「まさか、自分の部屋にいくまででこんなことになるなんてねえ。」
普段の3倍以上の時間をかけてようやく部屋へと辿りついた麻由美。
幸いというべきか、握力こそ、それほど変わらなかったのかドアの取っ手はすんなりと回ってくれた。
もってきた祖母の服をベッドの上におくといつものように服を脱ごう…としてその動きが止まる。
痛いどころの話ではない。四十肩とか話では何度も聞いているが、腕が肩から上になかなかあがってくれない。
これでは今着ているブラウスを脱ぐことさえ困難だ。
「わわ、おばあちゃん達の身体ってこんなに動かないもんなんだ。」
一緒に暮らしているとはいえ、やはりその辺は本人でないと分からない世界だ。
それでも、身体を捻ったりくねらせたりなんたらかんたらでどうにかブラウスを脱ぎ、そしてブラジャーをハズしてみると
「お?おおー?!これって…」
自分の身体が老婆のものとなっているのは分かってはいても裸になってみるとまた新たな驚き。
「おー!これがおっぱいが垂れてるってヤツか。おー!」
元より成長過程でまだ垂れるとかいうものとは無縁の世界だった麻由美にしてみればそれはまさに未知に体験に他ならない。
「わー!ホントに垂れてる。わー!不思議な感じオッパイが垂れてるなんて。おー!」
豆腐サイズのレジ袋のような垂れ下がったそれを軽く持ち上げながら、しみじみといった感じで呟く麻由美。
「おっと、こんなところで感心してもいられないし。」
慌てるようにして祖母の服に着替える麻由美。幸いと言うべきか、老人向けの衣服だけに着やすいデザインになっているらしく、初めての麻由美でもすぐ身につけることができた。
「ふうん、これがおばあさんになったあたしかあ・」
先ほど前のハイティーン向けファッションとは違い、地味ではあるがその分年相応の衣服を纏った老婆…70歳相当となった麻由美の姿はそれほど見苦しいモノではない。
ある意味、女子高生の意識が宿っているせいだろうか。その表情はある意味屈託がなく、可愛いおばあちゃんといった感じだ。
「えへへ、あたしって、歳をとってもまんざらじゃないよね…でも…」
こうなると髪型がまだ女子高生っぽいことが顔つきや衣服と違和感バリバリだ。
部屋のブラシやヘアピン、髪留めゴムを手に取ると、麻由美は少々おぼつかない手で自分の髪型に手を加えだした。
最終更新:2010年08月01日 08:59