おばあちゃんの日 第11話

その言葉に、麻由美は少女が着ている着物が先ほどまで祖母が着ていたものと同じであること、そしてその話し方がこの年頃の女の子にはそぐわない、別の言い方をすれば祖母のそれにそっくりであることに気づいた。
「そ、そんな、まさか…」
脳裏に浮かんだ想像を麻由美は信じられなかった。
確かに祖母はあんなことを言っていたけど、現実に起こるなんて。
「まだ信じられないみたいだね。けど、おばあちゃんは言っただろ。年齢を交換するって。」
その言葉に、麻由美は少女の顔を見つめなおした。
確かにその顔は、16、7歳、麻由美と同じくらい。そして鏡に映っていた老婆の顔は70歳ぐらい。これは祖母の年齢だ。
「じゃあ、本当にあなたおばあちゃんなの?」
「分かったみたいだね。でも若いだけあって呑み込むのが早いねえ。」
「で、でも、こんなことが本当に起きるなんて、おばあちゃん、何をやったの?」
「うふふ、麻由美には悪いけど、それはちょっと秘密だよ。それより麻由美にも分かってもらえたわけだし、一度元に戻そうかい。ほら、ここに座って目をつぶって。」
言われるがまま、少女の前で目をつぶる麻由美。再び1分ほど経過し
「麻由美、もういいよ。」
聞き覚えのある声に目を開ければ、あの少女はおらず、かわりに祖母の姿があった。
「おばあちゃん、あ、そういえば!」
まだ床においたままになっている手鏡を覗き込めばそこには見覚えのある自分の顔。
「も、元に戻ってる。で、でもこれって夢じゃないんだよね。」
「さっきまでのことは夢でも目の錯覚でもないよ。本当におばあちゃんと麻由美の年齢を交換してみせたのよ。」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年08月01日 08:58