女は満足そうに笑い、
「それでいいのよ」
と、胸を張り、ウィンクをしてみせる。
「女の子は、それだけでもう魔法使いなんだから」
「花束は、なにかを乗り越えたことへのプレゼントだから」
魔女は棚からビンをひとつ取り出しながら。
「そして、おまじない」
人差し指で、ジェリービーンズをひとつ、少女の口に。
254 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2010/12/05(日) 10:17:54.12 ID:lwdq8kYb0
そして、少女は目が覚めた。
枕元には、POPなジェリービーンズ。
窓の外は、白い雲が泳ぐように流れて。
「そう、大丈夫」
少女は自分に言い聞かせるように、つぶやく。
ジェリービーンズひとつ、歯応えなく口の中で消えた。
涙の跡には、まだ少女自身気付いていないままで。
……
少女は振り向く。
少女は、ステップをひとつだけ、経験した。
そして、少女は花束を受け取る。
曇ることのない心からの笑顔。拍手が少女とみんなを包む。
「女の子はね」
花束の中から可憐な一輪をとりだし、ひとりの赤ちゃんの胸に飾る。
「もらった花束の数だけ綺麗になれるのよ」
ちょっと誇らしげに、少女は微笑んだ。
(おわり)
最終更新:2010年12月06日 16:58