織田正吉「ジョークとトリック」(1983)

分類


目次

  1. 先入観の構造
    • ハトを食べる/なぜ落ちこぼれるか/ピカソと寿限無/意識を支配する先入観/そのとき牛はどうしたか/先入観さまざま/先入観の実験/「カルネアデスの舟板」の解決法/日曜出勤は職務熱心ではない/よく見えるものは見えない/「青い鳥」の教訓/隠れた共通性を発見する/「富士には月見草がよく似合ふ」/この章の要約
  2. だまされやすさの研究
    • 破片はなぜ消える/ミルクを消滅する方法/判断を惑わせる余分な情報/ゴムバンドは動くか/『水滸伝』の毒薬ミステリ/だれが毒薬を入れたか/ミスディレクション/心の慣性/犬は片足を上げて/「物くさ太郎」の仕掛け/お風呂が足りない/この章の要約
  3. 隠す文化
    • 伏字の魅力/虫食い算小説/隠されたものの魅力/謎が話題を呼ぶ/想像を刺戟する隠匿/知ることの幻滅/秘すれば花/遊びのカテゴリとしての隠匿/知ることの幻滅/物名と折句/なぞなぞ/古川柳の謎句/レトリックとしての謎/推理小説の祖先/落語の考え落ち/考え落ちの構造/考え落ちのひろがり/説得技術としての隠匿/「いひおほせて何かある」/この節の要約
  4. 似ることの力
    • リンカーンとケネディ/似ているものに惹かれる/シェークスピアのしゃれ/しゃれの国のアリス/信仰につながるしゃれ/論理としてのしゃれ/雅号、ペンネームのしゃれ/言葉の両義性/「半分ゆでる」と「白馬」/ミステリのなかの多義図形/雑俳のもじり/なぞかけ/なぞかけによるネーミング/しゃれ言葉/アフォリズムの構造/修辞としてのなぞかけ/同音の重なり/詩歌の押韻/この章の要約
  5. しゃれのひろがり
    • 二の舞とモドキ/パロディさまざま/意識的なまちがい/見立て/名づけのなかの見立て/リンカーンの話術/「虫のいろいろ」/たとえ話の名手イエス/語呂合わせ/語呂合わせによる造語/外国語と日本語/河口慧海の『翁』チベット語説/「伊勢音頭」ヘブライ語説/似ることへの社会的関心/邪馬台国論争/『桃太郎』と『西遊記』/百合若説話とユリシーズ/空き家の思想/ジンギス汗=義経同一人物説/さまざまなアナロジー/「とにかくシナだ」/この章の要約
  6. 逆に見る
    • 逆時計回りの時計/国語辞典を逆に読む/モー、スアロキン、ロタネブ/五木寛之の暗号小説/学術としてのさかさ読み/リヤカーのペダル/オタマジャクシとお玉杓子/ルビンの壺/アフリカで靴は売れるか/馬が二階へ上がる/ニッポンかジャパンか/塩をおいしく食べる法/前方公円墳という用語/オギノ式は受胎法である/ピアノ組曲「四分三十三秒」/プラスはマイナスである/当たらない予言は当たる/「友とするに悪き者」/失敗が生んだトリック映画/天を見下ろす/この章の要約


ネタバラシ作品(この本より先に読め!作品)

  • チェスタトン「神の鉄槌」(「ブラウン神父の童心」収録)
  • エドガー・アラン・ポオ「盗まれた手紙」
  • ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
  • コナン・ドイル「まだらの紐」
  • 横溝正史「獄門島」

評価

★★★☆☆

ひとこと

単なるジョーク本ではありません。理屈っぽい人におすすめの1冊です。
「角ばった頭をなんとかしたい」と思っていたところでタイトルに一目ぼれ。
しかし、ミステリのネタバレがそこここに!
一通り押さえていない人には要注意かもしれませんな。
思わずこんなものを作ってしまいました。
こういう目を持って、阿刀田高を読み返してみようと思いました。



気になる表現



メモ

  • 先入観の構造
    1. 習慣や日常見慣れているものが、価値判断を超えて先入観を形作る(ex.ガス冷蔵庫)
    2. 先入観はその人かぎりの尺度をつくり、思考をワクの中にはめこむ。(ex.ゴルフのスコア、カルネアデスの舟板)
    3. 大きすぎるもの、身近にあるものはかえって見えない。(ex.神の鉄槌、盗まれた手紙)
    4. 見落とされた共通性、法則性は柔軟な思考によって発見される。(ex.小林一茶と「月ハ東ニ日ハ西ニ」

  • だまされやすさの研究
    1. 理性は思ったより脆い。。
    2. 余分な情報が単純な真相を覆い隠すことがある。。。
    3. 特徴的で、より関心のある方向に意識は逸れる。。。
    4. 心には慣性がある。思考の流れに方向づけられる。。。(ex.犬は片足をあげて)

  • 隠す文化
    1. 隠されたものは、人の心を惹きつける力を持っている。。。
    2. 隠すことによって想像力は刺戟され、情緒は増幅される。(ex.イザヤ・ベンダサン)
    3. 隠されたものを突き止めることに人はよろこびを感じる。。。
    4. 隠匿はしゃれた表現に応用される。
    5. 説得にはすべてをいってしまわず、相手に思いつかせるのが有効である。
    6. 余情は隠匿が生む。

  • 似ることの力
    1. 似ていることは人の原始的な知性を刺戟する
    2. しゃれはあらゆる分野にひろがり、信仰や論理に用いられることもある。
    3. 言葉は多義性を持つ。。。
    4. しゃれを応用したなぞかかけはレトリックとして応用される。(ex.アフォリズム)
    5. 同音の重なりは耳にこころよくひびく。

  • しゃれの広がり
    1. パロディは原作を意識的に歪曲し、笑いを呼ぶ方法である
    2. 形状の類似を発見する見立ては知的関心を呼ぶ
    3. たとえ話は聞き手の知的負担を軽くし、説得に役立つ。。。
    4. 日本語の語源説や邪馬台国論争が社会的話題になるのは、似ていることへの関心を示す。
    5. しゃれは人をたのしませるが、論理性を奪う働きもあわせ持っている。(ex.「ジュリアス・シーザー」のシナ)

  • 逆に見る
    1. 一定方向からでなく、逆の方向から物を見ることも必要である。
    2. とりあえず視線を逆に向けることが新しい発想を生む。
    3. 自己と他者との関係では自分を、大小の関係では大きいものを中心に見がちである。。。
    4. 価値は一定ではない。。。


参考文献

  • I.ロック「形の方向と形の認知」
  • ジェームス・アダムス「創造的思考の技術」
  • 藤井基精「実例英語のなぞなぞ」
  • イザヤ・ベンダサン「日本人とユダヤ人」
  • 森谷佐三郎「シェイクスピア百話」

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最終更新:2010年05月05日 21:50