透華「……というわけで」
透華「人為変態戦士マーズレッド、始動ですわ!」
純「……なあ、何がというわけなんだ?」
一「いや、どっかの誰かが目立ちたいって言いだして……」
智紀「で、折角だからオカルトスレイヤーの様なものを……と」
純「あー、なるほど」
透華「狙うなら、視聴率NO.1ですわ!」
一「……いや、無理じゃないのかな」
一「オカルトスレイヤーのあれは、アクションシーンと話題性でだいぶ稼いでたから……」
智紀「同ジャンルで普通のアクションだと、どうしても見劣りする」
純「改めて、京の字はスゲーよな」
ハギヨシ「麻雀の代わりになるもの……と、色々な道を模索していましたから」
智紀「……正直、話だけでも鬼気迫る勢いなぐらい」
一「そういえばあのとき、古式ムエタイやってたんだっけ?」
一「珍しいよね、ムエタイで……しかも古式って」
ハギヨシ「ええ、それは……」
ハギヨシ「『どうせやるなら……立ち技最強を覚えたい』」
ハギヨシ「『近代化して、技が削れる以前のを』」
ハギヨシ「『難しければそれだけ、全力で打ち込めるから……』」
ハギヨシ「……という感じでしたね」
一「……うわあ」
純「色々見失ってんな」
智紀「……須賀くんだから仕方ない」
純「で、結局やめたのか」
ハギヨシ「当人いわく、『どれだけやっても、俺はこれでもトップになれない』」
ハギヨシ「だ、そうです」
純「そりゃ、当たり前だろ」
智紀「一位になりたかったなら、別のものを選べばいいのに」
一「本当に馬鹿だよね、京太郎くん」
透華「ちょっと、私をぬきで盛り上がらないで下さいまし!」
透華「そう……オカルトスレイヤーと張り合うなら、オカルトスレイヤーになればいいんですわ!」
透華「しかし、それと同じ道は歩まない! 二番煎じなんて、ちゃんちゃらおかしい!」
透華「やるなら、より派手に! より大袈裟に!」
透華「そんな方針のアクション番組こそが、相応しいのではなくて?」
智紀「……ごめん。日本語でお願い」
透華「『話題性のある麻雀プロを起用』」
透華「『凄まじいアクション』」
透華「その名も――」
透華「『人為変態戦士マーズレッド』! ですわ!」
一「ダサい」
純「タイトル長いな」
智紀「なんかゴキブリ駆除剤みたい」
ハギヨシ「改めて、些か感性を疑います」
透華「う、うぐぐ……」
透華「しかし、私は大真面目にこれを……」
純「……ギャグじゃなかったのか」
智紀「『須賀プロ主演にアクションやるとしたら、ヒロイン誰がいい』……っと」
ハギヨシ「……ならば私も、真面目に言わせて頂きます」
ハギヨシ「京太郎くんは……いえ、須賀プロは……」
ハギヨシ「確かに彼は、色々な事ができる芸達者で……番組としても華があることは承知しております」
ハギヨシ「しかしながら、彼は麻雀プロです。麻雀が本業です」
ハギヨシ「タレント活動自体は、彼が自ずから行っているので否定はしませんが……」
ハギヨシ「せめて、本業に影響が出ない範囲に留めておくべきではないでしょうか?」
ハギヨシ「また、彼以外の麻雀プロに……アクションを求めるのは酷というもの」
ハギヨシ「彼なら軽い打ち身で済んでも、他のプロなら骨折しかねません」
ハギヨシ「麻雀界の為にも……」
ハギヨシ「また、須賀プロが麻雀に集中するためにも」
ハギヨシ「そのような企画は、考えなおした方がよろしいかと」
一「とーかには悪いけど、ボクも反対」
一「あんな麻雀スタイルなのに、タレント業なんてのにはそもそも無理があるんだ」
一「確かに出来てるし、京太郎くん自身がやってるってとこはあるけど……」
一「ボクたちが、彼の重荷になることをしちゃいけないと思う」
一「少なくともそのままの案なら、ボクは反対だ」
智紀「……ふむふむ。大星プロ」
透華「……それは、友人としての言葉ですの?」
透華「それとも、龍門渕に仕えるものとして?」
ハギヨシ「……確かに」
ハギヨシ「彼の友人としての私情が混じっていることは、否定できません」
ハギヨシ「しかしながら私は、公正な箴言を行ったつもりです」
ハギヨシ「未来ある麻雀プロの、本業に支障をきたせる番組を撮影する」
ハギヨシ「そんな不名誉は、龍門渕にとっても好ましいものではないでしょう」
透華「……なるほど」
透華「他の麻雀プロについてはスタントマンを使うか、アクションシーンを除きますわ」
透華「しかし……須賀プロが出演するか否かは」
透華「彼が決めるのではなくて?」
ハギヨシ「ええ、一番は彼の意思です」
ハギヨシ「彼とてプロなのですから……己の限界は心得ているでしょう」
ハギヨシ「かつてのように、あまりにも無謀なことはしないはず」
ハギヨシ「しかしながら……」
ハギヨシ「彼の意思が重要と言えど、それを言い訳に制作者の責務を軽んじるのは……以ての外では」
透華「制作者の責務?」
ハギヨシ「ええ」
ハギヨシ「出演者に万全の舞台を整えること、です」
ハギヨシ「ロケーションしかり、スケジュールしかり、スタッフしかり……」
ハギヨシ「彼ら自身の、管理についても」
ハギヨシ「出演者を動かすのですから、その制作にあたる全てを万全に管理すべきです」
ハギヨシ「その中で最も重要なのは、安全管理」
ハギヨシ「出演者が可能と言っても、それが本当に可能であるのか。安全であるのか」
ハギヨシ「そのことへの責任を、制作者は負担しなければなりません。出演の対価以上に……」
ハギヨシ「それは、契約書に載せるまでもない、最低限の義務となります」
ハギヨシ「……座右の銘は、いかなるものだったでしょうか?」
透華「目立ってなんぼ!」
透華「そして――ノブレス・オブリージュですわ!」
ハギヨシ「ならば……」
透華「ええ、言われなくとも判っていますとも!」
透華「義務と名のつく以上、軽んじなどはしませんわ!」
透華「言われずとも、万全の安全管理は行います」
透華「ただ、仕事である以上……出るか出ないかは、須賀プロが判断すること」
透華「ですわね?」
ハギヨシ「……ええ」
一「まあ、それじゃあ色々見直そうか」
純「どうせなら、ほのぼの系はどうだ?」
純「オカルトスレイヤーがシリアスだったわけだし、そっち方面なんかは……」
透華「なるほど……」
透華「ほのぼの系ハイパーバトルアクションコメディ!」
透華「それはそれで、大いにアリ! ですわ!」
智紀「『大星プロとのキスシーンどうっすかね?(ゲス顔)』」
智紀「『むしろ目の前で別の女性とのイチャコラを見せるべき(断言)』」
智紀「『あわあわ涙目になるんですねヤッター』」
智紀「『先輩後輩で宮永姉プロとかどうっすかね(提案)』」
智紀「『いいゾ~、コレ』」
智紀「……なるほど」
ハギヨシ「……」
ハギヨシ「何をしてらっしゃるのですか?」
智紀「ひぎぃ」
◇ ◆ ◇
照「……オファー?」
尭深「はい……。アクション番組、なんですけど」
照「アクション……」
照(どうしよう)
照(私に仕事のオファーをしてくれるというのは、嬉しいしありがたい)
照(でも……)
照(一輪車乗れとか、縄跳びしろとか言われたら……期待に応えられない)
照(それは申し訳ない……)
照(いや、ひょっとしたらそういうのを期待しているのかも……)
照(……むう。嫌だな、そういうのは)
照(そりゃあ、昔に比べたら当然出来るようになってる。なってるはず)
照(でも、私は麻雀プロだから……怪我をしたら危ない。本業に支障が出る)
照(だから、駄目だ。本末転倒だ。転倒したら危ないし……)
照(申し訳ないがここは丁重にお断りを……)
尭深「須賀くん……。いや、須賀プロが主演みたいです……」
照「……」
照「……今、なんて」
尭深「須賀プロが、主演予定です」
尭深「そちらもオファー中だとか……」
照「……」
照「……私の役は?」
尭深「ヒロインって……書いてあります」
照「……!」
照(私がヒロインで、京ちゃんが主役のヒーローアクションもの?)
照(なるほど……なるほどな)
照(というか京ちゃんはまた、そんな危ないことをしようとしてるのか……)
照(熱心で元気なのはわかるけど、働きすぎじゃないのかな)
尭深「あと、淡ちゃんも……ヒロインです」
照(それに……危ないってこと、判ってるのかな?)
照(麻雀は楽なことじゃないし、身体が資本なのに……)
照(判っててもやりそうだけど……うーん)
照(……よし)
照(京ちゃんは一人だと無茶するから、私がついていてあげなきゃな)
照(ちゃんとブレーキをかけてあげないと、どこまでも走り出しちゃうから……)
照(うん。京ちゃんってば仕方がない子だなぁ)
照「出る」
尭深「あ……はい、判りました」
照(しかし……京ちゃんはどんな役なんだろうな)
照(京ちゃんらしく、年下系だといいんだけど)
照(京ちゃんはどうにも格好つけで負けず嫌いなところがあるから……)
照(そういうところが、可愛くて微笑ましい)
尭深「あ、アクションじゃなくて……」
尭深「アクションコメディ、みたいです」
照(……うん。私の中の京ちゃんは、あの頃のままなのかも)
照(『照ねーちゃん』『照ねーちゃん』って、後ろをついてきて可愛かったな)
照(あの頃は、今よりももっと素直で。ちっちゃくて)
照(……覚えてないのか)
照(子供の頃のことだとしても、やっぱり少し寂しい)
照(……まあ、私もすぐには気が付かなかったけど。子供の頃だし)
照(まさか、あの頃してたことを今返されるなんて……擽ったいような、恥ずかしいような)
照(まあ、京ちゃんも大人ぶりたいんだろうな)
照(でも……それでも意地っ張りでお調子者なところは、変わらずだ)
照(私がちゃんとブレーキ役になって上げなきゃな)
照(仕方ないなぁ、京ちゃんは)
◇ ◆ ◇
誠子(私は今、猛烈に後悔している)
誠子(確かに不景気だった。会社が、従業員数を縮小しようとしているのは知ってた)
誠子(それがしかも、若手にも及ぶなんて噂を耳にしてしまったとき)
誠子(あろうことか……そんな会社は、さっさとこちらから見切ってやろうと思ってしまった)
誠子(予め技能ありきで募集して、挙げ句に碌に育成もしない……できない)
誠子(どうにも、あのロシアのPMCと比べてしまった)
誠子(それで、あの会社を離れた)
誠子(聞く話によると、それから経営不振を起こしたらしいから……私の判断は間違っていなかった)
誠子(……が)
淡「亦野せんぱーい」
淡「暇ー。暇ですよー」
誠子(何故私は、こいつに頼ってしまったんだろうか)
誠子(我ながらこれは、間違ってしまったとしか思えない)
誠子(銃器の扱いも出来るから、ボディーガード程度は一応軽いが)
誠子(それにしても……)
淡「ひーまー」
淡「ババ抜きでもしましょうよー?」
誠子「お前、能力使うだろ」
淡「バレました?」
誠子「……はぁ」
誠子(こいつのマネージャーって、やること少ないんだよな)
誠子(給料ちゃんと払われるから、いいけどさ)
誠子(賞金懸かった試合とかには、ちょくちょく出てるらしいしな)
淡「なんで仕事来ないんですかね?」
淡「こんなに可愛いのに」
誠子「ランキング、低いから話題性がないんだろ?」
誠子「ちゃんと色々チェックしてる麻雀好きなら知ってるけど……」
誠子「一般的な知名度はそれほどでもないからじゃないのか?」
淡「ぶー」
淡「本当なら今ごろ、低ランクなのにタイトルホルダーってなってたのに……」
淡「きょ……いや、須賀のバカプロのせいで……!」
淡「適当に仕事でもやろっかなー」
誠子「……普通にランキングに関わる試合でろよ」
淡「それは却下で」
誠子「……何でだよ」
淡「だって、まだ須賀倒してないし」
淡「アイツを倒して、アイツに付けられた傷を癒して初めて私はスタートできるんですよ」
淡「私の快進撃……大星淡の初めては、須賀京太郎って決めてるんです」
淡「そしたらそっから一気に、イケるとこまでイっちゃいますからね」
淡「ばばーんと! テルのとこまで!」
誠子「……あ、ああ。そうか」
誠子(……馬鹿だ、こいつ)
誠子「……で、仕事来てるんだけど」
誠子「どうする? やってみるか?」
淡「んーと、どんな内容ですか?」
誠子「ヒーローものの、アクションコメディみたいな感じだな」
誠子「勿論大星のアクションは、やるとしてもスタントあり」
誠子「キャラは……ああ、ヒロインらしいけど」
淡「ふーん」
淡「ヒーローものって……ちょっと子供っぽくないですかね?」
淡「あんまり私そういうの、見てないから判らないんですよねー」
淡「精々、オカルトスレイヤーぐらいだし……あれは子供向けじゃないし」
誠子「じゃあ、断るのか?」
淡「勿体ないですけど……全然興味や知識がない番組に出るのもどうかなーって」
誠子「そう言われたら、そうだよな」
淡「ですよねー!」
誠子「っと、オカルトスレイヤーって言えば」
誠子「この番組も、須賀プロが主演らしいな」
淡「――――」
淡「えっ」
淡「へ、へー」
淡「そ、そーなんですかー」
淡「へー」
誠子「しかもまた、須賀くんはスタントなしアクションらしい」
誠子「須賀くんも大変だな……」
淡「へー」
淡(えっと、私がヒロインで……須賀が主演?)
淡(つまり私、アイツとキスシーンあったりするの?)
淡(……)
淡(ないないないない。絶対やだ。なんであんな奴としなきゃいけないんだってば)
淡(あり得ないって。アイツと共演でヒロイン役なんて、絶対やだ)
淡(スケベそうな顔してるし、どさくさに紛れて何されるか判んないしさ)
淡(手付きがエロいって話だし、絶対セクハラとかされる。お尻触られたり!)
淡(……)
淡(……ヒロイン、かぁ)
淡(どんな番組かもしらないし、須賀の馬鹿と共演だけど……)
淡(うーん、ヒロインってのを捨てるのは勿体ないよね!)
淡(やっぱり、私の可愛さなら主役が相応しいし!)
淡(これ出たあとにオファー増えるかもしれないしさ!)
淡(だから、仕方なく出てあげる! アンタが主演だとしても!)
淡(……)
淡(……ヒロイン、かぁ)
淡(……)
淡(んへへへへへへ)
誠子「んじゃ、オファーは断っておくよ」
誠子「正直、こういうのも経験の内だと思うんだけどな……」
淡「そうですね! 言われてみたら、そう思います!」
誠子「えっ」
誠子「いや……何て言うか、やけに素直だな」
淡「マネージャーである先輩の言葉を、考えてみようかなって!」
誠子「そ、そうか?」
誠子「なんか気持ち悪いなあ……どうしたんだよ、お前」
淡「そんなことないと思いますよ! はい!」
淡「ヒロイン、かぁ……」
淡「……」
淡「仕方ないなぁ、きょーたろーは」
淡「まったく……」
淡「~♪」
◇ ◆ ◇
菫「ふう……」
菫「……」
菫「あー、疲れた」
菫「確かこの辺りに、ポッキーが……」
菫「あー、癒される」
菫「あー」
菫「……」
菫「……マネージャーでも、雇おうか」
菫「独り言ばっかりで、なんだか私が可哀想な人みたいになってしまうじゃないか」
菫「はぁ……」
菫「でも須賀や、やえの奴はマネージャーなしだしなぁ……」
菫「私だけマネージャー雇うってのもな」
菫「あー」
菫「照や淡の奴なぁ……」
菫「なんでなんだよ、まったく」
菫「いや、あいつらは麻雀以外があれだからわかるけどさぁ……」
菫「しょうがないんだよな、誰かがフォローしないとさ」
菫「そこは、同性……できれば気心知れてる奴がいい」
菫「だから、あの二人が適任だってのは判る」
菫「判るさ! 判るけどな!」
菫「……先に教えてくれてもいいじゃないか」
菫「飲みの席で平然とその事知ってる前提で、いきなり話をし始めて……」
菫「それで、『あれ、言ってませんでしたっけ?』とか……」
菫「やめろよ、そういうの」
菫「……」
菫「いや、あいつらのことだから純粋に伝え忘れたんだろうが……」
菫「昔から、そういうこと多かったからな。判ってるよ」
菫「でもなぁ……」
菫「思えば、大学の麻雀部だってそうだ」
菫「なんで私の学部は私だけしかいないんだよ」
菫「オカルトなしで打つなら……って大学選んで、来たんだよ」
菫「幸い推薦だったから、学部なんて特に考えるわけないだろう?」
菫「それなのにあいつら、ちゃんと考えて大学来てるし……」
菫「挙げ句その癖、須賀なんかはプロになるし……」
菫「お前、教師になるんじゃなかったのか?」
菫「新子とも、仲良そうにしてたじゃないか。教育学部の話題で……!」
菫「その癖プロになったらなったで、タレントまがいの出演率だし……」
菫「いや、判ってるんだ。判ってるさ」
菫「お前本人は麻雀プロとして、麻雀を打ちたいって……勝ちたいと思ってるって」
菫「でもなぁ……」
菫「……」
菫「……やめよう。なんか虚しい」
菫「メール?」
菫「仕事のオファー、ね」
菫「ふーん……アクションコメディか」
菫「タイトルは……『人為変態戦士マーズレッド(仮)』」
菫「戦隊もののオマージュか……どうせなら魔法少女のオマージュがいいんだけどな」
菫「役は……なるほどなるほど。そう来たか」
菫「えーっと、主演は……」
菫「……あの、バカ」
菫「ノースタント、ノーワイヤー、ノーCG、ノー早回し」
菫「あいつは……なにやってるんだ?」
菫「しかも、照と淡にもオファーとか……嫌な予感しかしない」
菫「演技力は、大丈夫だろう」
菫「照の営業モードはかなりのものだし、淡も二面性があるからな」
菫「……ただ」
菫「撮影以外で、須賀のストレスが凄いことになるだろうな」
菫「……」
菫「あー」
菫「やってやるよ! 私が!」
◇ ◆ ◇
美穂子「えっと……私にオファー?」
美穂子「アナウンサーなんだけど……いいのかしら?」
美穂子「出演者は……えっと」
美穂子「うーん」
美穂子「須賀くん……そう言えば、久しぶりね」
美穂子「プロになってからは、前ほど連絡もとらなくなったから」
美穂子「元気にしてるかしら?」
美穂子「教えたことは、彼なりに生かしてくれているみたいだけど……」
美穂子「えーっと、なになに……?」
美穂子「『若!』」
美穂子「『ああ、またそんなにお怪我をして!』」
美穂子「……」
美穂子「いくつか台詞が載っているけど……どういう状況なのかしら、これ」
美穂子「うーん」
美穂子「……そうね」
美穂子「久しぶりだから、折角だし……」
美穂子「……でも」
美穂子「これ、インターハイ前には終わるのかしら?」
美穂子「……」
◇ ◆ ◇
白望「……ダル」
白望「京太郎……は、居ないんだった」
白望「……」
白望「ちょいタンマ」
白望「こっちを空売りで……」
白望「……」
白望「……」
白望「……」
白望「京太郎が置いてった佃煮、残ってたっけな……」
白望「……ご飯温めるの、ダル」
白望「あー」
京太郎『シロさん……ちゃんと、覚えて下さいよ?』
京太郎『「なんで」って』
京太郎『そりゃあ、俺だっていつまでもこうしては来られないですから』
京太郎『俺にも、就職とかあるんですよ?』
京太郎『えっ……ああ、はい』
京太郎『そうっすね。今のまま行けば……教師っすかね』
京太郎『場所?』
京太郎『地元の高校帰るか……それとも、奈良にでも行くか』
京太郎『そんなとこっすかね』
京太郎『それが、どうかしたんですか?』
京太郎『え……「なんでもない」?』
京太郎『……あ、そうっすか』
京太郎『とにかく、もう卒業した先輩のところに……こうして現役学生が足を運ぶことがレアなんすよ?』
京太郎『ちゃんと、自分でできるようになって下さいよ? いいですね?』
白望「……」
白望「……作るか」
白望「ダル……」
白望「……はぁ」
白望「色々、覚えたな……あれから」
白望(京太郎は……プロか)
白望(一時荒れてたときはどうなるかと思ったけど……)
白望(なれたんだ……プロに)
白望(……)
白望(どっちにしても……駄目だった、か)
白望(……言い出して)
白望(関係を崩すのは……ダルかったけど)
白望(言ってたら、案外違ったの……かも)
白望(迷ってても……どうにも、ならなかったな)
白望(……)
京太郎『小瀬川先輩……? え、ダルいからシロでいい?』
京太郎『シロさん……ほら、掃除しますよ』
京太郎『料理っすか? えっと、好き嫌いは……あ、ない。そっすか』
京太郎『しょうがないな……シロさんは』
京太郎『泊まってけって……!? ……あ。朝飯も作れってことっすね? もー』
京太郎『最近……疲れてるんっすよ。俺に、関わらないで下さい』
京太郎『……悔しい。悔しいん、スよ……!』
京太郎『この間から暫く……色々迷惑かけちゃって、すみません!』
京太郎『……はは。先輩、以外にお茶目なんですね』
京太郎『俺も……そんな風に、過ごしたいっす』
京太郎『こうしてるの、落ち着きますね』
白望「……」
白望「……ダル」
白望「……電話」
白望「京太郎……」
白望「……」
白望「……は、居ないんだった」
白望「……ダル」
白望「……」
白望「……出るよ」
白望(まさか……ひょっとしたら)
白望「……はい」
白望「はい……はい」
白望「……はあ」
白望「……」
白望「京太郎が……?」
白望「……はい」
白望「……」
白望(正直、ダルいけど……)
白望「……」
白望「考えさせて、下さい」
白望「はい」
白望「それじゃあ……はい」
白望「……」
白望「……あ」
白望「今のは、買いだったか……」
白望「……」
最終更新:2013年09月22日 17:48