437 【おばあちゃんの日 16話】 [sage] 2010/08/14(土) 16:51:20 ID:pmmE9cdk Be:
「ふう、危なかった…」
閉じた携帯を机の上に置きながら、麻由美は誰に聞かせるとでもなく呟いた。
もっとも落ち着いて考えてみれば、こちらが迂闊なことを話さなければ、たまたま麻由美の祖母が電話にでたと思うのが当然の流れだろう。
「でも、あたしも意外とやるじゃん。すっかりおばあちゃんだと思いこんでいたし…まあ、テレビ電話じゃなくて音声だけだから尚更だけど。
だけど気を付けないとまた同じポカやっちゃうかも。今日は休日だから、いつどこから電話がくるか分からないし。」
携帯の電源を切ってしまおうかとも考えたが、万が一連絡がつかないというのも問題なので、マナーモードにした上で、引き出しの中にしまうことにした。
これなら、電話にでるとしても引き出しから出すというワンクッションが入るから、その間に、自分が老婆になっていることを思い出せるだろう。
「さて、特にやることもないからテレビでもみようかな。」
部屋にもテレビはあるが、他の誰にも気兼ねする必要がない以上、リビングの大きなテレビをみない手はない。
飲み物とスナック菓子を用意してソファに腰をおろし、テレビを見始めると、家の前に、宅配便の車が止まるのが見えた。
ややあって、
ぴんぽーん
チャイムの鳴る音。当然、宅配便からだろう。
先ほどのポカもあるし、居留守を使おうかと思った麻由美だったが、ふと友人が電話で自分のことを祖母だと勘違いしたことも思いだした。
(ん、宅配便ならそこまで細かく家の人間の顔覚えているわけないし、今のあたしがでたって変だと思わないかも…)
先ほど鏡をみた時にも今の自分が祖母と似ていないこともないことに気づいている。
(折角の機会だし、色々おばあちゃんの振りをしてみるのも悪くないかも。)
そう思ってしまえば後は気が軽い。
「はあい。」
話し方だけ気を付けてと自分に言い聞かせながら、インターホンに話しかける。
「どちらさまでしょうか?」
「…あ、すみません。宅配便でーす。」
「はいはい。今出ますからちょっと待ってくださいね。」
玄関に向かった麻由美は、早速カギとチェーンを外して、ドアを開ける。
最終更新:2010年09月30日 20:47