35 名無しさん@ピンキー [sage] 2010/11/28(日) 20:52:01 ID:1/C7hVE/ Be:
「歳時機」1
時刻は8時をまわり9時まで30分あまりを残す頃
アパートの一室で一人の女性が時折時計に視線を向けながら、片手で小さな塊を弄んでいた。
一瞬携帯かと思いそうなその塊は、確かに携帯とほとんど変わらない大きさと形。
しかしその表面には、小さな押しボタンが2つある限り。
もちろん携帯ではないだろう。
といってテレビやエアコンのリモコン…というわけでもなさそうだ。
最近の家電のリモコンで、ここまでボタンの少ないモノはまず存在しない。
「そろそろかな…」
壁掛け時計の長針が文字盤の6にさしかかろうとした頃、女性は弄んでいたあの塊を握り直すと、その向きを部屋の窓の1つに向けた。
よくみればそこにはリモコンの発信部にも似た半透明のパーツがついている。
ということはこの塊…機械はやはりリモコンなのか?
だとしても何故リモコンを窓に向けるのか?
女性の指がリモコンらしき機械のボタンの1つにかかった。
半秒後、そのボタンが浅く沈み込み、数秒後、女性の力が抜けると共に、元の高さに戻る。
が、何も起こらない。
テレビに映像が映ることもなければ、なんの音楽も響かない。
エアコンが作動している様子もないし、照明の明るさもそのままだ。
あれがリモコンだとしても、実は室内の家電いずれにも対応していない、なにかオモチャのリモコンなのだろうか?
そう考えても不思議ではない程度の時間が過ぎ去った頃、変化が訪れた。
女性の身体がなにかおかしい。
正確にいえば、身につけている服がおかしいというべきだろうか。
彼女がはいているジーンズの裾が緩やかに余りだし、踝を通り過ぎて床につきそして皺を作っている。
異変は下半身だけに留まらない。
みれば着ているシャツの袖の中に彼女の手、指先までもが完全に隠れてしまっている。
いつのまに服が大きくなったのか?
いや、服が大きくなっているのではない。
よくみれば彼女そのもの、彼女の身体が縮んでいるのだ。
160センチぐらいあった彼女の身長がすでに150センチあるかどうかだ。
と同時に、別の事実にも気づく。
彼女の背が縮んでいるだけではない。
20代中頃と思しき彼女の年齢。
しかし、今の彼女の顔だちから、とても20代…成人女性とは思えない。
極端に幼いわけでこそないが、少女の面影があちこちに残るその顔だち。
20代というよりむしろ高校生ぐらいの顔だち。
そんな観察を続けている間にも、彼女の身長は更に縮んでいく。
裾丈どころか、他のサイズもあわなくなったのか、ジーンズが腰ばきを通り越して臀部からもずりおち…先ほどまで布地越しとはいえヒップラインを浮かびあがらせていたジーンズそのものが明らかに弛んでいる。
上半身のシャツも袖の弛みだけではない。明らかに肩幅が合わなくなっている。
それどころか、決して大きくはないにしても、それなりにシャツの布地を盛り上がらせていた胸の膨らみ。それがいつのまにか消え失せていた。
そして、今の彼女の顔だち、それはもはや高校生どころか、ローティーン…中学生にしかみえないところまで幼くなっていた。
そう中学生。
今の彼女の身長、ポロポーション、そして顔だち。
1分前まで、20代の女性が存在していたアパートの一室に今立っているのは、二回り近くサイズの大きな服に埋もれるようにしている女子中学生だった。
36 名無しさん@ピンキー [sage] 2010/11/28(日) 21:42:48 ID:1/C7hVE/ Be:
「歳時機」2
身長が140センチ近くまで縮んだところで、彼女の肉体の変化は止まった…らしい。
身長だけではなく、スタイルも顔だちも、まるで中学生の少女そのものだ。
顔にほのかに化粧が残っていることがどこかちぐはぐなくらいだ。
「さて…と」
まだ握ったままのあのリモコン…彼女の手や指も小さくなったせいか、多少大きくみえる…をテーブルの上に置くと彼女は部屋の隅におかれた姿見にと向かった。
「ふ~ん、今回はこんな感じか…ちょっと小さくなりすぎたかな…」
多少失望混じりの響きが混じったその声もまた中学生…完全に声変わりが済んでいない…甲高いが落ち着きのない、金属やガラスを叩いた音のような耳に突き刺さるような声。
「まあ、これぐらいならなんとかなるかな。」
誰に聞かせるとでもなく呟いた彼女は、まず服を脱ぎ始める。
服を脱ぐと、彼女の肉体が縮んだだけではなく、若返っていることがはっきりと分かった。
すっかり細く華奢になった肩と腕。
起伏らしきものはあるものの膨らみというには難のある胸では、必要性に疑問の生じるブラジャーが明らかにそのカップの許容力をもてあましている。
ウェストは細いが、胸の貧弱さのせいで、それはくびれではなく、ただの細身にすぎない。
臀部の盛り上がりもまたローティーンの平均的サイズ。
ブラと違い、伸縮性に富んだ素材でできたパンティはどうにか、その小さな臀部の引っ掛かっていた。
「これとこれ、それにこれならなんとかなるかな。」
クローゼットから引き出した衣服を順に身につけていく女性…今は少女。
サイズのあうブラがなかったのか、まずは小さめのタンクトップ。
その上にはタイトな…本来の身体ならそうなのだが今では少し大きめの…ブラウス
膝より若干上丈のスカート…は本来ならミニスカートだったのだろう。
新たな衣服を身につけた彼女の外見は、背伸びをして大人びた衣服を無理に身につけた女子中学生だったが化粧品を相手に奮闘すること20分。
どうにか、成人にしては小柄にみえる女性…といったところにまで持ち上げることに成功したようだ。
「これならなんとかなるかな。まあ、怪しまれてもなんとでもなるし。」
時刻は既に9時をまわっている。
最後に、髪を多少整えると、彼女は玄関でミュール…これなら多少サイズの融通が利く…に足を入れる。
アパートからでた彼女の向かった先は、近くの…歩いて15分ほどの繁華街。
37 名無しさん@ピンキー [sage] 2010/11/28(日) 21:43:34 ID:1/C7hVE/ Be:
「歳時機」3
ミュールの踵の助けがあっても150センチに大きく届かない彼女は、繁華街では異質という意味でやや目立つが、時刻は9時過ぎ。
既に酔いの回った人間はそんなことを気にしないし、それぞれの店の人間もそういったことには敢えて口を出そうとはしない。
「さて、今日はどこにいこうかな。」
繁華街の入り口付近で立ち止まった彼女は周囲を軽く見回し
「ちょっと、そこの貴女。」
右側から声が聞こえた。
40代後半か、50歳そこそこと思しき女性…繁華街には似つかわしくない地味で妙に堅苦しそうな服装に加え、ご丁寧にも腕には腕章。
「貴女、その格好だと高校生よね。こんな時間こんな場所にいていいと思っているの?」
補導員あるいはその類の巡回者なのは間違いない。
「高校生?若くみられるのは嬉しいけど、あたしはちゃんとした成人ですよ。」
補導員の女性に毅然と言い返す彼女。
一見トラブルかと思える展開だが、これは予想の範囲…どころか実は期待さえしていたこと。
「成人?そんなウソ…」
「ほら!これみてくださいよ!」
バッグから取り出した(当然だが取り出しやすいようにしまっておいたのだ。)免許証を突き出す彼女。
中学生の顔だちを化粧で年上に見せかけているだけに、免許証の顔写真そっくりととはいかないが、そもそも免許証の顔写真は日常生活でみせる顔と似ていないことが多い。
ローティーンの顔とはいえ、あくまで彼女の顔の造りそのものは変わっていないので充分に似ている範囲。
細かな差違は写真を撮った時との環境の違いに吸い込まれてしまう範囲だ。
その上、繁華街特有のネオンサインの照明のせいで、ますますはっきりとした差違を朧気にしてしまっている。
「え…こ、これは…」
成人の振りをする高校生を何度もみてきたのだろう補導員だったが、免許証という年齢がはっきりと分かるものを提示されては驚くしかない。
「で、でも貴女ってどうみても…」
「あたし、昔から背も低し、顔も子供っぽいから、年下に見られること多かったんですよ。あ、だからといって気にしているわけじゃありませんから。
じゃあ、もう行っていいですか?」
「え、その…」
「これ以上疑うなら、交番にいってもいいし、会社とか知り合いに電話で確認してもらってもいいですよ。どうしてもっていうのなら。」
いくら補導員とはいえ、「成人女性」に対してそこまでやったとしたら後でどんな問題がおこるか分からない。
「え、いえ、それならいいのよ。お時間をとらせてごめんなさい。」
先ほどまでの上から目線はどこへやら。
どこか納得しきれない素振りを見せながら、その補導員は立ち去っていった。
最終更新:2011年04月22日 11:12