283 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/13(木) 21:54:06.24 ID:GHcL4bIx Be:
【おばあちゃんの日】
お目当ての店に入った麻由美は、周囲を見回した。
しばらくしてその視線が止まった先には、レジのカウンターが。
この身体の視力では少々心許なかったのか、何度かまばたきをしつつ確認すると、麻由美はゆっくりと…というか老人になっているこの身体ではゆっくりとしか動けないのだが…カウンターに向かった。
「あの…すみません。」
カウンターの店員に声をかける。
「いらっしゃいませ。なにかお探しですか?」
その店員は左胸のネームプレートのデザインでアルバイトと分かる女子高生。
「あの…孫へのプレゼントなんですけど、こちらにあるでしょうか?」
巾着から、商品の写真と名前が印刷されている雑誌の切り抜きを差し出してみせる麻由美。
「こちらですね。少しお待ち下さい。」
端末を操作し、在庫を確認した後、一度店の奥に引っ込むバイトの少女。
(お、気づいてない。気づいてない。まあ、当然と言えば当然だけど。)
アルバイトのこの少女…彼女は麻由美のクラスメイト。それもかなり親しい間柄だ。
毎日の様に顔を会わせている彼女が、今の自分…すっかり歳をとっているとはいえ…の正体に気づいていないということはなかなか興奮を覚える体験だ。
しかし、気づかないのも当然だろう。
自分と同い年の女の子が、いきなり70代か80代にしか見えない老婆の姿で目の前に現れたら、この2人を同一人物だと思える人間はまずいない。
ほとんど白くなった髪。皺が刻まれ弛んだ顔。肉がそげ落ち節くれ立った指。
そこに女子高生を思わせる要素は何も見いだせない。
ところどころに本来の麻由美の面影が残っているかも知れないが、それに気づいたとしても、せいぜい麻由美の親戚筋だと思うのが精一杯といったところだ。
これが成人姿…20代か30代の身体だったら、女子高生の麻由美としての面影も強く残っているだろうから、麻由美が変装でもしているのではないかと思ったかもしれないが。
最終更新:2012年04月18日 17:34