熱帯魚 @
さびしい。 @
それが始まりだった、はず。 @
苛む者すらいとおしく思える程に。 @
頬染める少女が大人になるよりも、はるかに長い時間をかけて @
自身を色で染め上げてきた、熱帯魚。 @
ぷく、ぷかり、ぷわん。 @
そのあぶくの隙間を縫うように、泳ぐ。 @
ぷく、ぷかり、ぷわん。 @
蒼白いライトも故郷の空の碧さには遠く。 @
少女は問う。 @
「そんなに御洒落なのに、何故悲しそうなの」 @
熱帯魚は答えない。 @
ただ、あぶくの音が、ぷく、ぷかり、ぷわん。 @
どんなに着飾ったドレスも、みんな同じでは、ただの服。 @
虚栄心を隠すことままならぬ、ハリボテの鎧。 @
蝶のブローチも銀のロケットもマーブル石の指輪も。 @
褒めてくれる人がいなければ、少女を傷つける。 @
少女は笑う。 @
「だって、褒めてくれるもの」 @
男の鎧は、下心を隠すぶんだけあればいい。 @
葉っぱ一枚、頭に乗せれば、どろんと化けていっちょうあがり。 @
さびしい。 @
それが始まりだった、はず。 @
苛む者すらいとおしく思える程に。 @
熱帯魚は、 @
少女が少女ではなくなってしまう瞬間にも @
ぷく、ぷかり、ぷわん。 @
たゆたう。 @
最終更新:2010年12月26日 04:15