梅田望夫「ウェブ進化論」(2006)
分類
目次
序章:ウェブ社会 本当の大変化はこれから始まる
- 「チープ革命」が生む方向性/「知の世界の秩序」再編へ/大変化はゆっくりと、でも確実に社会を変える/インターネットの可能性の本質/ネットの「善」の部分を直視せよ/ネット世界とリアル世界/「二つの世界」は理解しあえるか
第一章「革命」であることの真の意味
- オープンソースと三大潮流/時の常識と次代を変える「力の芽」/「過激な少数意見」/ネット世界の三大原則/「何ものにも似ていない」こと/シリコンバレー長老たちの知恵/ブライアン・アーサーの技術革命史観/産業革命よりも重要な転換
第二章 グーグル 知の世界を再編成する
- グーグルの実現する民主主義
- 世界政府が開発しなければならないはずのシステム/ウェブ上での民主主義
- インターネットの「あちら側」の情報発電所
- ネットの「こちら側」と「あちら側」/IBMのパソコン事業売却の意味/電子メールは「こちら側」に置くか「あちら側」に置くか
- グーグルの本質は新時代のコンピュータ・メーカー
- 情報発電所のシステム/ゼロから自分たちで作る/グーグルとオープンソース/「情報発電所」構築における競争優位の源泉とは
- アドセンス 新しい富の分配メカニズム
- グーグルが作るバーチャル経済圏/新しい富の分配メカニズム
- グーグルの組織マネジメント
- 情報共有こそがスピードとパワーの源泉という思想/「採用とテクノロジー」/「ベスト・アンド・ブライテスト」主義/五〇〇〇人がすべての情報を共有するイメージ/情報共有によって研ぎ澄まされるエリートたちの激しい競争
- ヤフーとグーグルはどこがちがうのか
- グーグルと楽天・ライブドアとおの違い/ヤフーはメディア、グーグルはテクノロジー
第三章 ロングテールとWeb2.0
- 「ロングテール現象」とは何か
- しっぽの長い恐竜/アマゾン・コムとロングテール/「恐竜の首」派とロングテール派の対立/グーグルのロングテール/「配信」ではなくて「創造」/大組織の「よし、これからはロングテールを狙え」は間違い
- アマゾン島からアマゾン経済圏へ
- Web2.0・ウェブサービス・API公開
- Web2.0とは何か/ネットの「あちら側」からAPIを公開することの意味/グーグル・マップスのAPI公開/がっくりと肩を落としたコンピュータ業界の長老/ヤフー・ジャパン、楽天はWeb2.0に移行できるか
第四章 ブログと総表現社会
- ブログとは何か
- 面白い人は一〇〇人に一人はいる/「書けば誰かに届くはず」/記事固有のアドレス付けとRSS配信/大きく異なる日米ブログ文化
- 総表現社会の三層構造
- メディアの権威はなぜブログを嫌悪するのか/総表現社会の一〇〇〇万人/小泉圧勝を解散時に誰が予想できたか
- 玉石混交問題の解決と自動秩序形成
- 検索エンジンの能動性という限界/待たれる自動秩序形成のブレークスルー/総表現社会のマルチメディア化に伴う大難問/総表現社会で表現者は飯が食えるのか
- 組織と個とブログ
- 信用創造装置・舞台装置としてのブログ/知的生産の道具としてのブログ/夢を実現させてくれたわが「バーチャル研究室」
第五章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
- オープンソース現象とその限界
- オープンソースの不思議な魅力/マス・コラボレーション/MITのオープンコースウェア/著作権問題が平行線をたどる理由/「狂気の継続」を阻むリアル世界のコスト構造の壁
- ネットで信頼に足る百科事典は作れるか
- ―ウィキペディアの達成/ウィキペディアは信頼に足るのか/ウィキペディアは信頼に足るのか/ウィキペディアを巡る二つ実験
- Wisdom of Crowds
- 「全体」を意識せずに「個」の価値を集積/ソーシャル・ブックマーク、フォークソノミー/ソーシャル・ネットワーキングと人々の評価という「全体」/米大統領選結果を正確にあてた予測市場/「不特定多数は衆愚」で思考停止するな
第六章 ウェブ進化は世代交代によって
- インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞
- 鮮烈な刺激を受けた羽生善治さんの「高速道路」論/「大渋滞の時代」をどう生きるか
- 不特定多数無限大への信頼
- 十代の感動が産業秩序を覆す/マイクロソフトとグーグル/ウェブの進化と世代交代
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち
―「時間の使い方の優先順位」を変える/日本人一万人「移住計画」/若いうちはあまりモノが見えていない方がいい/はてなへの参画が「後半生」最初の仕事
評価
★★★☆☆
ひとこと
再読してみました。
テクノロジーやその道のスペシャリストへのリスペクトは年々強まっていく。
この本に書かれていることも、その続きもこの業界で働く者としてよく理解できるつもりだ。
それでもなお、私自身は「テクノロジー」への関心は正直薄い、ということを再認識させられた一冊だったかもしれない。
皮肉にも最も印象に残ったのは、棋士である羽生善治の言葉だった。。。
ITとネットの進化によって将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋の世界に起きた最大の変化は、将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということですでも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています。(P210, 羽生善治の言葉)
メモ
- 米国が圧倒的に進んでいるのは、インターネットが持つ「不特定多数無限大に向けての開放性」を大前提に、その「善」の部分や「清」の部分を自動抽出するにはどうすればよいのかという視点で、理論研究や技術開発や新事業創造が活発に行われているところ。
- ネット世界の三大法則
- 第一の法則:神の視点からの世界理解(全体俯瞰)
- 第二の法則:ネット上に作った自分の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏
- 第三の法則:(≒無限大)×(≒ゼロ)=Someting
- マイクロソフトは「超秀才(super smart)」を求める。グーグルの人材戦略にも当てはまるが、唯一違うのは「学歴を重視する度合い(=研究者のような行動を求める)」
参考文献
- ランダル・E・ストロス「マイクロソフト・ウェイ」
- ウィリアム・パウンドストーン「ビル・ゲイツの面接試験」
- ジョン・バッテル「ザ・サーチ―グーグルが世界を変えた」
- ニコラス・カ―「ITにお金を使うのは、もうおやめなさい」
- ジェームズ・スロウィッキー「『みんなの意見』は案外正しい」
最終更新:2009年12月25日 22:35