436 【おばあちゃんの日 15話】 [sage] 2010/08/14(土) 16:24:13 ID:pmmE9cdk Be:
アップにまとめるといっても、入浴時にただ髪をまとめるのとではちょっと意味が違う。
慣れない髪型と言うことで、かなり悪戦苦闘しつつも、ヘアピンとネット付きの髪ゴムを使って、どうにか髪をアップにまとめる麻由美。
姿見の中には無理な若作りなどしようとせず、素直に自分の老いを受け入れた分、上品で可愛い老婦人の姿が映っていた。
「ふうん、これはこれで悪くないかも。映画とかに出てくる上品な老婦人て感じで…それにちょっとおばあちゃんにも似てるかも…孫だから当たり前か。
…でも、言葉遣い、ちょっと変かも。」
見た目も衣服も声も70ぐらいの老婆が、少女のような話し方というのはあきらかにちぐはぐで滑稽といえるかもしれない。
「う、うほん…えーと…こうしてみると今のあたしも、それほど悪くないもんだねえ。おばあちゃんになってみるのも、それはそれでいいもんだねえ。」
普段の祖母の話し方を思い出しながら呟いてみる。
「うんうん、これなら悪くないねえ。あたしも、意外とやれるもんじゃないか。」
老婆という立場を演じることに面白さを見いだし始める麻由美。
♪♪♪♪♪…
と、そこで携帯電話がなりだした。かけてきたのは麻由美のクラスメイトだ。
「…はい…!」
いつもの習慣で、何も考えずに開いた携帯を顔に押し当て、一言で発したところで、麻由美は今の自分の状態を思いだした。
今の麻由美の声は、70歳の老婆に相応しい年老いた声。
いくら電話越しとはいえ、この声の違いを気づかない人間はいないだろう。
慌てて、電話を切ろうとした時、
「え?あれ?…あ、もしかして、麻由美のおばあちゃんですか?」
友人は電話にでたのが、麻由美の祖母だと勘違いしたようだが、それはそれで無理もない。
友人本人ならともかく、その祖母の声まで正確に覚えている人間はかなりの少数派だろう。
電話に出た声がいつもの女友達のものではなく、年老いた女性のものだったら、それはその友人の祖母だと判断するのもある意味当然の流れといえた。
「え、あ、そ、そうですよ。」
つい先ほどまで老婆らしい話し方をしてみておいてよかった。
でなければ、慌てるあまり、いつもの口調で話してしまったかもしれない。
「ま、麻由美は、ちょっと…そうちょっと今手が離せないみたいでね…もうしばらくかかりそうだから、後からかけさせますね。」
友人が勘違いしてくれたことに乗っかって、どうにかこの場を乗り切ろうとする麻由美。、
「ありゃりゃ、そうでしたか。じゃあ、また後でこっちからかけ直しますね。すみませんでした。」
何の疑いも抱いた様子をみせず、友人は電話をきった。
まあ、それが当然だろう。電話の向こうの友人が、女子高生ではなく老婆になっているなど、普通は思わないのだから。
最終更新:2010年09月30日 20:47