柳田邦男「言葉の力、生きる力」(2002)
評価
★★★☆
ひとこと
前半は世の中の名言、後半は著者の死生観や人生観についてのエッセイ。
後半はいまの私にはまだぴんと来ない部分もあったが、深い内容だった。
すべてに納得できたわけではないけれど、もう少し年をとった時に再度読み返してみたいと思う。
分類
目次
プロローグ 変わる自分の節目に
心を耕してくれた名文句
- 幼い者の世界には、本質的な意味を備えた事件が(井上靖)
- 指一本ぶんの隙間から幸福がこぼれおちて(長田弘)
- すべてな無、かつ無にして無(ヘミングウェイ)
- この門は、おまえひとりのための(カフカ)
- 明日でも、ぜひ私は城まで(辻邦生)
- 不幸な家庭はみなそれぞれに(トルストイ)
- 忠告ほど、人が気前よく(ラ・ロシュフコー)
- 死は、生の本当の最終目標(モーツァルト)
- 月夜の晩に、拾ったボタンは(中原中也)
- 誰も傷つけなかった草よ(星野富弘)
- さあ、深呼吸して、雨にさわって(セブルベダ)
生きるための表現
- 言葉の発見者としての星野道夫
- 「生きがい」を探し続けた神谷美恵子
- 小さな<埋み火>を残した教師・脇浜義明
- 「悲」の心を語る五木寛之
いのちの言葉を生み出す死
- 言葉の二重性 闘病記と「意味の実現」(高見順ほか)
- いのちの響きを伝える言葉(重兼芳子)
言葉の息づかい
- 「悲しみ」の復権
- ユーモアのすすめ
- 忘れな草
- ガイアの超えが聴こえる
- 愛の温もりのファンタジー
- 雲の「表」
医療を読み解く言葉
- 緩和医療と人生への支援
- 人生の文脈を生かす在宅ホスピス
- いのちを救う看護の言葉
- 患者図書室の意味
- 先端医療の空白域
- 「僧医」という生き方
- 決断した医師
言葉の危機、時代の危機
- 言葉の崩壊
- 「匿名」の恐怖
- 感性の衰退
- 二・五人称の視点
- NPOの可能性
- ヒューマン・ファクター
- 危機管理の心理学
- 集団ヒステリーの危険
- 新しい文明拓く「安全学」
- いのちの危機
エピローグ 自分のための言葉
記憶は、過去のものではない。それは、すでに過ぎ去ったもののことではなく、むしろ過ぎ去らなかったもののことだ。とどまるのが記憶であり、じぶんのうちに確かにとどまって、自分の現在の土壌となってきたものが、記憶だ。(p26, 長田弘氏)
少年時代に他者の不幸に悲しみを感じ涙を流すという経験をするのを排除して、「明るく、楽しく、強く」という価値観だけを押しつけると、その子の感性も感情生活も乾いたものになってしまうと、私は考えているからだ。そこで気づいたのは、日本の高度成長期以降の歴史は、大人の世界でも子どもの世界でも「明るく、楽しく、強く」「泣くな、頑張れ」ばかりが強調され、「悲しみ」あるいは「悲しみの涙」を排除し封印してきた歴史ではなかったか(p142-143)
メモ
参考文献
- 星野道夫「森と氷河と鯨」
- 森瑤子「東京発千夜一夜」
- 河合隼雄「こころの処方箋」
- 後藤正治「リターンマッチ」
- 岩井寛「生と死の境界線」
最終更新:2010年08月21日 17:29