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おばあちゃんの日 5話】 [sage] 2010/06/14(月) 21:31:20 ID:lSMXUZsL Be:
スタートこそ勢いよかったものの、階段に足を踏み入れると麻由美の動きも球に緩慢になる。
「ふぅふぅ、あ、足があがらな~い。これって着物のせいだけじゃないよね…なんか腰とか背中も痛いし。」
「それが歳をとるってものよ。ほらほら、こんなところでもたもたしてないの。」
「あ、おばあちゃん、お、押さないでよ。」
すっかり若々しくなった祖母の後押しも手伝って、どうにか2階までの階段を登り切る麻由美。
「じゃあ、あたしが服を選んでいる間に、おばあちゃんはとりあえず着物だけ脱いでおいてね。」
「はいはい。でも今日は夕方までお父さんとお母さんも帰らないんだし、留守番だけならこの格好でもいいんだけどねえ。」
「そんなこと言わないでよ。折角、若いおばあちゃんになったんだから、オシャレ楽しまないんじゃ損じゃない。」
そう言い放つと、麻由美は早速とばかりクローゼットをあけ、中を探り始める。一方、祖母はやれやれといった感じで帯を解き始めた。
「わー!おばあちゃん、ほっそーい!」
一通りクローゼットをさぐり、いくつか選び終えた麻由美は、着物を脱ぎ終えた祖母の姿をみて驚愕と歓喜の混じった声をあげた。
「すっごーい!腰も足も腕も細いし…いいなあ。」
「おばあちゃんが若い頃はまだまだ食べるモノのあまりなかったからね…最近の若い子は食べるものが一杯あるから幸せだねえ。」
「でも、すごい。凄いよ。おばあちゃん。身長が低いからモデルはムリかも知れないけど、雑誌とかの一般からの写真募集なら採用されるかもしれないよ。」
「お世辞にでもそういってもらえると嬉しいねえ。けど、そろそろ服をもらえないかしら。」
「あ、ごめーん。えーと、これなんかどうかな。」
慌てて麻由美はチョイスした衣服を、少女のようになった祖母の身体へとあてはじめた。
数分後
「う~ん、なんかちがうのよね~」
「違うって…本当はおばあちゃんなんだから、若い子の服なんて似合うわけないのも当然じゃないかしら。」
「そうじゃないの。あたしが思っているイメージと違うというか…あ、そうだ!」
不意に何か閃いたらしく、麻由美はクローゼットとは反対側の壁へと向かった。
「おばあちゃん、これ!これ!」
麻由美の手にぶらさがっているのは、紺のブレザーに、Yシャツにネクタイ、チェックのプリーツスカート…彼女の高校の制服だった。
最終更新:2010年07月12日 01:13