サンデル,マイケル「ハーバード白熱教室講義録+東大特別教室」(2010)
評価
★★★★
ひとこと
サンデル教授の講義録。
一方通行ではなく、学生との対話が描かれているので、
私のような倫理・哲学の素養がない人間にはとても親しみやすい一冊。
章末の小林教授のまとめコメントも理解を深めてくれています。
分類
目次
- 殺人に正義はあるか
- レクチャー1 犠牲になる命を選べるか
- レクチャー2 サバイバルのための「殺人」
- 命に値段をつけられるのか
- レクチャー1 ある企業のあやまち
- レクチャー2 高級な「喜び」 低級な「喜び」
- 「富」は誰のもの?
- レクチャー1 「課税」に正義はあるか
- レクチャー2 「私」を所有しているのは誰?
- この土地は誰のもの?
- レクチャー1 土地略奪に正義はあるか
- レクチャー2 社会に入る「同意」
- お金で買えるもの 買えないもの
- レクチャー1 兵士は金で雇えるか
- レクチャー2 母性売り出し中
- なぜ人を使ってはならないのか
- レクチャー1 自分の動機に注意
- レクチャー2 道徳性の最高原理
- 嘘をつかない教訓
- レクチャー1 「嘘」と言い逃れ
- レクチャー2 契約は契約か?
- 能力主義に正義はない?
- レクチャー1 勝者に課せられるもの
- レクチャー2 わたしの報酬を決めるのは……
- 入学資格を議論する
- レクチャー1 私がなぜ不合格?
- レクチャー2 最高のフルートは誰の手に
- アリストテレスは死んでいない
- レクチャー1 ゴルフの目的は歩くこと?
- レクチャー2 奴隷制に正義あり?
- 愛国心と正義 どちらが大切?
- レクチャー1 善と善が衝突する時
- レクチャー2 愛国心のジレンマ
- 善き生を追求する
- レクチャー1 同性結婚を議論する
- レクチャー2 正義へのアプローチ
- 東京大学特別授業(前篇)
- 東京大学特別授業(後篇)
メモ
- 定言的な考え方:ある主の義務や権利の中に道徳性を求める。(ex.カント)
- 帰結主義的:行為の帰結に道徳性を求める。(ex.ベンサムの功利主義)
- 「正しいこと」とは、効用を最大化すること。最大多数の最大幸福
- 功利主義への反論
- 個人の権利が尊重されていない
- 価値と好みを集計することは不可能
- ジョン・スチュアート・ミル「満足した愚者よりも不満足なソクラテスのほうがいい」(ベンサム派の発展系)
- リバタリアニズム:自由原理主義、市場原理主義。個人の自由や所有権を含む権利を非常に重要と考える。(ex.ノージック、フリードマン)
- リバタリアニズムによる政府の見方
- 父親的干渉主義の立法の否定
- 道徳的な立法の否定
- 富者から貧者への所得の再分配の否定
- リバタリアニズムへの反論
- 貧しい者のほうがより金を必要としている
- 統治される者の同意による課税は強制ではない
- 成功した者は社会に借りがある
- 富は部分的に運で決まるので当然のものではない
- ジョン・ロック:アメリカの独立宣言(アメリカ国民には、生命、自由、そして幸福の追求に対する不可譲の権利がある)に影響を与えた
- ロックとリバタリアニズムの違い
- 政府が法律という形で民主主義に基づいて決定した場合には、徴兵制や課税も論理的にはあり得る、とする見解(社会契約論)
- リバタリアニズムへの批判
- カントの自由の概念
- 自由に行動すること=自律的に行動すること=自分自身で与える法則に従って行動すること
- カントの道徳性の観点
- 行為の道徳的価値は、動機に基づく。(正しい行ないを正しい理由のためにする)
- 現実の契約の道徳的な効力:いかに拘束ないし義務を負わせるか
- 同意に基づくもの(自律)
- 便益に基づくもの(互恵性)
- ロールズ「仮説的契約」(リベラル)
- 分配の正義の理論
- リバタリアニズム:自由市場システム
- 能力主義:公正な機会均等
- 平等主義:ロールズの格差原理
- 格差理論への反論
- インセンティブはどうなるのか
- 努力はどうなるのか
- 自己所有はどうなるのか
- アファーマティブ・アクション支持の議論
- 是正:教育的背景の格差のため
- 償い:過去の過ちのため
- 多様性:教育的経験のため、社会全体のため
- アリストテレスにとっての政治:善き生をもたらすもの
- カント・ロールズにとっての政治:善や価値、目的を選択する自由を尊重すること
- 米政治哲学者マッキンタイア:物語的な観念(私は何をするべきか、という問いに答えるには、まず「どんな物語の中で私は自分の役を見つけられるのか」という問いに答えてからでないと、答えることはできない)(コミュニタリアニズム)
参考文献
- サンデル,マイケル「これからの『正義』の話をしよう」
最終更新:2011年07月16日 23:58