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**久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国様からのご依頼品 その後の咲良と痩せた猫 /*/  何か今日の久遠寺はちょっと変だったような。  でも、どこがどう変かは言葉にできなかった。  石田咲良は、戦闘に必要な知識はともかく感情を表現する言葉のレパートリーは乏しかった。  まあ、そこらに関しては無理もない。  何故なら彼女はまだ、生後50日とちょっとなのだから。 /*/  久遠寺に会って数日後。  学校の校舎裏で猫に会った。  広島の小隊で飼われてるのとは違う、雑種の猫。  全身が灰色で、左耳が黒く。もふもふとした尻尾に、琥珀色の瞳がきらきらとした。戦火のどさくさで飼い主とはぐれたのだろう、見事に骨と皮だけの状態だった。  そんな痩せこけたのを除けば、咲良がついこないだ会った同年代の少女を思わせた。でも、何故人間に猫と同様の耳と尻尾が生えているのか訳が分からなかった。実は久遠寺は軍が開発した最新型の動物兵器なのだろうか。しかし、今いない人間よりも今そこにいる猫の方に興味が向けられた。視線をくるくるさせて、尻尾をゆらゆら揺らしている。痩せている癖にやたらたっぷりとした尻尾の毛に、一層触ってみたい衝動が強くなる。  手を伸ばすと、低く唸り。パッと逃げられてしまった。 「あー」  小さく声を出し、咲良は猫を追いかけた。  と言っても、お世辞でも体力があるとは言えない体。駆ける足は思ったように速くならず、猫との距離は広がるばかりで。自分の思うようにならないのにほんの少し、腹が立った。  と、すぐ側の角を曲がった所でみゃあみゃあ鳴く声が。  そちらに向かうと、 「やあ、咲良」  猫に足元で頬を摺り寄せられている少年が、こちらに向かってぽややんと笑って見せた。髪は、自身と同じく鮮やかな青。 「あっちゃん」  駆け寄ったら、今度は猫は逃げなかった。青――猫が現在擦り寄っている少年の足がマタタビか何かのように、気に入って何回も額をそこにこすり付けている。  青は微笑みながら、屈んで猫の喉の辺りを撫でてやった。猫は気持ち良さそうに目を細めて喉をゴロゴロ鳴らしている。気のせいか、耳がピンと立っているのが面白かった。 「変なの。さっき私が近付いたら逃げたんだ」 「うん。野良って警戒心強いから」 「でも、何であっちゃんには平気で近付くの?」 「うーん……何でだろ? 確かに、動物に逃げられた経験ってそんなないからなぁ」  苦笑しながら、青は猫を抱えてゆっくりと歩き出した。  咲良はとてとて、その後に付いて行く。青に抱えられて安心したのか、咲良が近付いても今度は猫は逃げなかった。 「どこ行くの?」 「大分痩せてるからね、この子。とりあえず、何かエサでもあげようと思って」 「その後、どうするの?」 「近くの人で、飼い主になってくれそうな人を探すよ」 「ふーん」  話しながら、咲良は青の腕の中の猫のピクピク動く耳を見る。  触りたい。いつか触った、温かくて柔らかい感触が頭に浮かんだ。  咲良が手を伸ばすと、青がやんわり片手で制された。 「駄目だよ、猫嫌がるから」  やんわりだったが、咲良は口を尖らせた。 「青も、久遠寺みたいな事を言う」 「だって」  青は咲良の手を止めた手をほどき、ゆっくりとそれで咲良の耳たぶを掴んだ。  竜馬とは、違う感触の手にちょっと咲良は戸惑った。大きいけど、そんなにごつごつしてない。青は包丁とか何かいつも握ってるのに。 「初対面の人に、咲良は耳触られたくないでしょ?」  言われて、咲良はこくこく頷いて。 「で、でも久遠寺とは、私は何回も会ってる」 「うん。でもねえ」  これ以上やったら保護者やってくるし、むしろ舞にやりたいなぁ。とかどうしようもない事を考えながら青は、またやんわりと言った。 「自分は何も悪い事をやっていないのに、耳をうんと強く掴まれたら。咲良は嫌でしょ?」  言われて、あの時の久遠寺の様子を思い出した。  確かに、彼女は菓子を持って自分の所に遊びに来た。  そして、彼女の頭に何故かある耳と尻尾に興味を覚えて思い切り掴んでしまったのだ。  確かに、なかなか取れないからぎゅうぎゅう引っ張ってしまって泣かれてしまった。 「知らなかったんだ、まさか久遠寺の頭についてる耳と腰についてる尻尾が本物だと気付いてたら………」  でも。動いたり脹らんだりしたら、やっぱり掴んで引っ張っていたかもしれない。  じゃあどうすればよかったんだー、とあー、とかうー、と唸る咲良を見ながら。  青は苦笑しながら腕の中の猫を撫でた。でも、この子もうそろそろ本当にご飯あげないと………。  でも、飼ってる猫なら。仲良くなったら耳とか尻尾触っても良くなるんだけどなぁ。  まあ、やっぱり強く掴まれたら怒るんだけど。  そう思いながら、こちらに走って来る谷口を蹴って止めようか押さえて止めようか考えた。  でも、まずはこの子のご飯持って来させよう。  思いながら、再び猫を撫で、猫は小さくみゃあと鳴いた。 ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) #comment(,disableurl) ---- ご発注元:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one&namber=1105&type=1102&space=15&no= 製作:芹沢琴@FEG http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1415;id=UP_ita 引渡し日: ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|
**久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国様からのご依頼品 その後の咲良と痩せた猫 /*/  何か今日の久遠寺はちょっと変だったような。  でも、どこがどう変かは言葉にできなかった。  石田咲良は、戦闘に必要な知識はともかく感情を表現する言葉のレパートリーは乏しかった。  まあ、そこらに関しては無理もない。  何故なら彼女はまだ、生後50日とちょっとなのだから。 /*/  久遠寺に会って数日後。  学校の校舎裏で猫に会った。  広島の小隊で飼われてるのとは違う、雑種の猫。  全身が灰色で、左耳が黒く。もふもふとした尻尾に、琥珀色の瞳がきらきらとした。戦火のどさくさで飼い主とはぐれたのだろう、見事に骨と皮だけの状態だった。  そんな痩せこけたのを除けば、咲良がついこないだ会った同年代の少女を思わせた。でも、何故人間に猫と同様の耳と尻尾が生えているのか訳が分からなかった。実は久遠寺は軍が開発した最新型の動物兵器なのだろうか。しかし、今いない人間よりも今そこにいる猫の方に興味が向けられた。視線をくるくるさせて、尻尾をゆらゆら揺らしている。痩せている癖にやたらたっぷりとした尻尾の毛に、一層触ってみたい衝動が強くなる。  手を伸ばすと、低く唸り。パッと逃げられてしまった。 「あー」  小さく声を出し、咲良は猫を追いかけた。  と言っても、お世辞でも体力があるとは言えない体。駆ける足は思ったように速くならず、猫との距離は広がるばかりで。自分の思うようにならないのにほんの少し、腹が立った。  と、すぐ側の角を曲がった所でみゃあみゃあ鳴く声が。  そちらに向かうと、 「やあ、咲良」  猫に足元で頬を摺り寄せられている少年が、こちらに向かってぽややんと笑って見せた。髪は、自身と同じく鮮やかな青。 「あっちゃん」  駆け寄ったら、今度は猫は逃げなかった。青――猫が現在擦り寄っている少年の足がマタタビか何かのように、気に入って何回も額をそこにこすり付けている。  青は微笑みながら、屈んで猫の喉の辺りを撫でてやった。猫は気持ち良さそうに目を細めて喉をゴロゴロ鳴らしている。気のせいか、耳がピンと立っているのが面白かった。 「変なの。さっき私が近付いたら逃げたんだ」 「うん。野良って警戒心強いから」 「でも、何であっちゃんには平気で近付くの?」 「うーん……何でだろ? 確かに、動物に逃げられた経験ってそんなないからなぁ」  苦笑しながら、青は猫を抱えてゆっくりと歩き出した。  咲良はとてとて、その後に付いて行く。青に抱えられて安心したのか、咲良が近付いても今度は猫は逃げなかった。 「どこ行くの?」 「大分痩せてるからね、この子。とりあえず、何かエサでもあげようと思って」 「その後、どうするの?」 「近くの人で、飼い主になってくれそうな人を探すよ」 「ふーん」  話しながら、咲良は青の腕の中の猫のピクピク動く耳を見る。  触りたい。いつか触った、温かくて柔らかい感触が頭に浮かんだ。  咲良が手を伸ばすと、青がやんわり片手で制された。 「駄目だよ、猫嫌がるから」  やんわりだったが、咲良は口を尖らせた。 「青も、久遠寺みたいな事を言う」 「だって」  青は咲良の手を止めた手をほどき、ゆっくりとそれで咲良の耳たぶを掴んだ。  竜馬とは、違う感触の手にちょっと咲良は戸惑った。大きいけど、そんなにごつごつしてない。青は包丁とか何かいつも握ってるのに。 「初対面の人に、咲良は耳触られたくないでしょ?」  言われて、咲良はこくこく頷いて。 「で、でも久遠寺とは、私は何回も会ってる」 「うん。でもねえ」  これ以上やったら保護者やってくるし、むしろ舞にやりたいなぁ。とかどうしようもない事を考えながら青は、またやんわりと言った。 「自分は何も悪い事をやっていないのに、耳をうんと強く掴まれたら。咲良は嫌でしょ?」  言われて、あの時の久遠寺の様子を思い出した。  確かに、彼女は菓子を持って自分の所に遊びに来た。  そして、彼女の頭に何故かある耳と尻尾に興味を覚えて思い切り掴んでしまったのだ。  確かに、なかなか取れないからぎゅうぎゅう引っ張ってしまって泣かれてしまった。 「知らなかったんだ、まさか久遠寺の頭についてる耳と腰についてる尻尾が本物だと気付いてたら………」  でも。動いたり脹らんだりしたら、やっぱり掴んで引っ張っていたかもしれない。  じゃあどうすればよかったんだー、とあー、とかうー、と唸る咲良を見ながら。  青は苦笑しながら腕の中の猫を撫でた。でも、この子もうそろそろ本当にご飯あげないと………。  でも、飼ってる猫なら。仲良くなったら耳とか尻尾触っても良くなるんだけどなぁ。  まあ、やっぱり強く掴まれたら怒るんだけど。  そう思いながら、こちらに走って来る谷口を蹴って止めようか押さえて止めようか考えた。  でも、まずはこの子のご飯持って来させよう。  思いながら、再び猫を撫で、猫は小さくみゃあと鳴いた。 ---- **作品への一言コメント 感想などをお寄せ下さい。(名前の入力は無しでも可能です) - めんどくさい注文にお応えいただきありがとうございました。あっちゃんにホントに尻尾の扱いとか教えて欲しいこの頃ですwお引き受けいただきありがとうございました。家宝に致しますヽ(´ー`)ノ 追伸 那由他はお酒も飲めるいい歳ですw同年代の少女というのはちょっと…(/ω\) -- 久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国 (2008-09-05 01:42:16) - いえいえこちらこそです。また、咲良ちゃんとの交流ログ楽しみにしてますね。P.S.ああ、すいませんすいません(平謝り)。年齢の事考えていませんでした。 -- 芹沢琴@FEG (2008-09-11 20:17:49) #comment(,disableurl) ---- ご発注元:久遠寺 那由他@ナニワアームズ商藩国様 http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/cbbs_om/cbbs.cgi?mode=one&namber=1105&type=1102&space=15&no= 製作:芹沢琴@FEG http://cgi.members.interq.or.jp/emerald/ugen/ssc-board38/c-board.cgi?cmd=one;no=1415;id=UP_ita 引渡し日: ---- |counter:|&counter()| |yesterday:|&counter(yesterday)|

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