姫の体は誰のもの 5

「どうだい? あたしの体、見事なもんだろう」
 そう言って誇らしげに裸体を晒すドレッサから、マイクは目が離せなかった。
「ほ、本当に……若い女の体になっちまったのか」
 マイクは震える声で言うと、長年連れ添った妻の肌に触れた。しなやかな肢体にはほどよく筋肉がつき、若さゆえの弾力が感じられた。本来のドレッサの体ではありえない感覚だ。
 マイクは動揺を抑えるために呼吸を整えると、再び妻の姿に目をやった。そこにあるのは、不健康に肥え太った中年女の体ではない。細い手足と腰を備えた、十代後半の少女の身体だった。
 その瑞々しい娘の体に、ドレッサの丸顔の頭部だけが載っているのだ。何度見ても信じられない光景だが、間違いなくこれは現実だった。
「あんた、大変だよ。あたし、こんな体になっちまった」
 夕方、花売りの商いを終えて帰宅したドレッサは、そう言って、自分が着ている派手な赤い衣をマイクに見せつけた。
 明らかに市井の庶民が身に着ける服ではなかった。マイクは記憶の引き出しの中から、それに似た衣装を探し出した。王侯貴族に仕える魔術師の衣だ。
「なんだ、お前、その格好は……」
 変貌したのは服装だけではなかった。マイクに匹敵するほど肥えていたドレッサの体は、今や別人のように細く、きゃしゃになっていた。
 五十女の顔に不釣り合いなしなやかさと瑞々しさを持ったその肢体は、宮廷魔術師カリオストロの娘、ジェシカのものだった。
 肉体交換の魔術が暴走したせいで、ドレッサの頭部は胴体を離れ、代わりにジェシカの体と結合してしまったのである。
「花売りの商売が終わって帰ろうとしたら、お城勤めの女魔術師があたしの前にやってきてね。それからのことはよく覚えてないけど、気がついたら、あたしゃ、この体になってたんだ。この体、きっとあの女のものに違いないよ。ひょっとしたら、魔法で首から下を取り替えたんじゃないかね? だって、この細い腕も腰も、服装だって、あたしのものとは全然違うんだからさ」
 ドレッサの話は、マイクにとってとても信じがたい内容だったが、こうして女魔術師の体になった妻の姿を目の当たりにすれば、信用するほかない。
 ドレッサの体は、若く闊達な少女のものになってしまったのだ。
「体が入れ替わった、と言われてもな……。その魔法使いの姉ちゃん、どうしてお前なんかにその体を寄越したんだ?」
「さあ、知らないねえ。やけに慌ててたみたいだけどさ。それより、あんた……」
 にわかに赤い衣を脱ぎだした妻の姿に、マイクは度肝を抜かれた。
「お、お前、何する気だ !?」
「何って、決まってんじゃないのさ。こんなに若くて綺麗な体になったんだ。いろいろ試してみなきゃ、損ってもんじゃないかね」
 ドレッサは悪びれる様子もなく、全ての衣類を脱ぎ捨て素裸になった。
「ほら、あたしの体をよくご覧よ。なかなかだと思わないかい? この綺麗な体があたしのものなんだよ。とってもいい気分さね」
 細い腰に手を当て、マイクに色目を使うドレッサ。彼女は事態の原因や解決よりも、新しい自分の体の方に興味があるようだった。
「やめろよ。妙な気分になっちまうだろう」
「ふふふ、さすが若い女の体だよ。もうおったててる。こんなに元気なあんたを見るの、何十年ぶりだろうね」
 にやにや笑うと、ドレッサは夫の股間に手を伸ばした。こんな異常な状況にも関わらず、マイクのものは既に硬くなっていた。
「おい。いいのかよ……よくわかんねえけど、それ、ひとの体なんだろ?」
「構やしないさ。あの女、見るからに高慢ちきでいけ好かなかったからね。あの女の体をあたしが好き勝手に動かしてるって思うと、笑いが止まらないよ」
 自らの胸を両手でまさぐり、ジェシカをせせら笑うドレッサ。自分たちを襲ったアクシデントを楽しんでいるようだった。
「へへへ……まあ、いいか。据え膳喰わぬは何とやらって言うしな。それにしても、この体、とびきりの上玉じゃねえか。なんてついてるんだ、俺は」
 形のいい乳房をわしづかみにして、マイクは下卑た笑い声をあげた。彼もドレッサが譲り受けたジェシカの体に興味津々だった。
 本来ならば彼が近づくことすらかなわない、地位も才能もある女魔術師の体。その体は今、マイクの妻である中年女の所有物となって、思うがままに弄ばれていた。
「ああ、いい心地だよ。肌も張りがあって、あたしのとは全然違うね」
「まったくだ。いい乳だぜ。もうちょっとデカい方が、俺の好みだけどよ」
 などと勝手な感想を述べると、ドレッサを粗末なベッドに押し倒す。
 少女の清い体は自ら腕を広げ、出会ったばかりの中年男を抱きしめた。
 狭い部屋の中に明かりはなく、街灯の光が窓からわずかに差し込んでくるだけだ。そんな暗い室内で、マイクは久方ぶりに妻を愛撫し、乙女の性感帯を開発した。
「この肌、シミひとつねえじゃねえか。くうっ、たまんねえ」
 ドレッサの肌を舐め回し、各所に唾を塗りたくるマイク。健康な十七歳の少女の体は、父親ほども歳の離れた男の餌食と化していた。
「ひひひ、だんだん気持ちよくなってきたよ。あんまり経験がないみたいだね、この体は」
 夫に陰部を見せつけながら、ドレッサが元の身体の持ち主を嘲弄した。他人の体で淫らな行為にふけることで、倒錯的な興奮を覚えているのだ。
「そうか、良くなってきたか。それじゃ、そろそろお待ちかねだぜ」
 マイクも高揚した声で言った。顔は確かに中年の妻のものだが、その首から下は華やかな乙女の体である。醜い妻ではなく若い美女を抱いている気分だった。
 ドレッサの細い腰を背後から抱え、犬のように四つん這いにする。
 大きく膨れた一物をドレッサの尻にあてがうと、未だ開いたことのない女の扉をこじ開けにかかった。
 たび重なる前戯で、入り口は既に充分な湿り気を帯びていたが、それでも処女の内部が窮屈なことに変わりはない。ジェシカのものだった膣は、初めての侵入者を強く拒んだが、それもはじめだけだった。マイクがぐいと押し込むと、やがて圧力に負け、しぶしぶ彼のものを受け入れた。
「う、ううん……い、痛い。やっぱり生娘だね。ここんところがジンジンするよ」
「うへへ、狭いな。おっ、見ろよ、血が出てやがる」
 結合部から一筋の赤い雫が垂れているのを見て、マイクは歓声をあげた。
 十七年間ジェシカが守り続けた処女は、あっさりと失われた。
 ジェシカの代わりに二度目の破瓜を体験したドレッサは、身を縮めて痛みに耐える。
 処女だからといって、興奮しきったマイクは容赦しなかった。限界まで入れたところで戻り、規則正しい抜き差しを開始する。硬度も活力も欠いた中年男のペニスが、若い膣内を蹂躙した。
「へへっ、この締めつけ、たまんねえな。食い千切られそうだ」
「あ、あんた、もうちょっとゆっくり……ひいっ、激しいっ」
「何を言ってやがる。こんなにいい女の体を犯してるんだぞ。我慢なんかできるかよ」
 すっかり有頂天になったマイクは、執拗にドレッサの中を往復して愉悦に浸った。ドレッサが抗議してもお構いなしだ。獣さながらの荒々しさで妻を犯した。
 一方のドレッサは、はじめこそ大げさに苦しんでいたものの、マイクの強引さに観念したのか、途中から夫に素直に身を委ねるようになった。痛みに慣れてきたのかもしれない。
「ああっ、いい、いいよ。だんだん良くなってきた。おっ、おおっ」
「なんだ、さっきまで生娘だったくせに、もう感じてやがるのか? ふしだらな女だぜ」
 ドレッサの尻を押さえて激しく突くと、女魔術師の細い腰がくねり、マイクを誘惑する。親子ほども歳の離れた少女の体が見せる痴態に、ますます気分が高揚した。
 やがて、下腹に湧き上がった衝動に、マイクは己の限界を悟った。
「もう我慢できねえ。おい、お前、出すぞ」
「え? あ、ああ……」
 ドレッサは承諾とも拒絶ともつかない声で応えた。余裕を無くした妻の体を力いっぱい押さえ、マイクは牡の欲望を解き放つ。
「うお、うおおっ、出るっ」
 久方ぶりの射精だった。マイクの先端から噴き出した熱い樹液が、膣内に打ちつけられた。
「ああっ、出てる。中に染みる……」
「ふう……たっぷり出た。最高だったぜ」
 マイクは大きく息を吐き、満足してその場に横になった。
 ペニスが引き抜かれたドレッサの膣口から、血と体液の混合物がこぼれてきた。ジェシカのものだった身体は元の所有者が気づかぬうちに純潔を散らされ、見知らぬ中年男の子種を植えつけられたのだ。
 ひょっとしたら、妊娠してしまうかもしれない。
 だが、ドレッサもマイクも、子供ができる可能性などまったく気にしていなかった。
「す、すごかったよ、あんた。こんなに激しいのは初めてさ」
 上気したドレッサが、マイクにすがりついてきた。新しい身体で味わう性交は、彼女にとっても満足のいくものだったようだ。
「おう、お前も楽しめたか。そりゃ良かったな」
「ああ、はじめはちょっとばかし痛かったけど、慣れたらなかなかだね。これなら、あんたをもっと喜ばせてやれそうだ。気に入ったよ、この体」
「そうか。その体をくれた姉ちゃんに、感謝しなくちゃいけねえな。へへへ……」
 火照ったドレッサの肌を馴れ馴れしく撫で回し、マイクは下品な笑声をあげた。
 歳をとった妻を相手に、このような素晴らしい体験ができるとは、夢にも思わなかった。何度も何度もドレッサの艶やかな肌に口づけながら、彼は神に感謝した。今まで信仰心など欠片もなかったが、これからは毎日教会に行き、ひざまずいて感謝の祈りを捧げてもいいと思った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 作業の手を止めて外を見やると、もう暗くなっていた。もう店じまいの時間だ。ロイは修理の終わった靴を片付け、店を閉めようと外に出た。
 夕暮れどきの冷たい風が頬を撫で、鼻をくすぐる。昼間は随分と暖かかったが、日没と共に急に冷えた。
「ステファニー、どうしたんだろう。やけに遅いな」
 ロイは愛する妻の名を口にして、自分の店の前の通りを見渡した。
 彼の妻であるステファニーは昼過ぎ、市場まで買い物に出かけた。
 出産も近い妊婦がひとりで外出したり、家事に勤しんだりするのを、ロイはかねてから快く思っていなかったが、ステファニーは働き者だ。家でじっとしているのが嫌だと言って、妊娠する前と変わらない扱いを要求した。
 そんな二歳下の新妻のわがままを、ロイは仕方なく聞き入れ、いつものように外出を許した。
 だが、今日はどうしたことか、いまだステファニーは帰ってこない。普段ならば、とうに帰宅して夕食の支度をしている時間だった。
「心配だな。何ごともなかったらいいんだけど……」
 妻思いのロイは不安を募らせ、何度も店を出ては、暗い通りに目をこらした。ぼんやりした魔術の灯りが照らす街角には、人の姿はない。
 肌寒い夜の街を見張りながら、ロイはひたすら新妻の身を案じた。
「大丈夫だろうか、ステファニー。早く帰ってきてくれ」
 神に妻の身の安全を祈っていると、曲がり角の向こうから白い人影が現れた。
「あれは、ステファニー……じゃないな。あんな格好じゃない」
 ロイは遠目にその人影を観察したが、どうやらステファニーではないようだ。人影は随分と小柄で、袖や裾の長い、白いドレスに身を包んでいた。
 どこかの令嬢なのだろう。成人の体格ではない。まだ幼い少女のようだった。
 明らかに妻ではない。ロイはうつむいて嘆息した。身重の妻のことが心配で仕方なかった。
「ああ、ステファニー。どこに行ってしまったんだ? 早く帰ってきておくれ」
「ロイ……」
「ステファニー !?」
 すぐ近くから自分の名を呼ぶ声に、靴屋の倅は飛び上がった。顔を上げると、先ほどの白いドレスの少女が、ロイの目の前に立っていた。
 ロイは驚愕し、ついで弾けるような笑顔になった。眼前の白いドレスの女の顔は、彼の妻、ステファニーのものだったからだ。
「おかえり、ステファニー! 遅かったじゃないか、心配したよ! 今までどこに行ってたんだい? そのドレスはどうしたの? とにかく、寒いから中に入ろう。お腹もぺこぺこだよ」
 感激して夫が次々と浴びせかける言葉に、ステファニーは応えない。じっとその場に立ち尽くしていたかと思うと、突然、火がついたように泣き出した。
「ロイ、私、私……うわあああんっ」
「どうしたの、ステファニー。何かあったの?」
「ごめんなさい。私、あなたの赤ちゃんをなくしちゃった。うわあああん……」
 涙を流してすがりついてくるステファニーの背丈は、子供のように小さい。ロイは疑問に思った。ステファニーの身長は、もっと大きかったはずだ。
 それに、白いドレスを身に着けた妻の体は、とても妊婦のものには見えなかった。抱きついてくる妻の腹をそっと撫でる。出かける前は大きく膨らんでいたはずのステファニーの腹部は、明らかに平らになっていた。
「このお腹、それにこの服……ステファニーの体、どうしちゃったの?」
「ご、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい……」
 ステファニーは青ざめた顔で、謝罪と号泣を繰り返す。赤子のように泣き続ける妻の姿は、もうじき母親になる二十歳の新妻のものとは思えないほど幼かった。

「それで……いったい、何があったんだい?」
 店の奥にある寝室で、ロイはステファニーに訊ねた。
 下を向いて立ちすくんだ妻の背丈は、ロイより頭二つ分も小さい。本来ならば、もっと上背があるはずだった。
 新たな命を宿した孕み腹はおろか、長い脚や豊満な乳房も何処かへ消え失せ、どう見ても子供の体格になっていた。それも、白いドレスの令嬢だ。
 きゃしゃで小柄な体型とは裏腹に、顔や髪は日頃のステファニーそのままだった。
 まるでステファニーの首から下の身体だけが、子供になってしまったかのようだ。
 夫の問いに、ステファニーは心底困り果てた様子だった。
「それが、私にもさっぱりわからないの。買い物をして帰ってきたら、途中、白いドレスの犬が私に飛びかかってきて、気がついたらこんな格好に……」
「ドレスの犬? 犬が人間のドレスを着てたっていうのかい。そんな馬鹿な」
 ロイは呆れて首を振った。とても信じられない荒唐無稽な話だった。
「でも、本当なの。茶色い顔の犬が、人間みたいにドレスを着ていたの。手足だって人そっくりだったわ。ああ、そういえばあの犬の格好、今の私によく似てたわ。あの犬、本当に犬だったのかしら……」
「よくわからないけど、とんでもない事件に巻き込まれたみたいだね。でも、僕は嬉しいよ。君がちゃんと帰ってきてくれたから」
「ごめんなさい、ロイ。何が何だかさっぱりわからないけど、私、大事な赤ちゃんをなくしちゃった。もう、私の体に赤ちゃんはいないわ……」
 ドレスの上から己の平坦な腹を撫で回し、再び涙を流す妻を、ロイは強く抱きしめた。
「いいよ、ステファニー、気にしないで。僕はただ、君が無事に帰ってこれただけで満足してるんだ。赤ちゃんがいなくなっちゃったのは寂しいけど、大丈夫。また産めばいいさ」
「ロイ……ううっ」
 ステファニーは夫の腹に顔を埋め、嗚咽した。
「明日、日が昇ったら、父さんたちでもお役人でもいいから、相談に行こう。きっと何とかなるよ。だからもう泣かないで、僕の可愛いステファニー」
「ロイ……お願いがあるの。聞いてくれる?」
 ステファニーはロイの体から離れると、夫の顔を見上げて訊ねた。互いの身長差を実感しながら、ロイは「何?」と訊き返す。
「今の私の体を、よく調べてくれないかしら。私、自分の身に何が起こったのか知りたいの。そうしないと、死んだ赤ちゃんだって可哀想よ」
 と言って、ドレスの袖から腕を引き抜くステファニー。いかにも高価そうなドレスだが、ところどころ泥にまみれ、黒く汚れてしまっていた。
「いいよ、僕が調べてあげる。それに、脱ぐのも手伝わないとね。そのドレス、どうやら一人じゃ着たり脱いだりできないみたいだから」
「それにしても、どうして私がこんな高級なドレスを着ているのかしら? このネックレスの宝石だって、すごく大きいわ。きっと本物よ、これ」
「まるでお姫様みたいだね。よかったじゃないか。君は子供の頃から、お姫様に憧れていただろう?」
「もう、冗談はよして。私はもう子供じゃないわ」
 ステファニーはロイに抗議したあと、ようやく笑顔を見せた。ロイはそんな妻のドレスを脱がせ、露になった裸体をじっくりと観察した。
「うーん……やっぱり、いつものステファニーとは全然違うね。まるで小さな女の子みたいな体だ」
 ドレスの中から現れたのは、明らかに二十歳の妊婦の体ではなかった。せいぜい十二、三歳の少女の肢体だ。腰は細く、乳房の膨らみは非常に乏しい。
 子供の頃の妻の姿を思い出し、ロイは目を細めた。
「でも、顔は元の私のままなのよね?」
「うん、そうだよ。顔はそのままなのに、首から下だけが子供みたいに縮んじゃってる」
「いったい私の体、どうなってしまったのかしら……」
 ステファニーは途方に暮れたが、いくら考え込んでも答えは出ない。陰毛すら生えていない自分の股間を見下ろし、暗い顔で嘆息した。
「やっぱり、私たちの赤ちゃんはいなくなっちゃったのね。最近はお腹の中で暴れるくらい、大きく元気になっていたのに」
「でも、流産にしては変だよ。ただの流産だったら、君の体がこんな風になるわけない。それに、血もいっぱい出るんじゃないかな」
「そうね。ああ、どうしたらいいの? こんな子供みたいな体になってしまったら、あなたの赤ちゃんを産めないわ……」
「落ち着いて、ステファニー。ほら、泣かないで」
 目を潤ませるステファニーを、ロイは優しくなだめた。
「昔から君は泣き虫だったね。お母さんに叱られたとか、友達と喧嘩したとかいっては、泣きながら僕のところにやってきたものだったっけ」
「う……子供の頃の話はやめてって言ったでしょう」
「でも、今の君の姿を見てると、あの頃を思い出すよ。泣き虫の君のことを、僕はいつも、こうして慰めていたよね」
 微笑みを浮かべて、ロイはステファニーの身体に触れた。
「ああっ、そんなところ……」
 一本の筋にしか見えない股間の割れ目を指でなぞると、繊細な肌が震えた。二度、三度と入り口をくすぐり、膨らみかけのささやかな乳房に手を伸ばした。
「駄目よ、ロイ。こんなときに……あっ、あっ」
「敏感だね。こんな非常時だっていうのに、感じてるんだ」
 ロイはステファニーをベッドに寝かせ、王女のように無垢な妻の裸体を愛撫しはじめる。彼女が妊娠してからは控えていた、夫婦の営みだった。
 つんと硬くなった乳首に歯を立てると、ステファニーは熱い息を吐いた。
「ああっ、あなた……駄目って言ってるのに」
「せっかく子供の頃みたいに小さくなってるんだから、昔の呼び方で呼んでよ、ステファニー。その方が嬉しいな」
 ロイが笑いかけると、二つ下の新妻は夫の意図を理解し、耳まで赤くして恥らった。
「だ、駄目よ。私たち、もう夫婦なんだから……」
「まあ、いいじゃないか。ね? 頼むよ、ステファニー」
「だ、駄目ったら駄目なの……」
 はじめのうちは嫌がっていたステファニーだが、幼い頃から自分を可愛がってくれたロイには決して逆らえない。しぶしぶ、夫の提案を受け入れた。
「わ、わかりました。でも、今日だけだからね。お兄ちゃん……」
「そう、それだ。ステファニーちゃんはとってもいい子だね。お兄ちゃんは嬉しいよ」
「お、お兄ちゃんのバカ……あっ、ああっ」
 赤面して頬を膨らませるステファニーの股間に顔を埋め、陰唇に舌を這わせるロイ。毛の生えていない割れ目を彼の舌がなぞるたび、艶やかな嬌声があがった。
「ああっ、お兄ちゃん、お兄ちゃんっ」
「いやらしい子だね、ステファニー。つるつるの子供マンコからエッチなおつゆがどんどん溢れてくる」
 ぴったり閉じた女の扉から、生温かい雫がこぼれ落ちてきた。二十歳の妻ではなく、年端もいかぬ少女を相手にしている気分だった。
 ロイは音をたててステファニーの汁をすすり、愛する妻を散々に泣かせた。
「ダ、ダメ、お兄ちゃん。そんなことされたら、おかしくなっちゃう」
「おかしくなってもいいよ。久しぶりだろ、こういうことをするのは。僕も我慢できなくなっちゃいそうだ。見てよ、これ」
 ロイはズボンの中から雄々しくそそり立った一物を取り出した。表面に血管が浮き出た、たくましい牡の象徴に、ステファニーは息をのんだ。
「すごい、そんなに大きくなってるなんて。お口でしてあげようか?」
「いや、いいよ。それより、こっちを味わいたいな。久しぶりだし」
「きゃっ!」
 ベッドの上に押し倒され、ステファニーは悲鳴をあげた。
 充分に湿り気を帯びた女陰に、黒い肉の槍が突きつけられる。腹側にそり返った硬いペニスの穂先から、先走りの汁が漏れ出していた。
「あ……入れちゃうの?」
「駄目かい?」
「ううん、いいよ。もう一度、お兄ちゃんの赤ちゃんを孕ませてほしい」
 その返事を聞いて、ロイは妻の髪を撫でて微笑した。
「いい子だね、僕の可愛いステファニー。でも、今はやめておこう。君のここは、とっても狭くてきつそうだ。僕の大きなものを入れたら壊れちゃうよ」
「そんな……」
「だから、今夜はこれで我慢して。また今度、ちゃんと楽しませてあげるから」
 言うなり、ロイはペニスの先端でステファニーの割れ目をぬるりと擦った。小さくなった妻の身体が大きく跳ねた。
「あっ、こんな……ダ、ダメ、こんなの」
「そうかい? その顔は、嫌だって言ってないように見えるけど」
 ロイは相手の細い腰をかかえ、女の入り口を亀頭で執拗に摩擦した。女性器の中には決して手をつけず、幼い身体ならではの肌の柔らかさを堪能した。
「あっ、ああっ、あんっ。お、お兄ちゃん……」
「こういうのも気持ちいいだろ、ステファニー。ほら、ほら」
「ああっ、それ以上は……あっ、ああっ、あーっ」
 わずかに顔を出した肉の豆をペニスの先で押し潰すと、ステファニーは体が折れてしまいそうなほど背中を反らし、絶頂に達した。
 細い身体が痙攣し、先走りの汁を塗りたくられた割れ目から体液が噴き出した。
「良かったよ、ステファニー。僕もイっちゃいそうだ。それ、出すよっ」
 妻の昇天に誘われ、ロイも終点に到着する。絶頂を迎えたステファニーにペニスの先を向けると、煮えたぎる欲望を吐き出した。
 プリンセスのように清らかな幼い体に白い雫が降り注ぎ、牡の臭いが染み込んだ。
「ああっ……お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
 半ば意識を失ったステファニーが、虚ろな瞳でロイを見つめていた。
 肌のあちこちを白濁液で汚した子供のステファニーを、彼はとても美しいと思った。
 薄暗い部屋の隅には高価な絹のドレスが脱ぎ捨てられ、その上に置かれたネックレスの宝石が、月の光を浴びて妖しい輝きを放っていた。

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最終更新:2014年09月09日 00:34