おばあちゃんの日 第20話

279 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/12(水) 22:44:12.66 ID:+rSSViLu [被レス:2] Be:
    【おばあちゃんの日】
    幸いと言うべきなのか、その女の子は次の停留所でバスを降りたので、麻由美はあまり気をつかわずにすんだ。
    (ふうん、色々言われているけど、ちゃんとしている子はちゃんとしているんだ。)
    バスに乗り込む時に声をかけてくれた中年女性の気遣いを思い出しながら、そんなことを考える麻由美。
    とはいえ、バスの座席というのはお世辞にも座り心地がいいとはいえない。
    10分を過ぎると、腰やら膝やら背中やらが痛みを覚え始める。
    (う~、お年寄りって、座っているだけでもこんなに痛いんだ。受業とか座っている時は平気だったのに。やっぱりお年寄りにはもう少し親切にしよう。)
    改めて思い直す麻由美。
    そうこうしているうちに、ようやく麻由美が目的としているバス停への案内が車内アナウンスで流れる。
    停車ボタンを押そうと、手を伸ばしかえた麻由美だったが、目の前の席の子供が紅葉の様な手を伸ばそうとしていることに気づいた。
    「どうぞ。」
    手を窓枠におきながら、その子供に声をかけると、その子はにんまりと満面の笑みを浮かべながら、ボタンを押す。
    「あら、よかったわね。ほら、おばあちゃん、ありがとうって。」
    母親らしき女性が子供に声をかける。
    「おばあちゃん、ありがとお!」
    少し辿々しいながらも謝礼の言葉を口にする子供、
    「おやまあ、ちゃんとしているのね。えらいえらい。」
    麻由美の言葉に子供の笑みが更に大きくなる。
    「おばあちゃん、気をつけてくださいねl。」
    運転手に心配されながら、麻由美が降りたのは、どちらかといえば若者向け、本来の姿の麻由美も訪れることが多い店の集まっている一角だった。
    それほど長く座っていたわけでもないが、関節が強ばっているせいか、ステップを降りるだけでも少なからず痛みを覚える。
    だが、今回の一番の目的地がここである以上、ここで引き返すわけにもいかない。

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最終更新:2012年04月18日 17:34