久石譲「感動をつくれますか?」(2006)
評価
★★★☆
ひとこと
久石譲氏の音楽エッセイ。
音楽に対するスタンスや思いを語っています。
音楽だけにとどまらず、最終章では日本人論にまで広げてますが、
チョットこの部分がステレオタイプ気味ではありますが、充分に楽しめる一冊。
ちょうど
名文コピーに学ぶ読ませる文章の書き方に続いて読んだせいもあるかもしれないが、映画音楽と広告コピー。
芸術家ではなく、主役を引き立たせる(?)ための位置づけがなにやら似ている気がして、
その道の第一人者の思考方法は似ているように感じた。
なお、タイトルに直接的に答えている訳ではないのでそこは期待しないように。
分類
目次
第一章 「感性」と向き合う
- ものづくりの姿勢
- ものづくりを仕事にするとは?
- 気分の波に流されない
- 心のペースづくりは生活を整えることから
- 誰かに気に入ってもらおうと思って曲をつくったことはない
- 「久石さんって、まともだねぇ」
- 感性の肝
- 第一印象は大事
- アイディアは無意識の中でひらめく?
- 頭で考える良さを超えたもの
- 確信に変わる瞬間
- 空気をつかむ瞬間
- 決断のポイント
第二章 直感力を磨く
- 質より量で自分を広げる
- 思いがけないヒント
- 感じ取る力を磨く
- いい音楽は譜面も美しい
- 「恥ずかしい」という自己規制
- コップを見て花瓶といえるか
- もう一人の自分=第三者の脳
- 最初の印象は絶対正しい-僕の「サンドイッチ理論」
- 直感力が幸運を引き寄せる
- 直感がつながりを呼ぶ
- バカはうつる、レベルは低いほうに揃う
- 失敗の原因は必ず自分のうちにある
- 幅を広げるなら知性を磨け
第三章 映像と音楽の共存
- リアリティのある手法
- ウソの中のマコト
- 黒澤映画に見る上質な映画音楽
- イマジネーションを喚起する音楽
- 映画音楽ができるまで
- トータルバランスで構成を考える
- 一つのテーマ曲で貫いた「ハウルの動く城」
- テーマでつけるか、人物でつけるか
- 世界観は初めの五分で決まる
- コラボレーションが自分の可能性を広げる
- プロの一員、プロの自負
- 監督の生理的テンポ
- テンポはお国柄を反映する?
- 作品の“人格”
- 音楽家の視点で作った「カルテット」
- 監督を体験してわかったこと
- 映画はドラマありき
第四章 音楽の不思議
- 音楽は記憶のスイッチ
- 劇と音楽、持ちつ持たれつ
- クラシックはなぜたくさんつくれたのか
- 輪廻の渦の中の自分
- ポップスはリズムで世界を制した
- 新たな挑戦
- 作曲スタイルの変遷
- 表現活動としてのピアノと指揮
- 「おまえは世界一だ」
- 商品の戦略vs作曲家の満足
- 直感経営の強さと脆さ
- 一番の聴衆は自分自身
第五章 日本人とクリエイティビティ
- 伝統楽器は曲者
- アジアの一員としての立ち位置から
- 世界唯一の五弦琵琶をめぐって
- 創意工夫が不得手な日本人
- 後世に伝統を伝える再生術
- パリで考えたこと
- リセットの号令で、一斉に右に倣え!
- 実質的稼働率をもっと上げよう
- “音楽する”とは
- うまさより「何を伝えたいか」が大事
- 「道」は日本人の本質をついている
- 子どもを上達させたいなら
- 無表情な子どもを減らそう
- 自己プロデュース力をつける
第六章 時代の風を読む
- アジアからの風
- “巨悪”アメリカ
- 韓国映画界の熱さに触れる
- 混沌のアジアン・パワー
- アジアをテーマに
- オンリーワンの落とし穴
- 現代に生きる作曲家として
- 創造の枯れない泉
日本人は、漠然としたイメージだけで、「感性」という言葉を大事にしすぎているように思う。
何かわからないながらも、とにかく大事にしなくてはいけないと包みこんで棚にあげて祀って
しまい、結局、みんなその実体がわからないままになっている、そんな感じがある。(p29)
中国人は、伝統を伝統のままに生かすことはない。踏襲にすぎないと考えるからだ。
伝統をそのまま踏襲するだけでは、それはやがて死に絶えていくと考える。(中略)
日本人は取り入れる能力は高い。だが、伝統というのは手を加えてはいけないものだと考える。
創意工夫などするべきではないとする考えが強い。(p145)
メモ
- ミニマル・ミュージック(Minimal Music):音の動きを最小限に抑え、パターン化された音型を反復させる音楽。
参考文献
本書が引用されている文献
最終更新:2010年12月17日 19:15