カテドラル7階にて。
少なくとも、外見からではその男が殺し合いに巻き込まれるような人間であるとは思えなかっただろう。
白髪に紺色のスーツ、歳相応の皺を重ねた顔はこの様な状況下にいるよりは、公園で孫と戯れている方が似合っている。
(忌々しいメシア教徒め…………私を虚仮にした罪、必ずや味あわせてやる…………)
だが、その心中にて渦巻く思いは如何なるものか。
年月は人を変えるというが、少なくとも30年の年月では男の抱く思いは変わることはなかった。
(…………覚えていろ、メシア教徒。
お前が私に殺人を命令するというのならば、良いだろう。
あの時と何も変わりはしない、新宿を手に入れたあの時のように……私は勝利してみせる。
そして……最後はお前だ、メシア教徒。その神とやらと共に……完膚なきまでに潰してくれる)
強欲であること、傲慢であること、少年の時から何一つとして変わりはしない。
男は男なりの思いを抱き、この殺し合いに挑むことを決めた。
男の名はオザワ、
新宿の支配者であった彼は、この世界で何を成すのだろうか……
◇
「神の……愛だと…………
言うことに欠いて……邪教徒の分際で…………神の愛だと抜かすか………………この……不心得者がああああ!!」
浮島の大聖堂カテドラル、その頂上にて、吠える男が一人。
吠える男、その顔面は尋常ではない。
まず、その男の顔には一切の丸みが無く、角張った顔面をしている。
そして、その顔に今にも皮膚を突き破らんばかりの勢いで血管を浮かべ、目は怒りで淀ませている。
怒りに打ち震える男、その名をモズグスと言う、
元いた世界では血の教典と呼ばれ恐れられた異端審問官であった。
さて、彼の怒りの原因はこの殺し合いに巻き込まれた故ではない、
彼はただ、先程の場にいた少女が神の愛を騙ったこと、其の事にのみ、激怒している。
そう、神の名を騙ること、それは彼にとって何よりの罪であると言っていい、
彼は神の教義に従い、地上での聖務を遂行することを許された者。
彼及び、彼の所属する法王庁、
それ以外の者が訳知り顔で神の代弁者を気取ることは決して彼にとって許されることではない。
突然の異常事態の際に湧き上がるであろう恐怖、彼の怒りと信仰はそれを塗りつぶした。
彼は決してこの殺し合いに乗ることはないだろう、
この異常事態を引き起こした邪教徒に従うことを、彼は決して許容しない。
然るべき報いを与えてやらねばならないのだ、あの邪教徒に。
貴様が殺せというのならば、よろしい、神罰の剣をその胸に突き立ててやろう、
彼の胸は決意に満ち溢れた、そして……血の教典モズグスのバトルロワイアルが始まったのである。
その後、モズグスの手にかかってオザワは死んだ。僧職系男子(笑)
【オザワ@真・女神転生Ⅰ 死亡】
詳細を語ろう。
◇
同じ建物にいた以上、二人の出会いは必然的とも言えるものだっただろう。
オザワは周囲を見渡す為に屋上へ、モズグスは降りるために下層へ、
それ故に、8階にて二人は出会った。
「裁かれるべきは、あの邪教徒のみです。
この様な状況下では邪心が入り込んでしまうかも知れませんが、信仰とはすべてを要求するもの。
神の御心のままに、この試練を乗り越えましょう」
「ええ、まったく、私もそう思いますよ」
切々と語るモズグスに、相打ちを打つオザワ。
出会った時からこの様な流れが続いている。
──使えそうな男だな、とオザワは心のなかで独りごちる。
話を聞く限りでは、モズグスは殺し合いに一切乗る気は無く、おめでたくも神を信じるお人好しであるそうだ。
支給品を確認したが、直接武器になる物が無かったオザワにとって、殺し合いに乗っていない相手というのはありがたい。
殺し合いに乗った相手に出くわしたのならば囮にでも使ってやればいい、
良い支給品を持っているのならば隙を見て殺して奪い取る、
2人でいるのならば、殺し合いに乗っていないお人好しに信用される可能性は高い、
そこで集団を作り、ある程度大きくなったのならば、食事に支給品として与えられた毒でも混ぜ込んでやれば良い。
精々、上手く使ってやれば良いのだ。
「ところで、貴方があの邪教徒に如何なる道具を与えられたのですか?」
モズグスの声がオザワの思考を中断させた。
「私ですか……いえ、大したものは…………」
当然、馬鹿正直に支給品を晒すような真似をオザワはしない、
とても武器になりそうにないハズレ支給品のみである、そう思わせておけばいいのだと、デイパックから一冊の本を取り出す。
「私の支給品はこれだけ、ただの本ですよ。この状況では何の役にも立ちません」
「…………ただの本と言うのですか?」
オザワの取り出した本、モズグスはそれを奪い取り、
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たった、一発。
教典の角での一撃でオザワの命は果てた。
【オザワ@真・女神転生Ⅰ 死亡】
「神が我らに与えた地上の法!その言葉を!教典を!ただの本と抜かすか!!」
死体であること、それはオザワへの攻撃を止める理由にはならなかった。
何度も何度も何度も、教典の角でオザワを打ち付けるモズグス、既に先ほどまでの穏やかな物腰は完全に消え去っていた。
「…………ハァ、ハァ、ハァ、私としたことが……少々熱くなってしまったようです。
裁判も無しに私刑を行なってしまうとは、こういう時に私の弟子達がいればよかったのですが…………」
思いがけず呟いてしまった自分の言葉に自嘲し、ため息をつく。
誰が望むというのだ、この様な状況に愛弟子が巻き込まれてしまうことを。
「…………信仰とはすべて求めるもの、この様な状況だからこそ私が耐え忍ぶことが重要なのでしょう。
我が愛弟子よ、貴方達がいなくても私は大丈夫です。
だから、胸を張って聖務を続けなさい。
貴方達がこの場にいないことを…………私は祈っています」
【F-2/カテドラル7F/1日目/深夜】
【モズグス@ベルセルク】
【状態】健康
【装備】教典@ベルセルク
【道具】基本支給品×2、青酸カリ@現実、不明支給品2~4
【思考】
基本:邪教徒(この殺し合いの主催者)の打破