花嫁衣装は誰が着る?

243 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/03/24(木) 15:32:32.28 ID:FJQm1pRH Be:
    #某支援所のバンシーネタを見て、ふと昔読んだ「バンシーの呪いの服」という短編を思い出し、それにヒントを得てこんなモノを書いてみました。
    ※何のRPGだよとか、どういう世界観なのとかは、深く追求しないのが吉ですw

    『花嫁衣装は誰が着る?』

     さて、ココに男女一組の冒険者がいた。
     男性の名前はロムルス。中原出身の青年で、背の高いその恵まれた体格からよく前衛系の戦士や拳士と間違われるが、職業(クラス)は賢者(セージ)だ──まぁ確かに、魔術師系のクラスにしては武器攻撃も比較的巧みではあるのだが。
     女性の名前はユズハ。東方出身の小柄な少女で、クラスは女忍者、いわゆるクノイチだ。もっとも、その明るい陽性な雰囲気は、「闇に生きる忍び」のイメージとはおよそかけ離れたものだった。
     ふたりは冒険のパートナーであると同時に恋人であり、近々結婚する予定になっていたのだが……。

     「──はぁ~、いいなぁ……」
     昨日、友人の結婚式に出席して以来、ユズハはどことなく上の空で時々ホゥッと溜息をついたりしている。
     「そんなに、気に入ったのかい、昨日のアレ?」
     苦笑しながらロムルスが尋ねる。
     「そりゃあね! だって、ホントに素敵だったんだモン!」
     ユズハが夢見るような瞳で、昨日の結婚式の光景を思い浮かべている。

244 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:33:32.67 ID:FJQm1pRH Be:
     新郎新婦もやはり冒険者のカップルだ。修道僧(モンク)のバーンと、踊り子(ダンサー)のレイナ。ふたりの友人であり、時々パーティーを組むチームメイトであると同時に、好敵手(ライバル)と言うべき存在でもあった。
     ひと足先に結婚に漕ぎ着けたこと自体は別に構わない。別にそんなコトで張り合おうなどとは思わないし、第一自分達も来週婚礼を控えているのだ。
     そもそも冒険者になった直後ぐらいからの長いつきあいだし、結婚式にも喜んで参列し、素直に祝福できた。
     しかし、その結婚式当日、ふたりは──正確には花嫁のレイナは、「アッ!」と驚くサプライズを参列者に投げかけてきたのだ。
     通常、南方や東方のごく一部を除いて、婚礼衣装(ウェディングドレス)と言えば白が定番である。
     しかし、昨日の午後、婚礼会場に入場してきた花嫁のレイナは、喪服を思わせる漆黒のドレスに身を包んで来たのだ。
     一瞬呆気にとられた参列者達だったが、目端の利く者が新婦の衣裳が何かを悟
    って、その驚きは感嘆へと変わった。
     細やかなレースやフリルの装飾が多いゴシック調のそのドレスは、極上のシルクともアラクネイト(蜘蛛織布)とも異なる、まるで光を吸収するような深い黒の布で形作られており、白い肌とのコントラストで互いを引きたてている。
     本来は茶色に近い黒であるはずのレイナの長い髪は、薄く青みを帯びた銀色に染められ、隕鉄製の黒いティアラで飾られている。
     涙痕を思わせる特徴的な目元のメイクも併せて考えると、どうやらコレは、女淫魔(サキュバス)や海妖妃(セイレーン)と並んでその美しさを讃えられる女性型モンスター「嘆きの精(バンシー)」をイメージしたコスプレなのだろう。
     新郎のバーンが、リッチロードを思わせる紫紺のローブに身を包んでいることも、その推測を裏付けていた。
     冒険者ならではのシャレっ気に一同は湧いたが、レイナが着ているのが「本物のバンシーのドレス」であることが知れると、再度の驚きが広がる。

245 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:34:01.12 ID:FJQm1pRH Be:
     なにせバンシーは迷宮のボスモンスターだ。よほどの熟達者ならともかく、バーンやレイナのレベルで勝てないわけではないが、気軽に戦える相手でもない。
     「──運がよかったの」
     「そうだな、最初に戦った相手を、服を傷つけずに倒せたってのは確かに僥倖だった」
     若き夫婦が語る苦労話もまた、この良き日を彩るエピソードのひとつになる。
     ふたりは、沢山の友人たちの祝福を受けて、5日間の新婚旅行に旅立って行った。戻ってきたら、ユズハ達の式に夫婦で出席してくれる予定だ。

     「はぁ……レイナ、綺麗だったよねぇ」
     「まぁね。普段は勝気なトコロが目立つあの子も、さすがに結婚式の日だけあって、お淑やかな感じがしたし」
     「我がまま暴走娘」も「しおらしい新妻」に変えるとは、結婚、おそるべし! と、冗談交じりに考えるロムルス。
     チラと傍らにいる自らの許嫁に視線を投げる。
     (結婚すれば、彼女も多少はお気楽で能天気な点がマシになるかな?)
     「いや、無理ぽ……」と失礼な事を内心で呟く婚約者を尻目に、ユズハは何事か考えているようだ。
     「ねぇ、ロムくん。結婚関連の準備は、もうほとんど残ってないよね?」
     「ん? ああ、式場は予約したし、招待状は出した。新居と荷物の整理も終わってる。あとは、キミのウェディングドレスの手配……って、まさか!?」
     さすがは公私にわたるパートナー。ユズハの言いたいことがわかったようだ。
     「アレを手に入れにペッコまで行く気かい? さすがに僕達だけじゃ、バンシーの相手はキツいと思うけど」
     「ううん、ターゲットはバンシーじゃないよ。第一、まったく同じコトをしても、二番煎じでインパクトはイマイチだし」
     「じゃあ、何が狙いなんだ?」
     「ふっふ~ん、目的地はね、ヘイヨーよ!」
     「……! なるほど、ソヒー(喪妃)か!!」

246 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:34:39.83 ID:FJQm1pRH Be:
     ソヒーとは、東方領域の中でもヘイヨー付近のごく限られた地域にのみ出現する女性型モンスターだ。
     色鮮やかなこの地の古い民族衣装をまとった少女の姿をしており、冒険者と対峙すると、水系の攻撃スキルと短刀による攻撃を仕掛けてくる。
     三大美女モンスターが「美人」と形容されるのに対して、このソヒーは「可憐」と表現するのがよく似合う可愛い外見をしており、またその衣裳も確かに綺麗なのだが……。
     「まぁ、確かに僕達でもそれほど苦労はせずに、倒すには倒せるんだけど……」
     「服のサイズとデザインが問題なのよね~」
     昨日丸一日、ヘイヨーのダンジョンに潜り、20体近いソヒーを狩って、そのうち十数体から無事に衣裳をゲットして来たふたりは、今朝がた宿に帰って来て、その選別の真っ最中だった。
     と言うのも、古代王朝時代に未婚のままで死んだ12~15歳くらいの貴族の娘が当時の婚礼衣装姿で葬られ、その後、不死系モンスターとして復活した……というのが、このソヒーというモンスターのルーツなのだ。
     ユズハも確かに東方系で西方人と比べれば比較的小柄なのだが、一応成人した18歳。さすがにローティーンからミドルティーンの子たちの服で丈が合うものは、なかなか見当たらない。
     「お、コレなんてどうだい?」
     そんな中で、ロムルスが選び出した一着は、確かにユズハの背に合いそうな大きさだった。
     「どれどれ~……うわぁ、ピッタリ!」
     服の上から、藤色の上着を羽織ってみたユズハは、まさに自分の誂えたようなそのサイズに驚く。
     「そう言えば、コレ、最後に倒したあの子のじゃないかな?」
     ロムルスが言う「あの子」とは、昨日の深夜に遭遇し少々苦戦しながらも何とか倒したそのソヒーで、言われてみれば普通のソヒーよりも少し大柄で体力も多かったように思う。
     「たぶん、そうね。色合いもいいし、汚れやほつれも見当たらない……うん、コレに決めた!」
     目当てのものが手に入り、上機嫌なユズハ。

247 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:35:12.53 ID:FJQm1pRH Be:
     ふたりはテレポートサービスで中原にある「新居」へと帰る。
     ユズハはわざわざ「衣桁」と呼ばれる着物を掛けるための台まで買い込み、くだんのソヒーの衣裳を掛けて、部屋の隅に飾っておくことにした。
     「おいおい、本格的だなぁ」
     「あんなに綺麗なんだから結婚式で1回着るだけなんてもったいないじゃない。部屋のインテリアにちょうどいいと思うよ?」
     「ま、キミがそれでいいなら別に僕は構わないけどね。それより……」
     「むぐッ……んんッ……ぷはぁ、もう、ロムくん、昼間っからダメだよぅ」
     「昨日と一昨日がお預けだったからね」
     「ひャン! もぅ、しょうがないなぁ……」
     ユズハが折れ、ふたりはソファーに倒れ込んで睦み合いを開始する。
     ──その光景を、部屋の隅で置かれた着物は静かに見ていた。

      * * *  

     そして迎えた結婚式の当日。
     式場の控室で、ユズハは向こうで買ってきた東方風の下着姿に着替えていた。
     そして、控室に運び込まれた衣桁から、あのソヒーの衣裳を手に取り、思わず頬ずりした。
     「もう1000年近く前のモノのはずなのに、柔らかいし、肌触りもすごくいい。それに、お店には売ってない一品物だし、きっと皆も驚くだろーなぁ」
     浮き浮きしながら、ユズハは、袖口の広がった藤色の上着を羽織って帯をしめた。
     合わせ目をキチンと整えてから、ロングスカートに似た紅色の袴を履き、飾り腰帯を結ぶ。
     思った通り、まるで彼女のためにあつらえたかのように、衣裳のサイズはピッタリだった。

248 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:35:44.03 ID:FJQm1pRH Be:
     ──ち…がう……

     「ん? 誰かいるの?」
     何か声が聞こえたような気がして、ユズハは振り返るが、とくに人影は見当たらない。

     ──そ……た……の……

     「??」
     多少不審に思いながらも、ユズハは普段はポニーテイルにしている黒髪をほどいて、控室に設けられた鏡台の前に腰かける。
     鏡を見ながら、鏡台に置かれていた櫛で、背中まである髪をゆっくり梳かす。
     ──しかし、彼女は気付かないのだろうか?
     手にしたその櫛が見事な螺鈿細工の、骨董品屋なら大枚はたいても買いたがるような高貴な代物であることに。
     そして、その櫛で梳(くしけず)る毎に、自らの髪が過ごしずつ伸び、今や膝近くまでの長さに達していることに。
     髪を梳き終えたユズハは、大きな金色の鈴と真紅のリボンからなる髪飾りを頭頂部の左右に付け、唇に紅を差す……準備完了だ。
     ユズハ自身、東方の出身らしい黒髪黒瞳なので、これで見た目はほとんどソヒーそのものになった。
     「うわ~、自分で言うのもナンだけど……わたし、すごく可愛いかも」
     その言葉も決して自惚れとは言えまい。そのくらい、今のユズハからは、初々しさと淑やかな落ち着きが同居した、不思議な魅惑が感じられた。
     「ふふ、ロムくんも、この姿を見たら惚れ直してくれるかな?」
     両手を広げて、鏡の前でくるんと一回転してみるユズハ。
     ここまで浮かれていなければ、熟練の忍者たる彼女は、鏡に一瞬だけ映った、自らの背後に浮かぶ不審な影を見落とさなかっただろう。
     ──しかし、ソレが運命の別れ道となった。

249 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:36:45.63 ID:FJQm1pRH Be:
     「じゃあ、そろそろ式場に行こうかな」
     ユズハが控室を出ようとした、その時!
     (貴女の……)
     ユズハ脳裏に、直接声が響いてきた。
     それは、先ほど空耳かと思ったのとまったく同じ声だった。
     (貴女の…身体を……わたくしに…ちょうだい……)
     「え? な、なに!?」
     瞬時にして警戒姿勢をとったユズハは、何か武器になるものを求めて辺りを見回し、鏡台に置かれている女性用の護身用短刀──「懐剣」を咄嗟に手に取った。
     ──なぜ、そこにそんなモノが置かれていたのか疑問に思うこともなく。
     「あ……な、何これ……い、いやぁあああ……」
     艶やかな髪から、手にした懐剣から、そして身にまとっている衣裳そのものから、何か得体の知れないモノが、自らの全身に流れ込んでくるのがわかった。
     おぞましいその感触に、身を震わせようしても、身体はピクリとも動かない。
     そして、体内に蟠ったソレが、瞬時にして奔流となにってはじけ、全身を席巻した時……ユズハの意識は、そのまま途切れた。

     しばらくして、ぼんやりと虚ろな目をして鏡の前に立ち尽くしていた彼女の瞳に、確かな意志の光が戻ってくる。
     彼女は、鏡を覗きこむと、ペタペタと顔に両掌で触れ、次に視線を自らの身体に落とすと、左胸のあたりにソッと手を当てる……まるで、そこに鼓動があることが信じられないかのように。

     「──この着物は、貴女のものじゃない。私のための婚礼衣裳……」
     彼女の朱い唇から、そんな言葉が零れ落ちた。

     ──コン、コン!
     控室のドアがノックされ、ドア越しに新郎であるロムルスが遠慮がちに声をかけて来た。
     「ユズハ、そろそろ式が始まるけど、準備は大丈夫かな?」
     ほんの一瞬だけ躊躇うよう素振りを見せたものの、次の瞬間、何事もなかったのように、彼女は「これから夫となる愛しい男性」に返事をした。
     「ええ、問題ないわ……あなた」

250 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:37:08.69 ID:FJQm1pRH Be:
     結婚式は以前のレイナたちのものに劣らず大いに盛り上がり、列席した友人知人達は、花嫁の可憐な装いと佇まいを惜しまず褒めそやした。
     そんな浮かれた雰囲気中で、婚礼式典を終えた新郎新婦は、居並ぶ列席者ひとりひとりに挨拶して回っている。
     その中には、無事に新婚旅行から戻り、ちゃんと出席してくれたバーン&レイナ夫妻もいた。
     刹那の間、「ユズハ」と「レイナ」の視線が交錯する。
     「──どうやら貴女も、「そう」なのかしら?」
     「……ええ。やっぱり貴女も?」
     互いにアルカイックな微笑をたたえて見つめ合う新妻ふたり。
     「ん? どうした?」
     「いったい何の話?」
     バーンとロムルスが首を傾げるが、彼らの妻達は曖昧に微笑むだけだった。
     「フフッ、なんでもない。女の秘密よ」
     「ええ、これからは今まで以上に仲良くできそうね、ってだけ」

      * * *  

     それから、1年の歳月が流れた。
     今日はふた組の夫婦が合同で、親しい友人を呼んでの「結婚一周年記念パーティ」を開催したところだ。
     宴自体はたけなわを過ぎ、そろそろお開きになめうかという頃合い。
     今だに新婚熱々なバカップル夫婦として知人間では有名なふたりの旦那さん──バーンとロムルスは、同世代の独身者からのからかいや陽性な羨望の言葉に小突かれつつ、「新婚生活の実態」を吐露していた。

251 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:38:04.65 ID:FJQm1pRH Be:
     「しかし、なんだな。女ってのは結婚すると変わるって言うが、アレは本当だったんだなぁ」
     飲み慣れないワインのせいで、すでにほろ酔い気分になりつつ、バーンがロムルスに話しかける。
     「あ、やっぱりバーンもそう思うかい?」
     ちびちびとグラスの中身を舐めながら、ロムルスも嬉しそうに同意する。
     「あのレイナがなぁ……キチンと朝から起きて朝ご飯作ってくれるんだぞ?」
     「ウチのユズハも、随分と立ち居振る舞いが女らしくなったし」
     「レイナもそうだな。まぁ、元々お嬢様なんだから、礼儀作法とかそのあたりは心得てたはずだけど、今じゃどこの貴婦人かって感じだぜ」
     「言葉遣いも、丁寧になったね~」
     「家計を預けてるせいか、無駄遣いもしなくなったし」
     「ユズハは逆に、ちょっとした小物とかを欲しがるようになったよ。でも、たいした金額のものじゃないし、買ってあげると凄く喜ぶ。それがまた可愛いんだ」
     「冒険時の立ち回りも的確になったなぁ。我が嫁ながら「魅惑のダンス」とか仕掛ける時の艶っぽさは、以前の3倍増しだし」
     「そう言えば、ユズハも焦ってドジ踏むことはほぼ皆無になったね」
     「そうそう、俺のこと、「ダーリン」って呼ぶんだぜ?」
     「ウチは、「あなた」だな」
     横で聞いていた独身者の群れが、思わず砂を吐きたくなるようなノロケっぷりであった。

     そして、馬鹿夫達とは少し離れたテラスで、妻同士が差し向かいでしんみりと酒盃を交わしている。

252 『花嫁衣装は誰が着る?』 [sage] 2011/03/24(木) 15:38:26.75 ID:FJQm1pRH Be:
     「まさか、数百年の時を経て、再び人としての生を謳歌できるとは思いませんでしたわ」
     「私も……まさが、自分が誰かと結婚することができるなんて……」
     彼女達はともに、報われぬ生の果てに命を落とした存在──それがほんの偶然から、こうして再び、人として妙齢の女性として、暮らすことになったのだ。
     その感慨はひとしおだろう。
     「おふたりの様子を見ていれば、聞くまでもないことでしょうけれど……ロムルス殿は優しくしてくださいますの?」
     「……ないしょ」
     ほんの少し頬を染めて恥じらう「ユズハ」の様子が、結婚から一年が過ぎた若奥様のものとは思えぬほど初々しい。
     「フフフ、可愛らしいこと」
     「む……それを言うなら、貴女の──「レイナ」の方がおさかんなのは、確定的に明らかでは?」
     「ユズハ」の視線の先には、こんもりと膨らんだ「レイナ」の下腹部がある。そこには、新たな生命が宿っているのだ。
     「そろそろ6ヵ月ですか?」
     「それくらいですわね。貴女方のほうは、まだなんですの?」
     キョロキョロと辺りを見回すと、女忍者は踊り子の耳元に口を寄せて囁くる
     「……実は、先々月から生理がないんです」
     「まぁ……おめでとうございます!」
     「シィーーーーッ! まだわからないから、ロムルスさんには内緒ですよ?」
     「わかりました。そうですわ! わたくしたち、互いの子供の名付け親になりませんこと?」
     「それは、素敵ですね」
     彼女達は微笑を浮かべる。
     それは、ほんの一年前の非人間的なソレではなく、ごく自然に心からあふれ出る優しい笑顔だった。

    -ENDE?-
    ──────────────────
    以上。ハッピーエンドっぽくまとめてますけど、身体を乗っ取られたふたりの女性にとっては災難な話ですよね。まぁ、死者の衣を剥ぐなんて真似をした報いと言えないこともありませんが。
    余談ですが、本来のユズハやレイナの魂も消えてしまったワケではなく、身体の奥底に押し込められているという設定。なので、「レイナ」と「ユズハ」の第一子は共に女の子で、当然「本物」の生まれ変わった姿……という裏設定があったり。

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最終更新:2011年04月22日 11:24