ぴちゃぴちゃとした水音が、2DKのアパートメントに響く。それが如何なる行為故に生まれる音か。知っているのは当人だけだ。
でも、もし……もし音が外や、隣室にまで聞こえていたら。その音から、行為の予想をしていたら。そう妄想するだけで、アリサは自分の最奥にある器官に、薪をくべられたような気がした。そして、じゅんと何かが股間から染み出す感覚がする――また、下着を変えなくては。
最初は単なる口付けだった。それだけで終わっていれば、可愛い悪戯だと自分を誤魔化すこともできたかもしれない。しかし、茄子への口付けを二度、三度と繰返し、行為はエスカレートしていった。今や舐めるにまで至り、これから口に含もうとさえしている。こんなものを人に、しかも血の繋がった兄に食べさせようとするのは、間違いなく変態だ。
こんなことは、今すぐ止めるべきだ。そして、茄子は処分する。洗えば食べられるかもしれないし、少しもったいない気もするが、そうしなければ、また同じことをしてしまうかもしれない。
でも。でも――女陰が熱い。その熱が自分を蝕み、おかしくしていく。
「うっ、えっ、んっ」
そこが、もうどうしようもない程に湿っているのは、感覚として分かっていた。しかし、アリサにある好奇心が生まれた。
触ってみたい……
今、気分はかつてない程に盛り上がっている。今までしてきた自慰の最中でも、感じたことがない程だ。
異常性と背徳感が、アリサの背筋を痺れさせているのは間違いない。この状態で自分の大切な部分に触れてみたい。弄ってみたい。掻き回して、みたい。
惚けたアリサの頭には、その欲望を遮るだけの理性は、残っていなかった。よく考えもせず、茄子を片手に持ち変えて、履いているデニムの中、ショーツの奥へと右手を這わせる。そこは、洪水のようだった。
「ひっ、ぁ……」
まんまと大事な部位に進入を果たした右手は、休むまもなく獲物に襲い掛かった。今までアリサがしてきた自慰とは、比べ物にならないようないやらしい手つきで、そこを撫で回す。その、自分のものとは思えないテクニックに疑問を持つだけの余裕は、今のアリサにはない。
「やっ、あっ、あっ、あっ」
ずっとアリサは立っていたのだが、ついに耐えきれなくなり、へたりこんだ。自然と、茄子に集中できなくなり、それは口元から離れた。
だが、その茄子を見て、先程の欲望が再び浮かんできた。この茄子を、挿入れたい……
理性には、もはやアリサを律するだけの力はない。それでも警鐘は鳴らしていた。しかし、今のアリサには、むしろそれは気分を高める意味しか持たなかった。
アリサは我慢できないといったていで、下半身を覆っていた履き物を脱ぐと、茄子を陰部に添えた。散々なめ尽くしたそれは、もはや冷たさもなかったが、それでも、若干の緊張をアリサに与えた。
息をする音が、やけに大きく聞こえる。緊張感は、アリサの理性に少し力を呼び戻したが、それでも止めるには至らない。
「んんっ――」
茄子が、押し込まれる。しかし、やはり太い。まだ一度も経験をしたことがない、『この体では』飲み込めない。
「かっ――はぁっ――ん~~いったぁ――!!」
痛みすら感じる。仕方がない。アリサは挿入することは諦めることにした。
気を取り直して、今度は茄子を、愛液を擦り付けるように上下動させる。
「んっ」
理性はこの期に及んでも、行為の停止を求めてきているが、当然止める気はない。今更止められるものか。
(この、ん、汁まみれのこれを、ケイイチが、ううん、んっ、兄さんが、あ、食べる……)
なんて甘美な妄想だろう。ケイイチが血の繋がった兄。素晴らしい。少し思い返すだけで、兄妹の思い出が、いくつも脳裏に浮かぶ。
年の離れた兄に、べったりだった自分――
お風呂に入れてもらった幼き日――
高校生になった兄にやっとできた彼女に、登場まだ10歳にも満たなかった自分が少し嫉妬したこと――
どれもすっかり忘れていたこと。自分に昔、ブラコンの気があったなんて。今では、影も形もほとんどないような当時の想いが、半ば強制的に甦らされた。
それに、アリサのものとは異質な想いが――いや、執着が混ざり合う。
「あ、あ――にい、さん……」
兄の姿を思い浮かべるだけで、茄子が滑る潤滑油が増した。
同時に、茄子を陰部に擦り付ける動きが変わった。単調に上下するだったそれが、時に押し付けるように。また時には女陰上部にある突起を磨り潰すように。さらに、胸にも手がいった。
「いっ、いいっ……いいよぉ、兄さん!兄さん!」
兄を呼ぶだけで、興奮と罪悪感が高まり、背筋がぞくぞくする。自分の手を兄の手だと、茄子を兄のぺニスだと思うだけで、イってしまいそうだ。いや、本当に軽く達した。それはかつてない快感だった。アリサの記憶の中にはない。彼女の記憶の中にもない。
今のアリサには、違和感など全くなかった。むしろ今の自分こそ完璧に思える。この自分を受け入れるべきだ。
ケイイチが、兄が大好きな自分を。その想いが止められない自分を。好きすぎて、こんな最低最悪な変態をケイイチに見限らせようとし、その未来の想像すら興奮してしまう、変態な自分を!
「も、もう――あっ、やああああああああ」
イった。アリサとして、兄を想ってした初めての自慰で、イってしまった。
「ひ、ひひ、ひひひ……」
体から力が抜けて、横になって最初は呆けていたが、しばらくしておかしくなってきた。妙な笑いが止まらない。だが、アリサは泣いてもいた。
もう駄目だ。兄をまともに見れない。自分は変態だ。実の兄弟を自慰のおかずにしてしまった。
ただむらむらしていたとか、そんな理由じゃない。兄に食べさせる唾液まみれの茄子を用意しようとして、気づいたらその茄子を陰部に擦り付けていた?真っ黒じゃないか。
何とはなしに、放り出していた茄子を顔の前に持ってくる。愛液で濡れたそれは、てかてかと光っていた。
それを兄が食べるところを妄想し、またむらむらしたアリサは、その後さらに二回ほどイった。イくたびに湧き出す罪悪感から、逃れるように。
その後、茄子は一応素焼きにしたが、どうしても我慢できなくなったアリサは、その茄子を捨てた。
最終更新:2010年10月07日 00:34