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**花陵@詩歌藩国様からのご依頼品 ~夕焼け小焼けで~ /*/ 握った手は暖かかった。 顔は、、どんな顔してたかな。 絶対赤くなってたな私っ。 夕焼けのせいと言う事で、ごまかそう。 「ゆう~やけこやけで、ひがくれて~。」 歌に出すと、絶対そうなるんだからね! /*/ 日は遡って朝。 ヤガミは待ち合わせ場所で帽子をいじりながら人を待っていた。 実は、昨日いろいろな店で帽子を眺めていた姿があったのは秘密だ。 トレッキング用の登山帽など、そこら辺の店(小笠原内)にはあるはずが無く、相当探していたのも秘密だ。 (これで多分、格好では勝っているはずだ。) そう思っているヤガミのそばに花陵がやってきた。 始終、帽子を気にしていたせいで、気づくのが少し遅れた。 「こんにちは。」 「あぁ。」 先手を取れなかったのは、男としてはなかなか痛い。 よし、ここは帽子のせいにしよう。と、思ったのは言うまでも無く。 「帽子がなかなか決まらない。」 実は、結構お気に入りだった帽子をいじりながら気づいて欲しそうにしていたが、 花陵は言われるまで帽子には気づかず、逆に準備の事を気にしているのかと思った。 「私は、リュックとか色々用意してきましたよ!」 自慢げに背中のリュックを指し、いそいそと中身を見せる用意をした。 ヤガミは自分も負けていないと、自分の格好に気がついてくれと帽子をいじっている。 が、花陵はそれには全く気づかずに、リュックの中身の披露に勤しんでいる。 「登山帽、買ってきたんだが。」 ついに自分で言ってしまった。 この辺りがヤガミの弱い所であるのだが、それくらい気づいて欲しかったのだろう。 しかし、物語はかくも上手く行かないもの。 花陵はリュックの中身の披露でいっぱいいっぱいだった。 気づいて欲しいぞオーラは、準備は出来ているのか?オーラと読み取られてしまった。 「えーとね。準備は万端です。」 「これ。」karyousiikahannkoku.blog103.fc2.com/blog-entry-60.html えっへん。と言わんばかりに胸をはっている花陵にヤガミは少し残念がったが、 花陵なりの一生懸命さに免じて、準備も早々に一緒にトレッキングを楽しむ事を決めた。 「さて、どこにいくんだ?」 「千歳岩って、景色のいい所があるってなので、そっちに行きたいです!」 「どっちだ?」 「・・千尋岩だった。島の最南端の方ー。季節によっては鯨も見れるって!」 手元に持った簡易地図(と言っても、すごく短いメモ)を見ながら説明をしている。 ヤガミは地理に具体的に詳しくは無かったが大体の距離を推し量り、 花陵の装備の重さと格好から花陵を心配した。 「結構歩きそうだな。靴は大丈夫か?」 「学校の運動靴だけど、大丈夫よね?・・紐で結わえなおそう。」 格好から入る男、ヤガミ。 花陵の装備の弱さをヤガミなりにカバーする。 「重いなら持ってやろうか?」 「じゃあ。少しだけ、荷物を持ってもらってもいいですか?」 花陵はエスコートなのかと思い、素直に申し出を受け入れた。 ヤガミの方は、これでトレッキングも大丈夫だろうとニコっと笑った。 「いいとも。」 そうして、トレッキングはスタートした。 /*/ ヤガミ、思ったより楽しかったらしい。 大股で元気よく歩き出すヤガミに、花陵が嬉しそうにチョコチョコとついていく。 この分なら、お弁当も喜んでくれるかな。 花陵が朝早起きして作くられたお弁当は、花陵の手の中で大事に収まっていた。 途中の道で亜熱帯系の植物を見つけたり、トンネルの暗い中を行くのは花陵にとって、とっても冒険だった。 そのたびにヤガミは、自分には気づけないものを花陵は見つけていくのだなと感心した。 しかし、どう道を間違えたのか採掘場のにでてしまい、眼前に谷が広がる。 すでに方向が分からなくなっているのが花陵。 太陽の方角が南!と言ってる時点で、ダメダメだった。 岩のほうに行く事が決定し、出発しようとしたところで、ヤガミは今まで繋いでた手を離した。 トンネルを越え、日のあたる所にまで出て手を繋いでいた事に気づき、恥ずかしくなって手を離したのだが、 花陵には急いでいるようにしか見えない。 二人は勘違いをしながら、早足で先を急いだ。 /*/ 千尋岩につき、その上でお弁当を食べる事になった。 時間はもう既に夕方だが、二人でシートを広げ、花陵が大事に持っていたお弁当が広げられた。 中に入っていたのは、手羽先とおにぎりとリンゴ。 卵焼きやウインナーが入っているものだと思ってたヤガミは、この組み合わせは何かのまじないなのだろうかと思った。 花陵は食べないのかな?と少し心配そうにヤガミを見る。 「おにぎりだな。」 「てばさき。」 思ったからこそ、ヤガミはぽろっと口に出してしまう。 このあたり、女心がよく分かってない。 だが、花陵も実はよく分かってなかった。 「おにぎりと、手羽先!簡単なものだけど、これなら手づかみで食べれるから。外ーーー!って、感じでしょう!」 その説明を聞いてヤガミは笑った。 実際、確かに今日のトレッキングなら、こっちの方が相応しかった。 「なるほど。何だこの組み合わせはと思ったが、確かにその通りだ。」 「笑って悪かった。」 何が悪かったのか、よく分からなかったがとにかく食べてくれる事に花陵は素直に喜んだ。 「ね。ワイルドー!楽しいでしょ!」 「そうだな。」 おにぎりが不意に赤く染まる。 今まで雲に隠れていた太陽が顔を出していた。 「ああ。見ろ。」 夕日が、空と海とその境を赤く染めていた。 二人で岩の上から眺める。 ムードのある恥ずかしい雰囲気に花陵はあんまり慣れていなかった。 無理やり、元気な自分を振舞った。 「海に沈む、夕日だねー。また、一緒に見ようね。・・・これから、何度も一緒に見ようね。」 ヤガミは、不意に笑った。 「何度も、か……。」 笑っていたヤガミに、花陵はどこか不安を覚えた。 ヤガミと言えば、分からず屋。 それが通説であるのだから、当たり前だった。 「そう!何度も、よ!ここ、重要!試験に出るから、覚えとかないと!」 「そうか、何度もか。」 ヤガミが口を開くたびに、何故か涙が出そうになった。 この人は、そういいつつ絶対に聞き分けが無いと、花陵は思っている。 「うん、何度も。一杯、見るの。・・・そして、一杯手も繋ごう、ね。」 夕日とヤガミ。 絶対に、どこかに消えそうなシチュエーションだと誰もが思うだろう。 当の本人は、それをまるで分かっていない。 愛されている事に、気づきたくない。 「まるで愛の告白だな。」 「そのつもりで、言ってるのよ!」 花陵を見ながら、言う。 「本気だから、ね。」 ヤガミの目を見ながら、花陵は言う。 「嘘だったら傷つきそうだ。」 どうやっても認めたくないのがヤガミである。 しかし、どうやっても認めさせたいのが花陵である。 「こんな大切な事、嘘言わないから。もともと、嘘は苦手だし。」 「本当に?」 「本当。」 「私は、声に出して言うと、ちゃんとその通りになる。って思ってる。・・・だから、本当になる。」 ヤガミはその言葉に目を細めて、夕日を見た。 そして、すっと立ち上がり、帰り道の方を見た。 「そうか。」 同じタイミングで花陵も立ち上がるが、ヤガミはあまり気にかけない。 「俺はそう思わない。」 歩き出したヤガミに、少し戸惑いながら花陵は隣に並んだ。 「ヤガミが思わなくても、私はそう思っている。・・大丈夫。本当になる。」 その言葉に、ヤガミの心は反応した。 具体的に言えば、針で指されたような傷みを感じた。 「思いは隠すものだ。そちらの方が、傷つかない。」 「傷ついても。いい。言った方が、いい。」 どうしても、その事を認めさせたい花陵。 だが、ヤガミにはそれを受け入れられない、二人とも頑固だった。 「俺はそこまで素直になれない。」 花陵の言葉を待ったが、沈黙が流れる。 それが答えだと、ヤガミは歩き出した。 実際には、抱きついたり、腕を掴んだりして欲しかったのだが、上手く伝える事が出来ない。 ヤガミ、言葉だけでは安心できない男なのである。 「素直なの、かなー。なんか、わがまま言ってる気も。」 言葉を選んでいる間に、ヤガミは先に行ってしまっている。 花陵は果てしなく慌てた。 「待って。手を繋いで、帰る約束!手を繋ぐのー。」 目をつぶって、叫ぶ。 離れたくない気持ちはあるのだが、足が動かない。 離れてしまったのが怖かった。 恐る恐る前を向くと、まだ、ヤガミは立っていた。 「もう、ドキドキするよ!」 走って、そばに駆け寄る。 「一緒に、帰ろう。そして、また一緒に、夕日も朝日も見るの。」 「約束は出来ないが。帰り道は、送るよ。」 どういう意味なのか、花陵には分からなかった。 「約束は、出来ない。のは、残念だけど、また、会いに来るから!・・帰り道だけでも、一緒に。」 それが、花陵の精一杯の言葉だった。 「ああ。」 それに対する返事がこの一言だけであるのが、この男である。 そして、別の事を思う。 「でもまあ、一番怖いのは俺かもな。」 いつも、誰かに思われている。 それは確かに嬉しい事なのだが、逆にその事でほかの事を見えなくさせてしまっているのではないのか。 ヤガミは、周りが思っているほど、自分に自信が持てていないのであった。 そういう性格なのである。 「えー?」 「怖いのは、私。ヤガミが、すぐどこかに行ってしまう。」 ヤガミは微笑むと、この時ばかりは約束を守ろうと花陵の手を握った。 握られた手は、すごく暖かいと、花陵は思った。 /*/ ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) - 伯牙さん、SSありがとうございました!「ぎゃー!バレバレだ!?」と、驚きました。実際、千尋岩が載ってる地図も用意したし、「冒険だー!うへ、うへ。お弁当は手掴みで食べれるのにしよう。」って、思っていました。しかも、「しかし、どうやっても認めさせたいのが花陵である。」の所なんて!あー。やっぱり、そうですか。やっぱり、そうですか。って!ゲームログから、ここまで読まれるとは。お願いして良かったです。ありがとうございましたー! -- 花陵@詩歌藩国 (2007-12-09 16:39:01) #comment(,disableurl) ---- ご発注元:花陵@詩歌藩国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=251;id=gaibu_ita 製作:伯牙@伏見藩国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=537;id=UP_ita 引渡し日: ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|
**花陵@詩歌藩国様からのご依頼品 ~夕焼け小焼けで~ /*/ 握った手は暖かかった。 顔は、、どんな顔してたかな。 絶対赤くなってたな私っ。 夕焼けのせいと言う事で、ごまかそう。 「ゆう~やけこやけで、ひがくれて~。」 歌に出すと、絶対そうなるんだからね! /*/ 日は遡って朝。 ヤガミは待ち合わせ場所で帽子をいじりながら人を待っていた。 実は、昨日いろいろな店で帽子を眺めていた姿があったのは秘密だ。 トレッキング用の登山帽など、そこら辺の店(小笠原内)にはあるはずが無く、相当探していたのも秘密だ。 (これで多分、格好では勝っているはずだ。) そう思っているヤガミのそばに花陵がやってきた。 始終、帽子を気にしていたせいで、気づくのが少し遅れた。 「こんにちは。」 「あぁ。」 先手を取れなかったのは、男としてはなかなか痛い。 よし、ここは帽子のせいにしよう。と、思ったのは言うまでも無く。 「帽子がなかなか決まらない。」 実は、結構お気に入りだった帽子をいじりながら気づいて欲しそうにしていたが、 花陵は言われるまで帽子には気づかず、逆に準備の事を気にしているのかと思った。 「私は、リュックとか色々用意してきましたよ!」 自慢げに背中のリュックを指し、いそいそと中身を見せる用意をした。 ヤガミは自分も負けていないと、自分の格好に気がついてくれと帽子をいじっている。 が、花陵はそれには全く気づかずに、リュックの中身の披露に勤しんでいる。 「登山帽、買ってきたんだが。」 ついに自分で言ってしまった。 この辺りがヤガミの弱い所であるのだが、それくらい気づいて欲しかったのだろう。 しかし、物語はかくも上手く行かないもの。 花陵はリュックの中身の披露でいっぱいいっぱいだった。 気づいて欲しいぞオーラは、準備は出来ているのか?オーラと読み取られてしまった。 「えーとね。準備は万端です。」 「これ。」karyousiikahannkoku.blog103.fc2.com/blog-entry-60.html えっへん。と言わんばかりに胸をはっている花陵にヤガミは少し残念がったが、 花陵なりの一生懸命さに免じて、準備も早々に一緒にトレッキングを楽しむ事を決めた。 「さて、どこにいくんだ?」 「千歳岩って、景色のいい所があるってなので、そっちに行きたいです!」 「どっちだ?」 「・・千尋岩だった。島の最南端の方ー。季節によっては鯨も見れるって!」 手元に持った簡易地図(と言っても、すごく短いメモ)を見ながら説明をしている。 ヤガミは地理に具体的に詳しくは無かったが大体の距離を推し量り、 花陵の装備の重さと格好から花陵を心配した。 「結構歩きそうだな。靴は大丈夫か?」 「学校の運動靴だけど、大丈夫よね?・・紐で結わえなおそう。」 格好から入る男、ヤガミ。 花陵の装備の弱さをヤガミなりにカバーする。 「重いなら持ってやろうか?」 「じゃあ。少しだけ、荷物を持ってもらってもいいですか?」 花陵はエスコートなのかと思い、素直に申し出を受け入れた。 ヤガミの方は、これでトレッキングも大丈夫だろうとニコっと笑った。 「いいとも。」 そうして、トレッキングはスタートした。 /*/ ヤガミ、思ったより楽しかったらしい。 大股で元気よく歩き出すヤガミに、花陵が嬉しそうにチョコチョコとついていく。 この分なら、お弁当も喜んでくれるかな。 花陵が朝早起きして作くられたお弁当は、花陵の手の中で大事に収まっていた。 途中の道で亜熱帯系の植物を見つけたり、トンネルの暗い中を行くのは花陵にとって、とっても冒険だった。 そのたびにヤガミは、自分には気づけないものを花陵は見つけていくのだなと感心した。 しかし、どう道を間違えたのか採掘場のにでてしまい、眼前に谷が広がる。 すでに方向が分からなくなっているのが花陵。 太陽の方角が南!と言ってる時点で、ダメダメだった。 岩のほうに行く事が決定し、出発しようとしたところで、ヤガミは今まで繋いでた手を離した。 トンネルを越え、日のあたる所にまで出て手を繋いでいた事に気づき、恥ずかしくなって手を離したのだが、 花陵には急いでいるようにしか見えない。 二人は勘違いをしながら、早足で先を急いだ。 /*/ 千尋岩につき、その上でお弁当を食べる事になった。 時間はもう既に夕方だが、二人でシートを広げ、花陵が大事に持っていたお弁当が広げられた。 中に入っていたのは、手羽先とおにぎりとリンゴ。 卵焼きやウインナーが入っているものだと思ってたヤガミは、この組み合わせは何かのまじないなのだろうかと思った。 花陵は食べないのかな?と少し心配そうにヤガミを見る。 「おにぎりだな。」 「てばさき。」 思ったからこそ、ヤガミはぽろっと口に出してしまう。 このあたり、女心がよく分かってない。 だが、花陵も実はよく分かってなかった。 「おにぎりと、手羽先!簡単なものだけど、これなら手づかみで食べれるから。外ーーー!って、感じでしょう!」 その説明を聞いてヤガミは笑った。 実際、確かに今日のトレッキングなら、こっちの方が相応しかった。 「なるほど。何だこの組み合わせはと思ったが、確かにその通りだ。」 「笑って悪かった。」 何が悪かったのか、よく分からなかったがとにかく食べてくれる事に花陵は素直に喜んだ。 「ね。ワイルドー!楽しいでしょ!」 「そうだな。」 おにぎりが不意に赤く染まる。 今まで雲に隠れていた太陽が顔を出していた。 「ああ。見ろ。」 夕日が、空と海とその境を赤く染めていた。 二人で岩の上から眺める。 ムードのある恥ずかしい雰囲気に花陵はあんまり慣れていなかった。 無理やり、元気な自分を振舞った。 「海に沈む、夕日だねー。また、一緒に見ようね。・・・これから、何度も一緒に見ようね。」 ヤガミは、不意に笑った。 「何度も、か……。」 笑っていたヤガミに、花陵はどこか不安を覚えた。 ヤガミと言えば、分からず屋。 それが通説であるのだから、当たり前だった。 「そう!何度も、よ!ここ、重要!試験に出るから、覚えとかないと!」 「そうか、何度もか。」 ヤガミが口を開くたびに、何故か涙が出そうになった。 この人は、そういいつつ絶対に聞き分けが無いと、花陵は思っている。 「うん、何度も。一杯、見るの。・・・そして、一杯手も繋ごう、ね。」 夕日とヤガミ。 絶対に、どこかに消えそうなシチュエーションだと誰もが思うだろう。 当の本人は、それをまるで分かっていない。 愛されている事に、気づきたくない。 「まるで愛の告白だな。」 「そのつもりで、言ってるのよ!」 花陵を見ながら、言う。 「本気だから、ね。」 ヤガミの目を見ながら、花陵は言う。 「嘘だったら傷つきそうだ。」 どうやっても認めたくないのがヤガミである。 しかし、どうやっても認めさせたいのが花陵である。 「こんな大切な事、嘘言わないから。もともと、嘘は苦手だし。」 「本当に?」 「本当。」 「私は、声に出して言うと、ちゃんとその通りになる。って思ってる。・・・だから、本当になる。」 ヤガミはその言葉に目を細めて、夕日を見た。 そして、すっと立ち上がり、帰り道の方を見た。 「そうか。」 同じタイミングで花陵も立ち上がるが、ヤガミはあまり気にかけない。 「俺はそう思わない。」 歩き出したヤガミに、少し戸惑いながら花陵は隣に並んだ。 「ヤガミが思わなくても、私はそう思っている。・・大丈夫。本当になる。」 その言葉に、ヤガミの心は反応した。 具体的に言えば、針で指されたような傷みを感じた。 「思いは隠すものだ。そちらの方が、傷つかない。」 「傷ついても。いい。言った方が、いい。」 どうしても、その事を認めさせたい花陵。 だが、ヤガミにはそれを受け入れられない、二人とも頑固だった。 「俺はそこまで素直になれない。」 花陵の言葉を待ったが、沈黙が流れる。 それが答えだと、ヤガミは歩き出した。 実際には、抱きついたり、腕を掴んだりして欲しかったのだが、上手く伝える事が出来ない。 ヤガミ、言葉だけでは安心できない男なのである。 「素直なの、かなー。なんか、わがまま言ってる気も。」 言葉を選んでいる間に、ヤガミは先に行ってしまっている。 花陵は果てしなく慌てた。 「待って。手を繋いで、帰る約束!手を繋ぐのー。」 目をつぶって、叫ぶ。 離れたくない気持ちはあるのだが、足が動かない。 離れてしまったのが怖かった。 恐る恐る前を向くと、まだ、ヤガミは立っていた。 「もう、ドキドキするよ!」 走って、そばに駆け寄る。 「一緒に、帰ろう。そして、また一緒に、夕日も朝日も見るの。」 「約束は出来ないが。帰り道は、送るよ。」 どういう意味なのか、花陵には分からなかった。 「約束は、出来ない。のは、残念だけど、また、会いに来るから!・・帰り道だけでも、一緒に。」 それが、花陵の精一杯の言葉だった。 「ああ。」 それに対する返事がこの一言だけであるのが、この男である。 そして、別の事を思う。 「でもまあ、一番怖いのは俺かもな。」 いつも、誰かに思われている。 それは確かに嬉しい事なのだが、逆にその事でほかの事を見えなくさせてしまっているのではないのか。 ヤガミは、周りが思っているほど、自分に自信が持てていないのであった。 そういう性格なのである。 「えー?」 「怖いのは、私。ヤガミが、すぐどこかに行ってしまう。」 ヤガミは微笑むと、この時ばかりは約束を守ろうと花陵の手を握った。 握られた手は、すごく暖かいと、花陵は思った。 /*/ ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) - 伯牙さん、SSありがとうございました!「ぎゃー!バレバレだ!?」と、驚きました。実際、千尋岩が載ってる地図も用意したし、「冒険だー!うへ、うへ。お弁当は手掴みで食べれるのにしよう。」って、思っていました。しかも、「しかし、どうやっても認めさせたいのが花陵である。」の所なんて!あー。やっぱり、そうですか。やっぱり、そうですか。って!ゲームログから、ここまで読まれるとは。お願いして良かったです。ありがとうございましたー! -- 花陵@詩歌藩国 (2007-12-09 16:39:01) - 感想ありがとうございますッ。喜んでいただけて、こちらも嬉しいです!出来るだけ、文章から花陵さんとヤガミの気持ちを汲み取ろうと何度も読み返しました。(笑)/頑張った甲斐がありました、ありがとうございます! -- 伯牙@伏見藩国 (2007-12-25 03:22:08) #comment(,disableurl) ---- ご発注元:花陵@詩歌藩国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=251;id=gaibu_ita 製作:伯牙@伏見藩国 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=537;id=UP_ita 引渡し日: ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|

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