投稿日 2010/07/30(金)
違う?
違わない。
私はわたし。わたしが私。わたしは篤子。それ以外のなんだっていうの?
声が聞こえる。嗚咽のような、途切れ途切れの声。他人のもののように思えたその声が、唐突に自分が発しているのだと気づく。
そこでわたしは起きた。目を見開いたのは一瞬だった。涙で視界は曇り、快感が目を閉じさせようとする。
自由にならないのは視界だけではない。わたしは身悶えしようとした。できなかった。両手足が縛られていた。制限された動きの中で、背中が少しのけ反る。
今感じているこの身体もわたしのだ。当たり前だけど。
ああ、それにしてもこの責め方。見なくても分かる。健ちゃんだ。
一応ちらっと下を見る。正解だ。健ちゃんは今、一生懸命おっぱいと格闘していた。
(あん、好きだなあ、おっぱい)
下にも手は触れているけど、熱心じゃない。もう、おっぱい星人なんだから。あ。
咲ちゃん。
ぐしゃぐしゃの景色の中にいるわたしの親友。いつものような凛とした表情でわたしを見て――いや。
いつもと同じ?
違う。違う、気がする。
(興奮……してる?)
裸のわたしを見て。
縛られたわたしを見て。
おっぱいを吸われるわたしを見て。
えっちしているわたしたちを見て。
かっと頭に血が上った。声のトーンが確実に高くなる。
見られて、わたしも感じてるんだ。
「気持ちいいの?」
図星をつかれてわたしは、頭を何度も上下に振って答えた。それは、健ちゃんかと思ったけど、咲ちゃんが聞いてきたものだった。
それにしても咲ちゃんの今の声。少し震えてた――あは。咲ちゃんってば。見た目は取り繕ってつもりでもバレバレだよ。
咲ちゃん、今確実にびしょびしょでしょ。息も荒いし、目も血走っちゃって……もっと見せつけて、もっと素直にしてあげる。
「――ん、けんちゃん、いれて、あっ」
その言葉を待っていたかのように、健ちゃんが体勢を変える。何度もヤってるだけあって、動きはスムーズだ。
「いくよ」
おちんちんを入口に当てて健ちゃんが言う。わたしは当然頷いた。
「んっ」
ゆっくりとわたしを押し広げていくもの。それを阻むものなんてない。健ちゃんのものしか受け入れたことのないそこは、その形を覚えさせられている。
「ああぁ」
にしても大きい。
「あっ」
奥までがっつり入れられたものが、今度はぐぐっと肉を擦りながら出ていく。
「あっ」
でも完全に出てしまう前に、再び健ちゃんが腰を前に押す。
「ああっ」
その繰り返し。
何かを考えるなんて無理。
「はっ、やん」
あ。あ。あ。あ。
ぱん、ぱん、ぱん、ぱん。
やっばい。
すごい感じてる。
やっぱり、いつもと違うからかな。
縛られて、咲ちゃんに見られて気持ちいいなんて、わたしってM――
「へー、咲ちゃんって」
え?
「結構Mなんだね」
え?
「いつものわたしより感じてんじゃん」
……え?
……
え?なんて、呆けている暇は私にはなかった。本調子になったのか、遠慮のない彼が起こした衝撃が、私の下腹部を襲ったからだ。
「ぅあ!」
自由のきかない私の身体には、その衝撃は極めて暴力的だ。逃げることのできない腰に、押し付けるように健児君が動く。
だけど、問題は。
「くっあっ!やめ!」
この身体はそれを。
「うああ!」
快感として受け止めることだ。
でも――
「咲ちゃんって、あえぎ声可愛くないよねー」
その一言に対する怒りが私を突き動かした。顔を声の方向に向ける。いた。
「あんたぁ!」
揺れる視界の中で、しっかりとその姿を見定める。涙は出るし、声も押さえきれなくて格好はつかないが、それでも、視線で相手を殺すつもりでだ。
もう、許さん。最初から許容範囲をあっさり飛び抜けることばっかりだったけど。
しかし、圧倒的優位に立っている篤子の自信は揺るがしようもなかった。挑発するように笑っている。自分の顔だけどむかつく。
「とっとと戻しなさい!」
「いいの?」
当たり前だ。歯をむき出し、鼻息荒くさらに私は叫ぼうとしたが、篤子が機先を制した。
「イかせてあげないよ」
う。
「そ、それは……」
困る。
前に放置プレイした時は――は?
と。無視されて怒ったのか、不意に健ちゃんが動きを変えた。
「や、け、健ちゃん!は、はげし――」
さらに、思い出したかのように胸も責め始めた。
「ううっ」
声が、押さえられない。身体が仰け反ったり、くねくねと動く。
でも、この状態から、放置?
「そ、そんな、の!あっ!」
まだ、一度もイってないのに?
「む、りぃぃぃぃ!」
や、やだ。すごいきもちいい。かんがえが、まとまらない。こんなの、私しらなかった。
あれ、わたしは知ってた?
「あ、ああん!」
あん、どうでもいいか。頭の中でスパークしてる。そっちのが重要だ。篤子ってば、私なんかより……あれ?
私が篤子?
いや、わたしは。
「ひっ、はっ、ああああ」
ああああ。
わけ、わかんない。
そんなとき、声が聞こえた。
「ねえ、咲ちゃん。わたしのお願い、聞いてくれる?」
お願い?
「しばらく、入れ替わったままでいない?」
「な、あっ……はっ」
なんで。
「最近の咲ちゃんって、いつもつまらなそうなんだもん。がんばりすぎだよ。もっと、わたしみたいに気楽にやったほうがいいよ」
そ、そ、こ、は。
「わたし、健ちゃんも好きだけど、咲ちゃんも好き。同じくらい好き。もし嫌じゃなかったら、一緒に健ちゃんの恋人になろう?」
ん?いや、ちょ、まっ。
「咲ちゃんの身体は、わたしが頑張って気持ちよくなれるようにしてあげるし、しばらくはわたしがバイトとか部活がんばるから」
あん、健ちゃん待って。今、大事な――ていうか私健ちゃんって――
「わたしにも咲ちゃんの記憶はあるから絶対にドジは踏まないから」
え、えーっと。
あ、や、脇って!ちょ!そこも感じるの!?
「ね、お願い?」
あー。えー?
ぱん、ぱん、ぱん。
「と……」
「と?」
「とにかくっイ、イかせて!」
「じゃあ、オッケーだね!?健ちゃん!」
あ、あはーん。
数十秒後。健ちゃんの激しい責めで私はイった。
あれから一ヶ月。
私達は入れ替わったままだ。
「健ちゃーん、んー」
「ちょっと、私のキャラ壊さないでよ」
「えー、いいじゃん。わたしんちでなら」
結局あの申し出を私は受け入れた。身体の入れ替えは篤子にしかできないにしても、強く言えば戻してくれただろうけど。
「ツンデレみたいで楽しいよね。あのクールな早川さんが!みたいな」
「じゃあ、今の篤子ちゃんは?」
「デレツンデレ、かな?」
私はそれを、篤子の心が混じったからだと思っている。ようするにぼけたんだ。私はバカになってしまった。
「あー、咲ちゃんって一回イったあたりからやけに素直で可愛くなるよね」
「昔の篤子以上のMっ気出すし」
「う、うるさいうるさい!」
でも、今のが前より楽しいからいいか。
深く考えずに私はそう思った。
最終更新:2010年07月30日 22:55