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母と私のショータイム

286 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22:12:00 ID:ljo8SDMi

私の母は、わりと名の通ったファッションデザイナーで、合同ではあるがそれなりに大
きな会場を使って定期的にショーを行っているのだが、ときどきこんなことがあるのだ。

「ええっ、そんなの困ります。替わりのヒトの手配なんて……今更頼めないでしょっ」
 朝一番に電話越しに大声を張り上げる母の声。どうやらモデルのドタキャンがまたあっ
たようで、困惑した様子が丸わかりである。
「……えっ、また、いつもの手でよろしく……って、そんなしょっちゅうそんなことばか
りできるわけないでしょ」
 そうは言っても人のいい母のことだ。結局押し切られてしまうのがいつもの事なのだ。
「……ええ、まあ、身体のことじゃ仕方ないけれど、体調管理くらいしっかりして貰わな
いとこちらも困るんですからね、ええ、まあ、今回だけはなんとかしてみますけど……」
 そう言って母は力なくかちゃん、と受話器を下ろして一つ小さく溜め息を吐く。
 ま、それもいつものことだ。
 そして、ちらりと私の方を振り向くのだ。とても済まなさそうな顔で。
「あのね、ミサちゃん。また、お願いしたいんだけど……いい?」
 ほうら、来た。
「あのね。母さんの今日のショーなんだけど、いつもの事務所にモデルさん頼んどいたん
だけど、二人も急に体調を崩してしまったって、どうしても来れないっていうのよ」
 しどろもどろの口調で、娘の私にまで気を使う小心さが、母のいいところでもある。
「それでね、なんとか他のコの出番を増やして、穴を埋めようと思うんだけど、それでも
もう一人だけ、どうしても足りないのよ。それで、ね……」
 そんな困った表情の母を見るに見かねて、私は親愛をこめてほほえみを返す。
「いいわよ、ママ。私で良かったら、好きなように使ってちょうだい」


287 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22:12:50 ID:ljo8SDMi
「ありがと、ミサちゃん。でも本当にごめんね」
「いいのよ、ママ。親一人子一人。私たちたった二人きりの家族じゃない。困ったときに
はいつだって私が力になってあげるから、ね」
 母は、頬を少しだけ上気させて目を潤ませる。
「さあ、そうと決まればさっさと着替えの用意をしないと、ね、ママ。今日の衣裳の試作
はちゃんとここにあるんでしょ」
 こっくりと首を縦にする母。どんな不測の事態にも対応すべく手配しておくのが責任者
なのだということを熟知しているのだ。
「だったら、さあ衣装合わせよ。時間はないんでしょ、さあ早く」
 私が急かすのもなんだけれども、そうでもしなければ事は進まないのだ。やると決めた
らさっさとする。悩むのと行動するのは別にしなければならないのだ。

 と、ここまでの流れでもって、私がその欠員したモデルの替わりをするのだろうと思っ
た人は残念賞。
 私は、決して容姿に自信がないわけではないのだけれども、品評に耐えうるほどのそれ
をしているとの自惚れがあるわけではないので、そういった場に出ることは今までも、そ
して今後もないと言いきってしまって構わないのよね。ま、校則でも認められてないし。
 だから、私のすべきことは、私を母に『使ってもらう』ことなのだ。
 リビングのカーテンを閉め切り、私と母はお互いにショーツ一枚の姿になっていた。


288 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22:14:12 ID:ljo8SDMi
母も四十を過ぎたオバサンである。いくら保存状態はわりと良い方だといっても、それ
なりの肉体でしかない。その内面を知っている私ならばともかくとして、これまた私以上
に観賞に耐えうるモノではないのだが……。  
「それじゃ、ママ。まずはいつも通りに順番に送ってくから、しっかり受け取ってね」
「う、うん。わかった」
 こっくりとうなずく母。その仕草が私には可愛くてたまらないのだ。
 私は両手を母の両肩にそっと乗せて、力と意識とをそこへ注いでいく。
「じゃ、行くよっ。まずは『プロポーション』からっ」
「う、ううっ」
 顔を赤く染めながら、母は小さく呻き声を上げる。
 次の瞬間、母の軽く肥満した腰は大きくうねり、ぐいっと引き締まり、そしてうなだれ
た胸は大きく隆起し、両方の乳房が密接し、深い谷間を形成する。
「はああっ……、あん」
 大きくおばさんじみていたお尻は小さく形よく引き締まってゆき、つん、と上向きにか
わいらしい「ヒップ」へと変貌していく。
「……いいっ、くっ…ひっ」
 太ももや二の腕についていた無駄なお肉は削げ落ちて肌もきゅっと張りを取り戻す。か
と言って骨ばってしまうのではなく、あくまでもしなやかに、女らしく、だ。
「ああっ……ふうっ、ふうっ」
 荒い息を整えながら、顔を上げた母の顔はさっきまでの丸顔ではなく、輪郭もラインを
取り戻して、引き締まり「女」の顔になっていた。 
「じゃあ、次は『若さ』ね。二十年分一気にいくから覚悟してね」
 ふん、ふんと頭を振る母。精一杯の様子がはっきりと見て取れる。何度やっても慣れな
いものかな。
 まず、異変があったのは顔からだ。先ほど引き締まった輪郭がさらにシャープなものに
なり、頬やあごの弛みが全部そこから除かれてしまう。目じりや口元のちりめん皺や、深
いほうれい線は解消されて、艶やかな素肌に戻っていく。垂れ気味だった目じりもくっ、
と持ち上がって猫の目のように少しつり上がった目元がクールになる。
 じわじわと身体全体の艶やかさは増していき、背中やわき腹の線もさらに締まってトッ
プバストとの対比が非常にいい感じになってきている。胸の先の方もさらに張力を増して
もう一段持ち上がり、サイズも大ぶりになっていく。
 細まっていた髪は光沢の鞘におさまることによって、つややかでしなやかに変化してい
く。この状態ならばアップにしているよりも下ろしたほうが似合うだろう。


289 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22:16:09 ID:ljo8SDMi
 次は、骨格に関わることなので、かなり痛みも伴うし、私にも大ごとである。
「……はあっ、はあっ」
「まだまだ、次は身長よっ」
 先ほどまで母の肩に置いていた手を、今度は腰にあてがい、一気に念を込める。
 びくん、びくん、と母の白く輝く太ももとふくらはぎは、ぐんぐんと伸びて私と母との
身長差はみるみる逆転していく。
「うっ……ふふ、すごいよママ。すごい脚線美だよっ」
 母の肉体のバランスは、脚部を中心にすらりと引き伸ばされて、今や174センチの完
璧体型である。今や私の顔などは彼女の胸の下にある状態なのだ。

「さあ、これで出来上がりよ、ママ。こっちの鏡に映してよく見てみてよ」
 私は母を姿見の前へとぐいぐいと押しやってその出来栄えを確認することを促した。
「あ……はあ、これが……私なんだぁ」
 母はちょっとだけ、陶酔した様子で自分の身体に見とれていた。
 先ほどまでは、ショーツの上にはみだしたお腹の肉を乗っけていたおばさんだったのに
今やボンッキュッボンの完全無欠のモデル体型である。
 弾力のある胸を両手で触ってみると、ピンク色の突起物がまるで鳥のくちばしのように
ぴっぴとその向きを変えていく。おそらくその胸の深い谷間にならば携帯電話をはさんで
も絶対に落ちる心配はないだろう。
 ウエストもただ細くなっただけではなく、質の良い筋肉で引き締められているためにそ
の姿勢がとても良く制御されるのである。モデルにとっての必須条件である。
 そしてショーツに包まれたヒップもまた圧巻であった。さっきまで無理やり押し込めら
れていた弛んだ無駄肉たちは全て消え去り、ハリのある美尻になっている。太ももから繋
がるラインの美しさはまさに至高の彫像のそれであった。


290 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2010/01/10(日) 22:16:59 ID:ljo8SDMi
「すごいよ、ママ。これなら絶対に今度のショーも成功間違いなしだよっ」
 すると、私の言葉にはっと、現実に引き戻された母は、私の姿を見て、それからとても
悲しい顔をして、
「私は……辛いわ」
 そして、少しだけ、涙を流した。
「私はいつも、あなたのこと、利用しているだけなんじゃないのかって、思うのよ」
 母の、気持ちはわかるのだ。
 私だって、鏡を見ればぞっと、震え上がらずにはいられない。
 母に若さと美しさとを与えた後の私は、145センチの胴長短足の肥満体型である。
 およそティーンエイジャーにはあるはずもない白髪が頭のいたるところでチラチラと目
立って、そして顔にも細かいシミや皺が浮き出した状態なのだから。
 身体を動かせば、わき腹やお腹にせり出した無駄なお肉がゆらゆらと動くし、自慢だっ
たはずのバストラインも消失し、今は小さいからこそ垂れずに済んでいる、という困った
乳に変貌しているのだから。
 だけど、だ。だけど、なのだ。
「大丈夫よ、ママ。だってこれは私の望みでもあるんだもの」
 母は、赤くなった顔を上げた。
「大きな舞台で、大好きなママがみんなから歓声を浴びて、そしてママの衣裳がそれを引
き立てるの。これからの未来でも目に浮かぶようにわかるのよ、私は」
 そうだ。これは二人の共同のお仕事なのだ。
「私はママで、そしてママは私なの。だから、私たちは二人で一つなの、わかるでしょ、
だったら胸を張って、そして笑って出かけていかなくちゃ、私も悲しくなっちゃうよ」
 少しだけ、私も涙を流した。
 母は、私の身体をきゅっと抱きしめた。肌を通して伝わってくるそのスタイルの良さは、
少しだけ妬けた。
「分かったわ。ママは行ってくるから、そして絶対にこのショーを成功してみせるから」
 母の瞳はまだ潤んでいたけれども、涙は流れていなかった。

 そして、支度を済ませると母は出て行った。私は、こんな身体だから今日は外出したく
はないけれども、買い置きしていた食材だけで、母の好きなものを作っておいてあげよう。
そして、ショーの成功を祝ってあげよう。そして、それが、なによりも私にとっては幸せ
なことなのだから。

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最終更新:2010年01月11日 16:09