【清澄麻雀部!】
京太郎「ふいー」
京太郎「なんつーか、疲れるな。やっぱ」
師匠、師匠。
兄貴、兄貴。
京太郎さん、京太郎さん。
そんな風に純粋な目を向けられると、子供特有の若さ溢れるパワーにあてられる。
引きこもりガチな人間が、満員電車に乗らされたようなもの。
この歳になると、炎天下は堪えるのだ。
これが、若さか……。
小鍛治プロはいつもこれを味わっているのだ。尊敬し、同情する。
久「あら、よかったじゃない」
久「久しぶりー。元気?」
京太郎「元気っすよ」
京太郎「……部長」
久「あー、もう」
久「部長はやめてってば。何年経ってると思ってるの?」
京太郎「それでも、俺の中で部長って言葉が一番しっくりくるのは……あなたです」
久「まこが悲しむわね」
久「そういう自分も、部長になってるのに」
京太郎「あはは」
京太郎「ありゃ、消去法っすよ」
久「消去法でも、選ばれて部長になったんでしょうが」
久「いつまでも過去を引きずってると、モテないわよ?」
京太郎「そう見えるってことなら、部長の中ならそうなんでしょうね」
久「言うようになったわねー。可愛くない」
京太郎「二十歳過ぎて可愛いって言われる男は、問題でしょうが」
久「それもそうか」
京太郎「……で、よかったじゃないってのは?」
久「ああ」
久「人に教える苦労が分かって、ってね」
京太郎「一応、麻雀解説番組持ってるんスけど……」
久「生でしてないでしょ?」
久「解説はするけど、画面越しじゃない」
久「こうして、生で触れあってはなかった筈よ?」
京太郎「確かに」
京太郎「気持ちいいような、こそばゆいような気もしますけど……」
京太郎「やっぱり、生だと疲れますね」
久「でしょー?」
久「私も、須賀くんとしてるときはそうだったのよ」
久「私の苦労、分かって貰えたかしら?」
京太郎「そりゃあ、もう」
京太郎「でも、楽しいっすね……生って」
久「そこが、やめられない」
京太郎「そうなんですか?」
久「後輩の子、仕込んでるわよー」
京太郎「……流石、部長」
久「で、私の苦労を判って貰えたとこで提案」
久「というか……お願い?」
京太郎「嫌な予感しかしねー……」
京太郎「ま、いいですよ。他ならぬ部長の頼みなら」
久「さっすが、気遣いの男!」
京太郎「聞くだけなら」
久「……聞くだけか」
久「ま、いいわ。私も言うだけ言うから」
久「まず1つ目……『うちの局の番組に出てくれない』?」
久「2つ目。『合コンに来て』」
久「須賀くんの先輩って言ったら……『駄目元でいいから頼んでくれない?』って」
京太郎「あー、なるほど」
京太郎「いいっすよ?」
久「いいの!?」
京太郎「後者はともかく、前者ならまあ……後で詳しくをメールしてくれれば」
久「……逆じゃないの、普通」
京太郎「俺、女の子の理想高めですから」
久「……」
久「一応聞くけど、どんな感じ?」
京太郎「そうっすねー」
京太郎「まず、胸はDは欲しいっすね」
京太郎「Cで妥協してもいいけど、Dあった方がいいのは確かです」
京太郎「そっからおっきければなおいいですけど、あんまり大きいのはNGっす」
京太郎「髪は……明るめの方がいいかな?」
京太郎「俺が金髪だから、一緒に立って悪目立ちしない色だといいです」
京太郎「なんか知らないけど、不良系の人たちが態々金髪に染め直すパターンが多いんで」
京太郎「金髪=軽いって思われちゃって、結構面倒なんですよ」
京太郎「後は……顔は美人系ってよりも可愛い系?」
京太郎「そりゃ、美人さん好きなんですけど……どうにも気後れしちゃうんですよね」
京太郎「だから、可愛い系がいいです」
京太郎「家事は……そりゃあ、できて欲しいっすよ!」
京太郎「いや、俺も一通りはできるから……教えていくってのもアリっすけど」
京太郎「俺より上手い人って憧れるじゃないっすか!」
京太郎「で、性格は勿論よくないと!」
京太郎「明るい系で一緒にいて楽しいってのもアリだけど」
京太郎「清楚ってか、落ち着いてるっつーのか……」
京太郎「家庭的な人がいいっすね。そりゃあ、もう!」
京太郎「それでどっかエロいと最高です! たまんねえ!」
京太郎「あとは趣味が合うといいっすねー」
京太郎「麻雀は……やっててくれた方が、理解があっていいのかな?」
京太郎「強ければ、なおよし!」
京太郎「……っすけど、オカ持ちで俺より強いとかは勘弁です」
京太郎「麻雀プロとして、立つ瀬がないですからね」
久「……」
京太郎「どうしました?」
久「あんたは、結婚できないアラサー女か!」
京太郎「その心は?」
久「理想高すぎ」
京太郎「いやー、だから言ったじゃないですか」
久「……」
久「割りと須賀くんの将来が心配になってきたわ」
久「結婚できないんじゃないの?」
京太郎「いやー」
京太郎「そうなったらそうなったで、いいっすよ」
京太郎「この人生、麻雀にくれてやる……」
久「……そうなりそうで、怖いわ」
京太郎「……」
京太郎「ま、結局は……付き合いたいと、一緒にいたいと思う相手」
京太郎「そんな人なら、それがいいです」
久「そんなもんよねー」
京太郎「そんなもんっすよ」
京太郎(……実際)
京太郎(穏乃とか、全然理想とは違う相手だったしなぁ)
京太郎(胸はないし、家事はあんまり上手って訳じゃないし、麻雀は俺よか全然強いし)
京太郎(清楚……とはまるで違うし)
京太郎(でも、いいやつだったし……付き合ってからは色々可愛いとこ分かったんだよな)
京太郎(なんだかんだ奥手というか、女の子女の子してるところもあったし)
京太郎(『私でよかったの?』)
京太郎(『私、うるさいし……京太郎の知ってる人たちに比べても、女の子っぽいスタイルしてないし』)
京太郎(『憧や和みたいに可愛いわけでも、ないけど……』とか)
京太郎(ありゃ反則だよな。ギャップでやられるわ)
京太郎(思わず押し倒しそうになったくらいだ……やれやれだ)
京太郎(まあ、速攻でキスはしたけど)
久「あら、急に黄昏てどうしたの?」
京太郎「……いや」
京太郎「恋の相談持ちかけてた相手に恋するって、割りとよくあるパターンっすよね」
久「よくあるパターンねー」
久「詳しく聞いていい? スクープにするから」
京太郎「いいっすよ」
京太郎「大学の同期の、宮本くんの恋バナがスクープになるなら」
久「あー、そういう?」
京太郎「そういうのっす」
京太郎「……」
京太郎(元々は……和のことを諦めきれない俺が、相談を持ちかけたのが始まりだっけ)
京太郎(憧はあれだったから、話易い穏乃に向かって)
京太郎(いつの間にか、あいつとつるむのが多くなって……)
京太郎(ちょっとしたハプニングがあってから、何となく意識しはじめて……)
京太郎(んで、今度は……和には聞けないから、憧に相談)
京太郎(それから、穏乃と付き合う事になったんだよなぁ……)
京太郎(……人生、何があるかわかんねーな)
京太郎(別れる、ことも含めて……さ)
久「まあ、須賀くんには彼女がいるか……今はそんな気じゃないって事は分かったわ」
京太郎「……」
京太郎「どうしてっすかね?」
久「今親しくしてる人にならないように特徴分けたでしょ」
久「しかも、はっきりいって女性から顰蹙買うような言い方してるし」
久「いくら私と親しいって言っても……」
久「まさか『親しい仲にも礼儀アリ』って言葉を忘れるほど……気遣いができない男じゃない」
久「誰か他の人に聞かれたら、問題だしね」
京太郎「……本音で、理想っすよ?」
久「そりゃあ、本音も入ってるでしょ?」
久「でも、全部が本音だなんて……一言も言ってない」
久「違う?」
京太郎「あー……もう」
京太郎「やっぱり、部長には敵わないな」
久「当然よ、当然」
久「これでもあなたの先輩だからね」
京太郎「ははー」
久「うむ、苦しゅうない」
久「……ところでさっきから、気になってたんだけど」
久「会話の合間にちょいちょい舌打ちしてどうしたの?」
京太郎「いやー」
京太郎「聞かれてたら、困るなー……と思って」
久「?」
桃子「ぐっ」
桃子「イケメンさん、なんか面白そうな話してるのに……」
桃子「まるで隙がねーっす」
桃子「何者っすか、あの人……」
桃子「!?」
桃子「まさか、私の姿が……」
ハギヨシ「いえ、違います」
ハギヨシ「教えたというか、一緒に習得した以上、私もエコーロケーションが使えますが……」
ハギヨシ「生憎、そこまで熱意がなかったもので、京太郎くんほどの錬度には達していません」
桃子「じゃあ、なんで……」
ハギヨシ「私のは『聴勁』」
ハギヨシ「貴女が接している床から伝わる振動で判別しています」
ハギヨシ「会話が成り立つのも、話す度に声が体内で響いて……貴女の体が振動するから」
ハギヨシ「こちらは、お嬢様たちを守ることに必要なので……私も全力で習得させていただきました」
ハギヨシ「長々と説明、申し訳ありません」
桃子「あっ、はい」
桃子「……執事って人間じゃないっす」
一「どうしてボクの回りはこう……」
一「滅茶苦茶な人間ばっかりなんだ?」
ハギヨシ(いえ……)
桃子(その格好も、そーとーハチャメチャっす。押し寄せて来てるっす)
久「――で、こんなことがあってね?」
京太郎「アナウンサーの方たちって、かなり愉快なんすねー」
談笑をしていると、だ。
走り寄る、何かの陰。
が、その何者かは躓いて……。
マホ「あ――」
京太郎「――ッ」
京太郎「間に合った、な」
倒れる寸前で、その襟首を掴み取られる。
京太郎「そういう……なんつーかさ、おっちょこちょいっつーか、そそっかしいっつーか」
京太郎「そこらへん、変わんねーのな……」
京太郎「相変わらずだな、マホ」
マホ「そういう京太郎先輩は、相変わらず格好いいです!」
マホ「流石はマホの師匠! 京太郎先生です!」
京太郎「……あ、喋り方もまんまなんだな」
京太郎「そこらへん直せば、もう少し年相応に見られるのに」
マホ「一部が年相応だから大丈夫だって言われてますから、大丈夫です!」
京太郎「言った奴連れてこい」
久「あー、色々言いたいことあるんだけど……」
久「須賀くん、今の何?」
京太郎「今のって?」
久「壁蹴って、天井走って駆け付けなかった……?」
久「……疲れてて、見間違えたのかしら」
京太郎「ああ」
京太郎「人間、ちょっとなら天井を走れるんすよ」
京太郎「前に、番組の撮影で覚える機会があったんで」
久「……麻雀プロって何かしら」
桃子「……なんすか、あれ」
ハギヨシ「フリーランニングですね。パルクールとも言います」
ハギヨシ「一時、気分転換とのことで……一緒に」
桃子「……もう、ツッコまないっす」
一「ボクはもう諦めたよ。楽になれる」
京太郎「まあ、走るって言っても殆ど三角跳びみたいなもんですよ」
京太郎「まさか、化け物じゃないですし……」
京太郎「あ」
京太郎「動画検索してくれれば、結構出ますんで」
京太郎「あ……エクストリーム・スポーツって言って」
京太郎「危険度高いんで、気を付けて下さいね」
久「……言われなくてもやらないわよ」
マホ「先輩は流石です! 憧れます、尊敬です!」
京太郎「お前さっきから、それしか言ってねーな」
マホ「えへへ、それぐらいヒーローってことですから」
京太郎「嬉しいこと言ってくれるじゃねーか」
「見たか……?」
「う、うん……!」
「兄貴、スッゲー!」
「天井って……走れる……の?」
「す、須賀プロ……」
「また1秒、世界を縮めたんだ! 流石兄貴!」
京太郎「……で、お前一人なのか?」
マホ「途中まで一緒でしたけど……」
マホ「先輩たちに会えると思ったら、居ても立ってもいられなくて……!」
京太郎「……部長」
久「……何かしら?」
京太郎「後輩って……いいっスね」
久「あ、うん」
久「しかし、須賀くんが師匠……ねー」
京太郎「なんスか?」
久「いや、なんだか弟の成長を見てるようで面白いわね」
京太郎「弟、って……成長って……」
久「だってそうでしょ?」
久「インハイ後、結構付きっきりで麻雀教えてあげたんだから」
久「あの頃から、こんな風になるなんて思わないわよ」
久「色々感慨深いわ」
京太郎「受験勉強の息抜きって口実で、チャラっすよ。へっちゃらっす」
久「まあ、今のあなたは何が起きてもへのへのカッパって感じに見えるわね」
久「……天井走ったり」
京太郎「あー」
京太郎「天井は、オカルトスレイヤーの撮影で必要だったんスよ」
京太郎「結構特訓したんですよ? これも含めて色々」
京太郎「撮影終わってから、男子新体操部あるとこ行ったり……」
京太郎「果てはなんか分からないけど、元・空挺のおじさんにしごかれたり」
マホ「流石、努力の人です!」
久「……麻雀プロって何かしら」
京太郎「大学んとき、ハギヨシさんに付き合って貰って下地が出来てたから……大ケガはしなかったですけど」
京太郎「それでも、怪我しましたよ」
京太郎「ほら、これ」
久「あー」
マホ「痛そうです……」
桃子「他には、どんなことっすか?」
ハギヨシ「ロッククライミングに、スカイダイビング」
ハギヨシ「セスナを運転したり、格闘技をやったり……」
ハギヨシ「色々やりましたねえ」
ハギヨシ「泊まり掛けで漆塗りをしたり、うどんを作りにいったりなんかも……」
ハギヨシ「中々、こちらとしても新鮮でした」
桃子「……どんななってた感じっすかね、頭」
一「あの頃、大真面目にアホな技術を麻雀に使おうとして……」
一「それから、麻雀以外の何かを真剣に探そうとしてたからね」
桃子「……グレるのも真面目なタイプっすか。大馬鹿っすね」
一「まあ……グレるのとはちょっと違うけどね」
ハギヨシ「その辺りが、彼の魅力です」
桃子「ついてけないっす」
マホ「えーっと」
マホ「それなら、京太郎先輩は……マホのお兄ちゃんですか?」
マホ「京太郎お兄ちゃん!」
京太郎「――」
マホ「……だ、駄目ですか?」
京太郎「……」
久「……須賀くん。顔、顔」
京太郎「……マホ」
マホ「あ、はい」
マホ「な、なんでしょうか……?」
京太郎「あとで、もう一回頼む」
久「……引くわ。ドン引き」
京太郎「流石に冗談っすよ、部長」
久「ならいいけど……」
京太郎「……部長」
久「嫌な予感がするけど……何かしら?」
京太郎「妹って、どこで手に入りますか?」
久「……サンタさんに頼みなさい。サイコガン持った」
マホ「えーっと」
マホ「サンタさんにはなれないですけど……」
マホ「マホ、妹にならなれます!」
京太郎「……」
久「……須賀くん。だから、顔」
桃子「あれ、以外っすね?」
桃子「年上のお姉さん大好きーって、そんなムード出してるっすけど……」
桃子「あっちもいけるんですか?」
一「さあ……」
ハギヨシ「元々……彼は人の役にたったり、お世話をしたりすることを心地よく思ってますから」
ハギヨシ「大概のそんな相手は、どこか変わっているのですが」
ハギヨシ「ああもストレートに好意を表されたり」
ハギヨシ「素直に来られると、やはり来るものがあるのでしょう」
桃子「なるほど……割りとどうでもいいっすけど」
ハギヨシ「やはり、素直な人は分かりやすく可愛がりたくなりますからね」
一「それって、京太郎くんのこと?」
ハギヨシ「さあ、どうでしょう」
ハギヨシ「しかし、そう求められると……必要以上に教えたくなるのは確かです」
ハギヨシ「やはり、人情ですね」
一「あー」
一「確かに、手品を教えてるときの京太郎は可愛かったな」
京太郎「それで、マホは最近どんな感じなんだ?」
マホ「えーっと、ですね」
マホ「そろそろ就職活動なんですけど……京太郎先輩みたいになろうか、どうしようか」
マホ「マホ、それで悩んでて……」
京太郎「……俺みたいに?」
京太郎「それって、どういう……」
マホ「えっと、ひとつが京太郎先輩の後を追って麻雀プロになるのと……」
マホ「もうひとつが、先輩が選ばなかった……学校の先生になる方です」
京太郎「あー……そういえば、教育学部だったっけ」
久「懐かれてるわねー、須賀くん」
マホ「先輩は、マホの憧れですから!」
マホ「マホの初心者脱却の為に、付きっきりで麻雀を教えてくれたり……」
マホ「マホのイメージがしやすいように、全国の牌符を集めて研究してくれたり……」
マホ「勉強が忙しいのに、マホ、いっぱい面倒見て貰いました!」
久「へー」
久「どこかで聞いたみたいな話ねー」
京太郎「……ニヤニヤせんで下さいよ、部長」
京太郎「それに時期がちゃいますから」
久「でも、弟子に自分と同じことされると師匠冥利に尽きるわねー」
京太郎「……で」
京太郎「学校の教師やるなら、兼、麻雀コーチ?」
マホ「そうなりたいなー……って」
マホ「マホじゃ、無理ですか……?」
京太郎「んー」
京太郎(こいつの能力なら、相当のコーチになれる)
京太郎(実際に打ってるのを見たり、時には映像や話だけでも……)
京太郎(相手のオカルトや打ち方を、トレースできるんだ)
京太郎(練習相手……更には、マホを見ることで本体の研究もできる)
京太郎(上手く伝えられなくても、マホは相手のオカルトを把握するしな)
京太郎(本当、有望な一年生だった)
京太郎(色々と足りないものもあったけどさ)
京太郎(でも……イメージを固めれば、コンスタントに引き出せる)
京太郎(雀力も、かろうじて初心者脱却はできたしな)
京太郎(相手を大体把握して、自在に引き出して活用する)
京太郎(なんだっけな……誰かの仮面を被って使い分けるから)
京太郎(カメンライドとか、ペルソナとか……そんな必殺技名だったな)
京太郎(惜しむらくは、状況判断能力だな)
京太郎(能力を、手札をどの場面で切るか)
京太郎(それさえ出来たら……本当、完璧なんだよな。こいつ)
京太郎「……まあ、なれると思うよ」
京太郎「お前なら、向いてると思う。俺が保証してやる」
マホ「本当ですか!?」
京太郎「ああ」
京太郎(俺よりも……な)
京太郎(まあ、この一人称直さないと普通の就活なんて無理だろ)
京太郎(直そうとしても、直りゃしねーし)
京太郎(……ま)
京太郎(オカルトがオカルトだから、仕方ないんだよな)
京太郎(余所のものを混ぜるから、「
夢乃マホ」が稀薄になる)
京太郎(だからこいつは自分が夢乃マホだって、自認しなきゃならない)
京太郎(……俺が余計なことをしたせいってのも、ある)
京太郎(麻雀初心者ってアイデンティティー……或いは差異があるから)
京太郎(こいつは、コピー相手と混ざりきらずに済んでたんだ)
京太郎(多少分析力が身に付いた、今思えばって奴だし……)
京太郎(あんときの俺はただ、善意だった)
京太郎(でも、善意だからって許されることじゃあない……)
京太郎(危うく俺は、ひとりの女の子に取り返しの付かないことをするとこだった)
京太郎(あのときの俺は……止められなかった。止める力がなかった)
京太郎(ムロから、マホが自力で立ち直ったって聞いて……心底安心した)
京太郎(そんで、悔やんだ)
京太郎(俺がちゃんと出来てれば……俺に、止める力があれば)
京太郎(そう思って、ならなかった)
マホ「どうしたんですか、先輩?」
京太郎「いや……」
京太郎「マホは本当、いい子だなって……さ」
京太郎(それでも俺を、慕ってくれてる)
京太郎(俺には、そんな面を見せようとしない)
京太郎(本当……いい、子だよ)
京太郎(だから……次は、俺が止める。そんな事は起こさせない。俺がお前の、涙を拭う)
京太郎(俺は――オカルトスレイヤーだ)
京太郎(そういう意味で……ホント、お前は俺の原点だよ)
京太郎「……ま」
京太郎「俺のはあくまでもアドバイスで、決めるのはお前だ」
マホ「……はい」
マホ「マホの人生だから、マホが選ばなくちゃならないって事ですね?」
京太郎「そういうことだ。偉いぞ、マホ」
マホ「へへへ」
京太郎「お前の人生は、お前のものなんだ。お前だけのものなんだ」
京太郎「それだけは、覚えておいてくれ」
マホ「はい。厳しい言い方みたいだけど……」
マホ「マホ、京太郎先輩の言いたいこと……ちゃんと分かりました」
マホ「『虎は何ゆえ強いと思う?』」
マホ「ですよね!」
京太郎「……それを言うなら、『獅子は千尋の谷に仔を落とす』だろ」
マホ「そ、そうでした……」
マホ「また……間違えちゃいました」
久(いやー……須賀くんも、よく今ので分かったわね)
久(おったまげたわ。実にグレートね)
京太郎「……まあ」
京太郎「なにかあったり、悩んだら俺を呼べよ」
京太郎「そんときは絶対、お前の力になる」
京太郎「俺を信じてくれ。お前の先輩は、やわじゃないって」
マホ「迷惑じゃ……ないですか?」
マホ「マホ、ただでさえ先輩にいっぱいいっぱい迷惑かけて……」
マホ「大学受験前に、先輩が倒れそうになったのも……マホの責任で……」
京太郎「あの頃とは、違うさ」
京太郎「さっきのを見たろ?」
京太郎「俺はもう、柔じゃない。麻雀だって強くなった」
京太郎「マホ一人を支えるなんてのは、へっちゃらだぜ」
マホ「先輩……」
京太郎「それに……」
京太郎「お前の事を――迷惑だなんて思ったことは、一度もない」
京太郎「それは、誓って言える」
マホ「先輩……」
マホ「……マホ、本気にしますよ?」
京太郎「――いいぜ」
京太郎「俺はいつだって、本気で全力だ」
京太郎「可愛い後輩のためだったら、それぐらいやってやる」
京太郎「だから、俺を信じてくれ。俺を呼んでくれ」
マホ「京太郎先輩……!」
マホ「それじゃあ、あっちにも顔をだして来ますね」
京太郎「応。コケんなよ?」
マホ「分かりました。大丈夫です!」
マホ「それに、マホが転びそうになっても……先輩が助けてくれるんですよね?」
京太郎「転ばないようにするのが、一番だけどな」
マホ「それも、そうですね!」
京太郎(……ああ)
京太郎(だからやっぱり、俺は強くなんねーと)
京太郎(俺は、オカルトに勝たなくちゃならない)
京太郎(能力がない人間の為にも……オカルトに泣く人間の為にも……)
京太郎(応援してくれる期待に応える為にも、守りたい誰かを守る為にも……)
京太郎(他ならぬ、俺自身の為にも――)
京太郎(俺は、麻雀プロじゃなくちゃならないんだ)
久「……須賀くん」
京太郎「……なんですか、部長?」
久「獅子が子供を谷に落とすのって……」
久「あれ、強く育てるためじゃなくて……前の雄の遺伝子を殺すためなのよ?」
京太郎「そーいう、ガッカリ系雑学求めてませんからァ!」
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【夢乃マホの好感度が上昇しました!】
最終更新:2013年09月19日 23:41