内田樹「街場のメディア論」(2010)
評価
★★★☆
ひとこと
神戸序学院大学の教養課程の講義を新書化したもの。
メディア論。書物に対する捉え方が独特だと感じました。
さくっと読めます。
分類
目次
第一講 キャリアは他人のためのもの
- 仕事をするとはどういうことか
- 「適正」ってなんだ
- 能力は開発するもの
- 他者という力
- 自分の能力について人は知らない
- キャリア教育の大間違い
- 呼ばれる声を聴け
第二講 マスメディアの嘘と演技
- 後退するメディア
- 命がけの知を発信するのがメディア
- 「一緒に革命できますか」という判断基準
- ラジオの危機耐性
- テレビの存在理由
- 「聴かないふり」
- 「営業妨害」に隠される知の不調
- 世界について嘘をつく新聞
- 「無垢」という罪が拡がっている
第三講 メディアと「クレイマー」
- クレイマー化するメディア
- 被害者であるということが正義?
- 正当化される無責任な「権利」
- 「ありがとう」が言えない社会
第四講 「正義」の暴走
- 煽られる利害の対立
- 患者は「お客さま」か
- 「とりあえず」の正義
- 批判から逃れる「知性」と「弱者」たち
- メディアは「定型」で語る
- 言葉から個人が欠如する
- マニュアル化されたメディアの暴走
- 暴走するメディアがメディア自身を殺す
す
第五講 メディアと「変えないほうがよいもの」
- 繰り返される「定型」の呪い
- 「世論」と「知見」
- アルベール・カミュの覚悟
- 市場から逃れる「社会的共通資本」
- 変化がよいことではない場合
- 戦争とメディア
- 惰性への攻撃
- 市場にゆだねられた教育制度
- 買い物上手になる学生たち
第六講 読者はどこにいるのか
- 「本を読みたい人」は減っていない
- 知的劣化は起こっていない
- 出版は内部から滅びる
- 電子書籍の真の優位性
- 不毛な著作権論争
- 書物は商品ではない
- クリエイターから遊離する著作権
- 読者が「盗人」とされるとき
- 本は「いつでも買えるもの」にせよ
- 読書人とは誰のことか
- 読書歴詐欺という知的生産
- 竹信くんの書棚
- 本棚の持つ欲望
- 本はなんのために必要か
- 出版文化の要件
第七講 贈与経済と読書
- 贈与と返礼
- 社会制度の起源「ありがとう」
- 「価値あるもの」が立ちあがるとき
- 勘違いできる能力
- 価値はそのものの中にはない
- 無償で読む人を育てよ
第八講 わけのわからない未来へ
- 拡がる「中規模」メディア
- マスメディアに内在する「すり合わせ」
- ミドルメディアは自粛しない
- 「ただ」のものの潜在的価値
- 贈り物を察知する人が生き残る
- メディアとは「ありがとう」という言葉
- 生き延びられるものは生き延びよ
「どうしてもこれだけは言っておきたい」という言葉は決して「暴走」したりしません。
暴走したくても、自分の生身の身体を「担保」に差し出しているから、制御がかかってしまう。
真に個人的な言葉には制御がかかる。(p94)
メモ
- Sauve qui peut(生き延びられるものは、生きよ)
- 船が難破したとき、前線が崩壊したときに船長や指揮官が最後に宣言する言葉。
参考文献
最終更新:2010年11月20日 21:35