装甲騎兵アヤタカ
シャインショルダー・ドキュメント 三段のルーツ
百年戦争末期のある日。辺境の非可住惑星イバラキにおいて、同型ATを装備した友軍同士とおぼしき部隊による戦闘行為が発生していた。
揚陸艇から降下した一方の部隊は、待ち伏せしていたもう一方の輝く肩のAT部隊に為す術もなく全滅させられてしまう。
イバラキに降下したAT部隊は、関西軍参謀総長ユキがシャインショルダー基地の所在と実態を探るために派遣した偵察部隊であった。
折しも惑星ハビキノの関西軍総帥部会議では、シャインショルダー最高責任者ゼンラ・ショウショウが提出したサカイ攻略作戦計画が話し合われ、シャインショルダー部隊はその作戦の重要な任務を担う運びとなっていたのである。だが、会議の席はシャインショルダーの行き過ぎた秘密主義と突出した部隊運営が障害となって紛糾していた。
情報開示を求めて批判の先鋒に立つのは、ショウショウの秘密主義に強い疑念を抱く参謀総長ユキ。多大な貢献と同時に諸問題を引き起こすシャインショルダーは軍内部でもその評価は二分されていた。
会議は大胆不敵な駆け引きでユキを捩じ伏せたショウショウの主張を受け入れる形で決着するが、憤懣やる方ないユキらはシャインショルダーの内実を探るため、秘密裏に次なる手だてを講じる・・・・。
一方、惑星イバラキには今日も補充兵を乗せた輸送艇が降下しようとしていた。補充兵の大半は疲労と不安で殺気だっている。その中で一人、アヤキ・キュービィは脇腹を痛めてうずくまるようにして座っていた。アヤキを苛立ちの捌け口にしようと凄むガラの悪い兵士と、それを諫めようとする若い兵士と、それらを無視して座り続けるアヤキ。
彼らの間で不穏な空気が流れだしたとき、スピーカーから着陸準備を知らせるアナウンスが発せられた。彼らは旅の終着点、シャインショルダー秘密訓練基地に到着したのだ。
補充兵たちは到着後直ちにATを使用した模擬戦闘に参加する事を命じられる。負傷しているアヤキも例外ではない。
補充兵たちは不満を爆発させるように猛然と目標に突進して行った。しかし、彼らは理解していなかった。これが単なる模擬戦闘ではなく、実弾を使用した兵士の選別行程であることを。これに生き残る事がシャインショルダー隊員として正式に登録される事であり、失格は即ち死を意味した。丘陵地で待ち構えていた教官役のAT数機が容赦のない砲撃を加えると、混乱をきたした補充兵たちのATは次々と撃破されていく。いち早く状況を把握したアヤキは、先程の輸送艇で自分を庇った若い兵士コーハイのATを引き連れて強引な敵陣の強行突破を図る。大胆な突撃に不意をつかれた教官ATはアヤキらの突破を許してしまうが、攻撃停止の規定ラインを越え、アヤキらに更なる追撃を仕掛けた。しかし、彼らは並外れた操縦技術で反撃を仕掛けてくるアヤキのATを仕留める事は出来なかった。
生存者は生還した二人を含めて、補充兵21名中わずか3名。これが「運力検定」と呼ばれる悪名高きシャインショルダー入隊の最終適性検査である。
基地に生還したアヤキとコーハイらは基地司令官サンダンに面会し、正式な隊員として認めらることとなった。
ようやく収容所にも似た雰囲気の兵舎に落ち着くアヤキだが、そこに待ち受けていたのは先程アヤキらの模擬戦闘で教官役を勤めたATのパイロット、コァクマ、ポコキチ、キザミによる暴力による監禁と尋問だった。コァクマらはアヤキの素性に疑念を抱きシャインショルダー入隊の真意を問い質す。
だがアヤキは記憶喪失の神経症患者であることが判明したのだった。コァクマたちはアヤキが危険な存在ではないと納得し、彼を解放する。
それから3か月が経過した。アヤキは訓練にも参加せず、周囲の同僚に訝しまれ特別視すらされる存在となっていた。
規律を重んじる特殊部隊においてあるまじきことであった。監視を通じて事態を芳しく思っていなかったサンダンは、アヤキを入隊させた張本人であるショウショウに直接アヤキの問題をぶつけた。だが、ショウショウはただアヤキの監視を続けるよう指示するのみで、具体的な対策を口にはしようとはしない。
上官の真意を図りかねたサンダンは、自らの判断でアヤキを不穏分子として処理する事を決意する。
サンダンはショウショウが基地不在中の日を選び、司令室にコァクマ、ポコキチ、キザミを呼び寄せて彼らにショウショウから託されたアヤキに関する資料を開示した。
そこに示されていたのはアヤキの尋常ならざる、不死身に近いほどの生存率が示されていた。日頃からアヤキを快く思っていなかったコァクマらは、自分たちならばアヤキを殺せる、とアヤキの抹殺を買って出る。
そして、機関銃や携帯ロケット砲まで持ち出したコァクマたちは、基地内でアヤキに襲いかかる。事態を察知したコーハイがアヤキを援護するが、十分な装備をしたコァクマらを制するには及ばない。
間もなくコァクマたちがアヤキを追い詰め、至近距離から拳銃の引き金を引く。手を伸ばせば届くような距離で補足されたアヤキに弾丸をかわす術などあるはずもなかったが、弾はアヤキをわずかに逸れる。しかも二度も。
悪夢を振り払うように三度目の攻撃はキザミが機銃を連射するが、弾丸は銃口から放たれることなく暴発してしまう。
「あり得んことだ」とモニターで事態を監視していたサンダンは呟く。モニターの中のコァクマらはお手上げの意思を表すが、サンダンは最後の手段に出る。
周囲の施設に仕掛けられた爆発物に点火された。サンダンが自分たちをアヤキもろとも始末するだったと察したコァクマは、アヤキを伴って脱出を試みる。
訝しむキザミらにコァクマが答える「こいつがいれば、俺たちが死ぬ確率も減る」と。先程まで銃を向け合っていたアヤキやコーハイやコァクマらは共にAT格納庫へ向かい、武器を手にする。アヤキは真っ先に管制塔を破壊し、コーハイに促されて情報室へ向かう。自らの過去の記録を求めて・・・・。ATに搭乗した彼らは周囲の施設やATを攻撃し始める。他の隊員も混乱しながらそれぞれの武器で応戦する。無差別な攻撃が無差別な反撃を呼び込み、基地は暴動の様相を呈し始め、ついには大陸の反対側に位置するもう一つの基地のシャインショルダー第2方面隊に暴動鎮圧のため出動命令が下さる事となった。
混乱を究める基地内から脱出したアヤキとコーハイはコァクマらと別れ、逃走を試みる。だがシャインショルダーの追撃は迅速だった。
暴動は集束し、シャインショルダーの追撃隊にほどなく行く手をはばまれてしまう。殺気に満ちた数百機のATに包囲されるアヤキとコーハイのAT。
この絶体絶命の窮地に攻撃中止の命令が下る。命令者は寸前のタイミングでイバラキに到着したショウショウだった。サンダンは不満を抑えきれない。
処刑を逃れたアヤキは逮捕され、尋問室へと連行される。痛めつけられ、拘束されたアヤキのもとにショウショウが自ら面会に訪れ、そしてアヤキの前でショウショウは驚くべきことを語り始める。
曰く、生命体には極めて稀な確率で不死身に近い生存率の固体《異能生存体》が存在する。そのような固体を無数に生産して戦闘集団を作ることが自分の理想である、と。
そして、アヤキの協力を求めるため、彼の過去について語り始めようとするショウショウ。だが、その時アヤキの発作が始まった。激しい興奮に襲われたアヤキは拘束具を引きちぎり、ショウショウに襲いかかる。
かつてない恐怖に襲われるショウショウは、必死に抵抗し拳銃でアヤキの心臓を射抜き、射殺してしまうのだった。
予想外の展開に憮然とするショウショウは、アヤキの死を確認すると、憮然としてイバラキを出発して行った。
一方、信じられぬ思いで安置室のアヤキの遺体の回りに集まったコーハイやコァクマたち。
悄然とした面持ちでアヤキを見下ろす彼らの前で、奇跡が起こった。
アヤキが、蘇生したのだ。
報告を受けたショウショウは改めて失意を噛み締める。アヤキの行動規範は、ショウショウの理想とあまりにも合致していなかったのだ。
数日後、シャインショルダーはサカイ攻略戦に出動する。わずかの期間で回復したアヤキや暴動の原因となったコァクマやキザミら5人は別動隊として激戦区へと送り込まれる事となった。事実上の処刑である。
戦場で次々と敵を撃破していくアヤキたち。その時、アヤキは突然の既視感に襲われる。
サカイの風景の中に己の記憶の断片が蘇ったのだ。だが、記憶を確認している余裕もなく、共にチームを組んでいたコーハイは敵の銃撃を受けて倒れる。
コーハイは情報室にはアヤキの資料がなかった事と、自分の正体はシャインショルダーの実態を調査する軍の諜報員であった事を明かし、息を引き取った。
感傷に浸る間もなく、戦闘は続く。
単身で進撃するキリコの背後から、銃撃が飛来する。射手は赤い肩をした4機のアヤタカホーク。それはアヤキを抹殺するためのレッドショルダーの処刑部隊だった。
サンダンもアヤキを抹殺する事で証明するため、自ら処刑部隊の指揮官として戦場に赴いていた。
サカイでレッドショルダー同士の凄まじい死闘が繰り広げられる。アヤキは処刑部隊のATを次々と撃破するが、自身も深手を負って意識が朦朧としていた。
そんなアヤキの機体を銃弾が命中する。・・・・そしてアヤキは意識を失った。
だが、アヤキは死の淵から生還していた。サカイ戦は関西軍の勝利で終わり、生態系を破壊されたサカイ自体の歴史も終わった。
後日。ハビキノではサカイ戦の勝利を祝う凱旋パレードが行われていた。行進を見守る雛壇には軍の高官が居並び、兵士たちに祝福を与えている。
特にサカイ戦の特別功労者として公認の存在となった特殊任務班シャインショルダーと部隊創設者ショウショウを巡っては嫉妬や称賛など様々な思惑が蠢いていた。
ユキはショウショウの弾劾に意欲を燃やし、一方ショウショウはやっと掴んだ栄光を実感していた。
そんな中、人々の高揚に冷水をかけるような一台のトレーラーが雛壇の前に行進してくる。そこには4人の兵士が右肩の赤いATを伴って立っていた。
コァクマ、ポコキチ、キザミ、そしてアヤキである。コァクマらはそれぞれ雛壇の高官たちを挑発するように不敵な態度を誇示していた。
その中でただ一人、アヤキだけが真っ直ぐに雛壇の高官たちを見据え、昂然と何かを主張している。
たとえ神にさえ俺は従わない
ショウショウにはそれが不服従の意思表示に見えた。
最終更新:2011年05月02日 02:33