295 名無しさん@ピンキー [sage] 2011/10/14(金) 22:59:39.13 ID:aAizlTWZ Be:
【おばあちゃんの日】
「こら!危ないじゃないか!」
声変わりは済んでいるが、まだ若干の幼さが残る声が店内に響いた。
事の張本人である子供達は、子供なりに危険を察知したらしく、いつのまにか遁走してしまった中、麻由美をおそるおそる声をした方向へ視線を向ける。
青年と少年の入り交じった顔。麻由美と同い年か若干上…せいぜい二十歳といったところか。
と同時に、今の自分がこの青年に抱きかかえられる様にして支えられていることに気づく。
「あ、大丈夫ですか?突然だったからあまく巧く支えられなかったかもしれないけど…」
申し訳なさそうな顔をする青年。
人気アイドルなどとは比べるまではないにしても、それほど悪くない顔だち。
中の上か上の下か。
少なくとも麻由美の好みの範疇に入る部分はかなりある。
そもそも彼氏どころか、男友達といえる存在すらいない麻由美にとって身内以外の異性に抱きかかえられるということ自体、初めての体験といってもいい。
危うく今の自分の身体が、本来の女子高生ではなく、80前後の老婆であることを忘れそうになるが、着物姿そして袖から伸びる手の節クレと皺に、際どいところで今の自分を再確認する。
「え、あ、大丈夫ですよ。ちょっとビックリしたけど、支えてもらったので転ばずにすみましたし。けど、これぐらいで転びそうになるなんて歳はとりたくないですねえ。」
どうにか如何にも年寄りらしく聞こえる返答を返す麻由美。
「ったく…店の中を走り回るなんて…」
忌々しげに店の外に視線を向ける青年。
「あ、大丈夫かも知れないけど、ちょっと休んだ方がいいですよ。脚とか腰、捻っていると危ないから。」
青年が視線を向けた先には、椅子の列。
先ほどのラッピングあるいは在庫検索などでの待ち時間で座ってもらう為のものだ。
言われてみれば、まだ不慣れなこの身体。
今は大丈夫だと思っても、後から何が起こるか分からない。
麻由美はこの青年の好意にもう少し甘えてみることにした。
最終更新:2012年04月18日 17:35