祖母の部屋から廊下までは普段とそれほど変わりなく進めたはずだが、階段を登ろうとした瞬間違和感に気づく。
いつもの力加減で脚を上げたはずなのに、爪先は階段の次段どころかその半分もあがっていない。
「あ、あれ?」
いつもは急いでいれば、一段飛ばしで登っていたはずなのに。
脚を力を入れて爪先を持ち上げようとした瞬間、麻由美は痛みを覚えた。
しかし、それは爪先とか足首とか膝とか腰だけに留まるものではない。
「あいた!」
全身に棘が刺さるかのような痛み。
思わず身体の制御を失い、倒れそうになるが、幸か不幸か階段に手すりにつかまり倒れることこそ免れる麻由美。
「あいたた…な、なんなのよ。なんでこんなに痛いの?」
そう呟いた瞬間、視界の隅を横切った皺だらけになった自分の腕をみて、今の自分の身体の状態に気づく麻由美。
「ふむふむ、なるほど~。おばあちゃん、何をするにも身体痛い。身体が痛いって言ってたけど。こういうことだったのか~。」
理屈で知っているのと自分で体験したのとでは理解の幅が違いすぎるのは当然のこと。
70前後の老人の身体では階段を登るだけでも一苦労としった麻由美は手摺にしがみつきながらも慎重に階段を登りどうにか自分の部屋へと辿り着いた。
最終更新:2010年08月01日 08:59