おばあちゃんの日 第17話

438 【おばあちゃんの日 17話】 [sage] 2010/08/14(土) 16:53:03  ID:pmmE9cdk Be:
    「ご苦労様ですね。」
    祖母が出たとしたら、こういうだろうセリフを、ゆっくりと丁寧に口にする。
    宅配便の人間は、20代後半のやや長身でがっしりした男性だった。
    「えーと、お届けものです。ハンコかサインをお願いします。それと荷物なんですけど、どこに…」
    男性がもっていたのは、かなり大きめで重そうな段ボール箱。
    老婆になっている今の麻由美はもちろん、本来の年齢でももてそうにない荷物だ。
    「ええと、すみませんけど、奥まで運んでもらえますかねえ。」
    「はい、かまいませんよ。どこにおけばいいですか?」
    「それじゃあ、こっちの…居間の方に運んでくださいな。」
    応対したのが、それなりに高齢の老婆ということもあって、配達人の対応もそれなりに気を遣ったものなのが分かる。
    (えへへ、見た目からしてそうだから当然だけど、ちゃんとあたしのことおばあちゃんだと思ってるみたいね。)
    大したことではないが、期待通りに事態が進んでいるのを確かめると何となく勝利感を覚える麻由美。
    「それではどうもありがとうございました。」
    「はい、お疲れ様でしたねえ。お仕事頑張ってくださいね。」
    ドアが閉まり、軽バンが走り去る音。
    「うふふ、やったやった。」
    ささやかな勝利に、ジュースで祝杯をあげる麻由美。
    「やっぱり、おばあちゃんになってると、人がみる目とか変わってくるよね。でも、他の人はどうなんだろう。」
    宅配の人間だけではなく、友人や行きつけのショップの店員、あるいはもっと大胆に学校の先生とか…老婆になっている自分をみた人間の反応も気になってくる。
    「…とはいえ出かけるのもマズイかも。」
    一応、留守番の都合もあるし、帰ってきた祖母が慌てることがないよう、もう少し準備をしてからの方がいいかもしれない。
    (でも、おばあちゃんが次もうんと言ってくれたらの話だけど。)
    夕方になって祖母も帰宅し、2人はすぐに本来の年齢に戻ったが、麻由美の頭の中では色々な計画が浮かんでは消えていっていた。

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最終更新:2010年09月30日 20:48