投稿日:2009/01/03(土)
「えーと、翔子さん……だっけ?」
「…………」
翔子は声が出せなかった。
溢れ出る涙をぬぐう事もできず、ただ歯をカチカチと鳴らすのみ。
感じているのはただ恐怖だけ。それほどまでに目の前の光景は常軌を逸していた。
「酔いは醒めたみたいだね。よかったよかった」
まるで場違いな、落ち着いた声が聞こえてくる。
その声を発したのは、これもまた場違いな少年だった。
彫刻のように整った顔は、この散らかり汚れた部屋には全くそぐわない。
彼は部屋の隅に座り込んだまま、やや乱れた服装の女性を後ろから抱きかかえていた。
胸を揉んだり下着の中に手を入れたりするその仕草は、
見た目の年齢からは想像もできないほど淫猥で手慣れている。
女は全く抵抗せず、なすがままになっていた。
当たり前だ――その体には、首から上がないのだから。
そしてその体についていた首は、髪を電灯の紐に結び付けられ、ぶらぶら揺れている。
信じられない事だが、首も体もまだ生きているようだ。
「……ぅ……ヒック……」
ようやく、といった感じで吊られた首が口を開く。涙と鼻水で顔はグチャグチャだったが。
「な……何よ、コレ……一体どうなってんのよ……」
「んー、そうだねぇ……」
少年の方は相変わらず、翔子の体をいじり回している。
切り離されているからか、その感覚は、翔子自身には全く伝わってこなかった。
しかし首がなくても刺激には反応するらしく、乳首は律儀に存在を主張していた。
「まぁ、見たまんまって事?」
「あんた一体何なのよぉぉぉぉっ!!」
精一杯叫んだが、何一つ状況は変わらなかった。
「僕が言うのも何だけど、夜道を一人で歩くのは危ないよ。しかも酔っ払ってさ」
「いいでしょ別にっ!」
「一人暮らし? 送ってくれるような彼氏はいないみたいだね。結構キレイな顔してるのにもったいない」
「ほっといてよぉっ!! 触らないで!!」
異様な状況に合わない会話だったが、それがまた翔子の神経を逆なでする。
「いや、そこでさ――」
少年は芝居がかった動作で指を立てた。
「僕が翔子さんと一晩、一緒に遊んであげようかなぁ、なんて」
「嫌! 絶対イヤっ!!」
あらん限りの嫌悪を込めて拒絶する。
普段ならば少年の申し出を受け入れたかもしれない。
彼の端正な顔立ちは水準以上、どころか翔子が今まで出会った中で最高のものだった。
だがその美も、この状況では恐怖を煽る効果しかない。
「でも僕も最近飽きちゃってさぁ」
「何がよ!」
「普通に犯したり孕ませたりがねぇ、どうも気が乗らないんだ。
子供を作っても、ほとんどは普通の人間として平凡な一生を終えちゃうんだ。つまらないよねぇ?
ネフィリムと今の人間を単純に比べる訳にもいかないんだけどさ。
ああ、もちろんホモやレズもやってるよ。ソドムの町からずっと」
一人でべらべらと喋り続けているが、翔子には何の話かさっぱりわからない。
「私を……犯すつもり!?」
「ああ――」
少年は大げさにため息をついた。物分りの悪い生徒を目にした教師のような表情。
「どうして人間ってやつはこうも頭が悪いんだろうね――いや、怒ってる訳じゃないよ?
ただ……どうしてなんだろう、と疑問には思うね。これが生命の神秘ってやつなのかな?」
「一体何なのよ!」
「最近ただの性交が面白くないからどうしようかな、って言ってるのに……ちょっとは話聞いてよね、もう」
そう言うと少年は、動かない体の腕をつかんでみせる。
「あんまり聞かないと、こんな事しちゃうよ?」
ぶちっ――という小さな音と共に、翔子の右腕が肩からもげた。
「キャアアアアッ!!」
思わず悲鳴をあげるが、先ほどと同じく痛みは全くない。
首の切断面と同じく、肩からも血は一滴も出ていなかった。
「あはは、冗談だよ」
少年はにこやかに笑うと、引きちぎった腕をまたくっつける。
腕どころか、破れたはずの服までが完全に元通りになっていた。
「やめて!私の体をオモチャにしないでぇっ!」
必死に懇願すると、彼は機嫌を良くしたようだ。
「うんうん、いいね。その表情」
天使のように微笑むが、翔子は全く生きた心地がしなかった。
「わかったらちゃんと僕の言う事を聞いてね。子供じゃないんだからさ」
「う……うぅ……」
「ん、子供……子供……? そうだ!」
彼は何かを思いついたように立ち上がると、弾むような足取りで部屋を出て行った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ただいまー」
少年が戻ってきたのはすぐの事である。翔子はおびえながらも
多少は落ち着きを取り戻していたが、少年が連れてきた人物を見てまた驚く事になった。
「翔子さん、お客さんだよ」
「……え? 双葉ちゃん?」
「あー、ショーコだぁ! 首だけー変なのーあはは!」
隣の家に住む子で、確か今は幼稚園に通っているのだったか。
休日に何度か遊んでやった事もある。無邪気な可愛い子だ。
「ちょっと! 双葉ちゃんに何かする気!? だったら許さない!」
双葉の身を案じてできるだけの虚勢を張るが、自分の首が振り子のように揺れるだけだ。
「いや、僕は翔子さんと遊びたいだけだよ」
「だったら何で!」
少年は動かない翔子の体の横で、双葉を優しく抱いていた。
「いや、それがね。ちょっと聞いてみたいんだけどさ」
微笑みながら口を開く。街中ならば多くの女が、いや男でさえ振り返るだろう顔立ち。
「『翔子さん』はどっちかな? 今僕と会話してる生首? それともここに寝てる体?」
「そんなの――」
彼の言葉に、翔子は必死で言い返す。
「そんなの私が『首』で、そっちが『体』に決まってるじゃない!」
「だよね――100人に聞いたら99人はそう言うだろうねぇ……いや、残り一人は知らないけどさ」
うなずいて彼は続けた。
「じゃあ――こうしたらどうだろう?」
「……え?」
呆けた翔子の目の前で、少年は双葉の首を体から引き抜いた。
先ほどの腕と同じく、全く抵抗も出血もなく少女の首がもげる。
「おー! わーわー!」
驚いているのか笑っているのか、わからないような声を双葉はあげた。
「とれちゃった! ショーコと一緒だね! えへ!」
「ふ、双葉ちゃん! 大丈夫!?」
そこに少年の笑い声が重なる。
「大丈夫だよ。ていうかこの子が死んでたら翔子さんも生きてないじゃない」
「あ、そうか――って、何納得してんのよ!」
思わず自分に腹が立つ。
「じゃ、双葉ちゃん。いくよ」
彼は手に持った双葉の首をそのまま――倒れている女の体に近づけていく。
(!? まさか――!)
「や、やめて――」
「はーい、パイルダーオーン! って古いよね。ごめん」
翔子が叫ぶよりも早く、双葉の首は翔子の体にくっついていた。
「な、何してるのよっ!!」
「いや、くっつけただけさ。……どう? 立てる?」
少年は横たわる女に優しく問いかける。
「んー? ……お、おお? お! すっごーい!」
翔子の腕が、脚が、腰が動く。双葉の思うとおりに。
彼女は興奮した様子で立ち上がると、自分の体を確かめるように動かした。
そこにいたのは、首から下が成熟した女の肉体の、あどけない顔をした少女だった。
いくら童顔の女と言えども、これほどの体と顔のギャップはないに違いない。
「翔子さんの体だよ。気に入ってくれたかい? これで双葉ちゃんも大人の仲間入りだね」
「へええ? うわー、あたしすごーい! 足長ーい、手も長ーい!」
翔子の大人の体が面白そうに飛んだり跳ねたりする光景は、かなり奇妙なものだ。
「やめて、双葉ちゃん! それは私の体なの!!」
自分の体が玩具にされる恥ずかしさで怒鳴るも、翔子の声は届かない。
「双葉ちゃん、これわかる? ブラジャーっていうんだ。
大人のおっぱいにはこれをつけるんだよ。ほら、おっぱい大きいでしょ?」
「ほんとだ! あたしおっぱいでかい! ママよりでかい! あははっ!」
楽しそうに自分の胸を揉む双葉。不自然なほど興奮している。
「ふ、双葉ちゃん……?」
そこで翔子は気づいた。心なしか、双葉の幼い顔が赤く染まっていた。
(双葉ちゃん……まさか、酔ってる!?)
考えてみれば、あの体はかなり飲んでいたはずだ。双葉の脳にアルコールが回っていてもおかしくない。
ここにきて飲みすぎた事を悔やむも、今さらどうしようもなかった。
また、双葉の顔が赤いのは酒のせいだけではない。
「ほら双葉ちゃん、気持ちいいだろう? おっぱいマッサージされるの」
「うん……おっぱい、気持ち……いい」
気が付くと少年の白い手が双葉の双丘を掴んでいた。
既にブラは外され、大きな胸を隠すものは何一つない。
彼にいじられ続けていた乳首は、遠目にもはっきりわかるほど立ち上がっていた。
その痴態から目をそらす事もできず、翔子は叫ぶ。
「やめて! そんな小さな子に変な事しないで!!」
「小さな子? おかしいなぁ、双葉ちゃんは大人だよね?」
「あぁっ……あへっ……いふっ……」
「双葉ちゃん、逃げて! 逃げてぇ!」
必死の声もむなしく、少年は双葉の体を弄ぶ。
「そこで、さっきの話だけど――」
手を止めないまま彼は言った。
「今僕と遊んでる大きいお姉さんと、そこにぶら下がっている首。どっちが翔子さんだろうね?」
「何でもいいからやめてぇ! 双葉ちゃん! 双葉ちゃあぁん!」
「あへ? あた……あふっ……ふあぁっ!」
ビクン、と体が跳ねる。失禁したのか、静かな部屋に双葉の水音が響いた。
「ふ……双葉ちゃん……」
翔子の顔が青ざめる。目の前で自分の体が弄ばれ、しかも小水まで漏らしたのだ。
だが、今の翔子には落とす肩すらない。
「――じゃあ次はこっちの番だね、翔子さん」
ゆっくりと少年は立ち上がると、翔子の体ではなく、
座ったまま放置されていた双葉の体に近づいた。その手には細い紐が握られている。
「…………」
翔子はもはや声もなく、彼の動きを見届ける事しかできない。
その間に彼は双葉の服を脱がせると、その細い腕を後ろ手に縛り上げてしまった。
足も同様に、立てないよう紐で縛る。
「できるだけ跡が残らないようにしたつもりだけど……で、次はこれさ」
次に彼が取り出したのは、小さめの卵型の容器だった。
「そ……それって……」
言葉を失う翔子に、彼は容器をじっくりと見せつける。
「その通り。便秘の味方、イチジク浣腸! これをこうして……」
双葉の小さな尻がよく見えるよう持ち上げると、それを可愛らしい肛門にあてがう。
「大人用だけどいいよね。うん、きっといいはずだ、多分」
などと言い、中身を全て注入してしまった。
「やめて! 双葉ちゃんの体が可哀想よ!」
「双葉ちゃんの体?」
翔子の抗議を不思議そうに聞き返す少年。
「やだなぁ、勘違いしないでよ。これは翔子さんの体なんだから」
「なっ――!」
絶句する翔子に構わず、彼は電灯の紐から翔子の首を外した。
何をされるか。状況を考えると答えはたった一つしかない。
「や――やめてぇ!! お願い! やめてぇ!!」
「うるさいなぁ。翔子さんは子供じゃないんでしょ? だったら騒がないでよ」
文字通り手も足も出ない翔子の首を、彼は優しく双葉の体にくっつけてしまった。
「はい、OK」
「いや……こんなぁ……」
ようやく戻った全身の感覚。だがそれは以前とは随分違うものだった。
それに加えて――
「い……痛い……お腹……痛い……」
下腹から突き上げてくる苦痛が翔子の理性を蝕む。
「へえ、もう効いてきたんだ。すごいなぁ、科学の進歩って」
「お……お願い……ト、トイレ……」
縛られた手足で身動きが取れず、排泄の欲求に必死に耐えながら頼み込む。
その目にはまた涙がこぼれ、全身が震えていた。
「え、でも翔子さんは子供じゃないんでしょ。だったらお漏らしなんてする訳ないよね」
「そ……そんな事言わないで……い、行かせて……お願い……」
青ざめた顔が白くなりつつある。限界はすぐそこだった。
「じゃあ……大丈夫だと思うけど、保険って事でこれをどうぞ」
どこから取り出したのか――もうどうでもいいが――彼が用意したものを見て、
血の気が引いていた翔子の顔が真っ白になった。
「あ、あひる……?」
「やっぱりおまるはあひるさんじゃないとね」
小さな子が――今の翔子よりもっと幼い子が使うような、白いおまるがそこにある。
「はい、どうぞどうぞ」
少年は翔子の脚だけをほどくと、小さな体を後ろから抱き上げ、おまるに座らせた。
双葉の体である事に加え、あまりの苦痛で抵抗もできない。
「や……やめて……トイレ……」
翔子にできるのは涙ながらに懇願する事だけだ。だが彼は翔子の腹部に手をやると、
「聞いた話だと、大腸の流れに沿って『の』の字にマッサージするといいらしいね」
リズミカルな動きで腹を撫で回した。
「こうかな?」
「いやぁぁぁぁっ!! やめてぇぇえぇぇっ!!」
「もういいんじゃない? ほら、出しちゃいなよ」
「ら……らめ……もう……」
翔子が記憶していたのはそこまでである。
どのくらいの時が経ったのか。
「……はぁ、はぁ……ふぅ……」
汚れたおまるの隣でぐったりと横たわる小さな女の子。それが今の翔子である。
(……あれ、私……どうしたんだっけ?)
もう意識が希薄になってしまい、周囲の事もろくに認識できていなかった。
だから、目の前で交わる男女がいても気にならない。
「ほら、双葉ちゃん、どう? おちんちん気持ちいい?」
「あひ! いい! いい、いいの! おちんちん、いい!」
少年が――ため息の出るほど綺麗な顔の少年が、女に馬乗りになっている。
犯されているのは体格・服装からいって年上の女のようだが、顔だけは幼い少女のものだった。
「あへ! あぅは! ぅうえ!」
快感のあまり言葉にすらなっていない。
双葉ちゃんには刺激が強すぎるんじゃないかしら、と翔子はぼんやりと思った。
「いやぁ、双葉ちゃんにこんなに気に入ってもらえるなんて良かったよ」
少年は本当に無邪気に微笑んでいる。
「もう、一生このままでもいいかもね」
彼の何気ない、だが重大な言葉も、今の翔子にはどうでもいい事のように思える。
(そうだ……朝になったら、双葉ちゃん返しに行かないと……。
でも、双葉ちゃんってどっちだっけ? 私? この子?)
錆びた車輪のように思考が動かない。
「……いい! あひ! これ、いい!」
しばらくの間、部屋には双葉のうめき声だけが聞こえていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
結局、あれから少年は姿を消してしまい、二人は入れ替わったまま戻る事はなかった。
翔子は半ば放心状態だったが、何とか隣の家にたどりつき、双葉の両親に事情を説明する事ができた。
もちろん二人は変わり果てた愛娘の姿を見て、大泣きし取り乱したが、
いつまでも嘆いてばかりいる訳にもいかない。
翔子は今の幼い体では仕事に行けないし、大きな双葉もこのまま幼稚園に通う事はできない。
相談の結果、双葉の体の翔子が『双葉』として幼稚園に通い、
翔子の体の双葉は『翔子』として仕事をやめ、双葉の家に居候するという形になった。
そして3年後――。
ある小学校の帰り道、同級生の男の子たちにいじめられる少女がいた。
「やーい、おばさん顔のフタバー!」
「おばさんはスーパーに帰れー!」
「…………」
少女は黙って耐えている。入れ替わりの事実は誰も知らないが、
『双葉』の顔と体が不釣り合いなのは隠せるものではない。
いじめられるのももう慣れてしまった。
当たり前だが成績は常にトップであるし、実は顔の事以外はそう困っていない。
「おかえりー、フタバ」
「ただいま、ショーコ」
『翔子』はジーンズにTシャツ一枚の姿で寝転んで、子供向けアニメを見ていた。
横になった彼女が転がるたび、豊満な胸が揺れたり押しつぶされたり。
それを横目で見つつ、『双葉』がぽつりと口にする。
「見た目は子供、頭脳は大人……これで顔も子供だったらなぁ……」
「どーしたの、フタバぁ?」
「何でもないっ!」
ぶっきらぼうに言い返す。早く買い物に行き、夕食の準備をしなくては。
そして日が暮れた頃、父親が帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえりなさい、『お父さん』」
「おかえりパパ!」
二人して出迎えると、父親は食卓を見て歓声をあげた。
「お! 今日は肉じゃがか!」
「ビールもあるよ、『お父さん』」
「そうか! 双葉は気が効くなぁ。ところで今日、学校はどうだった?」
「んーとねぇ……」
笑顔で食卓を囲む家族。ありふれた、だが貴重な幸せがそこにあった。
深夜1時。
『双葉』は物音で目を覚ました。ぼんやりとした頭で、音源が隣の部屋なのを確かめると
(また、やってるのね……)
起きて損をした、とでも言いたげにまた目を閉じる。
隣の部屋は父親と『翔子』の寝室である。今日も一戦交えているようだ。
「翔子、悪い子だなお前は。こんなに締め付けてくるなんて。パパ怒っちゃうぞ」
「あっ……ああんっ……いい、パパ! そこ、かき回して!」
父と娘の交わりが始まってもう2年になる。初めのうちは罪悪感を感じていた父親だが、
妻に離婚されて『翔子』と再婚してからは、もう気にならなくなったようで
最近は毎日のように翔子と子作りを行っている。第一、体は赤の他人なのだ。
「そろそろ、弟か妹ができるわね……」
目を閉じたまま『双葉』がぽつりと口にする。あの『継母』が妊娠など想像もできないが。
もし子供が生まれたら、心から祝ってやろう。もう自分は娘の『双葉』なのだから。
(最近お肌が気になってきたし、ちゃんと眠らないと――)
枕に顔を埋め、双葉は半ば無理やりに意識を手放した。
最終更新:2009年02月25日 23:36