4スレ目>>5氏
5 名無しさん@ピンキー [sage] 2010/03/06(土) 22:38:48 ID:i6vPNKCn Be:
ちょっと即興で軽く作り始めたので乗せてみます。
『チャージチェンジ』
それは、ただ突拍子もなく、目の前に現れた。
『アナタのライバルを、蹴落としたくないかい?』
その言葉は、私の心を深く誘惑し、後ろ髪を引かれるようにまで、思えてくる。
無視しても良かった。
放置しても良かった。
日も沈んでしまい、暗い夜の住宅地、
周囲は誰もいない……いや、いないことがおかしい。
いつもなら、大通りから一本しか違わないとはいえ、車の往来もある程度あり、丁度サラリーマンなどの帰り時間と一致している。
ソレなのに、誰もいない。
そんな暗闇に孤立してしまった私を狙い済ますかのように、
それは、目の前にいた。
『もう一回、聞こうか? ライバルを蹴落としたくないかい? しかも、永遠に再起不能で、しかも犯罪にもならずに』
「こ、殺すの?」
真っ先に聞かないといけない言葉は、きっと、それを正体を求めるための言葉だろう。
でも、そんな言葉よりも、恐怖と、この未知への期待感のほうが上回ってしまっている。
『殺しはしない、けど、確実に君のライバルではなくなるだろう』
「……教えて、教えて!!!」
彼女に勝てるのなら、
『おーけい、いいよ、だけど、ラクではないよ?』
「それでもいい!!」
私が勝てるのなら、勝てるのなら、
この目の前にいる悪魔か、なにかわからない存在に魂だって売ってやる。
それが、私、篠森唯子の、苦痛の日々の始まりだった。
「あら、篠森さんおはよう」
この不況でも、私が勤めている会社はたいした損害を受けず、現状維持を何とか保っている大企業の営業1課のオフィスで私に声をかけてくる一人の同僚。
「おはよう、今日はちょっといそがしいわ」
「ええ、最近課長が仕事丸投げしてくるせいね」
そう言って、私と春日居冬子は作り笑いでの会話をしていた。
5年前、入社したときから、彼女に私は負けていた。
私は三流大学の経済学部、彼女は一流大学の法制学部
私は一般家庭の普通の女、彼女は裕福な家庭の出、
彼女はスタイルもよく、女の私がいうのもなんだが、胸がでかい
けっして私自身、見た目はワルく無いほうだ。
でも、彼女のほうが上だった。
2人とも、営業成績も良くて、会社での立場は同格だが、それでも男どもはみんな彼女のほうを見ている。
だから、悔しい
勝てない
勝てない
勝ちたい
「先輩……どうしたんですか?」
ふと、後輩の佐々木咲が心配そうにみていた。
「ああ、なんでもないわ」
ふっと、咲のほうをみてごまかし笑いをする。
3つ下の咲は良くできた子だ。
スタイルは平々凡々よりちょっと下で、顔も可愛い系だけど、それでも、可愛がりたくなる。
「さて、今日も頑張るか」
そう言って、私は気合を入れた。
13 5 [sage] 2010/03/09(火) 16:58:04 ID:+YSIDN5b Be:
あの良く分からないものがくれた物、それは腕輪だ、蛇が2匹、それぞれが相手の尻尾を飲むような形で、さながらウズボロスのようなイメージだ。
「これを使えば……」
その腕輪を握りこんだ。
腕輪をつけて、相手に触れると自分が望んだ相手と自分の『絶対値』を入れ替えることができるらしい。
ソレだけをつげ、アレは消え、アスファルトに澄み切った音とともにこの腕輪が落ち、慌ててソレを拾って帰ってきたのだ。
『おや、まだつかってなかったのか』
「!!!!」
声だけが、聞こえてきた。
『もしも、あんたが美女なライバルと入れ替えてって考えているようだったら警告しておこう』
「け、警告?」
『この腕輪は、相手1人につき1回だけだ、もしもライバルと絶対値を入れ替えて、それでも敗北した場合、もう二度とライバルとは入れ替われない』
その言葉を噛み砕くまで少し時間がかかった。
「そ、それじゃあ、一回で全部すべて入れ替えてしまえばいいってことでしょ?」
そうだ、ソレが一番いい。それが正解のはず!!
『ところがどっこい、コレは俺だから言えることだが、あんたと相手の力量さは、ほぼ皆無、いつでもひっくり返っちまうほどの差しかねぇんだよ』
「そ、そうなの?」
絶対的ではない差……
『だけど、そのわずかな差をひっくり返せないで困っている』
「そうよ、いくら頑張っても、ひっくり返らない!!!」
今までずっと、ずっと、ずっと、努力してきたのに!!!
『じゃ、話は早いだろ、相手を貶めればいい』
貶める?と頭の中で?マークが浮かんだ。
『方法はよく考えナ、タノシクミセテモラウヨ』
そう言って、声が消えた。
29 5 [sage] 2010/03/17(水) 16:13:53 ID:wEUtvJ8R Be:
私はしばらく1週間ほど、悩みぬいた。
どうすればいいのか、
どうやれば勝てるのか。
その答えは……自分で、無意識のうちに避けていたものだった。
でも、勝つには、ソレしかない。
だから、私は・・・街中を歩きながら、お目当てを探した。
こうしてみると、お目当ての人間と言うのはなかなかいないものだ。
それはそうだ、こちらが望む人間は、早々外を出歩いていないもの。
「私だったら、出歩かないだろうな・・・」
とぼとぼと、目的もなく歩いているような、そんな気がしてくる。
ふらりと、スーパーやコンビニ、喫茶店などを歩いていて、それこそ、3時間ほど歩いて、ようやく見つけた。
それは、メガネ屋の一角にある、サングラスコーナーにいた。
じっとサングラスを選んでいるようだが、その女の選んでいるサングラスを見れば、ある意味一目瞭然だった。
外から、目がわかりにくくなるような、そんなサングラスばかり、選んでいる。
私は、その女の横に立ち、指先がちょっと触れるようにして・・・・・・入れ替えた。
35 5 [sage] 2010/03/19(金) 08:44:01 ID:grV+EPRc Be:
自分でも、感覚としてよくわかる。
熱い熱い喪失感、ソレと同時に流れ込んでくる感覚。
目が熱い。
痛みはないけど、うごめいている感覚がする。
視野角が・・・広がった。でも、視界は狭まった。
鏡に映る自分の顔を見ながら。実感が確信へと変わっていく。
目と目の距離がどんどん開き、パッチリした二重の目が、はれぼったく、そして細く、小さい目になっていく。
相手は何も気がついていないのだろうか?
「ああ・・・」
終ったとき、私の目は、ずいぶんと・・・それこそ、酷い目になっていた。
顔の形にそぐわない・・・小さい小さい目。
切れ目で垂れ目で……顔の外側のほうによってしまった目。
まぶたは腫れてまつげは元々のものだが、ソレがまた滑稽に見えてしまう。
「い、いこう・・・」
そう言って、私は用意しておいたサングラスを自分で付けて、目を隠すようにメガネ屋から出て行く。
後ろで、うれしそうにサングラスを選ぶ女の声を聞きながら。
38 5 [sage] 2010/03/23(火) 17:47:39 ID:vZltWvF0 Be:
視界が定まらなく、どこか足取りが安定しないなか、私は次を探すためにいろいろと思案する。
「視力も一緒に入れ替わっちゃったのかしら・・・」
一片に目が悪くなってしまって、ただでさえ細い目を更に細めないと、良く見えない中、私は周囲の女性を探し回る。
丁度、今は花粉症のシーズン、そのためマスクをしている人がいっぱいいる。
この中に、もしかしたら、お目当ては居るのかも知れない。
私はマスクつけて、顔を隠した。
「・・・こうなったら手当たり次第でやるしかない・・・わね」
そう言って、私は人ごみに向って歩きだす。
すれ違うマスク姿の女性の手にわずかに掠めるようにしながら私はどんどん入れ替えていく。
そのたびに、マスクの中が動き出す。
メキメキと大きくなったり、スラットしたり、つぶれたり。
なかなかお目当てには当たらない。
「……そうよ、そうそうこれも居ないわひょ…・・・んぐ?」
鼻がなんだかつまったのだろうか、息苦しい。
慌てて私は近場のコンビニのトイレへと向かい、カガミの前でマスクをはずしてみた。
「……ひゃ、こ、これはひゅどい」
でっかくて酷い鼻と厚ぼったい唇が鎮座している。
目と相まってもう別人のようだった……
それでも、パーツを交換しているのではなく、あくまで数値を交換しているのだろうか、
昔の自分の面影が随所に残っており、妙な気分になる。
鼻からはハナミズが出てしまうので、鼻をすすると、下品な音が聞こえてしまい、嫌な気分になってしまう。
「と、とりあえず今日はこのぐらいにしておかないと……」
と、思っていると歯が痛み出した。
口を開けてみると何本か虫歯になっている。
流石にいつ終るかわからないこの行為、コレは直しておきたい。
行き着けの歯医者を避けて、少し遠い病院へとそのまま脚を伸ばした。
56 5 [sage] 2010/03/28(日) 08:50:37 ID:4/BAVdn0 Be:
顔を弄ってからはじめての出勤は驚いたことにダレも、騒ぎ立てることはしなかった。
ただ、平然とそして公然と私の顔の話が持ち上がっている。
きっと、変わっているこの顔が普通となってしまっているのだろうか……
一週間で虫歯の治療が終わり、次のお目当てを探すことにする。
しかし、今度こそ、手詰まりだ。
お目当てはなかなかどころか、外にであるくことなんてしないだろうし、見つからない。
『困ってるようだな?』
また、あの声が聞こえてくる。
『ふふふ、そんなあんたのために、特別サービスだ……別に本人じゃなくても画像や映像でもできるぜ?』
少しびっくりした。
それができるのなら、わざわざ歩き回ったりしなくてもよかったのに……
しかし、願ったり叶ったりの情報だ。
『あんたみたいな使い方をしてるのは見てて楽しくてネェ、力をかしてやりやくなるのさ』
その声は、本当に楽しそうで、楽しそうで……どこか子供じみた感じがする。
「……一つ聞いてもいいかしら?」
『なんだい?』
私は……恐る恐る確かめるように、疑問を口にした。
「こんなことして……アナタにどんな得があるの?」
数秒の沈黙。
少しのあいだ、沈黙が流れる。
『楽しいから』
その一言を残して、声が消えた。
最終更新:2010年04月13日 02:41