樋口裕一「頭の整理がヘタな人、うまい人」(2004)

評価

★★★☆

ひとこと

原題は「モノゴトを明快にする論理力」。
キャッチーなタイトルに改題されてしまったお蔭で、部数は延びたかもしれぬ。
しかし、やはり原題の方がしっくりくる。想定読者層は高校生と思われる。


分類


目次

第1章 話す相手もバカなのだ―あなたの「正しさ」はなぜ通じないのか
  1. 「明快さ」に最も求められること 禁句「なぜわかってくれないんだ」
    • 「机上の空論」の共通点
    • 言葉を選ぶとはどういうことか
    • 「言い含める力」がついてくる
  2. 問題の核心をつかむテクニック  禁句「カドが立つだろう」
    • 語れないことは整理もできない
    • 「話のとっかかり」のつくり方
    • 大同より小異にヒントがある
  3. 賢い人はここに「言葉が行き届く」 禁句「理屈じゃないのよ」
    • 「バカはバカ同士で固まる」理由
    • 感性で片づけないほうが感性は理解しやすい
    • 好き嫌いを結論にするな
    • 必ずチェックされる個所の万全化
  4. 最悪に備えることが考える事 禁句「何とかなりますよ」
    • 見たくないことは見ない
    • 個の弱い人は論理力も必ず弱い
第2章 頭の整理の「軸」のつかみ方―「わけがわからんなあ」はなぜ起きるのか
  1. 「二項対立」発想法 禁句「もうこれしかない」
    • 頭の中に「筋道」をつくる
    • 仮想的とまず戦おう
    • 難しいから論理が役立つ
    • 「反対」が「賛成」を純化する
  2. 「考える要素」をパターン化する 禁句「当たり前じゃん」
    • パターンを買えるのが真のパターン化
    • 「すごいキーワード」の発見
  3. 視野をどう広げていくか 禁句「かわいそうでしょ」
    • 「メモの技術」をひと工夫
    • 論理の「3W」の法則
    • 「情」の限界とは
    • 主張が決まらなくても論は立てられる
    • 頭に「スイッチを入れる」魔法の口グセ
  4. 屁理屈に負けないツッコミ術 禁句「みんながそうだもん」
    • 簡単なことが見えなくなる理由
    • 混乱は「正解」から起きる
    • 屁理屈の善用
    • 間違いを指摘するときは?
第3章 思考の「うっかり」をなくしていく―「後になって気づく」ことがなぜ多いのか
  1. 「思考材料」の捉え方 禁句「ここは損得抜きで」
    • 「イエス一色」のときが危ない
    • 論理のふるいをかける
    • 「変数」を考慮せよ
    • 「こんなはずでは!」防止法
    • 「長期展望台」に立つために
    • 相手の視点の重要性
    • 潜在力は人から見えにくい
  2. 人生の大局を整理する 禁句「ダメなものはダメ」
    • たとえば立場を図にすると?
    • 「逆に言えば」をたどっていくと?
    • 「基準のないこと」の検討法
    • 「すぐには結論の出ないこと」の考え方
    • 成功は分析から生まれる
  3. 運命軸につまずくな! 禁句「考えても仕方ない」
    • 人生から後悔を削っていく
    • あらゆるケースを「とりあえず考える」
    • 決断は「一目瞭然化」できる
第4章 揺るぎない考え方をつくるコツ―あなたの書く力、話す力はなぜ今いちユルいのか
  1. 「四部構成」論述法 禁句「そこでさえぎられてさ」
    • つくられた型からオリジナルはつくられる
    • 最初に曖昧に言うな
    • 論理的に見せることも大事
    • 「自明」は相手には「不明」である
    • 「しかし」の使い方
  2. 「読解力」の手順 禁句「必ず冒頭に結論です」
    • 「論理の門」のくぐり方
    • 吟味されていない文章を吟味する
    • 練習問題「アンチ・フェミニズム」
  3. 正しい「疑い方」の技術 禁句「あの人の言うことだから」
    • 読むことは自問自答すること
    • 「書いてないこと」を見つける
    • 一読して「なるほど」に要注意
第5章 つねに「話が見えている人」になる―情報整理がなぜ上達しないのか
  1. うまく本音を言う技術 禁句「悪いのは世間よ」
    • 論理は自分のためにある
    • 建て前を軽視するな
    • 相手が納得する形にする
  2. 「知的」に背伸びする 禁句「知りませんので」
    • 本音と主観を取り違えるな
    • 「自然体」の限界
    • プレッシャーを実践的にかけていく
  3. 読むことは発想すること 禁句「自分らしくあればいい」
    • 頭に「厚み」をつけていく
    • 「読むだけ小論文」の勧め
    • お勧めのネタ本十三冊
    • 「思考の土台」のつくられ方
  4. 知恵の整理から独創に進む 禁句「それって古い」
    • 独創力の正体
    • 受け売りから独創へ
    • 「いいとこどり」は究極の整理法
第6章 頭の「いい個性」を深めていく―「その他大勢」をなぜ超えられないのか
  1. 「情緒の人」から一歩抜け出せ 禁句「大事なのは言葉じゃない」
    • いつも感情からスタートする人たち
    • 「違うよ」から解決がはじまる
    • 「絶対論」のワナを避けよう
    • 迎合の根にあるもの
  2. うまいぶつかり合いを考えよう 禁句「ぐっと呑み込むんだ」
    • 「人を見下す人」の中身
    • なぜ「論理は正解ではない」のか?
    • なおざりにされる論理
    • 「はじめに答えありき」を抜け出すために
  3. 事実の強さを知る 禁句「変わってていいね」
    • 「ユニーク」を過信してはならない
    • バカは思いつきでものを言う
    • 「個性」を勘違いするな
エピローグ 頭の整理がおもしろいほどできる練習問題―こんな簡単な訓練をなぜしてこなかったのか
  1. 「考える力」をつける読み方
    • 練習<文章>
    • 練習<解説>
  2. 「考え方の深い人」はどこが違うか
    • 意見Aから小論文を四部構成で書くためのポイント
    • 意見Bから小論文を四部構成で書くためのポイント
    • 練習<模範解答>


気になる表現



メモ

  • ヨーロッパの外交
    • 国益が第一
    • 道徳や倫理(それらに基づく正義)は表向きの論理で、相手が反対しにくいようにするために用いられる。

  • モダンとポストモダンの対立
    • モダンvsポストモダン
    • 理性主義(世界は秩序だっている)vs人間は非理性的(世界は無秩序である)
    • 人間中心主義(科学主義、民主主義)vs人間以外の動物も重要(科学には限界がある、民主主義にも問題が多い)
    • ヨーロッパ中心主義(ピラミッド型社会構造、自我中心の世界観)vs非ヨーロッパの文化重視(多中心的社会構造、確固とした自我は存在しない)
    • グローバリズム(世界を先進国の価値観で普遍化)vs反グローバリズム(それぞれの民族の価値観を尊重)
    • デカルト、マルクス、サルトル vs ニーチェ、フーコー、ドゥルーズ、デリダ

  • 視野の広げ方
    1. 二項対立(Yes or No)で考える
    2. 3つのWhatと3つのW、1つのH
      • 定義(それは何か。what1)
      • 現象(何が起こっているか。what2)★
      • 結果(その結果、何が起こるか。what3)
      • 理由/根拠(Why)
      • 歴史性(いつからなのか、それ以前はどうだったか。When)
      • 地理性(どこでそうなのか、他の場所ではどうなのか。Where)
      • 対策(どうすればよいのか。How)

  • 論理展開の四部構成
    1. 問題提起(10%)「○○だが、それは正しいのだろうか?」
    2. 意思表示(30%)「たしかに・・・、しかし・・・」
    3. 展開(40―50%)
    4. 結論(10%)

参考文献

  • 養老孟司「バカの壁」
  • 内田樹「ためらいの倫理学」
  • 「日本の論点」
  • 佐伯啓思「新『帝国』アメリカを解剖する」
  • 山本雅男「ヨーロッパ『近代』の終焉」
  • 内田樹「寝ながら学べる構造主義」
  • 橋爪大三郎「政治の教室」
  • 阿部謹也「『教養』とは何か」
  • 鈴木孝夫「ことばと文化」
  • 苅谷剛彦「教育改革の幻想」
  • 岸田秀「ものぐさ精神分析」
  • なだいなだ「民族という名の宗教」
  • 金谷武洋「日本語文法の謎を解く」
  • 大平健「豊かさの精神病理」
  • 高久史麿「医の現在」
  • 斉藤孝「声に出して読みたい日本語」
  • 木田元「一日一文」

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最終更新:2011年05月01日 18:36