【書きかけ】藤原正彦「日本人の誇り」(2011)
評価
★★★☆
ひとこと
「日本は酷いことをした国なのだ」と卑下している日本人に、
「自信を取り戻してほしい!」と願う著者により書かれた作品。
全体の半分以上を占める歴史記述については、
現代の歴史教育では知ることができない「百年戦争史観」が
比較的読みやすくまとめられていて、
確かに“勇気のあるおっちょこちょいの無鉄砲な数学者”による良書だと思えます。
が、結論がやや中途半端(拙速?)な感じなのが残念。
分類
目次
- 政治もモラルもなぜ崩壊したか
- すばらしき日本文明
- 祖国への誇り
- 対中戦争の真実
- 「昭和史」ではわからない
- 日米戦争の語られざる本質
- 大敗北と大殊勲と
- 日本をとり戻すために
現代知識人には「動かぬ証拠」がないからいつまでも懐疑の目を向けるのです。
そして何より、知識人にとって、公の場で自分とか自校、自社、そして自国を肯定的に語ること、
すなわち自己肯定は無知、無教養、無邪気をさらすことであり、
自己懐疑こそがとるべき知的態度なのです。
実は、理経知識人は必ずしもそうでありません。
理系では独創が命で、そのためには自己肯定が不可欠だからです。(p44-45)
日本が欧米を説教したことは未だにありません。
帝国主義、共産主義、新自由主義、最近ではTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など、常に欧米の決定したドグマに乗るか乗らないかを選択するのみです。
自ら新らしいドグマを提出することも、提示されたドグマを粉砕することもしません。
謙虚の表われとも言えますが、日本人の価値観を高く掲げ、迫力を持って欧米を説得説教する、
ということを決してしようとしないのは、日本の宿痾とも言えます。(p225)
メモ
- 近隣諸国条約:中国、韓国、北朝鮮を刺激しかねない叙述はいけない、という政治的なもの
- 罪意識扶植計画(WGIP・War Guilt Information Program・戦争についてのの意識を日本人に植え付ける宣伝計画)
- パトリオティズム(郷土愛、祖国愛)とナショナリズム(国家主義)が混在した「愛国心」
- オレンジ計画:日露戦争の翌年から米国で練られていた「対日戦争計画」
- 米英が中国支援に傾いた要素
- 市場としての中国
- ナチスドイツの台頭
- 人種(日中を対立させるのは、現在なお欧米の基本戦略となっている)
- 中国の世界一の宣伝力と、それに動かされた米国世論
- 米国に根付いていた親中反日の精神
参考文献
- サミュエル・ハンティントン「文明の衝突」
- 藤原正彦「国家の品格」
- 渡辺京二「逝きし世の面影」
- エンゲルス「イギリスにおける労働者階級の状態」
- ロンドン「どん底の人びと」
- オーウェル「パリ・ロンドン放浪記」
- 藤原正彦「名著講義」
- 江藤淳「閉された言語空間」
- 田中正明「『南京事件』の総括」
- 北村稔「『南京事件』の探求」
- タウンゼント「暗黒大陸中国の真実」
- 竹内洋「丸山眞男の時代」
- ジョンストン「紫禁城の黄昏」
- 「昭和天皇独白録」
- 「牧野伸顕日記」
- パール・バック「大地」
- 「ヴェノナ」
- 竹内好「日本とアジア」
- 重光葵「昭和の動乱」
- クリストファー・ソーン「太平洋戦争とは何だったのか」
最終更新:2012年01月14日 01:04