こうして掲示板の前に立って何十分過ぎただろうか、中々お目当ての部活が見当たらない。
張り紙はどれもカラフルに彩られていて虫唾が走るものばかりで、それでいて全く興味を示せない。
「もうそろそろ諦めようよ、恒成君。
時間はまだたっぷりあるし、体験入部とかしてじっくり選べばいいじゃん・・・
今日はこの辺にして一緒に帰ろう、ね?」
馬鹿な女だ。こういう面倒なことは早めに決めておいたほうがいいのだ。
どうせ後になってどうしても決断を強いられる羽目になり、やりたくも無い部活動に強制的にやらされるのだ。
俺の昔の友人は、先輩達の強い押しによってか、特に入る予定でもなかったバレー部に入部してしまい、そこで地獄を見た。
結局、友人は情けないことにバレー部を一年でやめてしまい、本来入りたかったであろう吹奏楽部に行った。
だったら、せめて早々に自分で選るのが最良の選択というものだ。当たり前だがな。
が、しかし、どれも面倒で喚起されない部活ばかりだ。これだから低俗愚民共は。
と、掲示板の隅の方にある質素な張り紙が映った。
「秘密結社ゴランノス=ポンサー エージェント募集 拠点:4階暗室」
と、極太マジックで殴り書きされている。
正直俺は不意打ちを食らった。少し心時めいたりもした。とにかく、全体を見渡す限りではこれが一番興味を惹かれた。
「これだな」
「え?決まったの?」
キョトンとした蛭川を尻目に、早速示されている部室へと足を運び、この場を後にする。
そして、
「たのもー!!」
俺は暗室と呼ばれる教室の扉を大きく開け放った。
「何事ぞ!?」
男の声。中には青年が二人ほど居座っている。
一人はボストンフレームのメガネでヒョロそうな、いかにも「拙者、アニメ大好きでござるよ、デュフフフ」系のオタク。
もう一人は、怪しげな紋章の刺繍が入った学生帽を深く被り、漆黒の前髪で顔が完全に隠れていて、
たいそう肌色が悪く、サイケデリックを感じる少し小柄な少年。
この二人、雰囲気(オーラ)だけでも相当「できる」奴だと流石の俺ですら感じ取れるほどひしひしと伝わってくる。
やはり、『秘密結社ゴランノス=ポンサー』など怪しすぎた。やめるか?
いや、ここまで来たからにはもう引き下がれない。やるしかないだろう。
「俺は・・・入部希望者(エージェント)だ!!」
「「!!」」
青年二人の顔は鳩が豆鉄砲を食らったかのような極めて驚愕な様子の形に変形した。
いや、学生帽を被ったほうの顔の様子は伺えなかったがそんな感じがした。
「
そうか・・・エージェントか!
ようこそ、我らが秘密結社ゴランノス=ポンサーへ・・・!!」
ボストンフレームが握手を求めてきたが払い退ける。
「勘違いするなよ?俺は部活動がめんどくさいから、一番どうでもいい部活を選んだだけだ。
貴様らなど眼中に無い」
これを聞いたボストンは驚いていたが、しばらくして何か理解したのか、ニヒルな笑いを浮かべ始める。
「ふむ、ツンデレですか。まあ、こういうエージェントもありですかね・・・クヒヒヒヒ」
「あの」
俺の後ろにこっそりといた蛭川が唐突に発言する。
「恒成君がここに入るのなら、私も入部志願(エージェント)したいです!」
これは驚倒した。
「なっ、蛭川!?、お前いいのか?
こんな意味不明な部活に入って・・・」
蛭川は静かに首を縦に振った。
そして、ボストンは過剰な反応を示す。
「おおおお!!!おおおおお、お、女の子だ!
女の子がエージェントになったぞ!!しかもおっぱい美少女だ!!」
かなり大声だったからか、蛭川の頬が少し赤くなったように見えた。
「おい、菊池よ、女子だぞ女子!これで歴代女子エージェント二人目だな!
レンたん以来の・・・」
「その名を口にするな」
菊池と呼ばれたサイケ少年は、声自体は高めだがかなりドスの利いた声でボストンを黙らせた。
何か言ってはいけない事だったのだろうか。
タブーっぽいがどうしても気になってしまい、ついつい訊いてしまった。
「レンたんとは?」
それを聞いたボストンが、その問いに答えようと口を開いたが、それを遮るように菊池という名の少年が、
「蘇芳恋。去年、エージェントだったが、消えた。
消えたというのは、行方不明という意味だ。
だが、それに関して君ら新入りが気にする必要は全く無い」
と淡々と述べた。
何だこの重い空気。
蘇芳恋?
行方不明?