アットウィキロゴ

影切り

439 名無しさん@ピンキー [sage] 2013/02/09(土) 23:40:19.50 ID:V7Ntkgew [被レス:1] Be:
    「影切り」

     床板も、壁紙も、天井も、すべてが白で統一された20畳ほどの部屋。
     テーブルや椅子もなく、ただひとつ部屋に存在する物は天井の照明器具がひと揃いだけ。
     その部屋に会同していたのは3人の男女だった。
     男は、60過ぎの外観を持つ細身の男で、黒づくめのスーツに身を包み、彼に対面する
    二人の少女に交互に目を配っていた。
    「それで、準備はもういいのかね」
     いささかの愛想もなく言葉を吐く男に、二人の少女は少しだけずれたタイミングで、お
    のおの、「はい」と答えていた。
     二人して、15歳の少女であった。趣きは異にするが、いずれも水際立った優美であり、
    まぎれもない美少女として形容されるに足りる顔貌を持ち合わせていた。
     しかし、二人が大きく違っていたのはその体格においてであった。
     一人は170センチを超える長身で、若年ながらに見事に成熟した胸元と、なまめかし
    さを周囲に発散する腰つきと、そして白く輝くしなやかな脚線とを湛えた豊穣の女神の化
    身のような体格を持った少女であった。
     そしてもう一人は、こちらは145センチと短躯であり、身体の起伏もまた乏しいもの
    だった。しかし、そこに内包された筋骨は練磨の行き届いたものであり、小兵ながら陸上
    競技の跳躍競技においては秀でた記録をいくつも刻んできたのだった。
     

     二人の少女に覚悟が決まったことを確認すると、男は握っていた拳から示指と中指とを
    突き出して、ハサミを模っていた。
    「ふん……っとなっ」
     そして、そのハサミでざっくりと両断したものは、二人の少女の足元から伸びていた影
    だった。
     瞬間に、かくん、と二人の少女は糸の切れたマリオネットのように膝から床に崩れ落ち
    て白目を剥き、意識を失っていた。
    「さて、と、ぐいん、ぐいん、ぐいん、と」
     男は、二人の少女の影を、まるでゴム風船のようにびよびよと引き伸ばして両手で操り、
    それらをもとの持ち主とは異なる少女の足元へと結わえ直したのだった。
    「さあ、起きろ!」
     ぱん、と男が掌を鳴らすと、二人の少女はうっ、と呻いて正気を取り戻していた。
     おのおの頭を揺すって目をしばたたかせた、とその瞬間である。
    「ああっ!」
    「う……っ!」
     二人の少女の口唇から、悲鳴に似た驚きが漏れたのだった。
     長身の少女の背がみるみる縮まり、美しく張り出した乳房が収斂をはじめたのだった。
    「ああっ、い……痛ったぁい」
     豊満な丸みを帯びた尻は固く引き締まり、伸びやかだった足は短く、かつ筋肉質な中性
    的なそれへと変貌してしまったのである。

     もう一人の少女に起こったのはそれとはまるで逆の現象である。
    「っち……ちょっと……待って……はぁ、ん」
     固く小さく引き締まった春待ちの蕾のようだった身体は、早送りの映像のように開花を
    迎えていたのだった。
     平坦だった胸には形良い二つの存在感ある膨らみが隆起していき、腰はみるみるとくび
    れを起こしていく。ごつごつとしていたばかりの足には女性的な柔らかさと、長さと、そ
    して艶やかさが備わっていき、みるみるうちに豊熟さを増していく。
     そして、
    「まあ、こんなところだろうよ」
     と、男が締めくくったときには二人の少女の体格はすっかりと逆転していたのだった。
     歓喜の表情で声をあげたのは、もちろん成熟した肉体を得た少女だった。
    「すごい、すっごいよ。これなら今度のタレントオーディションにも、絶対うまくいくよ」
     胸元の第2、第3ボタンは膨らみを増した胸に吹き飛んでおり、ロングスカートは6分
    丈へと早変わりしていた。緩めを選んだはずのショーツも、食い込みがちになってきつか
    ったのだが、それすらも喜ばしい痛みであった。
    「うふっふぅ……はぁ、セクシーよねえ、この谷間、素敵……」
     しかし、はっ、と目の前に俯くもう一人の少女のことを思って、少女はあわててその歓
    喜と陶酔とをを打ち消していた。
    「あわわわっ、ごめんなさい。私、つい、その……浮かれて」
     目を虚ろにして、先ほどまで見降ろしていたはずの少女を、今後は見上げなければなら
    ない体格になってしまった少女は、ぶかぶかのシャツとズボンとを引きずって、それでも
    平静を装って首を振った。
    「う、ううん。いいのよ。だって、これは私だって望んだことなんだもの……」
     呟くようなか細い少女の声。

    「だって、私のその体格じゃあ、どう頑張っても騎手なんてなれるわけ……なかったんだ
    もん」
     競馬騎手だった亡父の夢を継いで馬術の修練に努めていた彼女にとっては、その恵まれ
    た肉感的な長身も、妨げになるばかりのものだったのだから。
    「それに……大丈夫。この体は動きやすいし、軽いし、きっとすぐに慣れると思うから」
     そうは言っても彼女とて年頃の女の子である。自らの喪失したものの価値を無自覚だっ
    たわけではないのだ。自然と、声は震えてしまう。

    「じゃあ、いいだろ、俺はここで出ていくからさ、お前らは適当に着るモノを交換して、
    そしたら帰ってくれよな」
     男の無遠慮な声がひとつ響くと、続いてバタンと扉の締まる音。
     そして、残されたのは複雑な心情を抱いたまま、しばし立ち尽くす二人の少女だった。

     おわり 

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年05月09日 15:47