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【プールに浮かぶ水死体(嘘)】


京太郎「……さて。来ましたよ、プール」

京太郎「これでナンパは無理でも、メアドくらいは……」

京太郎「……」

京太郎「……そんな、気分にはなれねーよ」


淡『――うっさい!』

淡『私のこと、嫌なら……無理して合わせなくていい!』

淡『そんなんするくらいなら、話して来なくていい!』

淡『そういうのは嫌だから、もう顔見せんな!』

淡『私は、あんたみたいな奴が嫌いだ!』

淡『……大、嫌いだ』


京太郎(嫌われてるって、知ってはいたけど……)

京太郎(やっぱ、いざ面と向かってそれを言われると……きっついな)

京太郎(大星であっても……誰かに拒絶されるのは、辛い)

京太郎(……はあ)

京太郎(あれから時間置いたけど、やっぱ来るなぁ……こういうの)

京太郎(つーか)

京太郎(アイツには、俺が無理して話しかけてるって……そう見えたのか?)

京太郎(……見えたんだろうなぁ)

京太郎(流石は、魔物級だよなぁ……)

京太郎(咲も宮永プロも、なんだかんだ直感すげーもんな)


京太郎(……俺、そんなに無理してる顔してるか?)

京太郎(別に、いつも通りだと思うけどな)

京太郎(やってることも、ここ暫くは大して変わらんし……)


京太郎(……あー)

京太郎(なんなんだよ、本当……)

京太郎(あー)

京太郎(あー……)

京太郎(……)

京太郎(よし、こんな時は目の保養だな!)

京太郎(折角、若いちゃんねーが多い場所に来たんだし!)

京太郎(いつ水着とボイン見るの? 今でしょ!)

京太郎(暫く麻雀の方の牌(パイ)オンリーだったし……別のパイも見ないとな!)

京太郎(乙な方のパイを!)

京太郎(よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!)

京太郎(……)

京太郎(……何言ってるんだろう、俺)

京太郎(これは、疲れてるのかも知れない)


京太郎(……っと、松実さんからメールだ)

京太郎(防水ポーチに携帯入れてるから、濡れる心配もないしな)

京太郎(えーっと、何々……?)


京太郎(『須賀くんは何をしていますか? 私は元気です』)

京太郎(『ご飯ちゃんと食べてる? 無理してないかな?』)

京太郎(『休みたくなったら、いつでもうちの旅館に遊びにきてください』)

京太郎(『あと、小走プロとのタッグマッチ優勝を見ました。おめでとう!』)

京太郎(『おねーちゃんと一緒に、テレビの前で応援してました』)

京太郎(『知ってるかな? 私、昔の小走プロと戦ったことあるんだよ!』)

京太郎(『ドラは私のところにあるのに、凄い追い上げをしたのにびっくりしました』)

京太郎(『奈良県個人一位だったんだよ? すごいね~』)


京太郎(……癒される。結婚したい)

京太郎(……)

京太郎(この後の文さえ、なければ)


京太郎(えーっと)

京太郎(『それはそうと、昨日かなりのおもちをおもちなお客さんが来ました』)

京太郎(『思わず変な声が出そうになるくらい、すばらっ!だったよ』)

京太郎(『あ、すばらって言うのは花田プロの口癖で……』

京太郎(『って、同じ業界の須賀くんが知らないわけなかったね。えへへ、失敗失敗』)

京太郎(『私、昔に花田プロとも一緒に打ったんだよ~? すごいでしょ』)


京太郎(可愛い)

京太郎(正直あの人自身スタイルいいし、付き合いたい)

京太郎(なーんてな、ハハハ)

京太郎(……無理だって。判るから)

京太郎(だってさぁ……)


京太郎(『話を戻すね!』)

京太郎(『その、おもちの人のおもちは一見しておもちってわからないんだけど』)

京太郎(『でも歩き方から考えるとどうみてもおもちをおもちで』)

京太郎(『結構着痩せするタイプのおもちらしくて、服の下は中々におもちらしいおもちなんだよね』)

京太郎(『体のラインが判りづらい服を着ているあたり』)

京太郎(『実は自分のおもちにいい印象をもっていないのかもしれないね。勿体ないよね』)

京太郎(『そして、なんとね!』)

京太郎(『この人が着替えてるところに立ち会う機会があったんだよ!』)

京太郎(『でね、でね! この人のおもちは――(後略)』)


京太郎(……知ってた。こういう人だって知ってた)

京太郎(この手の話題を、あっけらかんと振ってくるあたり……)

京太郎(絶対俺、男として意識されてないよな)

京太郎(……)

京太郎(……はぁ、知ってた)

京太郎(俺は巨乳に対して縁がないこと、知ってた)


京太郎(さて……返信、どうしようかな)

京太郎(いや、巨乳好きだけどさ)

京太郎(流石に、女性相手にそんな話とかできねーから)

京太郎(そこまで俺、狂ってないから)

京太郎(そうだな……えーっと)


京太郎(『なるほど、それは松実さんの言うようにすばらっ!ですね』)

京太郎(『松実さんが喜ぶところがありありと目に浮かんで、俺もその場にいる気分になりました』)

京太郎(『……いや流石に、着替えに立ち会うって意味じゃないですよ(笑) 念のため』)

京太郎(『俺は今日は、オフです』)

京太郎(『プールに来てます。運動と……目の保養に(笑)』)

京太郎(『なーんて、俺がこんなこと言ってるって世間様に知られたら困るんで、内緒ですよ?』)

京太郎(『二人だけの秘密ですね』)


京太郎(……で)


京太郎(『どうせなら、松実さんと一緒にプールに来たいなーって』)

京太郎(『そんな風に思ってました。おもち品評会的な意味で』)

京太郎(『……まあ、松実さんの水着が見たいって言うのもありますけど(笑)』)

京太郎(……いや、これは不味いか?)

京太郎(変に意識されて、メールしてくれなくなったら悲しいしな)

京太郎(脈が全然なくても、お疲れさまメールに結構癒されるんだよな)

京太郎(……はぁ)

京太郎(いいや、これも送ろう)

京太郎(んで、ついでに……)


京太郎(『もし良かったら、そっちに休みに行くときに……海とか行きませんか?』)

京太郎(『今年の夏も麻雀付けってのは寂しいんで、できればどこかに遊びに行きたいです』)

京太郎(『松実さんさえよければー、なんですけど……』)

京太郎(……)

京太郎(結構、思いきったな……俺)

京太郎(ちょっと露骨か……?)

京太郎(……)

京太郎(ええい、ままよ!)



京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……返信、まだか)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……やっべ、ぶっこみ過ぎたか)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……この時間、心臓に悪いよな)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……まだかよ)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……これ、まずったパターンか?)


京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……いやでも、あの人結構長文書くし)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……今、忙しくなったのかも知れないし)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(すげー不安だ)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(やっべ、引かれたらどうしよう……)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(何で俺、プールに来て携帯と睨めっこしてんの?)



京太郎(おっ、返信来た!)

京太郎(タイトルは……『いいね』!?)

京太郎(よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ! これ、来たんじゃね!?)

京太郎(おもち狂いってとこ除けば、松実さんスゲーいいもんな!)

京太郎(可愛いし、気が利くし、優しいし、家事できるし……スタイルいいし)

京太郎(頑張れメール、凄い励まされるし)

京太郎(前に『いやでしょう』の企画でいったとき、かなりこっちに気を使ってくれたもんなぁ)

京太郎(結構、マジなんだよなぁ……)

京太郎(うおー、やっべやっべ!)

京太郎(テンション上がってきたぜ!)


京太郎(えーっと、本文は……何々?)

京太郎(『海とか、とっても楽しそうだねー』)

京太郎(『寒がりのおねーちゃんと違って、私は水着も平気だよ?』)

京太郎(『でも残念ながら、奈良には海がないんだよね。これが』)

京太郎(『それに……夏場は、忙しくなっちゃって……』)

京太郎(『海まで遊びに行って、帰ってくるのは難しいかな?』)

京太郎(『お盆はお休みするけど……ちょっと予定があるんだ』)

京太郎(『誘って貰って嬉しかったけど……ちょっとごめんなさい、だったよ』)

京太郎(『海は無理だけど、うちには温泉があるから』)

京太郎(『入りに来てくれると、嬉しいな~(*´ω`*)』)


京太郎(……ドSか)

京太郎(タイトルで期待させといて、ドSか)

京太郎(これは……どっちなんだろ)

京太郎(角が立たないようにお断りのメールなのか)

京太郎(それとも本当に忙しくて、残念に思ってるのか)

京太郎(……)

京太郎(……メールだと、そのあたりの機微がわからないんだよな)

京太郎(視えないから苦手だよ、メールはさ……)

京太郎(……あー)

京太郎(金だけ落としに来いって意味とかじゃないよな……)

京太郎(いや、松実さんに限ってそんなのはないな)


京太郎(……)

京太郎(とりあえず、無難に返信しとこう)

京太郎(あー)

京太郎(……今思ったけど、松実さんって穏乃の話に出てたよな)

京太郎(話に出ても顔が分からないから……全然印象に残ってなかったけど)

京太郎(そっか、穏乃と憧の先輩なんだな)

京太郎(……考えてみれば。灼もだな)

京太郎(……)

京太郎(なんつーか、凄い縁やな)


  ◇  ◆  ◇


【温泉に浮かぶ焼死体(嘘)】


玄「……今大丈夫かな?」

玄「迷惑だったりしないかな?」

玄「……うーん」

玄「須賀くん、忙しそうだから……あんまり変なメール送ったら、きっと困るよね」

玄「……そうだ !」

玄「須賀くんもおもち好きだから、おもちのことを乗せたら喜んでくれるよね!」

玄「えーっと……」


玄「……うん、これでよし!」

玄「これならきっと自然に、メールが続くよね!」

玄「……」

玄「……」

玄「……お仕事中だったかな?」

玄「……」

玄「……」

玄「……でも、もうちょっと待ったら返信が来るかも」

玄「……」

玄「……」

玄「……どうしよう。長文過ぎて、面倒だって思われてたりして」

玄「やっちゃったかなぁ……」

玄「おねーちゃんが居たら、相談できるのに……」

玄「……」

玄「……迷惑になってないかな?」

玄「……それが、一番心配」

玄「……」

玄「……」

玄「やっぱり、やめとけば良かった……?」

玄「……」

玄「……うぅ」

玄「長すぎたよね、やっぱり……」

玄「……」

玄「……」

玄「……忙しいのかな」



玄「……!」


玄「……あ、広告メールだった」

玄「……」

玄「……」

玄「……どうしよう。失敗しちゃった……?」

玄「……」

玄「……」

玄「……それともやっぱり、おもちの話はやめた方が良かったかな」

玄「須賀くん……好きって判るけど、恥ずかしそうにしてたよね」

玄「……どうしよう」

玄「女なのにおもちについて熱く語る女って……引かれるのかな?」

玄「……おねーちゃん居たら、相談できるのになぁ」

玄「須賀くんの趣味とか、訊いてくれないかな……?」

玄「麻雀は……仕事じゃないときは、仕事を忘れたい人かも知れないから……」

玄「うーん」

玄「……」

玄「……」


玄「……!」

玄「あっ、来た!」

玄「えーっと、何々……?」

玄「なるほどなるほど……ふーむ」

玄「やっぱり、おもちの話は好感触なのかな」

玄「良かったぁ……」

玄「うんうん」

玄「判るよ。いっつも目を使ってるもんね」

玄「……ふふ」

玄「内緒かぁ……」

玄「……こういう、二人だけの秘密は親密度を上げるって雑誌にも書いてあったから」

玄「えへへ……好印象なのかな?」

玄「それで……えっと」

玄「プールか……いいね。いいね」

玄「品評会って、須賀くんもやっぱりおもちが大好き――」

玄「って、えええええええええええええええ!?」

玄「わ、私の水着が見たい……!?」

玄「えっ、えっ、えっ……?」

玄「い、一緒に海に行きたい!?」

玄「は、ううう……」

玄「ぅぅぅう……」


玄「……」

玄「も、もしかして……」

玄「これって……デートのお誘いなのかな……?」

玄「……で、でも私」

玄「おねーちゃんみたいに凄いおもちあるわけじゃないし……」

玄「うぅぅぅぅ」

玄「……どうしよう」

玄「やっぱり、デートなのかな……これ」

玄「でも……でも、でも、でも……!」

玄「いきなりこんなこと、言われても……」


玄「……」

玄「……奈良には、海ないし」

玄「もしかしてこれ……お泊まりデート……?」

玄「あう……」

玄「須賀くんと……お泊まり……」

玄「……」

玄「……」

玄「えへへへへ」

玄「……」

玄「……」

玄「……はう!?」

玄「……」

玄「……」

玄「は、早いよ! まだ早いよ!」


玄「……で、でも」

玄「まだ苗字でしか呼んでくれてないのに……お泊まりはないよね」

玄「……」

玄「……どうなんだろ」

玄「……どうしよう」

玄「おねーちゃんが、居てくれたらなぁ……」


玄「須賀くんは……爽やかだから」

玄「本当にただ、海に遊びに行きたいってだけなのかも……」

玄「私、おねーちゃんみたいにおもち大きくないし……」

玄「お泊まりなら、お泊まりって言うよね……?」

玄「……どっちなんだろう」

玄「聞いた方がいいのかな……?」

玄「……」

玄「……でも」

玄「自分から聞くと、誘ってるみたいで恥ずかしいし……」

玄「違ったら、もっと恥ずかしいよね……」

玄「それで避けられたりしたら……」

玄「……」

玄「……うーん」


玄「どうなんだろう……?」

玄「もし、本気だったら……」

玄「駄目って言ったら、別の時間とか出してくれるよね……?」

玄「……ざ、雑誌には」

玄「そんな風に書いてあったから……」

玄「……」

玄「……お盆には、お墓参りしなくちゃいけないし」

玄「……どうしよう」


玄「それとなく……聞いてみればいいのかな」

玄「ちゃんと、行きたいなってのは書いて……」

玄「あと、家に泊まりきてって書いたら……察してくれるよね?」

玄「これだけ聞いたら、私も須賀くんに会いたいんだって……アピールしてるって」

玄「……うん!」

玄「がんばるよ!」

玄「で、でも……」

玄「あんまり露骨だと……あれだから」

玄「その気がないなら」

玄「うちの旅館に……って、意味にも取れるようにしておこう」

玄「勘違いで、嫌われちゃったら怖いよね……」

玄「あんまりガツガツ行く女の子は嫌がられるって、あるよね」

玄「……」

玄「……うーん、でも」

玄「……す、須賀くんが私を?」


玄「ないない、ないよね」

玄「だって須賀くん、格好いいし……」

玄「美人さんとも知り合ってそうだし……」

玄「はぁ……」

玄「……私も、プロになってたら違ったのかな?」

玄「はぁ……」


玄「せめて、夏の間には……」

玄「京太郎くんって呼べるくらいにはなりたいなぁ」

玄「はぁ……」



  ◇  ◆  ◇



京太郎(……はあ)

京太郎(フラれたなぁ……はは)

京太郎(虚しいなぁ……)

京太郎(……)

京太郎(……どうしようか)

京太郎(……)

京太郎(……そうだな)

京太郎(ああ、それしかない)

京太郎(有言実行じゃないと……男じゃない)

京太郎(そうだろ、穏乃?)


京太郎(……)

京太郎(……視える)

京太郎(視えるよ……)

京太郎(サングラスごしでも……ハッキリと。中々のおもちが)

京太郎(眼をフル活用だ……!)

京太郎(サングラスで目線を隠しつつ……)

京太郎(その実、女の子の胸部を凝視――)

京太郎(視えるぜ……はっきりと)


京太郎(これは……俺が助平ということじゃあない)

京太郎(皆の笑顔を守るためなんだ)

京太郎(例えば……仮に俺が須賀プロとバレたとしよう)

京太郎(そうすると、俺のファンは悲しむ。俺の関わってきた人たちも)

京太郎(『プールで水着姿の女性を視姦! 変態麻雀プロを激写!』)

京太郎(万が一、こんな週刊誌の記事ができてしまったら……)

京太郎(俺を応援してくれている人たちは、笑顔じゃなくなる)

京太郎(そして……激しく視られている女の子たちも、侮蔑や嫌悪を抱くだろう)

京太郎(つまり……笑顔が失われる)


京太郎(俺は――)

京太郎(強いられているんだよ! 皆の笑顔を守ることを!)

京太郎(……うへへ)



京太郎(おっ……あれは)

京太郎(恥ずかしがり屋なのか? パーカー着てるな)

京太郎(しかも前、閉めてるし……)

京太郎(おお)

京太郎(中々の脚だ。いい脚だな)

京太郎(触りたいぜ……いや、頬擦りしてもいいくらいだ)

京太郎(……)

京太郎(穏乃も、灼もいい脚だったなぁ)

京太郎(何となく、歳を重ねるごとに……おもち以外もいいと思うようになってきた)

京太郎(進化するからこその人間だよな)

京太郎(人間を――エロを、嘗めんなよ!)


京太郎(……で、肝心のおもち)

京太郎(ほほう。ほうほう)

京太郎(なんか、『パパウ、パウパウ』みたいな感じだな……今の言い方)

京太郎(……どうでもいいけど)

京太郎(ふーむ、ふむふむ。なるほどな)

京太郎(隠してるのは自信がないのかと思いきや……いいものじゃないですか)

京太郎(松実姉妹に比べるのは酷ってモンだけど……中々に中々だ)

京太郎(谷間は間違いなく作られるな! そこに神殿を建てよう!)

京太郎(恥ずかしがり屋さんなんだろうなぁ……うんうん、いいね)

京太郎(だけどそれは……恥ずかしがるものじゃないぜ! 俺が保障する!)

京太郎(そんで、そんなパーカー程度なんて――)

京太郎(俺の前じゃ、まるっとお見通しだ! 丸裸だぜ! 下の水着が!)

京太郎(視える……視えるよ)

京太郎(隠された、その中々に『すばらっ!』な、おもちが!)


京太郎(金髪なんだけど、地毛なんかな)

京太郎(染めた金髪さんなら、パーカーは着ないか前は開けるもんな)

京太郎(いいね、いいね)

京太郎(可愛らしいじゃないか、金髪さん――)

京太郎(――)

京太郎(――金、髪?)



淡「……ぁ」



京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……神様、俺のこと嫌いなの?)


京太郎(アイエエエエエエエエエ!?)

京太郎(ナンデ!? 大星ナンデ!?)

京太郎(ファッキンブッダ! ゲイのサディストこの野郎!)


京太郎(あー……気付かれてるよ、大星に)

京太郎(ガン見して選別してたのは……バレてないよな)

京太郎(おっ、目を反らしますか。そうですか)

京太郎(……)

京太郎(俺もそうしたいよ、ホント)

京太郎(なんでまた、ここにきて大星と会うんだよ)

京太郎(……はぁ)

京太郎(一気に気持ちが沈んだ)

京太郎(神様とか運命は、よっぽど俺のことが嫌いなんだな)

京太郎(このまま生きてたら……)

京太郎(俺からカピ以上の何を奪うの?)

京太郎(結婚したら、浮気されちまうのか?)

京太郎(麻雀、もっと引きが悪くなるの?)


京太郎(大学2年のあのときに比べりゃマシだけどさ……)

京太郎(つーか、あれは……比べ物にならないぐらい酷かったけどさ)

京太郎(最近の状況も、わりかし辛い)

京太郎(……)

京太郎(……萎えた。気持ちの方が、完全に)

京太郎(……はぁ)

京太郎(……)

京太郎(大星も、大変だよな……)

京太郎(向かう先、向かう先で……大嫌いな相手と出会ってさ)

京太郎(お互い……運がないよな)

京太郎(……いや)

京太郎(アイツは、麻雀に運を全部つぎ込んでるのかもな)

京太郎(……はは)

京太郎(同情するよ。変な言い方だけどさ)


京太郎(……)

京太郎(……気分でもないし、軽く焼くかな)

京太郎(オイルもってくりゃよかった……オリーブオイル)

京太郎(……いや、オリーブオイルは嘘だけど)

京太郎(はぁ……)


京太郎(やえさんが居たら、からかって気持ちを落ち着かせるのになぁ……)

京太郎(ハギヨシさんがいるなら……もっと楽しいだろうしさ)

京太郎(……はぁ)

京太郎(もう、ひたすら泳ぐか寝っ転がるかのどっちかだよ)


京太郎(あー)

京太郎(和とプールに行きたい)

京太郎(……和、どうしてるんだろ)

京太郎(在学中に旧司法試験通って、そっちの道行ったのは知ってるけど……)

京太郎(最後の方とか忙しくって、殆ど麻雀部の方に顔出せてなかったもんなぁ)

京太郎(憧とはよく、つるんだけどさ……)

京太郎(……あいつも)

京太郎(あんだけ可愛いんだから、彼氏作ればいいのに……勿体ない)

京太郎(シャイだけど気がいい奴だし、ちゃっかりだけどうっかりだし……)

京太郎(色々、可愛いとこあんのになぁ)

京太郎(アイツの男避けに使われてたなー……そういや)

京太郎(付き合い長いから、俺はまだ男の仲だと話せる方らしかったけど……)

京太郎(勿体ないな、アイツも)


京太郎(あー)

京太郎(男に絡まれてるとき、よく助けを求められたっけ。目線で)

京太郎(そういうことしちまうから、彼氏できないんだよ)

京太郎(周りの奴らも、俺が憧の彼氏だって誤解してたっけ)

京太郎(そんなこと、ねーのにさ)

京太郎(第一アイツ、気になってる奴がいるって言ってたよな)

京太郎(どうなんだろ? 実ったのかな)

京太郎(高校のときは色々相談したけど、アイツからは相談とかされなかったっつーか)

京太郎(アイツ自身のことはあんまり口にしなかったから、わからねーけど)

京太郎(……)

京太郎(2年のときに色々迷惑かけたけど、よく最後まで一緒にいてくれたよな)

京太郎(色々、教えてくれたしさ)

京太郎(世話になって……ばっかりだぜ)

京太郎(……久々に連絡でもとるか?)

京太郎(まだフリーなら、男紹介してやろうかな)


京太郎(……腹減ったし、なんか食おう)

京太郎(この手のアミューズメント施設の飯って、栄養補給以上のものがないよな)

京太郎(やたら大味だったり、やたら薄味だったりさ)

京太郎(プールに浸かり続けてるみちいに、舌の方もふやけちまう感じだ)

京太郎(あんまり飯屋にたまらせずに、泳がせようって魂胆かな?)

京太郎(あと、量というか……組み合わせもな)

京太郎(なんていうか、食事っぽくないんだよな)


京太郎(ああ……)

京太郎(なんていうか、夏のこの暑さとプールの湿気で)

京太郎(食べ物の味までぼんやりしてくる)

京太郎(この、プールサイドの妙に湿って生暖かい感じも……好きになれない)

京太郎(誰かと一緒なら、違うんだろうけどさ……)

京太郎(……)

京太郎(やっぱり、一人で来る場所じゃあないな)

京太郎(ここにいると、周りが靄いでる分……自分場違いさが浮き彫りにされる気分だ)

京太郎(こころなしか、コーラもただの炭酸水にしか思えないぐらい味気ない)


京太郎(……誰かに声かけてみるか?)

京太郎(いや……無理だな)

京太郎(大学生のときに何度かってくらいだし……)

京太郎(酒の勢いだから、殆どどうやったか覚えてない)

京太郎(夏祭りのときにもやったけど……)

京太郎(あれ、別口で来てた憧だから……ノーカンだよな)

京太郎(あのあと、怒られたし。怖い)


京太郎(大体……そういうキャラじゃないんだよ、俺)

京太郎(硬派なタイプだしさ)

京太郎(……)

京太郎(そう思うと……あんな風に声をかけてる奴らってスゲーな)

京太郎(相手の娘、あんまり乗り気じゃなさそうなんだけど……)

京太郎(それでも押すのか。スゴイガッツだ)

京太郎(案外、俺にもそういう肉食的なところが大事なのかもな……)

京太郎(……高校生の頃の俺、どんな感じだったっけ?)


京太郎(粘るねー。若いねー)

京太郎(……いや、俺もまだ二十代前半だけど)

京太郎(なんか、その手の前向きさはなくなってきたなぁ)

京太郎(状況に流されるみたいに、恋人作るようになるのかね?)


京太郎(――って)


京太郎(相手、大星じゃねえか!?)

京太郎(……)

京太郎(ちょっと近付いて、見てみようか)

  ◇  ◆  ◇

淡「……」

金髪「ね? ね? いいでしょ、暇そうじゃん」

淡「……暇じゃない」

金髪「マジ? 予定あるの?」

金髪「って、ここプールだからプールしかねーっか!」

金髪「どこ行くの? 聞くだけならいいっしょっ? 聞くだけならさ」

淡「……」


淡(……対応マズった)

淡(この手の馬鹿、完全に無視しとけばよかった)

淡(考えごとしてたから、うっかり返事しちゃったし)


金髪「ねー、いいっしょ?」

金髪「参考にするだけだし、聞いたら直ぐにいなくなるからさー」

淡「……」

金髪「……あ、それともまだ俺と一緒に居たいの?」

金髪「やっべー、そうならそうと言ってよ」

淡「……」


淡(ウザい)

淡(うっとおしい)

淡(うんざりする)

淡(何言っても、自分に都合がいい風にしかとらないし……)

淡(イライラする)


金髪「いや、マジおねーさんそんな顔してても美人だよねー」

金髪「どっかで見たことある気がするしさー」

金髪「ね、ね。声聞かせてよ」

金髪「金髪同士、なんかの縁じゃん!」

淡「……」


淡(……怒鳴ったら怒鳴ったで)

淡(こいつの、思い通りになりそう)

淡(でも、ムカつく)

淡(……)

淡(さっき、須賀の馬鹿見つけてイライラしてんのにー)


金髪「ね、いいじゃん!」

金髪「ほらさー!」

淡「――っ」

淡「気安く、触んなッ!」




茶髪「――今のもーらい」




茶髪「どーよ」

茶髪「見出しは『大星プロ、痴話喧嘩か!?』とかで」

金髪「いいね、いいね。すげーありそう」

淡「……は?」


淡(……誰? 新手?)

淡(携帯? なんで写真?)

淡(えっ、ていうか私の名前?)

淡(何? 何なの?)


金髪「いい写真じゃん」

茶髪「だっろ?」

茶髪「伊達に女の子写してねーって」

金髪「このナンパ男!」

茶髪「お前に言われたくねーよ」

金髪「うははっ、俺、ナンパじゃねーし!」


淡「……は?」


淡(え? え?)

淡(意味わかんない……何なの?)

淡(えっ……?)

淡(何が起きてんのか、さっぱり……)


茶髪「おいおい、淡ちゃん呆然としてんじゃん」

茶髪「説明してやれって」

金髪「そうだったな。ごめんごめん」

金髪「ここにさ、大星プロの写った写真があるわけじゃん?」

金髪「でさ、これ……痴話喧嘩に見えなくない?」

淡「……はぁ?」

淡「そんな事実、どこにもないでしょ」

金髪「事実はどうでもいいんだって、事実はさ」

茶髪「大切なのは話題性よ。話題性」

淡「……」

金髪「休日、大星プロみたいな可愛い麻雀プロが彼氏とプールに遊びにきてて」

金髪「そんで、痴話喧嘩とか面白いって思わねー?」

淡「……どこがよ」

金髪「大星プロは面白いとは思わなくても、思う奴はどっかにいるって」

茶髪「ゴシップ紙でも充分だって」

金髪「……で、つまらないゴシップでもさぁ」

金髪「宮永プロとかと違って……」

金髪「あんまりランキング高くない大星プロにとっては、不味いんじゃないの?」

茶髪「人気商売って聞くしさぁ……」

淡「……は?」


淡(馬鹿馬鹿しい……そんな事、あるわけないでしょ)

淡(そんな下らない写真で動くほど、皆暇じゃないって)

淡(それに私、普通に賞金稼げる大会で稼いでるから……あんま人気商売って訳でもないし)

淡(馬っ鹿じゃないの……コイツら)

淡(……)

淡(……でも、須賀)

淡(アイツ前にそんな放送事故で……料理番組降板させられそうになったりしてた)

淡(もしかして……)


淡「……脅す気?」

淡「そんな下らない写真1枚で?」

茶髪「いやー、別に脅すなんて言わないって」

茶髪「ただ、一緒にプール巡れたらなぁって思うだけでさ」

金髪「そうそう。俺たち、紳士だし」

淡「……立派な脅迫じゃん」

淡「ここだけでも、普通に訴えられるんだよ?」

金髪「別にいいけどさー」

金髪「警察沙汰って、やっぱり余計に印象悪くなるんじゃねーの?」

茶髪「あることないこと、騒ぐ奴多いからねー」


淡(……どうしよっか)

淡(走って、逃げる?)

淡(でもコイツら、追いかけて来そうだし……写真も残る)

淡(警察沙汰とか……どうなんだろう)

淡(……ここ、プールだし。流石におかしなことは無理だよね)


淡「……わかった」

淡「ここにいる間だけなら、相手してあげる」

淡「ただし……」

淡「また写真撮ったり、その写真を盾にこれ以上なんかしようっていうんなら……」

淡「普通に、出るとこ出させて貰うから」


淡(――なんて)

淡(そういう台詞を言うなんて論外でしょ)

淡(明らかに言わせたがってるし……)

淡(あー、でも)

淡(今想像した台詞は言わないにしてもさ)

淡(どうしよう……コイツら)

淡(本当に面倒だし……もう)

淡(馴れ馴れしいし――もうっ!)


金髪「ね? ね? いいじゃん」

茶髪「ほらほら、行こうよ淡ちゃん」

淡「ちょ、触んなって――」


京太郎「おい」


 淡の腕を掴んだ手を握り締め、自然と(自然とである。あくまでも自然とである)手を放すのを待つ。

 それから、京太郎は言った。


京太郎「……そーいうのを、セクハラっつってな」

京太郎「嫌がってる女子に無理に触るとさ……」

京太郎「訴訟、罰金、減給、免職……若しくは―――ああなるぞ?」


 指で後方を指し示す。

 けしからん盗撮犯が、事務所に連行されているのだ。

 両脇を抱えられて。心なしか、足が覚束ない様子で。

 理由とか、わっかんねー。なにもかもわっかんねー。


京太郎「ナンパしたいってのはわかるけどさ」

京太郎「やめとけよ。流石に皆の迷惑だから」

京太郎「明らかに、嫌がってるだろ?」


 背中に淡を庇って、静かに言う。

 怒りや苛立ちはあるが、努めてそれを表に出さないように。

 穏やかに、相手の目を見て。


京太郎「遊びに来てるんだし、やめようぜ……こういうの」

京太郎「お互い、余計なトラブルはなしの方がいいだろ? な?」

金髪「……」

茶髪「……」

金髪「……ッチ、なんかシラけるっつーか」

茶髪「あーあ、行こうぜ」


京太郎「……っと、タンマ」

京太郎「待ってくれ。携帯出してくれよ」

京太郎「さっき、なんかやってただろ」

金髪「……は?」

茶髪「……なんスか?」

金髪「知らねーし」

茶髪「証拠あんのかよ」


京太郎「……証拠は、お前ら持ってるだろ?」

京太郎「それとも、事務所に行ってみるか?」

京太郎「なんか出てきたら、大変なことになるぞ」

金髪「……」

茶髪「……」

金髪「っすかねー……」

茶髪「っべ、マジ……っかんねー」


京太郎「疑われるのって、気分よくないよな……」

京太郎「判るよ。冤罪とか、こえーしさ」

京太郎「……」

京太郎「ま、いいからさ――」

京太郎「出せ」

京太郎「確認込めて、俺がデータ消すから」

京太郎「な? 判るだろ?」

金髪「……は?」

茶髪「なんで、携帯……」

京太郎「ん? 聞こえねーな」

京太郎「悪い、なんて言ってるのか全然判らない」

京太郎「一向に聞こえない」

金髪「あ?」

茶髪「ナメてんスか?」

京太郎「あー」

京太郎「一向に聞こえねーなー」

京太郎「ところでここ、暑いな」


 言いながら、シャツを脱ぐ。

 それを淡に預けて――男たちの方に、一歩踏み出す。

 瞬間、男たちは二歩引いた。


京太郎「悪い、ちょっと声がよく聞き取れなかったんだけど」

京太郎「もう一度、言って貰えるかな?」

京太郎「このまま聞こえないなら……」

京太郎「もうちょっと近くで、話さなきゃいけなくなるんだけど」

京太郎「もう一度、言ってもらえるか?」


茶髪「……っ」

金髪「いくぞ……!」

京太郎「……おいおい」


 茶髪と金髪のナンパ男たちは、京太郎と淡に背を向けた。

 三十六計、逃げるに如かず。

 ナンパを止められた段階で、彼らにとれる方法はそれしかなかった。

 何せ、目の前にいるのは古式ムエタイの熟練者。

 彼らがその事実を知らなかったとしても……機能美を体現する肉体は、雄弁に凶器を物語る。

 加えるなら、体にできたいくつかの傷。

 撮影や鍛練によって出来上がったのだが……。

 そんなもん、知る由もない。ただただ、危ない匂いしかしない。

 逃げるに決まってる。


淡「ちょ……!」

淡「追っかけてよ……!」

淡「このままじゃ――」


 それに戸惑ったのは、淡だ。

 何となく鼻先や口許を埋めていた京太郎のシャツから顔をあげて、

 口を開いて――


京太郎「『逃げられちゃう』ってか」

淡「逃げられちゃう――えっ」


京太郎「ところでさぁ……」

京太郎「子供の頃言われたよなぁ」

京太郎「『プールサイドは走るな』って」


京太郎「ただでさえ滑りやすいしさ……」

京太郎「心ない、ちょっぴり影の薄い誰かが……」

京太郎「丁度進行方向の足元に――コーラの缶、置いてるかもしれねーもんなぁ」

京太郎「そんで、飛び込み禁止だってーのに」

京太郎「やる奴って、どこにでもいるよなぁ」


 ドッボーンと。

 派手な水音を立てて、スケキヨが2柱誕生した。

 蹴り飛ばされたコーラの缶が、爆発的な噴射を行う。


京太郎「辻垣内式交渉術と――」

京太郎「国広式手品術で――」

京太郎「まーたまた、やらせていただきましたぁん」


 肉体と言語での暗的な威圧。

 威圧を隠れ蓑にしたコーラのミスディレクション。


 怖ければ、分が完全に悪ければあの手の輩は即座に逃げる。

 サングラスセットの、鍛え上げた肉体でヤクザ的な言動をしたなら尚更だ。

 京太郎の肉体は、逞しさを秘めながらも、頑強というよりもむしろしなやかである。

 それでも、控え目ではなく……一目見れば明らかに鍛えていると判るフォルム。

 それに、目が奪われる。やりあったらどうなるか考える。恐怖する。

 恐怖したなら視界は狭まり――。


京太郎「……ま、死んではないだろ」

京太郎「防水じゃなかったから、携帯は死んだだろうけど」


 濡れたプールサイドか、京太郎が設置したコーラ缶に躓いて……こんなことになる。


 ここまで上手く嵌まるとは思わなかったが……。

 行動パターンが、淡ですら読めるスカタン二人が相手である。

 それ以上の読みを必要とされる京太郎にとっては、容易かった。


京太郎「一応、助けに行くか」

京太郎「ついでに……小型メモリーがあるなら壊しとこう」

京太郎「いい子で待ってろよ?」

淡「ぁ……うん」


 頭に手を置くと、淡の鼻先がまたシャツに埋まった。

  ・
  ・
  ・

京太郎(……さて)

京太郎(どうやら脳震盪だったらしい。ざまあ)

京太郎(引き上げて、監視員に通報しといた)

京太郎(ついでに大星へのナンパの件を伝えたから、確実に出禁だろう)

京太郎(他にも悪質なナンパ紛いのことをやってたらしいし……出禁じゃすまないかもな)

京太郎(さっき盗撮犯捕まえた件もあって、俺の発言はそこそこ信用度あるし)

京太郎(まあ、顔を見ないで済みそうだ。こっちもこれ以上、関わりたくない)

京太郎(さて……)


淡「……」

京太郎「……」


京太郎(こっちはどうしようか)

京太郎(これが一さんあたりなら……)


京太郎(『さっきの俺……かなりジョセフっぽくないっすかー?』)

京太郎(『ん~、中々いいね。65点。ディモールト・ベネってところかな』)

京太郎(『ディモールトじゃ、中々じゃないっすよー』)

京太郎(『ジョセフなら、結構手を出すからねー。そこらへん違うかな』)

京太郎(『ジョジョっぽくはあったけどね』)

京太郎(『まあ、暴力を使わなかったからディモールト・ベネってところで』)

京太郎(『さっすが一さん! 話が判るぅー!』)


京太郎(こんな、ほのぼのしたやり取りで終わる筈だ)

京太郎(やっぱりジョジョはすげー。改めてそう思う)

京太郎(……だが)

京太郎(相手は大星である)

京太郎(何故か俺のシャツをがっつりホールドして返してくれない大星である)

京太郎(正直、結構傷があって悪目立ちするから……シャツ返してくんねーかな)

京太郎(……ああ、いや)

京太郎(……怖かったのか? 鼻啜ってる感じだし)

京太郎(やっぱ、なんだかんだ女の子なんだなぁ)


京太郎「なあ……」

淡「……っ!」

京太郎「いや、その……ほら、なんだ」

京太郎「怖かった……よな?」

京太郎「あの、大丈夫か……?」

京太郎「なんつーか、さ」

京太郎「一人にしてほしいなら……俺、どっか行くから」


淡(ビックリした)

淡(気付かれたかと思った)

淡(……なんか勘違いしてるみたいだけど)

淡(まあ、いっか)

淡(気付かれたら恥ずかしいし……)

淡(自分でもなんでこんなことしたのか判らないし……相手は須賀だし)

淡(バレたら舌噛んで死んでやる)


淡「……ん」

淡「別に、いい」

京太郎「……そっか」

淡「……うん」

京太郎「……」

淡「……」

京太郎「……」

淡「……」

京太郎「……」


淡「……ねえ」

京太郎「……なんだ?」

淡「……あのさ」

京太郎「……」


淡「どうして、助けてくれたの?」

淡「相手二人だったし……危ないかもしんないじゃん」

淡「身体が……資本なのに、さ」

京太郎「……いや」

京太郎「俺、ムエタイやってるから」

京太郎「古式の」

淡「……は?」

淡「真面目に訊いてるんだけど……」

京太郎「……いや」

京太郎「真面目に」

淡「……」

淡「……は?」

京太郎「ムエ・ボーラン」

淡「は?」

京太郎「ムエ・ボーラン」

淡「……」


淡「……そ、そっか」

京太郎「そうだ」

淡(……オカルトスレイヤーでやってたあれ)

淡(本当だったんだ)

淡(……)

淡(なにこいつ、危なっ)


京太郎(……シリアスな場面で唐突にムエ・ボーラン)

京太郎(笑ってくれるかと、おもったんだけどな)

京太郎(駄目か)

京太郎(うーん……)


京太郎「……まあ」

京太郎「実際はそうじゃないから、どうなのか判らないけどさ」

京太郎「多分……そういうのなくても」

京太郎「俺は、お前を助けに入ったよ」

淡「……」

淡「……私に構うなって、言ったのに?」

京太郎「そんな言葉に、構わねーな。構わねーよ」

京太郎「女の子がさ、泣きそうになってんだよ」

京太郎「助けに入らないで、いられるか」

淡「……は?」

淡「助けて貰ったのは嬉しいけどさ……」

淡「それで怪我したらどうすんの? 馬鹿でしょ」

淡「それに……泣きそうになんか、なってないから!」


京太郎「……ん、やっぱそっちの方がいいな」

淡「……何が?」

京太郎「そんな風に元気がある方が、俺は好きだってこと」

京太郎「……よく知らねー間柄だけどさ」

京太郎「俺の知ってる大星淡ってのは、そんなんだから」

淡「……」

淡「……馬っ鹿じゃないの」


淡「……余計な気を使うなって、言わなかった?」

京太郎「気なんか使ってねーよ」

京太郎「中国拳法じゃあるまいし」

淡「……は?」

淡「そっちの気じゃ、ないから」

淡「……やっぱ、馬鹿なの?」

京太郎「いや、知ってるよ」

京太郎「少しくらい笑ってもいいんじゃねーの? ボケてんだからさ」

淡「……」

淡「……真面目な話、してるんだけど」

淡「馬鹿にしてるの、あんた」

京太郎「さっきから馬鹿馬鹿言われてるからさ」

京太郎「ちょっと、仕返ししたくなった」

淡「……はぁ」

淡「こいつの相手、なんか疲れる」


京太郎「……まあ、さっきのは気を使ってはなかった」

京太郎「中国拳法的な意味じゃなくてな」

淡「……それは、もういい」

京太郎「オッケー、やめとく」

淡「……そうして」

京太郎「……んで」

京太郎「お前の言う、気を使うってのが……『別の自分として振る舞う』って意味ならさ」

京太郎「お前を助けたのに、気なんか全然使ってない」

京太郎「女の子を助けられるって……正直憧れるだろ?」

京太郎「ムエタイ始めた理由に、そういうのもあるし」

淡「……馬鹿だ」

京太郎「馬鹿だぜ。馬鹿だよーん」

京太郎「ついでにいうと、今のやりとりも気を使ってないな」

京太郎「なんか知らんけど、そうなるんだよ。俺」


京太郎「だからさ……」

京太郎「気を使わないと、会話が成り立たなかったりするんだ」

京太郎「そういうわけで俺、気を使ってないと駄目なんだよ」

京太郎「だから……あんま、無理して気を使ってはない」

京太郎「結構自然にそうしてるんだ」

淡「……」

淡「……そういう話、してるわけじゃないんだけどなー」


京太郎「……あと」

京太郎「自分の麻雀に、集中しろっていったよな?」

淡「……」

京太郎「あれさ、無理だった」

京太郎「あんなに、馬鹿とか死ねとか嫌いとか大嫌いとか言われたらさ」

京太郎「傷付いて、集中とかできねーんだよ」

京太郎「最近ずっと、それで悩んじまったし」

淡「……」

淡「……死ねとかは言ってない」

京太郎「似たような、もんだって」

京太郎「今まで、そういうことを面と向かって言われたことないから……」

京太郎「心がな、バッキバキになってんだ」

淡「……」

淡「ごめ……」

京太郎「ほら俺、愛されボーイだから」

淡「……」

淡「……うざっ」

京太郎「……悪い。流石に今のは自分でも気持ち悪いと思った」


京太郎「でも俺の言ってること、本当なんだよ」

京太郎「お前の言ったように、無理して合わせてる訳じゃない」

京太郎「お前とあんな別れ方したら、逆に麻雀に集中できない」

京太郎「……だからさ」

京太郎「だから……その」

京太郎「真面目に俺の事が嫌いで、心底顔を合わせたくない……ってワケじゃなくて」

京太郎「もしも、俺に気を使ってああ言ったんなら……」

京太郎「やっぱ、その……」

京太郎「お前さえよければさ……」

京太郎「今までみたいに、喋ってくれたら……相手してくれたら嬉しいっつーか」

京太郎「そんな感じ、なんだけどさ」


京太郎「ああもう……!」

京太郎「正直、ここまで嫌われたことはあんまりねーから」

京太郎「こういうとき……なんつっていいか、わかんねーんだよ!」

京太郎「面と向かって、『お前嫌いだ話しかけんな』って言われたのも初めてだし!」

京太郎「あー、もう!」

京太郎「恥ずかしくて死にたいぜ……」

淡「……」

京太郎「とにかく……」

京太郎「前みたいに、って……前もヒデーけど」

京太郎「少なくとも、お前さえ嫌じゃなかったら……今みたいのはやめてくれ」

淡「……ふーん」


淡(なにを言い出すかと思ったらさ……)

淡(大丈夫? この、ぽんこつ男)

淡(麻雀とアクションのやりすぎで、頭おかしくなったのかな)

淡(……)

淡(なんかこういうの、新鮮でちょっと可愛いな)

淡(……って、今のなし!)

淡(まあ……正直、私もかなり言い過ぎたよね)

淡(……うん)

淡(集中できなかったのは、こっちも一緒だし)

淡(こう言ってくれるなら、丁度いいかな)

淡(流石にあのままじゃ、気まずいし……)

淡(……うん)

淡(それだけだけど! それだけだけど!)


淡「……ま」

淡「私も悪かったから、そんなに謝らなくていいよ」

淡「お互い様……なんじゃないの」

京太郎「大星……」

淡「……やっぱりあんた、嫌いだけどさ」

淡「前ぐらいには戻ってもいいかな」

淡「……さっき、助けてくれたの嬉しかったし」


淡「……うん」

淡「こっちも、ごめん」

淡「謝ってくれようとしてたのに、怒鳴っちゃって」

淡「今みたいのは、やめよっか」

京太郎「……ありがとう」

京太郎「なんつーか、ちょっと心が軽くなった」

淡「……」


淡「そうなってくれないと、困るからね」

淡「あんたから、タイトル取り返すって決めてるしさ」

京太郎「お前のモンじゃねーだろ」

淡「次からは私のものになるから、私のものだ」

京太郎「ハッ、言ってろ」

京太郎「次は――次も、俺が勝つって決めてるんだよ!」

京太郎「M.A.R.Sランキング13位は伊達じゃないって、44位に証明してやるよ」

淡「言ってなよ」

淡「ランキングなんか、ただの目安でしかないって」

淡「わざとサボってるんだって、教えてあげるから」


京太郎「……いや、サボんなよ」

淡「ごもっとも」


淡「ま、まあ……」

淡「明日からは元通りだけどさ」

淡「きょ、今日だけは特別っていうか……」

淡「さっきのお礼っていうか……」

淡「結構、格好良かったし……」

淡「だからさ、その……」


京太郎(……ゴニョゴニョ言ってて聞こえない)

京太郎(どうでもいいけど、ポニョ歌ってる藤岡藤巻ってすげーよな)

京太郎(普段、あんな歌を歌ってんだもんな)

京太郎(さくらとか、曲はいいのに歌詞ひでーもんな)

京太郎(いや、結構好きだけどさ)


淡「ね、きょーたろー」

淡「このあと、暇?」

京太郎「暇っつーか、プールの予定だけど……」

京太郎「それに、京太郎って……」

淡「今日だけは、特別にね!」

淡「暇ならさ――」




淡「――一緒に、遊ばないっ?」



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【大星淡との思い出が更新されました!】

【Gaea Memory『和解(大星淡)』を入手しました!】


※別にメモリが手に入ったから、だからどうという話でもない

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最終更新:2013年09月28日 17:44